クラシック音楽リスナーの局(tsubone)

クラシック音楽リスナーの局(tsubone)

January 4, 2007
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チェンバロやピアノといった鍵盤楽器を舞台の中央において,鍵盤を客席に向け,それを取り囲むようにオーケストラが配置され,チェンバロやピアノの奏者が鍵盤楽器を弾きながら指揮もする,というのは,時々ある光景ですが,そういつもあるわけでもありませんね.

おぼろな記憶としては,もう30年ほど前だったか,カラヤンの来日公演のときに,カラヤンがブランデンブルク協奏曲の5番をこのようにしてチェンバロと弾き振りをしていたような記憶があるくらい.あと,3年位前の3月にアムステルダムコンセルトへボウでアンドラーシュ・シフが弾き振りをするらしいプログラムを見かけたこともありました.どちらもあまり確かな記憶ではありません.

そんな中で,2006年7月に発売になったこのDVDは,すごい.内田光子さんのファンの方はとっくにご存知かも知れませんし,収録は2001年なので,DVDになる前に何らかのビデオメディアですでに発売されていたのかもしれませんが,DVDリリースは昨年の春に ヨーロッパでリリース になり, 夏に日本版が 出ました.内田さんがピアノ独奏をしながら指揮もしている,モーツァルトの13番(K.415[387b])と20番(K.466)です.オーケストラは Camerata Salzburg です.収録会場はザルツブルグのモーツァルテウム.内田さんは上手から颯爽と泳ぐように登場して演奏が始まります.全身から音楽するオーラが出ているような雰囲気で,舞台の上がオケもピアノ独奏も一体となった感じがよくわかる演奏.この演奏は本当に生で聴きたかった,という感じですね.確かに,軽やかなモーツァルトの雰囲気を演奏に期待するのなら,この演奏の質感は少し重めの感じで,ベートーヴェンばりの感じもなくはないので,好き嫌いはあるかもしれませんが,密度が高いし,これはこれでもう,堪能できてしまう演奏だと思います.

オンなカメラワークで演奏中の内田さんの表情をよく追いかけているし,オケの演奏者の表情なども丹念に拾われています.奏者間の目配せなども時折わかるので,アンサンブルの経験があれば,演奏者としての気分になりながら視聴できる映像でもあります.特にこのようにソリストが指揮もするときには,コンマス(コンミス)の役割がとても重要になると思いますが,そのしぐさと内田さんとがうまくはいるカメラアングルも多く,演奏中の呼吸がわかるので,これも観ていて楽しめました.このオケのコンミスは, Natalie Cheeさん .コンミスには2001年に就任していますので,この録画はその就任直後なのでしょうね.でも舞台上のこんなやりとりが見えてしまうということは,逆に言えば,純粋に音楽を楽しもうとすると,映像を見ていると落ち着けないかもしれませんね.

なお,Camerata Salzburg は音楽監督がノリントンなのでした.ノリントンは,当ブログでも 紹介

さて,この演奏を観ながら聴きながら,ふと考えてしまいました.指揮者はピアノが弾けて,オーケストラ曲のスコアから音を拾いながら演奏できることは当たり前くらいの印象ですし,もとはピアニストという指揮者もおられますが,ピアニストがみんな指揮者の資質があるとも限らないでしょうね.そんななかで,このような演奏形態をとり,録画まで残した内田さんのエネルギーの源はどこにあるのだろう,と思ったわけですね.ただでさえ集中力を必要とする独奏ピアノに,オケを統率する,という仕事が加わるのだから,並大抵ではないわけで,それをこれだけの演奏でこなしてしまうのは,もうすごい,というほかはありません.伴奏オケの演奏まで自分の思い通り(つまり別の指揮者に依存せずに直接的に表現意図を伝えることができるという意味で)にして,研究した音楽表現を細部までこだわりたかった,ということだったのだろうか,と勝手に想像しました.

この映像の存在は,知人のピアニストのTさんに教えていただき,オリジナルのDVDがないかと探してみて見つけました.このDVDは,本編だけでなく付録も楽しめます.内田さんがドイツ語(字幕付)で20分くらい語るインタビューがあり,ご自身の生い立ちや環境,ハイドンやシェーンベルグへの想いなど,さまざまなことを語っていますが,これは興味深いです.それと,このDVDのレーベルであるドイツグラモフォンのサンプラーがついていて,クライバーの演奏やベームの演奏なども垣間見ることができます.
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Last updated  January 5, 2007 02:51:54 AM
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