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ruka126053のブログ
第14章虹の向こう側へ
愛の神が命じたことは何であれ、それを軽蔑することは安全ではない。
1
「無理をしないように」
今でも覚えている。大事な役目を持つ公爵家の跡継ぎの家に従僕見習いとして、うれしくて、子供じゃモテナイ洗濯物を持って。
まるで、天使のような少女がジ―クヴァルトの前に現れたのだ。
アリスとフリッグは思わずお互いの顔を見る。
「・・・・」
「・・・」
「別に仲いいわけではないです」
闇夜を支配する蒼き扮装の正義の義賊。イリュージョンが解け、あの日の男爵邸での出会いがジ―クヴァルト・ラストでュ―レ、白い仮面をつけた少年の脳裏にふと浮かぶ。
「警察も軍も欺いたはず・・・」
忍んでいたのか?
冷たい高貴な青い瞳の少女。
「―私、あなたみたいな人嫌いよ」
風で流れる結われた輝く金髪の結われた髪。胸には、淡いピンクの薔薇が刺さっていた。真っ白な、宝石が散らばったドレス。
「人の大切なものに勝手に入ってくる人は盗むような不埒ものは大嫌い」
その瞳はどこまでも、エクリプスを拒んでいた。
向けられた銃口は。
姉さんの呼んでいる新聞は英語のものからフランスのものまである。実はファンなんだろうか。
「ふうん、世紀末にコスプレの怪盗ね」
「あんな悪党、あなたが覚える必要ないわ」
リビングで大声で。
「嫌いなのに何でそう詳しく調べるの?」
確かにドイツのカイザーもパリでマジックの練習をしていて、マジックに夢中なのはわかるが。
「嫌いなものほど詳しく調べたいたちなの」
ふっふっと笑う。
「お嬢様」
蔭でメイドが泣いている。
「あ、こらヴォルフリート」
「これが予告状?闇夜に浮かぶ・・・シャト―?悪夢の女王、運命の柩?なんだこりゃ」
暗号ゲームか。
「姉さん、これ、写してもらっていい?」
「いいけど、何するのよ」
「これって、ようは目的の宝石と犯人の来る時間帯と場所を当てればいいゲームなんだろう?僕、これで解いてみたいんだ、楽しそうだ」
列車事故にギャング同士の争い、賭け事。楽しい家族旅行。医者のトーマスは今日の列車のチケットを取ったことを心から後悔した。
「俺が入った琴を言うな」
ナイフを向けられれば、答えるしかない。
「はい」
こくこくと答えると、窓からひらりと細身のトルコ人らしい少年は答える。
「どけどけ!!」
「離しなさいよ」
アリスを殺しに来て、対決を望んだ「騎士」のダンサーは冷静に答えていた。
「せっかく綺麗にした髪が台無しじゃない」
その数メートル先でギャングに降伏を見せるユリウスという名の新聞記者見習いの少年と先輩のエドガー。
銃をむけられている。
独断で泊められている隣の車両では、貴婦人たちを守るディートリヒと巻き込まれたアレクシスの姿があった。
「ギルバートは」
「きっと、大丈夫ですよ」
食堂を占領したリーダー格の男の前でブレーズ少年はイスに縛り付けられていた。反対方向にはマリーベル。
「無礼者、触らないで」
「こら、暴れるな」
相部屋でギルバートは男達に銃口をつけられていた。足元には、縛られたアリス。
遠くの方から喫茶店の店員のような格好の傷つけられた、ヴォルフリート。偶然、アリスの乗った列車に乗っただけだ。計画でもストーキングではない、偶然だ。むしろ、トラブルを引き寄せたのはアリスだ。
「ヘルムート、大人しくしろ、シスターエルフリーデ、大丈夫ですか?」
「ええ・・」
「くそっ、こんな縄・・・」
「・・・ヴォルフリート、お前、いつもこんな日常を?」
「クラウド様、それは違いますよ」
その時、突然窓から何かが飛び込んでくる。疾風のように、男達をいきなり蹴り飛ばし、殴りつける。
「カイザーと呼んでくれよ」
目隠しされた状態でカイザーが言う。部屋から、アリスを連れたギルバートが出てくる。銃声が鳴り響き、間接音が鳴り響く。
漆黒に近い紺の髪。整った美貌。細身の鍛えた体。
「あれ?」
「あんたが何で、ここにいる」
ギルバートが2人を見合わせる。睨み、すごむエレクが一歩、ヴォルフリートに近づく。
「ええと、どこか出会いましたっけ?」
「また、初対面の不利か」
カイザーは2人の顔を往復して、見合う。
「答えろ、・・今回の列車騒ぎ、あんたが起こしたことか・・・何が狙いだ」
乱暴にエレクがヴォルフリートの肩をつかむ。
わざわざ、皇帝陛下に勲章を頂くとは、実力はないが権力のアル大貴族に甘い言葉を吐くだけはある。アリスの弟は演技の才能と女性をかどわかすこと、気難しい相手を口説き落とすのに長けておられるようだ。
「出世したんだよな・・・ここ最近の好成績の影響で」
家と格式にこだわり、身分の低いものを受け入れないウィーン宮廷ではありえない。実力者の孫というのが生きているのだろう。
とんだ狐だったということか。大人しそうに、出世に興味ないと振舞いながら、影では太いパイプと手を結んでいたとは。控えめで、慎ましやかな笑顔で遠慮がちにそういった。
「まさか、おじいさまのお力の賜物ですよ」
柔らかい笑顔で包み込むように言った。その時、ヴォルフリートを慕う皇女マリー・ヴァレリーやフランツが現れた。
「ルドルフを出世の道具にして、だろ?」
暖かい手でヴォルフリートはヴァレリーを包み込み、笑みを浮かべる。ヴァレリーは嬉しそうな表情を浮かべた。
「クリスマスですね。もうすぐ」
窓辺に視線を映す。
「ヴォルフリート、お前は何を望む?地位や名誉か?」
雪が降りそうだ、ヴォルフリートはそう思った。真っ白い手。けれど、自分の知っているあの手は血で汚れている。漆黒の長い髪を血でぬらして。
「聞いているのか?」
「すみません、ですが、その質問はヨハン様には悪いのですが、次回ということにさせていただけませんか?」
「何」
