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ruka126053のブログ
第15章
1
その日の星空を忘れることはないだろう。きっと未来永劫。降ってきそうな星空だった。満天の星とはこういう空のことを言うのだろう。
「大丈夫、なんとかなる」
彼はよくそういった。現実が見えていないのではない、見ているが故の言動ということが今のヴァイツェンにはわかる。赤の女王の愛人、エース、貴族の息子でブレイクエッグ。さまざまな顔があるが、どれも一つにならない。
「未来のことなんて誰もわからないじゃないか」
星を眺めながらそう言ったヴォルフリートの横顔を忘れたことはない。
「だからこそ今この時を楽しもう」
マイペースで能天気、けれど彼と離れることなど考えもしなかった。彼は作戦を考える天才だ。これまで、ほかのローズと手を組み、多くの戦闘員を生き残らせてきた。
「お前はいつも能天気だな」
いつも笑顔で、何を考えているのかわからなくて。天翼属から嫌われていて。悪魔属や鬼属から人気が高く。失っていく、自分の心が。喜ぶ心も悲しむ心もないのだ。ただヴォルフリートとありたいという思いのみがある。
「だって悩んでも仕方ないじゃないか」
あははと笑う。
「そうだな」
「確かにそうだな」
その時、確かに自分も笑っていたのだ。隊長を失うまでは。
「これが最後であることを願います」
アンネリーゼは痛々しそうに送られてきた天魔おちの少女たちをみながら悲しげに言う。戦場に出されるのだ、彼らの意思に関係なく。
「私たちは帝国のために死ぬことを誓います」
「皆の笑顔のために」
全員、十代の少女だ。家族の愛も恋も知らず、戦場に送られるのだ。ヴィッターとていつ戦場に送られるかわかったものではない。
「人間は愚かね」
レッド・ワイズは言う。
「何を経験しても変わろうとしない」と悪魔属の長が言う。
「暴力で支配しようとするパンドラも変わらないだろ」
ハルトヴィヒやヴォルフリートは言う。
柩の上にアリスはいた。
「どうしてそんなところにいるの」
アルベルトは尋ねる。
「ここが私の居場所だから」
そこで意識を現実に戻す。
―おかしな空想に溶け込んではいけないよ。
「・・・・貴方は」
黒い猫の仮面の少年がいた。幻だ。
「さぁ、アリス、迷宮を出る時間だ」
理想を重ねてはいけない。
誰に対しても、シエラは少なくともそう思う。失った時の重みを耐えきれなくなる。「僕が知るわけないでしょう」
本を本棚に入れながら、シエラに言う。冷たい、威圧的な自分、少なくとも他人にそう認識されている。
「・・・・貴方が近いじゃない」
「なら、聞く相手間違えてますよ」
そう言って、意識は本棚に向かう。
「メルヴェ・・・・」
愛らしく、こちらが見ほれる可愛い笑顔で、ヴォルフリート、サファイヤエルを見る。
「どうして」
リリは、あまりの変化に、戸惑いつつ、手を伸ばす。
「オスカー様と親しいの?」
わくわくした目だが、残念だ。
「あのお方は赤毛が珍しいだけよ」
だが、名門貴族がこんな田舎の服やに何の用だろう。ここには女性用や舞台用の衣装や材料しか置いていない。散歩が好きで、慈善活動も好き、まあ風変わりだが暇を持て余した方だと思うが。
アテナの剣の化け物たちに聞く怖い女は三人、レッド・レジ―ナ、フィズ、レッド・ワイズ――鬼属の双子の姉妹。
「ねえ、みけさん、吸血鬼とお二って兄弟?」
魔女部隊のエース、ウロボロスのスパイ、エスメルダの統領、16歳ほどの少女に手を引かれながら、純粋な魔物であり悪魔属トライバルの鬼属について、そばかすの少年は聞いた。
「さぁ、アルバートの母君は彼らを大事にしているけど」
「赤鬼と青鬼が、レーヴェと戦争したんでしょ」
「お伽噺よ」
だが彼らの、鬼の女の愛し方は破壊することだ。はるか昔は人と対立して。
「鬼は人を食べるんでしょ」
「人食い鬼は人間が生み出した空想よ」
悪魔も鬼も残酷な生き物、吸血鬼も。
「・・・・まさか、パンドラが笑って許すとでも?」
精霊術士の女性が、ヴィクトリアにいう。
「な、何よ、どういうことよ、あいつらが悪いことしたんだし、少しお仕置きしただけじゃない」
「彼らは確かに悪ですが、だが同時に軽々しく否定していいものではありません、罪を犯していないものを裁くことは許してはいけません」
「パンドラだし」
「まさかブレイヴを彼らが憎まないと本気で信じているんですか、なぜです」
「え、何でって」
それから100数年後、わが先祖は失敗作を生み出した。だが不安は的中。世界に幻想生物、モンスターが生まれ、人を襲い、同時に彼らを私的に手に入れる異端者が絶えない。女性たちは、パンドラのわが子を何とか救おうと、あらゆる手を使う。
「ハンター様、どうかお願いです」
「この子に神のお導きを」
今と逆であり、悪に近づき、彼らを神の子として救おうとした。魔物商、冒険者、悪の貴族、そうして彼らは生き延び、今日までその血脈を続けている。
「存在しただけで殺すだと」
「これは神のお導きだ」
だが、意味もない正義が今日も世界に広がる。
あれはどんどん成長していく。怪物は、箱庭の中で育つが、神話や物語のように人を襲うこともない。
「私は兵器を作れと言ったはずだ」
「あれでは見かけと能力だけだ、怪物の形をした人間を君は育てているにすぎない」
「しかし」
怪物は自分を待っているのだろう。悪意や自己満足のためだけに生まれたとは知らず。
役割が必要だ。だから、それに庭園の世話を任せた。
美しい庭園だった、今は17歳、人間の少女、移民の少女を与え、冷酷性を引きだそうとした。
頬を染めて、自分を恥じて、あまつさえ昨日、その少女と両想いになったと報告してきた。
「兵器以外の道を造るな、あれがあれの血を持つものが増えたらどうする」
そこでの生活は短かったが、僕の存在を否定するだけで特にその家族は殺す気はなかった。ただ鞭で打たれ、なぶっていたぶって、そこで初めて団体生活を送ったが、距離を覚えれれば、彼らの家族の姿をみるのは許された。
「神様・・・」
そこで何だが僕は極悪非道の種族なので僕個人が嫌われていたではないらしいが。
「魔獣?」
僕は魔法使いで、それで皆怖くて、檻の中に入れられてらしい。
「ああ、お前の未来の姿さ」
「・・・マジ」
絵本の中では犬のような生き物に翼が生え、蛇を生やし、尻尾が三つあり、炎を吹いている。なるほど、ライオンやトラと同じなわけね。
「あれれ、でも僕、半分は人間だけど」
