くたばれベテラン
いきなり下品なタイトルで申し訳ない。でも、そう思うから仕方がない。
どんな世界にも、その道に入門したての「初心者」と、長く親しんだ「ベテラン」とが存在するが、この「ベテラン」というやつ、少々厄介だ。酸いも甘いもかみ分けた「趣味の達人」たるベテランと、あーだこーだと口さがない「自称ベテラン」という、二種類のベテランがいるからだ。
例えばここに、迷える子羊がいるとする。
彼女は(「彼」でもいいのだが、往々にして、被害に遭うのは女性である)ちょっとだけ写真と言うものに興味を持ち、インターネットでいろいろ調べてみた。膨大なサイトを見て、目を回しながらなんとなく分かった事は、「どうやら良い写真は、良い機材選びから始まるらしい」ということ。
でも、どれを買えばいいのか分からない。幸い、彼女が参考にしたHPには掲示板がついており、そこで質問をすれば、いろいろ教えてもらえそうだ。さっそく、次のように書き込んでみた。
「私は、まだ写真の事がよくわからない初心者です。スミマセン<(_ _)>。
今度、南の島へ海外旅行に行くのですが、綺麗な写真が撮りたいなと思っています。
そこで、皆様にご相談があります。いったいどんなカメラを買えばいいでしょうか。
さっぱりわからないので、お勧めがあったら教えて下さい!」
さあ大変。
こんな事を書いたら、一番喜ぶのが「自称ベテラン」たちだ。
曰く、
「写真は、 ズームに頼るのは邪道です。
50mmさえあれば、一歩前進一歩後退で、広角的にも望遠的にも使えます。 一眼レフと単焦点を買いなさい
」
曰く、
「フィルムは ネガではダメ
です。いつまでたっても写真が上達しません。リバーサルフィルムを使い、 光を読んで
露出を決めましょう」
曰く、
「良いカメラを買う前に、良い三脚を買いなさい。 三脚に金を掛けない人は、写真が分かってない人
です」
曰く、
「あなたは何をどう撮りたいのですか。漠然とした質問をされても、返事のしようがありません。もう少し、 自分で学ぼうと言う向上心
を持って下さい」
だあー、うるさい!(ノ-_-)ノ ~┻━┻
はっきり言おう。
彼女の書き込みを読んで、上のような反応をする 「空気も文脈も読めない奴ら」
は、どいつもこいつも 自覚のない超オタク
であると。
素人さんが到底理解できるはずもないような事を得々として語り、顔も見たことすらない相手にまるで教師のようなモノの言い方をする、視野狭窄で礼儀知らずでうっざったいことこの上ない写真オタクがあまりに多すぎる。こんな無神経な輩に、せっかく芽生え始めた写真への興味を、無残に挫かれる人が気の毒だ。
かつてエンゾーが、写真にのめり込むきっかけになった出来事。それは、一眼レフを使った事に始まる。生まれて初めてEOS Kissで撮った写真は、びっくりするくらいシャープに撮れていて、
「これ、本当に自分が撮ったの!?」
と我が目を疑った。
もちろん今考えれば、それは到底作品たり得ない駄作であったし、そもそも凡百のコンパクトカメラと比較すれば、一眼レフのほうが数段シャープに写って当たり前である。
しかしそれでも、その時の感激は今でも忘れられない。あの新鮮な感動なくしては、写真趣味という苦しくも楽しい天国にどっぷり浸かった、今日のエンゾーはない。
では、なぜ一眼レフを使ってみようと思ったか。それは、手持ちのコンパクトカメラ(当時は京セラのサムライを愛用していた)で撮った写真と、雑誌で見るグラビア印刷の写真や写真展で展示してあるパネルのクオリティが、あまりにも掛け離れていたからだ。この緻密さ、鮮やかさの差は、一体どこから来るものなのか。
「これはきっと、素人とプロでは使う機材がまったく違うからに違いない」
恐れ多くも、エンゾーはそのように理解した(無知とは恐ろしいものだ!)。
自分が感動した、美しい写真に一歩でも近づきたい。それが道具でカバーできるのなら、そういう道具が欲しい。ど素人エンゾーは、実に素人らしくそう思ったのである。蜷川実花の写真に衝撃を受けてアグファウルトラを使ってみる、ポップな感じに憧れてLOMOやHOLGAを買ってみる、ハービー山口みたいな写真を撮りたくて、いきなりライカM3を買ってしまう・・・。写真学校に行くような気合の入った人は別として、素人が趣味人の世界へと踏み出す最初の一歩は、案外みんな似たり寄ったりだ。
そして人は、道具ではカバーできない多くのことに、初めて気付くのだ。
よく写る道具との出会いが、その後のエンゾーを決めた。幸運な出会いだったと、今でも思う。だから、上のような質問をされたときは、「安くて、でも一眼レフ並によく写るコンパクトカメラ」を、とりあえずオススメすることにしている。(最低限、手ブレとフラッシュの事だけはアドバイスするけど)
あとは、その人次第でいいじゃん。
くたばれ、「自称ベテラン」!