「約束します、この胸にかけて」
胸に手を当てて、静に目を閉じて、涼やかな声でそういった。
2
煙をまくように、皮肉交じりに馬鹿にするようにアリスを笑う。
「はっ」
「何よ。馬鹿にする気・・・」
くすり、とどこか毒が混じったような笑みが浮かぶ。まだほんの16歳の少年だというのに容貌のせいか、酷く大人じみているように見える。
「別に、ただ弱者を救う志はそんなにむやみに言うものかなと思ってね。なま温い環境におかれた平和主義者らしい言葉だ」
切れ長の瞳はアリスを見据えているようで、アリスの心を大人しくさせない。妙な不安を感じさせる。
「女性をだますやり口でお金を巻き上げるあなたに、そんなことを言われる筋合いはないわ」
足元には組員が転がっていた。エレクの手には、ハンドガンが握られていた。エレクが全て打ち抜いたのだ。
敵を殺す時の表情はまさに冷酷で人をだますことをいとわない狐。軽やかに人を惑わす手口は狸だ。エレクは誰にも属さない。世話になっている裏の世界の重鎮にも、心を寄せる同僚にも、近づくものを全て切りつけ、陥れるならず者だ。先ほども仲間としていた男を自分の立場が危うくなった瞬間、銃で残酷に殺した。
切り裂き魔、歩く火薬庫といわれるだけはある。エモノを得たときの死の天使のような狂気じみた笑みは、強靭そのものだ。
「力は誰かを守る為に存在するものよ」
真っ直ぐで清らかで、熱い炎のような射抜くような目がエレクに向けられる。
「自分を守る力もない正義の味方気取り不在がこの俺に説き伏せる貴下、笑わせるな。俺に命令するな、俺に逆らうな、この偽善者やろうが!!」
威張りやなエレクの短所がでた。
「私の機転がなかったら、貴方は助からなかったわ」
凍りついた表情に赤みが差す。プライドが高い男なのだ。
「たまたまだろ、お前が余計なことをしなければ、俺は喉元をすぐに引き裂けた」
「へそ曲がりで意地悪・・・人の命を何だと思っているの」
「お前が言うことではない」
冷たく突き放された。
アリスが切り込みにいくと聞いた時、反対したのはカイザーとギルバートである。女性に優しいフェミニストを辞任する二人にしたら、恐ろしいギャングと戦うなど正気には思えないのだろう。
「姉さん、僕が行くから止めて!!」
必死にヴォルフリートが止めた。
「誰かが止めないといけないなら、私が行くわ。話し合えば、どんな人だってわかってくれるはずよ」
「相手はギャングだ、無謀なことして、姉さんが怪我したらどうするんだ!!僕もいく!」
「ヴォルフリートがいくなら、僕も」
「・・・・お前では、暴力を武器にする相手をとめることは難しい。俺がとめにいく、裏社会のルールを破った相手にはそれ相当の罰を与えなければ、相手は理解しない」
ふふんと、エレクが笑う。
「できるのか、練習試合だけで実戦は経験してないだろ?暁の目の後継者」
ギルバートが大げさにバックする。
「それって、暴力団の有名な!!」
「俺達は違う!!俺達は仲間を裏切らない!」
「でも、同じ種類の人間なんだろ・・・仲間じゃないのか?」
ギルバートは警戒している。
「ヘルムートの身元はカイザー・クラウド、この俺が証明する」
「カイザー?」
ギルバートが首を傾けた。・・・この場をヴォルフリートなら、どうするか、と思って、隣を見てみると、考える時の指をくわえる癖を出していた。
「・・・人質は全部の車両で、八両。その中には、上流階級が専用車両で15名ほど、一般車両が間を開けて、4,5両目に20人集中している。ギャングの2グループは全員でリーダー格、補佐役、護衛役、愛人で一車両に4名。後の2つグループは部下同士で剣やじゅうを携帯している。ヘルムートといったね、この占領事件のボスと面識は?」
「え・・・あ」
「答えて、すぐに、ある?ない?」
「俺は面識はないが、隣の車両がイタリア系の少数マフィアで、この車両が最近幅を利かせているロシア系でプロレスラーみたいな体格の男が多い。何回かの銃撃戦で、はさみうちを繰り返しているから、因縁のある相手じゃないかと」
「君は家では、どの辺りのポジションを?2つグループのボスに交渉できるほどの権限は?武器は?人材は?どれくらい、動かせる?」
「ヴォルフリート、まさか、こんな奴に力を貸してもらうつもりじゃないのか!?」
ギルバートは慌てて、ヴォルフリートの肩をつかむ。
「そうだよ、何かしらの交渉の結果、この列車が彼らの喧嘩の場所になったなら、外からの意見よりナカガワの人間のほうが耳を傾けるだろ」
「危険だ、何かの拍子で彼らが乗客に危害を加えるかもしれない!」
「・・姉さん、やっぱり、姉さんが顔を売れていても彼らがわからしたら姉さんはただの歌手だ。その上、姉さんの身元がばれたら乗客だけじゃない。姉さんのみ以上に、家や他の人間に危害を及ばせる可能性が高い。特権階級の貴族は格好のカードになりやすいんだ」
「誰かが止めないと!剣だって!!」
「場数が違う、姉さんがいくら剣がうまくても、相手がそれに応じるとは限らない。伏線を非違いている可能性もある」
「行ってみないとわからないじゃない!!」
「・・・だから、僕ひとりでいく」
「・・・え」
エレクが顔を上げた。
「君もヘルムートと同じ関係者だろう、君も来るな。変に目立つと、余計に事態が混乱する」
「命令か?」
「いいや、気遣いだ、ギルバート、君は彼らの部下を出来るだけ引き止めておいてくれ、ヘルムートと共に。カイザー、君は姉さんと乗客を頼む」
カイザーの胸が寒くなる。冷たいものに覆われていく。
「・・・・この前、君は言ったじゃないか、アレは、冗談だったのか?」
目を覆っていた布を外す。
「何が」
「自分を投げ出して、犠牲になるのは間違いだって、俺に自己満足だと教えてくれたのは、残された、助けられたものの野気持ちを考えないって、自分の命を軽んじる奴に誰かの命を守る資格はないって」