「いいかい、リーゼロッテ、屋敷の地下に言ってはいけないよ、そこにはゴーストがいるから」
魔術講師が、リーゼロッテにいう。
「バドォール伯爵はみたことがあるんですか」
隣にはアルベルトの兄、父がいる。母は英雄だ、名誉ある魔術師だ。故に多くの客がいる。
「まあ、その家には秘密の場所が必ずあるが」
「・・・・ヴァイツェン、おいていきなよ」
「そうだよ」
少年はオ―ガ属の仲間をみる。何度目かの裏切り、敵に寝返るものが多い。確かに帝国にいるより生存率が高いが。
「お前らはなんで平気なんだよ」
「いくらでも変わりはいるじゃないか」
ー5年前のことだ。その日は雲一つのない晴天で。彼女は優等生で、誰にも優しく、その日までアヴリルやフレッドの自慢の姉、その次の日もエリックの村に来る予定だった。
「セレスト、ミリアム、じゃあ行くわね」
「はい、また会えますよね」
アンジェリカは婚約者と可愛い後輩に笑顔を向ける。
「やめてよ、これが今生の別れじゃないんだから」
ぷっ、と噴き出す。
「あ・・・」
「もう」
「・・・・それは呪いね、皆の役に立ちたい、皆が幸福な世界なんて」
「ブレア・・・・・」
「・・・・クイーン」
「つまらない」
ルドガーが倒れている。
「お前・・・・」
なぜ、あんなに喧嘩が嫌いだったのか、修行も何もかも。弱いのをドンくさいのをいいわけして。
「なじんだ葉なじみましたが、親しくはありませんね」
「いつも行動を同じにしているだろう、甘酸っぱい恋くらいあるだろう」
「先生、生徒の個人的なことより先生はどうなんです、魔術師なら早く優秀な」
「うう、努力している」
もうすぐ26歳。いや先生は美人だ。ランクも高い。性格は明るく行動は、勇ましく生徒思い。鳶色の長い、腰までの長い髪に水色の瞳、スタイルもよく、大人の魅力がある、古い血筋の名門。
「惚れているのだろう、シエラに」
頬を染め、恥ずかしそうに見る様は可愛いが、いやこの年で年齢かどうかはともかく、何、あの冷血女を優しい美少女にしたいの。惚れた相手にはでれでれ。確かに生涯一人が夢だが、それは短絡的なような。
「そうですね、正直ふとした瞬間見ると気はあります」
「おおっ」
だが恋愛はすべてを変えるという信仰はどうだろう。
「まあ、俺は一人でいることに強い喜びがあるので未だ、シエラは超最下位ですが」
「いいんだぞ、好きだからそばにいたい、それは自然な感情だぞ」
「いえ、どちらかというと、シエラの弟子でいれば将来、路頭に迷っても超便利そうですし、そういう意味ではそうですね」
「そうじゃないだろ、君はまだ学生だから言えるんだ」
「孤独な老人で過ごす気か、辛いぞ、さびしいぞ」
「逆を言えばフリーライフですね」
「彼女には支える人、近しい人が必要なんだよ、甘やかすだけでなく、時にしかりつけるような」
「まあそうですが、でもお互いに依存し過ぎるというかお互いしか見ないというのも辛いですよ」
「彼女いないのにか」
「うちの親がそうなので」
「・・・・すまん、君にはつらい思い出を思い出せたか」
「諦めることで、まあ、あんな生き物いるかなくらいには笑顔で見てますが」
「それは疲れた大人の考えだ、君は何で死んだ眼するんだ、違うだろ、青春する時期だろ」
魔術の研究も部活動も青春だし、一人でクラスで本読むのむ青春だと思うけど。何、恋愛しないと青春じゃないの?
彼と彼女の在り方、俺の在り方はカイザーには似ているのだろう。優しいまなざし、ゴットヴァルトはたくさんの愛に包まれている。でも、その前は?
ローゼンバルツァーにいる間、同じだったんだろうか。あいつと同じ顔で同い年で。これで無関係じゃない、カイザーかアルバートか。
その前は、彼らの過去はわかりやすい。
・・・・ヴォルフリート、なぜかクラウドで育てられた英雄。
誰に聞いても、いいことだけだ。シエラの幼馴染、ブレアの友人。
多分何もなければクラウドの後継ぎで、でも何かダメなところがあって。受け入れる強さがある。
でも気に入らない、自分と違うからだろうか。
「・・・・大丈夫」
魔獣化が進むエリスをダレンが優しく手を包み込む。ソールでの戦いは苛烈さを増し、ことごとく周囲を蹂躙する。
「もう、終わったから」
「けっ」
15歳、アルフレートは背が伸びて、そろそろ、親友が魔術師の仲間入りを果たす。
「イグナス、お前が相手か」
うちみたいな嫌われ者を相手にする。
「今日は君が試合の相手か」
魔法を銃を剣を。
「久しぶりだな、ウルリヒ、クララ」
「は、はい」
「アルフレート様もお変わりなく」
ウルリヒはアルフレートが苦手だ。魔獣狩り。13歳の時、一緒にしたが、ウルリヒは逃げたのだ。
「ああ、お前もな」
だがどうふるまえばいい。家族は軍人の在り方を教えた、友人は勇気をくれた。
11. 軌跡は夢の痕を残し、
「ルードヴィッヒはすごいね、エリザベートも守って」
「ウルリヒは優しいからな」
「う、そんなことは、ただ、ヨハン様やエルヴィーラ様は緊張するよ」
「マギア・ウォーにですか、お父様」
「ああ、お前もそろそろ、ブラン・レクスに自分の力見せたいだろう」
「私はエルフです、いいんでしょうか」
「問題はない、存分に振るうがいい」
「・・・・はい、お父様」
イグナスは特に普段本を読むほうではない。外を歩いて、スポーツをして、友だちと出かけて遊ぶ。故にだが、図書館でこうしているのは、お人よしな性格と臆病な性格が災いした、とはいえ、人に嫌われることはないのでそこそこやれていた。
とはいえ、このところ、気分が沈んでいる。趣味のダンスも自転車もサーフィンも気乗りしない。
「いたっ」
「怒りん坊、頑固、威張り屋」
「甘えん坊、怖がり、さみしがり屋」
珍しくカイザーとハインツが喧嘩している。
「へそ曲がり、意地悪、生意気」
「ずるがしこい、うぬぼれ屋、そそっかしい」
アルバートとヴィルフリートが喧嘩している。
日蔭の中、エンヴリマが練習で負けたのがよほど悔しいのだろう、涙を浮かべていた。
「大丈夫」
ルヴィーサはだが追い払われる。諦めてしまえばいい、エストのような、アデルのような天才と対等なんて、誰もできないのだから。
「同情するな」
「結構、ヘレナ、お前性格悪いな」
「まあ、慎重派だと言ってほしいですわ」
家の中の嵐に身を置くよりはましだ。正直、何をそんなに熱くなるのか。オルグもヘレネも、ヴィクトリアも。狩るものがその対象と仲良くするなど悪いことだけではない。人前では見せないがディートリンデも似たようなものだろう。屈辱に耐えられない?家族愛?人としての正義?
