Leica M6J
(Leica M6J + color-skopar35mmF2.5(P2))
勝手にインプレッション
M6Jは、M型ライカの始祖・M3が発売されて40年がたった1994年に、ライカ社から世界1640台限定で発売された、記念碑的なモデルだ。外観はM3、でもよく見ると傾斜クランクで、中身は露出計を内蔵したM6、ブライトフレームはM4タイプという、懐古趣味的な折衷モデルで、同じく復刻されたエルマー50mmF2.8とセットで売り出された。
懐古趣味とは言ったが、実際、M3の在庫パーツを可能な限り使用してあるので、無下に「軟弱なM3モドキだろ、けっ」と唾棄してしまうのはちょっと可哀想かもしれない。と、M6Jを擁護するふりをしながら自己弁護。
あまりにも高価であったことから、発売後数年にわたって、カメラ屋の店頭在庫として鎮座していた個体も少なくない。ちなみにM6Jの「J」は「jubilee(ジュビリー)」の略で、「記念」と言う程度の意味である。
ショーケースに並んでいるM6Jを初めて見たとき、エンゾーはその職人気質溢れる優美なデザインに一目惚れしてしまった。当時はまだ、ライカとはなんぞやとか、そういう予備知識もほとんどなかったが、怪しげなライカ伝説に毒される前のエンゾーの目にも、M6Jは十分魅力的に映った。
以来、様々なカメラを使いつつも、いつかはライカを所有したいと言う思いは心の奥底でくすぶり続けた。しかし、M6やM6TTLはもちろん、鳴り物入りで登場したM7やクラシカルなMPを見ても、格好良いなとは思いつつ、何が何でも欲しいとまでは思えなかった。たぶん頭のどこかで、初恋の人が忘れられなかったのだ。
結局、その存在を知ってから実に8年目、縁あって、エンゾーはついにM6Jのオーナーとなった。
(Leica M6J+ELMAR-M 50mmF2.8jubilee)
M6Jの特徴の一つに、M型ライカで初めて0.85倍という高倍率のファインダーを採用した点が挙げられる。
ファインダー倍率と言えば、元祖M3は0.91倍で限りなく等倍に近く、非常に長い有効基線長を誇っているが、復刻版であるM6Jはそうした点を鑑み、外見だけでなく、ファインダーもM3に近づけようとしたようである。
その結果、ブライトフレームは50mmがスタンダードになり、35-135mm、50mm、90mmの4フレームを内蔵することになった。つまり標準~望遠が得意なボディなのである。その後、この新しいファインダーは通常のM6にも採用され(ブライトフレームには75mm枠も追加された)、M7に至るまでの定番の一つになっている。 【2006.8.3追記】(経営不振の続くライカでは、ついに現行のライカ(MPおよびM7)について、0.72倍以外のモデルをディスコンにしてしまった。今後、どうしても0.58や0.85モデルが欲しい場合は、中古を探すかアラカルトで注文するしかない)
個人的には、90mm以上の枠はまったく必要なく、35mm・50mm・75mmのブライトフレームが単独で表示されるファインダーがあればベストなのだが、そういうモデルは存在しない。
M6Jとセットで販売されたエルマー50mmF2.8は、往年の名レンズ・エルマーの復刻版で、コーティングや絞り羽根の位置、諸収差などが大幅に見直され、形は似ているがまったく別のレンズに仕上がっている。このエルマーの評判が良かったため、その後マイナーチェンジされ、ライカのレンズラインナップに定番として復活することになった。
沈胴式のクラシカルな外観は、クラクラするほどM6Jに似合っている。が、ピントレバーによるフォーカシングは動きが渋く、細かいピント調整に苦労する。量産モデルになってレバーがなくなり、幅広のピントリングに変更されたのは、この問題を解決するためだったと思われる。
さて、肝心の操作感であるが、ベースがM6なだけに、距離計のハレーションと言う悪しき伝統はしっかり受け継がれている。これに関しては、ライカジャパンで正式に改良サービスを受け付けていて、M4-P、M6、M6TTLで35,000円となっている。サービスを受けた人の話によると、「劇的にファインダーが見やすくなった」とのことなので、そのうち思い切って改良して貰おうと思っている。