まっすぐにヴォルフリートを見る。
「・・・君は自分のことをあきらめてしまえるのか?」
「ちょっと、貴方、ヴォルフリートに何を」
アリスがカイザーを止めにかかる。
「カイザー、何を熱くなってるんだ、冷静なお前らしくない」
ヘルムートがカイザーの肩を持つ。
「いやだなぁ、僕は自分が大好きだよ」
にっこりと微笑んだ。
「姉さんと僕以外、世界が滅んでも構わないと思ってるくらい」
「え・・・」
「それに僕はね、こう見えてこだわりを持っているんだ、殺されるなら美人の女の人と決めてるんだ、男に殺される趣味はないね」
ケラケラと笑う。そして、軽やかにヘルムートの胸から銃を取り出した。
「それじゃあ、姉さん、ちょくら、おじさん達と少しだけ長いフリートークしてくるよ」
「おい、人の銃を勝手に」
「後で返すから大丈夫だよ。ちょっと、部屋の中汚すかもしれないけど、日地自治を解放してもらう為に全力で説得してくるよ。軍人は国民を守るのが仕事だからね。はい、無線機、説得が終わったら、合図を送るからヘルムート、警察呼んでくれよ」
なぜか、物騒に聞こえるのは気のせいだろうか。カイザーは何となくギルバートを見ると、目を伏せられた。
「でも、大丈夫なの、相手はマフィアなんでしょう?」
天使みたいな、清らかな笑顔を向けられ、アリスはどきっとした。
「姉さんも言ったじゃないか、人間同士は話し合えば、分かり合えるって」
「・・・俺がついていく」
「何、信用してないのか?」
「相手の体を心配しているだけだ」
「やだな、僕平和主義者だよ、そんな君が思うような危険なまねするわけがないじゃないか」
なぜか、からかう時のいたずら小僧モードのカイザーの姿と重なった。
「少しばかり、指の骨を折り曲げる程度だよ?仕官生は基本的に武器は所有できないし」
「・・・軍を辞めさせておけばよかった、あんなにカレンで優しい弟が。きっと周りの邪悪でよこしまな同級生が純粋なヴォルフリートに悪いことを吹き込んだんだわ」
「今の話を聞く限り、あんたの弟、カレンって言葉がにあわないんだけど」
その後、結果的にアリスとエレクがいく事になった。
3
馬車の中でアリスは、ヴォルフリートをみる。
「・…驚いた」
「え?」
今日のヴォルフリートは妙に大人っぽく、意地悪な、別人のようだったけど。
「貴方でも、女の子に怒るのね」
「…気に入らなかっただけさ」
ふんとふてくされる。
「アーデルハイト嬢は貴方が好きそうな優しい子だと」
「相性の問題だよ、アーディアディト姉さん」
アーディアディト?ヴォルフリートはそんな呼び方はしない。
「・・・・嫌いなの、初対面なんでしょう」
戸惑いながら、聞くと釣り上った瞳が揺れる。
「というよりもねたんでいるのかも、綺麗でいい子すぎるから」
「ヴォルフリート」
「なんだか、自分が情けなくてさ」
カイザーはギルバートと女性客や子供の客の相手をすることになった。
「いやだわ」
「あの肌の色・・・」
「何でジプシーが、私たちの車両に」
貴婦人たちはギルバートの肌の色を見ると、口を尖らせた。
「子供じゃない」
「車掌は何をしているの?早く軍でも警察でも連絡してくれればいいのに」
ひそひそ、といやだわとか、まあとか不安そうに話している。
・・・今は個人的事情に構っている時じゃないか。目を閉じて、息を吸う。
「大丈夫だよ、そんなに身構えなくて」
「え?」
「事情は知らないけど、ヴォルフリートって軍人なんだろ?だったら」
少しばかり怒っていた。
・・・俺、まだ信頼を得ていないのかな。
「カイザーさん?」
エルフリーデが首を傾ける。
「・・・あいつ、本当に大丈夫かな、俺言った方がいいかな」
「優しいんですね、カイザーさん・・いや、カイザーは」
穏やかな笑みが向けられる。
「え、いや」
「それより、アリスのほうが心配だよ、女性だし、何かあったら」
「うん、心配だ」
「・・・よし、感度良好だ」
「・・お前」
ヴォルフリートは盗聴器で、アリスとエレクの同行をおっていた。
「これで2人の会話が聞き取れる」
場所は調理室。持っているのはナイフとフォーク。なぜか小姓や調味料もポケットに入れている。
「ヘルムート、はい」
軽く、花火を渡された。
「ナイフも」
「お、おおっ」
4,5車両はギャングたちの下品な笑い声が聞こえる。
「それじゃあ、軽く運動しに行きますか」
つかつかと歩いていく。
「おい、本当にいく気か?」
ゆっくりとのんびりした笑顔が向けられる。
「怖いのかい?」
「誰が・・・」
「大丈夫、ちょっとした格闘のイベントと思えばいい」
「イベントって、相手は銃や剣を持ってるんだぞ」
ジャッ、と指の間からナイフとフォークを取り出す。ヘルムートは肩を揺らした。
「大丈夫、何があっても僕が君を殺させないから」
瞳の色が変わった。獲物を捕らえた獣の瞳に変わる。
「軽やかに踊れ・・・!」
それはまるで、優雅なダンスのようにも見えた。
軽やかな動き、計算された動作、相手の打つタイミングを正確に捉え、打つ前に数本のナイフを相手の手や胸に差し込んでいく。動くスピードに少しも迷いもよどみもない。
「何だ、あの動き、特殊部隊か何かか!?」
「ガキのうごきじゃねえ!!」
「ナイフがなくなったか」と転がりながら、テーブルのカーテンを手に取り、カーテンで銃弾から自らの体を守る、すぐ側に控えていた男が襲い掛かると蹴り上げ、銃を奪い、手や足を打ち込み、上から来る剣を足元に転がっていたほうきの柄で対処し、放棄をそのまま相手の腹に打ち抜いた。
「ガキが調子に乗るな!!」
前の籍にいた男達が銃を持って、襲い掛かる。
「危ない!」
「わーっ、5人か、面倒だな」
よっと大きくてーぶるの細い面を掴み、サッカーボールのように反転させ、一気に二つごと、男達にテーブルをけりで放った・・・!!残っていた数人を持っていた銃で抵抗も許さずに打ち抜いていった・・・!!