生ぬるい。腹黒い、それの何が悪い。正直、弱くするカイザーなんてずっと邪魔だった。天魔落ちなんて、君が悪い。
「アルトゥル、あの飛行船は・・・」
「帝国の――」
その日、里は破壊、帝国内の首都にエルフは移り住むことになった。
「ほう・・・」
「あれが・・・」
人間とエルフは対等ではない。力なきものは支配される。
「今のお前は過去をかさな過ぎている」
テオドールは首を傾けている。
「でも、皆を助けるためにブレイクエッグを投入すれば」
「フレッド、お前は命に区別付ける気か」
フォースナイツはフレッドの微妙な、揺れた表情に気付かない。
「奇跡はそうそう起きないものさ、だから作るんだよ」
歌劇団の観客席で女性はいう。
「嘘をつくの、でもそれは悪いこと?」
「世の中は正しく、怖いことばかりさ、一つも自分の思い通りにならない、だから思うの、この世は私のための舞台だということを、体も心だって夢のためには駒だよ」
「大事なものは全部は手に入らない」
「何で僕に教えてくれるの?」
「最大の観客は死ぬときに分かるものさ、ビックベビー、あんたを馬鹿にして否定する奴なんて、一度も生きたことのないくずだ、誰かに依存しなきゃ自分がわからない馬鹿だ」
「お姉さんって、変わった人だね」
「ありがとう、最高のほめ言葉だよ」
悲鳴をあげそうになる。正直、うんざりだ。その夢はリアルで、妙に忌々しい。
「おい、外に出ろ、いいかげん」
24歳、イケメン男子、僕の親戚だという長身の男がいきなり頭を小突いた。
「実験の途中なのに」
「今日は錬金術か、お前は毎日毎日、なんか騒ぎ起こさないと気が済まないのか」
毎日ではない、大体礼儀作法だの心枝の乗馬だの、神の教えだの、僕に押し付けるほうが間違いだが、オルフェウスは基本僕の話を無視するので黙ることにする。
「なんか、御用ですか?それとも居場所がないんですか?」
「本邸に行く日だろ、用意しろ、送ってやる」
「駄目だよ、オルフェウス」
錬金術師は言う。
「それは誰もが望むものだけど、グランは、そんな願いはかなえない」
「死んだ人間が幸せになっては」
「君は、もう19歳だ、そろそろいろいろわかるころだ、アデルは自分の願いのため、君のために頑張ったんだ」
「嘘つき・・・・」
戦場から、ヴィッターが所属していたヴァイオレット・ローズの仲間が雨の中去っていく。
「どうして、その目・・・」
パンドラは、双子として生まれることが多い。だが、男女の双子、片方が普通の、魔術師の人間だった場合、悲劇が起きる。運悪くヴィッターは故郷で妹ともに生まれ、そして村一つを地上から消した。
妹だった黒髪の少女は、真実を知らず、裏切り者の行方不明の兄をパンドラ狩りとして見つけた。ヴィッターはアテナの剣に送られる時、初めてペルソナで妹から自分を消した。
「お前もマリーもずっと一緒だ」
本当に誰かが必要だったのは、カイザーのほうだ。悲しんでいる。嘆いている。あまりにも大きい喪失は。
「俺の手を取れ」
復讐を。革命を。
「俺がお前を救済する」
父の知り合いというブレイヴはちょうど、近辺を騒がすという鎖の魔女の手下の捜索にあたっていた。女神教会に納められた秘密の財宝、バリンの教典。本物かは知らないが、ディアナはそれが父や力がある人間しか触れられないことは自覚していた。それよりも、近頃ウォーロックの発生率が高く、周辺のものも領民も不安がっている。兄達は武器を持つべきだという。
「お前はもっと女友達と触れさせるべきだな、すっかり考えまで男みたいになって、せっかく美人なのに」
「もうすぐ子供扱いして」
「そんなの一生かかっても、アルバート、俺には無理だ」
「時臣、そんなことないだろう」
「俺は君と違う」
「まったく、あの冒険好きと後先考えない性格、それでいて誰もかれも優しい、誰に似たんだか」
その兆候は当初からあった。バーバラスもベルンホルト、アマ―リエ両者に似ていないし、一族に金の髪がいたという事実はない。
箱庭の子息。迷宮知らずの王子様。
そう言われるのはカイザーのせいではない。
目の前の敵を制圧せよ。誰かがミスって、ここの場所がばれた。自分たちで応対、戦闘をせよ。ペルソナを発動。敵をかく乱、騙し、勝利を手に。
真の暗闇は心を闇に落とす。
ーどうせ、すぐ死ぬ命だった。
彼らにはここで朽ちる化け物も孤児も同じ、犯人もどうでもいい。アリスは使えない駒だ。これが物語なら笑えるだろう。
「さむい・・・」
「冷たい人ね」
セラヴィーナは蔑むようにエリザベートを見た後、元の陣形に戻る。
「いいのか」
「悪くいわれるのは馴れているもの」
エステルは実はお調子者であり、楽観主義者だ。任務に忠実なセラフィーナ、正義に忠実なリリ、自分の信念や正義に忠実なアルトゥル。
ナルシストでもあり、おせっかい。
「お父さん・・・・お父さん・・・・」
どうして、どうしてこんなひどいことができるの・・・。柩に抱きつきながら、マリエルは、父が残した剣を見つめる。死んだマリエルの弟にあげるはずだった。
「ローゼンバルツァー・・・・」
そいつらが、知っている、ブルー・レジ―ナの家の名だ。友達だって言った。
「ヴォルフリート・フォン・ローゼンバルツァー」
目の前をにらむ。こんな卑怯な真似を、なんてひどい・・・・。
闇夜に浮かぶ長方形の扉には炎が噴き出していた。
「これは一体・・・」
いひひひひ、とふと木の上を見ると、ミイラ少年がいた。
「行くのかい、アリス」
「まあ貴方、私を知っているの?」
「すこしからかっただけよ」
「もうアンネミ―ケ」
「ルベンティ―ナは心配性ね」
「あなたはかわいい子にちょっかい出すのが好きだから」
「あら、鍵も余計な虫もないかわいらしいヒナが自分から落ちてきたんだもの、つい差し伸べたくなるでしょう」
「イリス様はそんなんじゃないわよ」
サイドテールにふと眉、赤い瞳、二丁銃。頬にはルナ―教のエンブレム。ためらいもなく、ヴァガットがいる本拠地に飛び込んできた。
アーロンは頭の後ろを欠く。まさか、帝都のアーク隊の主要戦力と出会うことになるとは。
「運がいいのか」
悪いのか。
・・・・ここが二ケの肖像。
凛とした少女だ。半透明な布が敷かれ、その奥の宗主の姿はカイザーにも見えていないようだ。
多くのパンドラを守るよう、白の騎士団団長は宗主に頼みこむ。
嘘は、殺人は罪だ。神なんて信じたことはない。
「・・・・ヴォルフリートが?」
「ああ、厳戒されている」
レッドローズ種族のヴィルフリートが、暗号で教えてきた。ヴィルフリートは、銀の頂の塔と親交があり、多くの騎士団を動かし、帝国軍をまとまれば、自分達の現状は変わらずとも、ましになるかとジ―クベルトと画策している。
自分は兵士ではない、だがすぐになじんだ、助けが来るというエレオノ―ルは。
だがこれまで仲いい大人たちはこのところ距離を置く。今までが特別だった。
・・・・聖なる乙女の十槍の捜索はいつなのか。
空を見上げる。だが多くの罪が流れている。昨日。嫌いな奴、いじわるした奴、化け物の奴が死んだ。でも葬式はあげない。
自分は助けるべきだった、無関係でも人は助けあうもの。
「お礼は言わないわ」
「わかってるよ」
カイザーが、ローザリンデに回復魔法をする。
≪グリーン・ウィンクルム≫
「みっともない姿ね」
「お前は」
赤い髪の美少女、フィズがリンゴを女神教会の上で食べながらいたずらめいた笑みを時臣に浮かべる。