ところがM6Jのような記念モデルの場合は45,000円と、なぜか?一万円も高い。どういうことなのか。謎だ。
関東カメラサービス
では、同様の改造を26,250円(税込)で行われている。被験者の話ではMP並にハレーションがなくなったということなので、少なくともコストパフォーマンスは関カメの方がはるかに良い。
【2004.11.25追記】
(関カメとどちらにしようかと迷いに迷った挙句、大枚をはたいて、シーベルヘグナー(当時)のハレーション改良サービスを受けた。結果は上々、血の涙を流しただけの甲斐はあった(笑)。改良前は、曇っていたのかハレっぽかったのか、ベールが掛かったような見え方をしていたM6Jのファインダーだったが、MP以上にクリアで明るい見え味になって帰ってきたのは、予想外の嬉しい誤算である。
この改造、初期の頃はフレームの見えが薄くなるなどの「改悪」も報告されていたが、手元に届いたM6Jのファインダーを見る限り、そのような事はないようだ。まったくケチのつけようがない出来に満足している。)
ハレーションよりも深刻だったのは、シャッターのガク押しだ。良く調整されたM3では「コトリと落ちる」などと形容されるライカのシャッターだが、M6Jはどうも感触が良くなく、どんなに注意しても、特に縦位置で撮った時に、ファインダーを覗いていてはっきり分かるほどブレた。原因はレリーズの感触などではなく、横走りシャッターという構造が持つ特性のようで、程度の差こそあれ、エンゾーが所有するMP・M4・M7のすべてで体感できる。面白いことに、ブレは全速で発生するわけではなく、1/125~1/250あたりで出る。
その「レリーズ時の手ブレ」を解消するアイテムを、よく行くカメラ店のショーケースの片隅で見つけた。アメリカのサードパーティーが製造している、削り出しの金属製グリップである。ライカ純正のグリップはプラスティック製で、形状が今ひとつ手に馴染まないものだったが、これは違った。縦位置に構えた時も、カメラが吸い付くように安定した。艶消しの黒塗装も控えめで好感が持てる。一も二もなく購入した。
幸いなことに、今までLマウントのレンジファインダーで遊んできたので、レンズはそこそこ揃っていて、今のところ新品のレンズを購入する動機がなくて助かっている。なにしろライカのレンズはべらぼうに高価なので、おいそれと買い足すわけにはいかないのだ。
とはいえ、いつか来るその日の予感に、今から怯える毎日である。
【2006.8.3追記】
いい加減、レンズが増えまくってしまった。一番の原因は、「同じレンズの白と黒を買い揃える」という救いがたい愚を犯したからに他ならない。お陰でと言うべきか、欲しいレンズはあらかた網羅された。
長所
○あのM3の外観に、露出計を内蔵。優雅さと実用性を兼ね備えた、非常に贅沢なカメラ。なんといっても、
軍幹部から伸びたエプロンと、測距窓周辺を膨らませたプレスデザインの両方を兼ね備えているのは、
MPが発売された今日ですら、M3以外にはこのM6Jしかないのである。
【2006.8.3追記】昨年から今年にかけて、MP3やM3Jといった「M3タイプ」の限定モデルが立て続けにリリースされた。もっとも、
傾斜クランクを兼ね備えているモデルは、相変わらずM6Jだけであるが。
○セットで販売されたエルマーは、現行エルマーと比べてデザインがレトリックで美しい。
○腐ってもライカ。精巧なメカニズムと心地よい操作感、ずっしりと持ち重りのする重量感は、
他のどんなカメラにもない魅力である。
○たとえ「アラカルト」を駆使しても同じ物が作れないので、精神的な満足感はある。
短所
●かの有名な距離計のハレーションは、やはりしっかり出る。
●復刻版エルマーの操作性が今ひとつ。ヘリコイドに滑らかさがない。
●高すぎる…。
●ついつい過保護になってしまうのが、一番の難点か?(^_^;
超個人的オススメ度
(10点満点)
☆
偏愛度
(10点満点)
☆☆☆☆☆ ☆☆☆☆☆ ☆
Yahooオークション出現率
(10点満点)
☆
もはや異次元の世界。お勧めなんて出来るはずもない。