「ヘルムート、トイレ近くの男を頼む!!」
「・・ああっ!」
「どけええええええええええええええええええええ!!」
ものすごいスピードで男がヘルムートに襲い掛かるが、敵ではない。ヘルムートは重臣で男の頭上を思いっきり叩いた。
ズダァァァン・・・!!
「まじ・・かよ」
ズサァァァ。
男が崩れ落ちていく。
「ひっ、ひ・・・っ、何者だ、お前」
一人残っていた、顔面を強打された男は信じられない目で2人を見ていた。
「脅迫材料にはなるか」
「ひっ」
銃口を男の首元に当てる。
「じゃ、行こうか、ワンパターンな人たちみたいだしね」
スタスタと歩き出す。
「待てよ、おい!」
4
父親に連れられて、宮殿に挨拶に上がったとき、庭先で煌びやかなルドルフ達の姿が目に入った。この前のドイツ帝国との話し合いも思ったけど、やっぱりあっちがルドルフ殿下、王族や貴族の世界だよな。
「どうかしたのかね?」
「いえ・・」
おかしいよな、自分が皇帝の子供とお友達なんて。・・・あの時、もう少し常識知ってれば、どこかの農場か商店でした働きで働いて、姉さんと連絡取れる環境にいたかもしれないのに。自分の性格の軽さが憎い。
「エリアス様、あの子は。前に歩いているのは尉官の、ヴァルフベルグラオ中尉ですよね」
随分といも臭い、何なのだ、あのそばかす貌は。
「レオンハルト公のご長男で、皇太子殿下の友人であられるヴォルフリート殿です」
聞き間違いだと思ったが、エリアスの顔を見ると、嘘ではないようだ。もう一度、目の前のヴォルフリートを見る。
「・・・・ご友人?」
あの家は政治かもいるから、つまり。
「つまり、政治がらみや家の関係ですが」
だとしたら、認めないが。
「いいえ、純粋な意味でのご友人であられます」
「でも、レオンハルト様にはディートリヒというご子息が跡継ぎでは?」
「あの家は特殊ですから」
「友人・・・」
ちりり、と妙な感じがちらついた。その時、他の貴族の少年と話していたルドルフがヴォルフリートの存在に気付いた。
「すまない、失礼する」
「殿下?」
ハインリヒは慌てた。アレキサンダーもルドルフの後についていく。
「ヴォルフリート、着たのか」
表情はさっきまでと同じクールビューティーだ。だが、声が違う。子供らしい声色に変化した。
「は、はい?る・・」
ヴォルフリートもこちらを見る。
「ヴォルフリート?」
30度頭を下げて、背筋を伸ばした。
「ご挨拶が送れて、申し訳ありません。ええと、殿下に置かれては、お日柄もよく」
「無理に敬語を使うな。中途半端な敬語はみっともないものだ」
「いや、しかし」
「・・・・」
ルドルフがヴォルフリートの頭をはたいた。少年達がありえない光景にざわついた。皇族が下のものと親しい態度であんなことをするなどありえないからだ。
「あいたっ!!」
「!!??」
「あのなぁ、この数ヶ月で貴様は皇族と僕とつながりがあると認められているんだ。いまさら、僕と君に丁寧語なんて意味がないんだ。君の少ない脳みそでもわかると思うけど」
「ちょ、ちょっ、ひとみてる、頭をぐりぐりしないで下さい、痛い、痛い」
ルドルフの表情は楽しそうに見えるのは気のせいか。
「馬鹿だな、君は」
「痛いっての!!いーっだ!!」
「ふん」
「・・・・・あ」
空気が冷え切った。
父に理由を聞くと、頭を撫でられ、優しく笑われた。
「父親は娘が可愛くて仕方のない生き物なんだよ」
「・・・」
まただ、また、何か、ごまかされたような気がする。のどの中がザラリトする。
「・・・飲み物、持ってきます、お父様」
「ああ、イっておいで」
僕も父親というものを触れたこともない。けれど、いい父親だと思う。僕らを外に置いたのもきっと家の事情で。
空気は冷え切っていた。背中に伝わるベッドの感触も硬く、湿っていた。
ルドルフの異能者の力は、自分のものとまるで異質なものだ。ブラックホールのような、全てを飲み込む為の。すべてのものをひれ伏す為の王の力だ。系統としては、エモノとなった人間を切り裂くアンネローゼのものと似ているだろう。
何が起きたのか、わからなかった。
指一つ動かさず、ただルドルフは階段のしたの異能者同士の殺し合いを見ていた。冷たい氷のような目で。支配者には冷酷さも必要だろう。
「おおお・・・」
崇拝者の男の目が合った。さっきまで敵だった男の目がルドルフと言う少年の崇拝者の目に。異能者はこの世にいてはいけない悪魔の祝福を受けたものなのに。
背筋が凍りついた。
・・・・美しい。
破壊的に美しいと思った。人間とは違う、支配者の美しさだった。天使というよりは悪魔的な美しさだった。
・・・勝てるのか、自分は。殺し合いに、この競争に。
柱の影でヘンリーは体の震えを抑えていた。相手は自分よりも年下の子供だというのに。
「わかりました、坊ちゃま、すぐに飲み物をお持ちします」
「ああ、頼むよ」
メイドに内容を伝えると、機械的に対応される。視線は相変わらず厳しいが少なくともこの家の子息や令嬢としては扱うことにしたようだ。最も、自分についてはまだ疑いがあるようだ。
「坊ちゃま」
振り返ると、ナースメイドの三人組が悪戯を思いついた猫のような表情で立っていた。
「お忙しいと思うのですが、数分だけ、私どもと会話してくれませんか?」
「―-」
狭い部屋の中でヴォルフリートは意識を取り戻した。
「それでは、坊ちゃま、私どもはこれで仕事に戻りますので」
「失礼します」
リボンは首からゆっくり垂れ下がっていた。柔らかい素材の白いシャツは貴族の子息らしくひらひらしていて、茶色のズボンは濡れていた。日に焼けた肩にはアイロンでつけたような小船方の焼いたあとがあった。擦り傷や切り傷もあった。押さえている腹は叩き疲れた後があった。
お湯をかけられた頭はぐっしょりしていた。
「・・・・」
「・・・・」
ヴォルフリートは嵐が過ぎたことに気付かず、数分間自身を失っていた。
扉が閉じた時、カチッと音が頭の中で鳴り響いた。
「え?あれ?」
周囲を見渡すと、来た事のない衣類をしまう小部屋の中のようだ。アイロンや洗濯物を干す為の紐が地面に散らばっていた。
「・・・・ええと、何だ、ここ」
頭が少し痛む。格好を見ると、苛められた後のようだ。
だが、誰に?