「俺をとらえる気か」
「行け」
「フィーアぁぁぁ」
崖からいきなり、海の神殿に向かって叩き落とされる。
「このひとでなしいいい」
「ここでお前達は機密である、外に出てもあらゆる意味でお前らは己の存在を消し、ここで知ったこと、ここで得たものを秘密にせよ」
軍人はまるで大人に言うようだが、ついてくるのはモンスターといえど5歳かそこらだ。ガラス越しの白い部屋には、化け物の赤ん坊が白衣の男たちに囲まれていた。
だが、その幼児たちはすべて理解していた。生存競争、ここで馬鹿でいること、怠惰でいることは自分が死ぬことを選ぶことだ。大人のパンドラ、同じ姿なら親の化け物もいるが、多くが同じように扱われる。
「お前達は自分達がなぜ軍人と教育されるか疑問だろう、なぜお前らはいるだけで化け物といわれるか」
神は男と女、その次に子供がいるという。
「だが答えを与えない、お前ら自身で答えを見つけるのだ」
少年はナンバーで呼ばれていたが、帝国内に住んでいるという。だがこうして、彼が別にブラウン・ローズの人気者でもなく、劣等生であり、皆からやっとお荷物扱いでなくなったという。
「そういえば、演習があるんだって、イツェン」
どう見ても見えないが、貴族とつながりがあり、皆は彼に戸惑っていた。とは家だ、いい加減、女の子であることを気付いてほしいが。運動音痴ではないが、剣も銃も基準値にやっとで。
「お前はそれよりだまされてないでいい加減疑え」
「いいじゃん、君が助けにきてくれるし便利だし」
「えっ、あ、それはお前が愚図だからで」
ヴォルフリートはきょとんとしている。
「まあ、僕人付き合い下手だし、君は意外と小回り利くからね」
不思議そうに自分を見ている。
「まあな、お前口下手だし、うん、世話かかるし」
「うん、今日もお互い利用し合おう」
そこは友情じゃないのか。
「ご飯粒ついてる」
「やめろ、人間臭いだろうが」
「いいじゃん、君男だし、問題ないでしょ」
暴走したアリス、リヒェルトの話では彼女は。アロイスの腕で正気を取り戻し。
「・・・・あ」
アリスは自分の姿を見て、手を差し出した。
「傍に・・・」
泣いていた。多くのものも友もいるのに、自分なんかを。
「僕は」
貴方の弟じゃない、血のつながりなんか。それどころか人間でもない。
「ヴォルフリート・・・」
彼女は見た、家族が殺されるのを。焦げる匂い。
「ここにいるよ」
背中に通される細い腕。
「僕は貴方の弟だもの」
「そもそも、貴方は逃げているだけじゃない、そんなのは甘えよ」
「変われ、友達作れかよ」
そんなのは散々言われてきた。まるで一人なことと俺の性格が最低なことが同じもののように言う。シエラの攻撃魔法が杖剣が向けられる。場所はダンジョン。冒険者用の場所である。
「そんなに一人がいいなら山奥でも最果てでもいけばいいわ、貴方は顔と性格がだめだけど悪かしこいはずよ、本当は分かっているでしょう」
迫るモンスター。あちこちでパーティーが奇襲をしている。
「ずいぶん親切だな、素直に俺が好きといえば」
うへえという顔をする。
「救いようがないわね」
どうにもシエラというわがまま女は革命をしたいらしい。だが本当に俺を救いたいのか、こういうときだけは感覚が鋭い。
「お前さ、本当は自分が一番かわいいと思ってないだろ」
諦めればいいのだ、人間どうあっても他人になれないのだから。
「勘くぐる男は低俗よ、覚えておきなさい」
まあ、そうだな、自分のこともできない奴が人様のことに突っ込むべきではない。
「いったでしょう、クロ―ディア、私は恩は返すタイプだって」
アリ―シャ・フォン・アールズとフランシス。
「今日は災厄ですね」
エドワードが肩をたたくが、付き合う人間、出会う人間に運がない。リリーリャはにやりと笑う。
「あれ、君何しているの」
訓練の最中なのだろう、銃を手にオッドアイの少年が木陰で花を眺めていたヴァイツェンに珍しい生き物でも見るかのように見てきた。茶色の髪が風で揺れていた。
「関係ないだろ、俺に近づくとお前も死ぬぞ、キエロ」
「ああ、例の死の女神の加護、でもすぐに死ぬわけじゃないでしょ、君がピンチにならなきゃ」
「はぁ?」
次の瞬間、ヴァイツェンはぎょっとした。少年は12歳ほどの少年が自分に近寄ってきたからだ。
「おい聞いてたのか、俺はお前をかごで眠らせて殺せるんだぞ」
「へえ、キツネ耳に羽根、髪がピンク、ねえ、何の種族?ペルソナのレベルは、後方?前衛?痛覚も触覚もあるの」
自分を見回し、三角形の耳や羽根を触り、興味深そうに見てくる。
「やめロッ」
つい突き飛ばした。
地面に思い切り頭をぶつけた。
「乱暴だな、もう」
「あ・・・」
起き上がると、少年は歩み寄って、笑顔を浮かべた。
「練習相手になってよ」
誰をも傷つけず、譲り合うこと、イリスと言葉を交わしながら、臆病で優しい少年はどちらかといえば、教会の司祭の方がよほどに会うだろう。マルスの目の戦闘員は次の瞬間、膝をついていた。
「降伏してください」
「貴様・・・・っ」
セバスチャンが驚いたようにウルリヒの驚異的な炎の魔法に目を奪われている。
ウルリヒ、炎属性、≪平和≫≪自由≫≪仮面≫をもち、炎の小精霊を使った剣士であり、クララは炎属性、≪強化≫≪命≫≪虚無≫、兄と同じく炎の小精霊を抱く魔術師だ。
「あっあぁ・・・・っ」
ア二が11歳の時、自分は幼児だった。第一区にかまえる、蝋燭の先を思わせる城がルヴァロアの屋敷だった。
エンヴリマはもうヴィントを虐めることすらしない。
「たつんだ、ヴィント」
泣きじゃくる、兄。本家筋はヴィンセント、エンヴリマの天下だった。
「はい、お父様」
自分に優しい兄。だが兄は、家族のだれにもまだ必要とされない。
「あれでは当主の座は危ういな」
雪が降っていた。
今から思えば、両親は分かっていたはずだ。あの頃は周囲に同情され、馬鹿にされていることも本当は分かっていたくせに、お育ちの良い幼い自分は自分がいたらないからとせめて、才能がないくせに、誰にも期待されてもないのに、両親には愛されている、認められているという妄想をしていた。
「・・・あ、母さん・・・」
正直、距離を取られていた。兄弟とは仲良かったが、母はいつも父の隣にいて。
「この金で帝国の外に行きなさい、お前は白の女王の元で流民の子として生きるのです」
山道で、ここまで追いかけてくれたのか・・自分達子供に距離があると思った。そうか、一応は愛されていたのかとヴィントは降りる道の中、ほおを緩めた。父達の前では分家の妻、魔術師としての仮面をはずすことができない。今後母と息子として関わることも出来ないから。物分かりのいいお坊ちゃんで父親の方になついていた息子だったヴィントは、はいと言おうとした。考えれば天魔落ち達よりはまだ恵まれている、どう生きるのかお坊ちゃんな自分にはわからないが追いかけてくれる母がいた。それだけでも許せる気がした。
そこで彼女もなにを言わず、立ち去る。そうすれば、こればかりは仕方ない。この先もこの女の息子ということは一生覆せないのだから。子供じみているが、彼らを存在ごと消したいなんて思わず、消したい過去ではなくきれいなままで終わったのに。
事情があった、厳しい掟がとかそう納得もできた、でも彼女は最後の息子のそんな感情すら、自分のために踏みつけやがった。
「あり・・・」
一撃だった。