(2004.1.24加筆)
人は読みたいようにしか読まない(T◇T)
このことは書くまいと思っていましたが、思うところあって、ちょっと書いてみようと思います。何のことかというと、僕が書いたこのコンテンツ『くたばれベテラン』に対する批判についてです。
上の文中で僕が「こんな人たちは迷惑だ」という例を幾つか挙げたところ、某所で「エンゾーこそ写真を分かってない素人だ」という議論が展開されました。いやまあ、未だに素人の余技の域を出ていないのは本当の事ですが(^_^;。
当該ページは管理者様の善意によりすでに削除されておりますが、そのときに受けた批判を読んで、僕はいろいろ考えてしまいました。
例えば僕が、初心者に三脚の重要性を説く人は野暮だという旨の発言をした部分を指して、「三脚の重要性を理解していないエンゾーこそお粗末だ」というような発言をした方がいました。うわー、揚げ足取られたなあというのが正直なところです(-"-;)。
その方は「初心者に」という部分をすっ飛ばして読まれているわけでして・・・うーん。
だんだん深く写真をやるようになれば、三脚の重要性は身を持って分かってきますし、華奢な三脚より重くて頑丈な三脚の方がブレに強くて良いという話は、入門書レベルの本には常識として必ず書いてあります。
ただし、そういう装備は必要な人が必要になってから買えばいいわけで、最初の一台としてどんなコンパクトカメラを買おうかと悩んでいる方に向って、いきなり三脚の話をするのはナンセンスです。良い意味での「欲」…たとえば「夜景をブレずに撮りたい」とか…そういう欲が出てきたときに、はじめて三脚を使うという必要性が出てくるのであって、そういう欲や動機がない人に、さも三脚がないと写真が撮れないかのように言うのは大きなお世話です。
またある方には、「エンゾーはアドバイス魔を批判しているが、エンゾーが初心者に、良く写るコンパクトカメラを勧めると言うのだって、独り善がりな考えだ」と皮肉を言われてしまいました。これも先ほどの話と同様「とりあえずオススメすることにしている」という部分をきちんと読んでくれていませんし、だいだい、他のコンテンツをよく読めば、コンパクトでもデジカメでも銀塩一眼レフでも、僕が「ご自分の目的に合わせて、お好きなものをどうぞ!」とお勧めしていることはすぐに分かって頂けたはずなんですが・・・。
そもそも、僕が「くたばれベテラン」で言いたかった事は、そういう技術論ではありません。
「初心者さんが写真の世界に片足を突っ込もうとしている時に、『なんだか写真ってマニアックでおっかない世界だ』と思わせてしまうような発言は、やめておいた方が良いのではないでしょうか」
「実生活では、いきなり初対面の人に向って、センセーみたいに偉そうな口の利き方はしないでしょうから、だったらネット上でもやめましょうよ」
その程度の事を、面白おかしく書いたつもりです。
ところが、世の中には「批判のための批判」をしたいがために、わざと(?)前後の脈絡を無視して、部分部分だけを取り上げて中傷の材料にする人がいるんですね。正直、ちょっぴりショックな出来事だったので、こんな無粋な加筆をすることにした訳です。
まるで、漫才師が「今のは笑うところだったんだよ」とネタばらしをしている気分です。『李下に冠を正さず』と言いますから、紛らわしい文章は書かないほうが身のためなのかもしれませんが・・・
え~、それで、ここを見に来てくださる「すでに写真趣味を楽しまれている皆様」に切なるお願いです。
当HPの掲示板では、これから写真を始めてみたいという方を、諸手を挙げて歓迎しております。こんなしょうもないHPがきっかけで写真仲間が増えるのであれば、エンゾーにとってこれ以上のヨロコビはありません。ですので、アドバイスは最小限にとどめ、かつ、出来る限り慎重に行って下さい。
かの孔子も、次のように申しております。
「人の病は、人の師となるを好むにあり」
くれぐれも、 「アドバイスという名を借りた自己主張」
に陥らないように、各自で気を遣って頂けると、すべての皆様にとって、とても楽しい掲示板の運営が出来ます。
どうかよろしくお願い申し上げます<(_ _;)>