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
あれ?
「覚えてないや」
ぞぉぉとなった。
「ヤダ、気持ち悪い・・・部屋にかえろ」
身体を起こし、肩を抑えながら、ヴォルフリートはその場を立ち去った。
ルドルフはヨハネス公にお願いをした。
「・・・・・どうか、アーディアディトやヴォルフリートに危険なことは」
杖を持った老人は威厳と気品のアル笑顔をイスに座りながら、ルドルフに向ける。
「なるべくは私も苦労してきた孫に銃は持たせたくはないですが、一族のものはペンより剣を、力を重要視するものが多いですから。当主とはいえ、私には一族のもの全てを押さえつける力はないのですよ」
「・・・・」
信じていいのだろうか。
ルドルフは複雑な表情になった。
「彼らも我が一族の血を持つものですから、いずれ己が何をすべきか、理解すると思いますが」
「・・・そうですか」
廊下で皇帝である父とエリザベートに出会った。
「ルドルフ、元気そうね」
「陛下、この件は」
「ウム、任す。ルドルフ、失礼するぞ」
「じゃあね、ルドルフ」
「はい・・・」
ローゼンバルツァーの存在は父の中でどうなっているんだろうか。だが、確認することはなぜか戸惑いがあった。
「・・・・」
5
イタリア系マフィアのボス、ゾルジーねと愛人ミッツィは奇妙な客が着たもんだと思った。おてんばな貴族の令嬢が状況も考えずに、得意の剣術で悪をくじきに来た。それはわかる。だが、隣の、男とも女性とも思える、美しい少年は自分たちと同じ匂いがする。少しも隙がない。
油断ならない相手だ。
「2人でこんな所でデートか?だとしたら、時と場所ってモノも学ばないとな」
「ゾルジーね・マイナー、貴方に人質を解放し、今の争いを止めてもらいに着ました。私と話をしてくださいますか?」
真っ直ぐな目でアリスが2人を見る。
「・・見返りは?」
「何ですか?」
アリスがピクリと眉を動かす。
「男と二人で単身来る勇気は買うが、無謀と勇気を混同していないか?なあ、お嬢さん」
隣の車両では、サーベルを片手にディートリヒが手誰の男達を相手に健闘をしていた。銃は扱えても、アレクシスは戦闘が専門職ではない。ディートリヒは後ろのアレクシスを見る。暴力を自分の力だと思う相手に2人は検討をしていた。
「大人相手に、2人で検討する姿は涙ぐましいが、ボスには要求が応じるまで一人ずつ、処刑しろと命じられていてね」
「悪く思うなよ」
刀が一気にディートリヒの喉元へと当てられる。
「くっ!」
「貴族様、何とかしてください!!」
「娘を、娘を助けてくれ!」
「ひっ」
「うるせえ、黙らないとお前から連れて行くぞ」
「・・・・乗客に銃を向けるな、私を相手にしている間は危害を加えない約束だぞ!」
大丈夫、自分は戦える・・・・!!
弱者を守る、じぶんの信念を曲げない・・・!!
こんな暴力で相手を支配する相手には・・・・!!