「お前を生んだことはわたくしの一生のミスです、よくもわたくしに恥をかかせて、いまわしい子、わたくしがあの人に嫌われたらすべてお前のせいですよ」
正直、正気かと思った。蔑んだ表情、うんざりして。息子なんて思ってない、気味の悪い虫でも見たような表情。
「っ」
耳を疑った。目の前の女性を、女神といわれるほどの美貌を持つ黒髪の女性を見る。
「あ、あの、かあさ・・」
「呼ばないで頂戴、その汚い声で、ああ、けがらわしい、全くいとしい夫が望まなければ誰が子供なんて醜いもの生むものですか」
僅かに近づいた指が手が女性に拒まれる。数分前まで母と信じていた女の乱暴な手によって。
「お前みたいな畜生は永遠に誰にも愛されず、嫌われて生きるがいいわ、じゃあ、ヴィント二度とそのみっともない顔を見せないで、今後あってもその顔をわたくしに見せないで頂戴ね」
パリン、と割れた気がした。女性は供のものを連れ去っていく。金だけが足元に残って。
「あ・・あぁ・・・」
思い出が信頼が愛が綺麗なものが壊れていく。金をかき集め、ヴィントは走り出した。
「ああああああああああーっ」
あまり知られていないがアルヴィンは団体戦が苦手である。集中する系も苦手だ。そして、銀の十字架の候補生の幼年学校では問題児で、だが成績はそれなりなので末席だが銀の頂の塔に一時的に修行することになった。
「あんた、素行は治らなかったんだ」
「努力したんだ」
乱暴者で短気、腕っ節はあり銃も撃てるし、マナもある。ただ残念なのは運がないこと、交友関係ができないことだ。いい奴なのだ、子供にやさしいし、料理もうまい。背も顔も悪くない。不幸体質か、貧乏神か死神か、もう少しうまくやればいいがすぐかっとなり、損をする。そして、人たらしだ、誰も教えないけど。
今頑張らないと、ローゼンバルツァーは姉さんを・・・・。
遠くでは北の大女帝の大群が迫る。ブラウン・ローズは王宮騎士の命令で今、主力戦力として立ち向かう。
ヴォルフリート・バルト、13歳。現在はヴォルフリート・フォン・ローゼンバルツァー。
ドンという音がした。
「裏切り者だそうだ」
「馬鹿だ」
鎖の魔女・・・・、これが・・・。
エミリアとアルバートは大きく目を見開く。
「行くわ」
「セシル・・・」
「・・・大丈夫、すぐに王宮騎士が来る」
「セアドア」
近づく悪魔属の反逆者集団。街中ではエレクは、異国の少年ザファルートやほかの浮浪児と逃げていた。
「あり得ないな、ルードヴィッヒ、アルヴィン、だれもが同じ幸せだの」
イフリート隊との協力戦闘訓練の途中、時臣と金髪のロングの彼女を2人は見逃した。
「何だよ、誰かの幸福を願うのが間違いだというのかよ」
「甘いな、君はやっぱり戦士向きじゃない、早くやめてどこかにいけばいい」
天才を前にしたら、憧れるか落とそうとするか、嫉妬するかだろう。だが、アーロンはヴィンセントという少年と戦うことになった。どちらともその時19歳、騎士団に所属しながら、貴族の騎士。帝国と個人。オーウェン、ルヴァロア、フェリクス、レーヴェ。この貴族達はいい噂が聞く。グラヴィーダス家は似たようなものだが、こちらはローゼンバルツァーとけんかしており、優等生と言ったところだ。
罰の魔女を金髪のカイザーが討ちとる。多くの手下が自発的に死ぬ。
「呪いが解けていく・・・」
青の騎士は大きく目を見開く。
その子は、個室に移され、看護婦の世話となり、大人がいなくなった時、事件が起きた。自分が持ってきた玩具を怪物が、落とし、そして、地面に落ちた。
「あっ」
助ける前もなく、その怪物は地面に頭をぶつけ、額から血が流れる。醜い声がこぼれた。オルフェウスはその場に座る。
「・・・俺のせいじゃない」
だが赤ん坊にそんなの分かるはずもない。恐怖と罪の意識だ。アデルときて、この前こいつの指が自分の手に触れた。化け物のくせに温かい。怪物は手足をばたばたさせていた。だがひっくり返り、自分を見る。魔物はオルフェウスに歩み寄る。オルフェウスを認識したのではない。ただ目をキラキラさせていた。小さい手でオルフェウスの服をつかむ。
「あ、触るな」
「ぎー」
牙をつきたて、頭をすりよせてきた。噛んで、頬を寄せる。甘えているようにも見えた。かなりほら―な光景だ。
満足なのかにいいいとしてきた。いやだから怖い。
「お前馬鹿だな」
怪我してるのに。
銃声、殺す。追いかけてくる女神教会の刺客。
「お前はいつも女に恨まれているな」
「根も葉もないことを言うな」
魔術師に権力をもたらすな、それで分断させたものの、火種は散っている。スパロウ卿が何か見つけた。弱い者、負けた者の集まり。
「・・・・・子供か」
ああ、無残な。
この世は弱い者には常に手厳しい。
「何、赤の王もお認めになるさ」
そもそも仲良しごっこは今の少女が始めたことだ、彼らには不老不死、この世の王者の自覚がある。鬼族やフェニックス、ドラゴン、人狼を支配する真の支配者。人間とは自分達のための食料にすぎない。脆弱で低能な命が短い、彼らの歴史も我々が操っていた、つまりはおまけにすぎない。
それなのにほんの9百年前、王族たちは当時の人間の王たちと密約を交わし、自由に人間の血が吸えなくなった。悪魔達、魔王の血族、神に落とされた天使の子孫。神の真の子である我らは呪いを受けた。死にはしないが、一般的な吸血鬼の病黄昏のベーゼに。まるでコウモリがごとく、数年眠りにつく。けがれた地上に生きるための罰か、赤の女王の子孫は、暴君がごとく亡ぼす狂気に取りつかれる。だからこそ、分家筋の吸血鬼の王家が支えていた。
「―ねえ、女王陛下」
「なあに?」
先代はもう、自分のことをぼ得ていない。心まで9歳の少女に戻ってしまった。
「貴方は幸せだった?」
正しい血統、純血の真の吸血鬼の王。侯爵家が分家が決めた相手。長すぎる治世。死という終わりのない緩慢な生。中には人間の親がいた女王もいたという。
「・・・わからないわ、難しいことは」
親子とはいえない、誰かの娘の振りして、その裏で多くの民を導き。彼女の周りは他人だらけだ。
「でもね、ヘルマンと明日花園に行くの、ねえねえ、彼は喜んでくれるかな」
「ええ、陛下」
彼女の血を受けた元人間の侍従だ。扉が開き、先代はヘルマンの腰に抱きつく。
「陛下、ではカミ―ラ様と」
「行っていいわ」
彼女はヘルマンの背中に手に腕をまわし、頬を赤くしている。恋というものを彼女は王都していない、ずっとずっと。人間達の奉仕品としての人形、女王の人生の象徴。罪を犯した先代は太陽で殺されることとなる、だが幸福ではあるのだろう、愛する男に抱かれたまま死ねるのだから。庭で青年の姿のヘルマンと幼い姿の少女は幸福のそのものだ。花の指輪をつけ、カミ―ラはヘルマンに甘える。自分達の長い関わりなど彼女には無意味だった。
・・・お母様。
「・・・いいのか、悪魔崇拝者の類にされるぞ」
「君もあの権威主義の金色の天秤と同じ考えか」
オルグはぐっと抑えた。
「イグナス・・・」
「撃つのかね、あと数日で死ぬ小さな子供を」
「・・・・貴方自身が殺されても同じことを」
パメラが前に出る。
「ならば、天罰だろう、そこまでの命だったというだけだ」
なぜ、ネクラなぼっちで大抵のクラスメイトは無視するか、距離を置くか、虐めるかなのにスフィアやお嬢様はこうもかまってくるのか。
「彼女達にも困ったものだね」
