詩のページ




    自分の感受性くらい
                    茨木のり子

      ぱさぱさに乾いてゆく心を

      ひとのせいにはするな

      みずから水やりを怠っておいて


      気難しくなってきたのを

      友人のせいにはするな

      しなやかさを失ったのはどちらなのか

      苛立つのを

      近親のせいにはするな

      なにもかも下手だったのはわたくし

      初心消えかかるのを

      暮らしのせいにはするな

      そもそもが、ひ弱な志にすぎなかった

      駄目なことの一切を

      時代のせいにはするな

      わずかに光る尊厳の放棄

        自分の感受性くらい

         自分で守れ

        ばかものよ


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