ディートリヒの瞳が鋭く尖る。
「勝利はおれたちのものだ」
「!!」
銃口がディートリヒの頭につきつけられる。
「止めろ、ディートリヒに手を出すな!」
「お前もだよ」
チャッ。
背後を2人の男が銃を向ける。
「子供の遊びの時間は終わりだ」
ブリジットが買い物の最中に見かけたダークブラウンの髪の少年は間違いなく、ヴォルフリートだった。
ヴォルフリートはスラヴ人とクロアチア人、るてにア人の少年少女とオセロで遊んでいた。メイドや使用人は不安そうに、アリスも戸惑ったようにヴォルフリートを見ていた。
「もう、買い物寸断だから、帰ろうよ」
「もうちょっと」
母国語のドイツ語の発音は前よりも綺麗となり、自分のものとなり、方言は少なくなっている。クロアチア人の少女は、セルビア語に似た言葉を喋っている。
その首元にはカトリック系の十字架が下がっている。奇妙なのは周りのクロアチア人やセルビア人の大人たちである。
クロアチア人と話すのはいい。だが、純粋なオーストリア人であるブリジットは部下を連れながら、不安を感じた。オーストリア・ハンガリーに銃帝国の国民なら、セルビア人と積極的に近づかないはずである。
ハンガリー人の商人や職人は無視を見るような目で、ヴォルフリートを見ていた。
「君、止めなさい」
結城アル中年のハンガリー人の富裕層の男がヴォルフリートの肩をつかんだ。
「はい?」
のんびりとした表情だった。恐らくは庶民育ちでのんびりとした環境の静だろう。人種にこだわらず、また、浅はかな考えを持つ彼には、目の前の大人の複雑な感情はわからない。
スラヴ人の大人が、恐らくは子供同士の遊びに大人がつっこむなと注意を促すようにハンガリー人の男の前に出る。
「・・・お前は関係ない。大人が子供同士のじゃれあいに口を出す気か」
「何だ、貴様、私に逆らう気か」
「その杖をこの少年から離せ。お前にこの少年を罰する権利はない」
ヴォルフリートは立ち上がり、大人たちが喧嘩しそうな気配に気付き、とめようとした。
「あの、喧嘩は止めて下さい」
スラヴ人の男はヴォルフリートをかばうように、ハンガリー人の前に出る。
「暴力に訴える気か」
ブリジットが前を出るよりサキに、アリスが前に出る。
「喧嘩は駄目!!」
「理科室の幽霊?」
「何だ、それ」
委員会の集まりで、カイザーは同じ風紀委員の仲間に、近頃学園内で騒がれている幽霊の目撃談を聞くこととなった。
「知っているか、クラウス」
「俺?いや、知らないよ」
ペンを持ちながら、カイザーは眉を顰める。
「下らんな、どうせ、誰かの悪戯か、今月テストを多くした教師への遠まわしなクレームだろう」
「きっついな、カイザーは」
書類の束を一枚一枚数える。
「カイザー、お前、あのクラウド将官の息子だろ、何とかしてくれよ」
「フェンシングの腕もプなみだし」
とんとん、と整える。
「俺がおだてに乗ると思ったら大間違いだ」
「そんな、つれない」
「本当は怖いんじゃないの?」
ぴくり、と眉を動かす。周りの男子がびくりと肩を震えさす。
「・・・僕は海軍証左の祖父を持ち、ピアニストの伯母を持ち、国民栄誉賞を貰った叔父を持つ、クラウド家の嫡男だ。非科学的なあいまいな幽霊謎に俺がおびえる?」
ふん、と鼻を鳴らす。
「ありえない」
「・・・・といいながら、結局は着てやるんだから、面倒見がいいよな」
「仕方ないだろう、風紀を乱す愉快犯がいる時いては」
ランプを持ちながら、カイザーはため息をついた。カイザーとクラウスは今、二階の渡り廊下付近に差し掛かっている。
「愉快犯といえばさ、ヘルムート、また教頭に呼び出されたらしいぜ」
「今度は何を壊したんだ」
「いや、壊したんじゃなくて、校長のズらをみんなの前で取ろうとしたとか」
「強制だろ」
「え、知ってるのか?」
「予想はつく、あの男の行動はわかりやすいからな」
仲がいいのか、実は。いや、悪くはないのかもな。
「あいつが入った理由って、親父の女に手を出そうとしたって本当かな?」
「・・・父親」
カイザーが父、と聞いて曇った表情をした。
「参観日、これないのか?」
「・・・・どうでもいいさ、別に。俺とあの人はお互い構わないのが暗黙のルールだから」
その横顔は冷えていた。
「あー、噂といえばさ、紅のナイチンゲールって、ウィーンの裏通りに出没する謎の美少女の噂、知ってるか?」
「は?なんだ、それは?」
6
・・・相手が必ずしも同じ思考に至らない場合も、相手を選ぶこともこの少女は何故考えないのだろう。劇場ではほとんど会話をせず、エレク自身も外見は好ましいと思いながらも、同じゲームの参加者としか、この少女を見る気はなかった。嘘を付き合う狸同士の会話なら、あざけりなら慣れている。だが、歓声で動くタイプだけは対処が苦手だ。関わらないといった方がいい。
「原因は、何ですか?」
愛人がくすりと笑う。はず頭メラレた、と頬を赤らめる。
当たり前だろう、どこの世界に親切に初対面の相手、それも子供相手に自分の情報を与える奴がいる。世間知らずにも程がある。
「貴方って、本当に家に守られたお姫様ね」
くすくすと女が笑う。
「・・・原因もなく、普通の人が使う列車を穴亜タチの争いの場所に使うわけがない」
「ほう・・・」
男がしげしげとアリスを見る。
「お嬢ちゃん、あんたいい子だな」
「・・・・」
黙るということはさすがに自分を相手にどういう言葉を使うのか理解しているのだろう。悪くない。
銃をアリスに向ける。
「だが、俺が尾嬢ちゃんのお綺麗な頭に風穴を開けるとわかって帝もいえるのかな」
危機が、アリスを襲う。冷たい目でエレクはアリスを見る。
「・・・神に祈りを」
「アーメン・・・・」
女性や子供達は、シスターエルフリーデに誘われるがままに神に祈りを捧げる。神聖で遂行。黒髪の艶やかな、美しい少女。信仰心に厚いのはシスターらしいが状況がわかっているのか。
男の顔面を、マントを羽織ったノア少佐が蹴り飛ばす。
「貴方は・・・・!!」
「誰だ?」
「亜、何打この小さい男は・・・」
ノアは答えない。鋭い眼光を男達に放っている。後ろにはシェノルの姿があった。同時刻、ヘルムートの前で電撃でも狂ったようにヴォルフリートはいきなり、倒れていた。上品な細身の男。
その手には、大金に化ける為替。
「・・・・可愛いね、君は。さすがは、私の僕だ」
白い指先がヴォルフリートの頬を伝う。
「アウグスティーン様、あいつには」
「ああ、彼はよくウィーンを盛り上げてくれた。褒美をやらなくては」
小さな袋を手下らしい男に渡す。
「殺す、おまえをころして・・やる」
「痺れはまだ数時間は聞くから大人しくしていなさい。君の体質にこの薬はきついだろう」
「ヴォルフリートから離れろ!!」
奪った銃をアウグスティーンに向ける。
「ほう・・・?」
「何者だ、お前は・・・」
「ただの司祭だよ」
その時、どこから迷い込んだのかアンジェルと黒い眼帯をつけた青灰色の髪の少年が現れる。
少年はヴォルフリートだけを見ていた。
・・・アンジェルと誰だ?