くすり、とフレッドが笑う。ちなみにカイザーは一般科で戦闘技化、旧校舎の食堂は使わず、たぶんクラスの友達と楽しく談笑しているのだろう。
「風紀委員、何で前に当然のように座ってんです」
「名前でいいのに」
「貴方は僕の家族でも幼馴染でもないので」
普通にフォークやナイフを使っていると、フレッドが見てきた。
「君は綺麗に食べるんだね」
「普通でしょう」
「それはシスターか、修道院の誰かに教わったのかな、・・・あ、ぶしつけだったか、悪いな」
何か、級友の幼馴染のようななれなれしさだ。
「君は国境の湖近くの修道院で育ったんだったね、いつ帝都に?かなり身分の高い御母上に引き離されて、厳しく育ったんだろう」
わぁ、超大作。
「え、まぁ・・・、厳しいと言えばまぁ」
「どんな暮らしなのかな、親しい人はまだ地元に?」
なぜ僕が子爵と侯爵の創作に巻き込まれているか知らないが、いや実子だと思われているからだが。
「別に、神に祈りささげて、畑で野菜作って、近所に手伝いに行く生活だけど」
「そうか・・・大変なんだな」
「ああ、フレッド様、貴族ですしね」
「あまり身分にこだわるのは好きではないんだ、そのせいで昔大変なことあったから、君にはもう少し、近づいてほしいな、クラスメイトだろ」
「・・・・まあ、風紀委員に興味がないので」
「駄目かな・・・君は天魔落ちやパンドラに詳しいし、広い知識もあるし、ほんの少し勇気出してみてくれないか、アルフレートも君を知らないから素直になれないだけだ」
「教師に何か、親切にしたらご褒美でももらえるんですか」
「違うよ、僕は君と親友になりたいだけだ、一人は楽しくないものだ、みんないた方が君もたくさん笑える」
どこか痛みを引きずるようなセリフだ。だが彼に何もしていないのに、こうも好意を向けられるのは、何とも困る。
「・・・・風紀委員がパンドラと友達になったら、考慮はしますけど、あるいは戦うの一切放棄するなら」
「僕はセアドアやアレクシスほどは無理だよ、彼らは分かり合えない」
あ、振られた。
「ごまかすのはやめてくれ、君が彼らに優しいことは知っているが、これとそれは無関係だ、それでいつなら親友になってくれるんだ」
「まあ、僕が別人格に身体を奪われたらじゃないですかね」
ルクスはオルフェウスだけを見続けた。アルベルティーナも。
「なんだ」
「何か貴方って、年下に好かれるわね」
「知るか、大体、どっちもチビでガキだ」
「剣をお願い」
「はい」
「コートを」
「はい」
少女がブラウン・ローズの高が一一人に興味持つわけがない。
「ハインツ」
少女は大きく手を広げ――。
―アルバートとアンネローゼが。
カイザーは偶然、二人が天翼属の住む街の通りで歩いているところを目撃してしまった。
幼い子供同士の恋、とはいえ、漂う空気はどこか甘い。
「へえ、・・ふうん」
何となく複雑なような。
「しかしいちいち女々しい男だな」
「元人間ですっけ」
そもそも彼ら自身、血を糧にしながら、えさである人間に興味もない。人類の歴史が始まった同時期に、髪をまねて作られたという、神の最大の愛妾でわが子である人類はその時期魔術など知らなかった。支配者よ、力よというのは古い時代の吸血鬼だろう。そもそも、吸血鬼からしたら人間の方がよほど冷酷で残虐に見える。パンドラというある女性が神から禁忌の秘術の箱をもらいうけ、人々を本来は守り、導く立場だった。そう記録を見る限りは今のような魔物ではなかった。短い命だからこそ人々は万物の根源であるマナを発見、操り、魔女狩りという名で徐々にパンドラ達を弱くしていった。そして吸血鬼やパンドラの御子といわれるものたちを、特殊な遺伝子を持つだけの仲間を正義という名で虐殺を繰り返し、彼らの亡骸から武器やアイテムを作り、敵対勢力とけなげに生きる魔物とされた人々から硬貨から宝石まで奪い、共存を願うドラゴンと呼ばれる血族の言葉さえ軽んじ、踏みにじり蹂躙した。彼らの分家筋、遠縁がにげ伸びた先、つまりは人間世界で幻想の生き物とされた鳳凰やドラゴンの末裔たちが吸血鬼たちの世界に逃亡してきたのだ。最強の遺伝子を持つだけの人間達は服従と血を与えることで、同じ人間から逃げてきたわけだ。不老というだけで彼らも死ぬ運命にある。赤の女王のうぼは代々、彼らの中から選ばれる。
「アルヴィン、お前には痛みを教えないとな」
「このくそ野郎が」
「ほらほら、動けよ、ガキども、若いんだろ」
ヴィントはアルヴィンとゴットヴァルトを手を叩きながら、ヒューストンとその手下を探す。
「お前も20代で若いだろうが」
「俺とあのチビが友達?」
うん、ヴィクターは何言ってんだ。
「ねえよ、あんな頭おかしいオタク」
「助けに行かないのかよ」
青いな、根っこは甘いお坊ちゃんなんだよな。
「俺が?何で、わざわざ危険な場所に行く」
それも顔も知らないガキのために。
「外道が」
「はーっ、ローゼンバルツァーはお花畑ですねー」
「こいつ・・・」
「サアラ」
「ヴィルフリート」
「ブラッディ・ローズは変えないのね」
「ああ」
「突撃ー」
シルヴァ・ローズが第10皇子の軍に襲いかかる。3年前のこと。彼は自分の出自が誇りという個性のない、取り巻きに担ぎあげられた、ありふれた男だ。頭脳はの部隊は少数ながら、多くの皇子や王女、イシュタルの民の命を奪う。場にあふれたユリウスと違い、大事なもののために仲間を見捨てる。シルヴァ・ローズが持つティターンの斧。最大の攻撃力、打撃力。これに攻撃されたら数百は一瞬できえる。
朝日に照らされて、サアラの前に現れたのは、ずっと会いたい人だった。
風で揺れるダークブラウンの髪。オッドアイ。痩せた小さな体。
その背中を後輩で同じ場所に住んでいた少女は追いかけていた。たとえ心を何度帝国軍人におられても、死を選ぶしかない世界でも。希望など抱く余裕のない最悪な世界でも。
医務室でオルフェウスに尋ねる。
「何で、あんなことを?」
「・・・」
孤児であることはどうもマイナスだ。悪人だから責められる、当然だ。仲間を失い、責任や悲しみで冷静さを失い、自分に重さや痛みを与えてバランスを取ろうとした。家族思いで情が厚い彼のことだ、それは当然だ、カイザーをヴォルフリートのために頑張っていたことも知っている。シーザーもそうだ、クラウド家も皆取り戻そうとした。現実を受け入れたからと言って納得できるものではない。
オルフェウスは同情と家族愛を混ぜているのだろう。アルバートという求めていた本物が現れても、態度を変えなかった。優しい人なのだろう。
「貴方が僕のことで怒る必要がない」
「・・・侮辱したんだぞ、お前の母とお前を、何で笑える、許せる」
―お前がすべて悪い、お前のせいで全て失った、お前がいなければ・・・ベルンホルト様を惑わすような最低な女に捨てられたお前なんかに、エレオノ―ル様達を殺させたのもお前何だろう。
「あれは空気が読まない僕自身に責任があるんでしょう、明日僕からアルフレート様に謝りませんと」
空気を読まない怪物は罰せられる、当然じゃないか。
「一方的に馬鹿にされて否定されて、おれは厭だ」
「子供みたいなこといいますね」
カシャぁぁン。
女性の悲鳴が聞こえた気がする。オルフェウス達が駆けつけた時、すべては終わっていた。急速に治る傷口、血があふれ出て。
ずきんずきんと痛む。こちらを周りの観衆が騒いで指をさしているが。
パンドラとばれる寸前に隊員の少女たちが布で体を隠し、誰かが抱え込んで、病院に駆け込んだ。燃え盛る、重い感覚が支配して。
「お前ばかりが何で」
頭を去ろうとした背中に押し付けられた。
「お前は被害者なのに」
他人をパンドラを心配する、パンドラを殺す軍人が。
被害者なはずがない、自分は加害者だ。昔も今も。
「・・・少し、冷えてきましたね、窓を閉めないと」
メイドのナイフに関する恐怖も、銀の銃弾の恐怖も欺瞞だ。どこまでもじぶんが大事で他人を理解しない最低な奴。薄情な、涙を持たないやつ。
「何で泣かないんだ」
妙なことを言う、だって父さんもエリク達ももう嫉妬も狂気も涙もずるい感情さえもういだけない。神の子なのに。愛されて一生を終える命のはずなのに。
「オルフェウス様、そろそろフェリスさんがきますよ」
そう、だから、あれは罰だったのだ。
2
言ってはいけない一言だったのだろう。情熱、志、そういったものが欠け落ちていた少年はその時、シュワルツドルフの狼と言われた男の体の熱を芯まで凍えさせるほどの怒りをあらわにしたのだから。負けるのはユーリヒューマンの12歳の少年である。
「・・・・・今、何と言った・・・小さいこと?」
普段感情的な人間より、内向的な人間が見せる感情の一端、目がつりあがり、深い怒りを見せた。子供とは成長する生き物だ。
「どこが小さいことだ、もう一度、もう一度その口で言ってみろっ」
「・・・・しかし、こんなところに貴重なユニコーン属がいるとは」
「お前たちがヴィオレ・ローズか」
帝国軍人とともに、数人の精鋭らしいがたった数万か。
アテナの剣らしいが。
「はい、大公妃様」
「うへえ」
ア、無理だ。
「駄目だって」
「うーん」
「だめか」
「女かよ、お前らは、大体何でただで他人の俺の過去知らせるんだよ、死ねば?」
「君こそ少しは自分を見せてくれてもいいだろ、わかりあうことは必要だろ」
「気持ち悪い、うすら寒い友情ごっこきもい」
「ヴィント、って何で机に叩きつけるんだ」
「悪い虫がいてな」
「アウィン、レーヴェ卿になんてことを」
「カールス、おかりなさい・・・」
「ただいま、僕の資料動かしてないよな」
「ええ」
くすり、と笑う。亜麻色のロングヘアの女性は答えた後、台所に戻っていった。
眼鏡をはずし、変装を解き、ダークブラウンの髪をのぞかせる。
「あらあらだらしないわね、カールス」
「お姉さん、ハーブティー好きですね、やめません?」
「偏食は駄目よ、いつもお母さんが言ってたでしょ、あと、自分のものは部屋に戻しておきなさい」
「いいじゃないですか」
「カールス」
女性がめっ、とする。
「はいはい」
見知らぬ女性と家族ごっこがどう生かせるか知らないけど、魔法でここまでだませるものかね、22年の人生だぞ。
「神に祈りを」
「今日もお恵みをありがとうございます」
「帝都での暮らしはどう?」
「普通だよ、お姉さんは?彼氏できた」
「女性にプライベートな質問は禁止よ」
「いや、心配してるんだよ、一応は。お姉さんだってこんな田舎じゃ退屈だろ」
「あら訪ねてくる友達はいるわ、聞いて聞いて、キャロルったら変な冗談言うの、私がナイチンゲール孤児院に至っていうの、生まれも育ちも個々なのに」
「何だ、それ、まただまされて変な買い物しないでくださいよ、ただでさえとろいんだから」
「もう、そういうのばかりお父さんに似て」
「父さんなんて見たことないですし」
人参入れるなよ、まずいから。
「あ、ごめんなさい、そうね、生まれる前に火事で死んだんだもの、貴方の前で失礼だったわね」
「いいから、お姉さんはもう少し疑うこと覚えないよ、おい、ニンジン戻すな」
「駄目よ、ほら、口元に食べかすがいつまでも子供なんだから、身長伸びないわよ」
「よし表に出ろ、女性だからって容赦してもらえると思うな」
「まあ、また地べたにまとわりつきたいのね」
血とは、どの生き物でも持っているものだ。
人間になるための儀式
「教会の絵なんてどれも同じだと思うけど」
「ああ、花より食べる派なんですよね」
どうでもいいが、何で手を掴んでくるんだろうか。柔らかくて温かいから変な感じがするんだが。あれか、背後に回って殺されないための防御なのか。
「でも来てよかった」
「カビ臭い絵を見に来るのが?」
「・・・お友達とこうして外で遊べるのがです」
「ええ、ああ」
まあ、油断が生まれているみたいなので突っ込まない。
「動物園行きましょう」
「え、うん」
指をからめてくるの辞めてくれないかな、嫌がらせ?
3
ここでの生活は戦闘か、訓練課、実験だ。エデンでの生活は、規則正しい、実験隊としての生活だ。だが別に自由がないわけではないし、ここではあからさまな侮蔑も否定もない。白い服装の男たちには物のようなものだろう。パンドラたちもお互いを興味の対象にしない。前髪を隠した黒い髪の少女、ラプんつぇるみたいな長い髪の妖精属の少女と少年。ガラスの間の通路。右左に失敗作、危険なパンドラ、クルーエルエッグが同じ部屋にいる。金属製のベッドの上に包帯が巻かれた少年と少女はアンジェロらしい。
近頃はジャイアント属も作っているとか。彼らのモンスターブリよりも帝国の人間のほうが怖い。自分は冷たく薄情だ。弱いから仕方ない。ここは別のサーカス団だ、舞台だ、そう思わなければ、そのとき12歳の僕は僕でいられない。
「エルフなんて気持ち悪いじゃないか」
ハイエルフ、それに続くエルフが帝国臣民として認められるまでは、やはり、戦乱があり、悲劇があった。
「そうか?」
キャロルやランサ―は首を傾ける。
「ジョルジュは何でそう思ったんだ」
「・・・・ありがとうございます」
―憎悪なさっている、自分で殺したいのでしょう。
「もう少しよく考えて行動しろ」
「お前らしくないな」
「ディーター」
「なぜ、殺さなかったんです?」
「馬鹿を言うな、同じ隊員だぞ」
「おメシものは?」
双聞きながら、そばづきの次女はうっとりする。至高の御方のお世話をする。
「赤がいいわ」
鈴のような、軽やかでそれでいて勝ち気でかわいい声だ。腕を広げ、下着、コルセット、選んだドレスをその身に身につけ、軽い化粧を人形のような顔立ちに身につけていく。
着替えが終ると、重い扉が開く。
彼女の役目は、人間と吸血鬼の均衡を保ち、パンドラを管理すること。人間が想像する野蛮な獣にならないことだ。
「女王陛下のおなり―ッ」
一列に吸血鬼の貴族、近衛騎士団が一堂に整列する。中央を歩き、王座に座る。
「・・・・アルバート、クロノフォード・・・・ヴィルフリート・・・」
姉が半分過ごしたエデン、サイトd。
「あはは、あんな嘘信じてやんの」
「馬鹿な奴」
そう言って、持ち金をヴォルフリートは奪われ、顔は大きくはれた。小さくて弱い子供。だがそんなことよりも、何でだ。
ヴリルたちはアリスが大切ではないのか、警察や法はなぜエリク太刀をなかったことにする。
≪ラッスヴェート・ヴァプール・・・ッ≫
ディートリッヒがフランシーヌの手を引きながら、襲いかかる魔女に目くらましの魔法を仕掛ける。
「ディートリッヒ」
ロゼッタがスカートの裾をつかんで、慌てて追いかけてくる。
女性は悲鳴を上げた。
闇の中で、金色に目を輝かせるゴットヴァルトにオルフェウスとアデルはパンドラであることを自覚する。
「早く、撃ち殺してちょうだい」
女が言った。
ドゥン、ドゥン。パンドラの力がこもった闇色のボールが宙に浮いている。