「・・・・ひっ、おじさん達、何をしているんですか、これは一体」
「君は、どこから入ったのかな」
冷たい琥珀色の瞳は震えていた。
「・・・・その人に何を」
「いや、これも殿下の伏兵かな。私に対する―」
部下らしき男が耳打ちをする。
アウグスティーンの手が伸びる。その時、リーダーのいる部屋から銃声が鳴り響いた。
「銃声!?」
さすがのアウグスティーンも驚く。
「アウグスティーン様」
「行こう・・・私の可愛い僕、また会おう、今度は迎えに行くよ」
首の後ろを触られた。
「~~っ」
恐怖が伝う。去って言った後、倒されたギャングがヘルムート達に爆弾を突きつける。
「舐めたまねしやがって、ガキが、思い知れ・・・・!!」
ヘルムートが走る。
「爆弾!?」
少年が悲鳴を上げる。
「ヴォルフリート、少年!!」
ガタタンッ。
「・・・何!?」
ギャングの一人が部屋に入ってくる。
「大変だ、リーダーのスワノフがいきなり拳銃で自殺した!?」
「馬鹿な、さっきまでサンドイッチを食べて、ビールを飲んでいたんだぞ!!」
「ありえない、もうすぐ積荷が俺たちに手に入るんだぞ」
「黒いダイヤが俺たちを幸せにするんじゃないのか!?」
今のうちに、マリーベルが素早く縄を解いて、ブレーズと共に走り出す。
7
葬式の音が鳴り響く。バルツァー家の当主が病死したのだ。葬式には、数少ない親戚や友人たちの姿がある。
「アロイス君だね・・・」
「あなたは・・・・」
イスに座っていたアロイスを黒い服装の男が近づいてくる。
少年の手を引いたまま、ヘルムートにひきずられて、ヴォルフリートは、逃げ惑う乗客とカイザーに遭遇する。
「ヴォルフリート、その体は、何かされたのか!?」
「いえ、ご主人様は少し、特殊な武器で電気ショックを浴びられて」
「ええっ、大丈夫かよ?体は大丈夫なのか?」
その時、頭上がいきなり光を放った。
「!?」
カイザーの目が見開く。
ガシャァァァ・・・ン!!いきなり、それは起きた。今日一日の記憶がアリスの中でいきなり、割れたのだ。
雷が売ったように、男がいきなり天井に弾けとんだ瞬間、その現象は起きた。
「何これ!?」
女が悲鳴を上げる。
金縛りに会ったように動けないアリスを変に思いながらもその体を抱えて、突然の事態についていけない人間たちを倒していく。
そして、一人を蹴り上げ、地面に叩き落した。
「・・・・ひっ」
「さぁ、さっさと奪い取った為替を全て渡せ」
「何で、俺が」
「早くしろ、嬲り殺されたいか」
「・・・・わかったよ」
呆然と座り込むアリス。
・・・そうか、私は・・・記憶がかけているんだわ。
アリスは自覚した。
「大丈夫か」
「・・・エレク」
エレクにてを差し伸べられて、アリスは手を掴む。
廊下に出たとき、天井が崩れて、数人が倒れていた。アリスの目に衝撃が走る。落ちてきた天井にヴォルフリートが下敷きになって、額から血を流していた。それも、生き残りのギャングに数人、銃を向けられて。
身体中から地がなくなっていくのがわかる。エレ区も驚いたようにその光景を見る。服が引き裂かれ、男達が床にヴォルフリートを押し付けて、銃を向ける。
「・・・・ヤメロ!」
「行くな、カイザー!!」
「でも!」
「死ね!!」
銃が放たれる。
ズダァァァ・・ン。
喉の奥が引きついたのをエレクはたしかに感じた。その時、煙と水道が壊れたのか、あちこちから水が噴出し、乗客は水浸しになった。
次の瞬間、驚いたように、エレクは自分の起こした結果を見ていた。力をなくして、アリスに支えられ、起きたヴォルフリートが呆然とギャングたちが倒れているのをみている。
・・・・何を、ここまでしているんだ、何をしているんだ、俺は。
男のためにここまでするか。
さっきまでアリスが窮地にさらされても、ここまでしようと思わなかった。ここまでするつもりはない。自分に必要性はなかった。
「はぁ・・・っ」
執事らしい男が少年を迎えに来た。
「シャルル!」
「・・・お前、よく水浸しになるな。ホラ、服だ、着替えて来い」
「でも今ので車両は全部」
「・・貨物庫を貸切にしろ、ホラ、鍵だ」
ノアにディートリヒは鍵を渡される。
「はい・・・」
ふらり、と出て行くエレクを不思議に思いながら、カイザーはアリス達に駆け寄る。ギルバートも頭を押さえながら出てきた。
「良かった、皆、無事だったんだね」
貨物子の間。
「・・・何を動揺している」
エレ区は手で貨物庫の扉を持ちながら、うなだれる。
別にアレくらい、よくある光景じゃないか。
「・・・ん?」
貴族の・・・同い年くらいか?
貴族の子息が貨物庫に?
格好は軍人ではないが。
「・・・・」
調べてみるか?
エレクは美形の少年のあとをついていった。
違う車両の間。
「・・・・あ」
「すみません、こんな所まで」
ぺこりと頭を下げる。
「いや、それで用事というのは」
声が変わる。
杖を真っ直ぐに立たせて、背筋をきちんとする。
視線が、クールな大人びいたものになる。何だ、この威圧感。
「・・・兄上、何故家に戻られないのです?いつまで、皇帝の跡継ぎのお遊ぶに付き合うのです?」
「・・・は?何を・・・」
ぐっ、と胸ぐらをつかまれる。
「バドォール家を僕一人に任せるとはどういうつもりです」
バドォール・・・・それはまさか。
「・・・もしかして、ミセス・エリザベートの」
「唯一のお孫様です」
手紙を執事が手渡す。
「自分の弟の名前も忘れたのか?僕だ、ジークヴァルト・バドぉールだ」
「ちなみに洗礼はどこで?なじみのシスターや司祭は・・・」
「シスタージルだが、それが?」
「あーっ、なるほど・・・」
・・・・シスターたち、また記憶をいじったな。人の人生、何だと思っているんだ。
「ユリウス、どういうことだ、何故悪魔の侯爵の孫が兄上になっている?」
影からユリウスが現れる。
「・・・それが私にも。あのお方のやることは常識に欠けていて」
またですか。
「ごめん、僕、帰るよ」
くるりと振り返る。これ以上、僕の人生に余計な経歴つけないで欲しい。過労死させる気か。手袋をした手が掴む。
「何?」
「お待ちを、どこに帰る気です。兄上が帰るのは、我がバドぉール家です」
面倒なルートに入った。
ガタン。
「・・・誰だ!?」
振り返ると、誰もいない。猫が入ってきただけだ。
すぐに着替えれば済むことだ。ほう、と息をつく。
兄上やあね上は大丈夫だろうか?
「母上・・・」
服の名からロケットを取り出す。その時、庫ネズミがちょろと足元に現れる。
・・・・怯むな、自分は名門のローゼンバルツァーの名をもつもの。これくらいの罠を突破できなくてどうする。双、軍人になるんだから。
「大人しくしろよ・・・」
ネズミを追い払おうと、木の枝を使う。
ガタンッ。
ごめん、何度もディートリヒは謝った。何度も。
親友もエルネストもダミアンも。
今知っている人を自分は傷つけている。
「おい、ヘルムート、本当にあいつ、こっちに言ったのか」
「ああ・・」
アリスに誤解だと言わないと、アルバートとのことは誤解だと。今回のことでごまかせないと思った。いつまでも偽りは。
昨夜のダミアンの強引なキスを思い出す。
「病院に連れて行かないと」
少年二人が横を通り過ぎていく。がちゃん。
「・・・あ」
「お前のせいだぞ、カイザー」
「・・・・いや、これは、いくぞ、ヘルムート」
しまった。鍵をきちんとかけていなかったのか。
「・・・・」
「だから、人違いですって」
「待ってください、ヴォルフリート様、坊ちゃんは貴方が帰ってくるのをずっと待って」
兄上!?
やばい、こんな所を見つかったら。
「・・・移動だ」
とりあえず、移動だ。
「おかしいな、確か、この辺でいなくなった気がするが」
エレクはマフラーを調えながら、辺りを見渡した。視界の隅で不自然に開いた扉。にもつの出し入れか?
だけど、使っていない貨物庫のようだが。
エレクが扉の前まで向うと、金髪の天使。いや、ディートリヒがいた。
「・・・・貴様!何者だ!」
銃を構える。さっきのガキか。
「・・・・・お前」
少年・・・いや。
ディートリヒははっとなる。エレ区が乗り上げて、腕をつかむ。
無理やり、衝動的だった。ずっと自分のものにしたかった、好きだったと。あんな目のエルネストは初めてだった。
「無礼な、離せ・・・!!」
薄暗い狭い空間。
「お前・・・・」
何故、こうも醜い感情が甘い感情がヴォルフリートにだけ生み出されるのか。きっと自分は選ばれない。幻の中でアリスか、見たことのない彼女と兄はほほ笑んで、手を取り合っていってしまう。
「・・・」
視線をそらした。
伸ばされた優しい手は指は自分のものではない。そのことは痛いほどわかっているが醜い感情を抑えられない。ずるい、ずるい。
見たくもない気づきたくもない感情のうねりがディートリヒを襲う。
・・・ずるい?
その時初めて、その感情の変化に気づいた。
「・・・・女か」
皇太子の後に続きながら、ヴォルフリートははっとなる。
窓の外では相変わらず青空で平和に小鳥が笑っている。ここにいるのが、こうして過ごすのが当たり前になっている。目の前の新しい友達、貴族の世界で生きるのが。
脳裏に炎に包まれる孤児院の仲間のことを思い出す。疑惑と友情、信頼とどうしようもない感情。エリク達はもうこうして笑うことさえできない。
食べることも泣くことも。
警察も軍も皇帝陛下も、あれは不幸な事故だという。どこにでもよくある。
エリク達は殺されたのに。
それなのに自分やアリスは綺麗な服を着て、彼らの死をどこにでもあるものにした彼らとともに笑い合っている。目の前にそうした人間に囲まれた王族がいる。
そのきれいな顔の下では、自分の正義の名のもとに。
本当に偶然が重なっただけなのか―。
姉さんはエリク達の死を事故だと―。
「どうかしたか?」
彼はやさしい、頼りない肩だ。こんな小さい子が友達が自分の国民にそんなひどい真似をするわけない。仕方ない、偶然だ。皇帝陛下はきっと彼らの死を無駄にしない、数字にしない。
何よりこんなに自分に優しくしてくれる彼らにこんな汚い疑惑は失礼ではないか。姉さんだったら信じる、信じたから皇太子殿下まで友達になれたのではないか。
「いや、ルドルフ様は、綺麗だなと」
「はぁ?お前、何言って」
乾いた笑みになってないだろうか。
ぎゅっと耳をふさいだ。
・・・・そう、死は唐突なものだ。
何か罪悪感や自分にふさわしくない感情が浮かびそうになり、語りかけてきそうだったがヴォルフリートは聞いてないふりをした。
仕方ない、仕方ないんだ。追っても仕方ないよ。
「本当に君はわからないやつだ」
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