駆け込んできた警官、近くの住民、使用人たちは侯爵家の庭園に飛び込んだパンドラに恐怖した。走り回った赤ん坊は泥や擦り傷まみれだ。
「悪魔つきだ」
「排除しなければ」
「死を」
「死を」
「滅びろ、悪が、今殺さなければ俺たちが滅ぼされる」
びゅっ、とボールが飛ぶ。
「攻撃してきた、サぁ、早くまだ赤子のうちにあの悪魔を殺して」
退屈な毎日と厳しい教育を受け、オルフェウスは、街に繰り出し、喧嘩して騒ぎを起こし、その時にヴィントやルヴィーサも連れて行った。
「また病院に行くのか」
「いいだろ、憂さ晴らしさせろよ」
この年に生まれた従兄弟は秘密にされていた。この時オルフェウスは8歳、世界がまだ善と悪、弱い者と強いもの、二ケの肖像を信じる一族の人間として、黒魔術師の女の子だった過去は消され、軍人として育てられていた。兄弟とはこうきすぎて合わない。長兄のマリウスは自分をかわいそう、各地を頭のおかしい男好きの母と旅してかわいそうな弟と偏見と間違った優しさを押し付け、何かと型にはめようとする。
「全く、うろつくくせは当主様に似てないな」
「お前だって訓練が嫌いだろ」
一族では母を傲慢だの変わり者だの言っていたが、オルフェウスの知る母は勇敢で誰よりも堂々とした、尊敬する人物だ。少なくとも恋人がいても自分を孤児院に捨てようとは考えず、ウォーロックに殺されるまで、片時も離さなかった。孤独に誤解された人生だったが、おそらくオルフェウスは彼女の真実の相手との子だった。自己中心なあの人なりの愛だったのだ。
「でも特に好きでもないのに馬車に乗って二階、機関車に乗って二階だろ、遠くまでわざわざ見舞いに行くのか」
「そうよ、パンドラのウイルスが移ったらどうするのよ」
「パンドラにウイルスはねえよ、神父たちのでまだデマ」
「・・・・ペッターか、懐かしい名だ」
気付けば、軍の病院にいた。
「誰・・・・」
「ブラウン・ローズは君以外、敵国のクルーエルエッグの大隊に全滅したよ」
「・・・・・・何を、僕らは最強のモンスター、そんな、合流したはず」
「どうも嘘の情報で彼らをおとりに、本部隊は…王宮騎士は」
本名なんて知らない、嫌いだ、死んでしまえ、昨日そう思った。
「・・・ど・・して・・・・」
そいつに黒のは殺され、にげ伸びた先では、王宮騎士や冒険者で、アシュラも、二コルも結局殺され。僕は、英雄の剣で死にかけた。
「まだ生きてやがる」
「意地汚いモンスターめ」
ヴィルフリート、みんな・・・アズゥ・ナイトはどこ。何で助けてくれない。
「あばれましたがやっと薬でおちつかせ拘束しました」
その時、ソウルもペルソナもほとんどなく、死にかけていたそうだ。ベルトのようなもので縛られ、僕は何かされていたのだろうが痛みと苦しさで覚えていない。
ただはっきり覚えたのは実験の最終日、目を覚ましたら痛みが、目の前の兄弟の遺体がチューブにつながれ、ケースに入れられ、僕はその中央で拘束されて座らされていた。
正直、異常だった。
「の記憶は消えてますが・・・いいのですか」
研究者、医者、魔術師、錬金術師、多くの大人が。状況からして何かの実験、儀式だった。そのチューブ、機械の先はすべて僕の足元にあった。
「ん、んんっ、ん」
馬鹿でも子供でも、すぐにわかる。これはとんでもないことだ。
「動くな、大人しくしろ」
いやだいやだ。何で、何で。
ヴァイツェンはいつしか笑顔を隠すようになった。ユリウスのような劣等生に、ジ―クベルトのような≪全能の加護≫という呪いもうけたくなかった。だが、冷酷非情、トップレベルの鬼属の息子を目覚めたばかりの≪モリガンの加護≫、死者の夢を相手に見せ、狂気に落とすという、自分だけが生き残る、他者を犠牲にし、力を得る加護で全て、失ってしまった。
研究者も医者も魔術師も彼女を避けるようになった。だから何かにつけて修練を、人とかかわることを避け、一人で井戸や泉の傍で過ごすようになった。戦闘の時以外はだれも彼女を避けた。
「その罪人を天に送りなさい」
「いやだ」
騎士団や軍が認め、異端審問官でウォーロックと認められたもの。だが、彼女からしたら守るべき臣民だ。犯罪者でも勝手に命を奪うことは殺人だ。
「俺は。いやだ、頼む、ごめんなさい、怖いよ、いやだ」
「意外と友達思いなんだ」
「お前らは俺を何だと思ってんだ」
学園の寮を抜けだし、闇夜を歩く。
「思春期のモテたい、不愛想男子」
「才能や実力あるけど、人間関係度下手のイケメン」
「俺は格好いい、寂しがり屋の甘えん坊」
しかし女子二人を連れているのは意外と意識がないのか。いや、この学園ではそうだ。魔術師や聖騎士育成といっても多数が貴族や名門で、こいつらのように次男坊で悪ぶっても、真に悪い奴はいない。貴族の子供からすれば従者はいないかその他大勢、まことにむかつくがそう教育されている。
「いいかげんにしろ、ヴィルフリート、へフティヒ」
「ひ、ひぃ」
「行くぞ、ヴォルフリート」
あわてて虐められていた少年達はにげていく。
「何がいけない、あれは落第生、壊れた卵だ」
ユリウスはまっすぐな目でヴィルフリートを見る。
ヴィンセントは、長髪の黒衣の男を見る。
「レオポルト・キングブレイヴ卿・・・」
はて、とテレ―ジあはヴィンセントを見る。
「ブルー・レジ―ナが戻れば」
「ああ、まだ信じているのか」
「馬鹿だな、すべてに捨てられてまだすがるのか」
だが青年は、その時のことはおぼえている。
雨が降っていた。
戦場でトロール属の青年が仲間をかばい死んでいた。
「頼む、あいつを安全に、頼む」
雨が降っていた。
「・・・・・メシア様、救いを」
串刺しにされたハ―ピ―は。手を伸ばし、自分ではないローズの仲間の無事を祈った。
「何だ、生き残ったのか」
その言葉に、アルフレートやマリアベルは痛みを抑えるような表情になる。階段の上で様子を見た後、ゴットヴァルトはオルフェウスの後に続く。
「お兄様っ」
「―総隊長殿も生き残られていたんですね」
「あの、下に・・・ジ―クムントも貴方に会いたがって、ザファルートだって」
「必要ないと思いますが」
「・・マリアベルやアルフレートはお兄様の家族でしょう、何で」
「血のつながりだけが貴方の言う家族?」
「・・・それは・・・」
「貴方は過去よりも臣民や帝国の未来を考えるべきだ、貴方の兄は16年前死んだんでしょう?」
「それでは、ッぁ場ぁいバスら―総隊長、自分はここで」
鐘が鳴り響いている。フォルクマ―ルはアヴィス、ダイヤとともに顔を上げる。
「お父様ッ」
ディアナが観衆の中、拷問に会った男を見る。
「なんてことを、こんなことはやめて」
「攻撃魔法系は一切役立たずだと」
支配者の瞳が発動し続ける。
「ちょっとしたテクニックだよ、本当の種は簡単に見せない」
「お前・・・・」
柩の中で、黒髪の少女は光を感じさせない瞳で世界を移していた。カイザ―は、驚いたように赤いドレスの少女を見る。
「君は・・・・・」
ランプの光で照らしだされた少女は、陶器のように肌が白く、顔立ちも人形のよう。
後ろには、ハインツの姿もある。
アリスを。待っているのだろうか満天の月の下で、戦場近くで、白い花の中にアンネローゼはいる。
「・・・お前はだぁれ?」
落ちてきたヴォルフリートは黒髪の長い髪の少女に先日、助けられて。
「きみはだれ?」
これは2人の。遊びだ。
「偶然ね」
にっ、とアンネローゼはほほ笑む。
ずるずる、と少女はそばかすの少年の手を引いていく。ドーレス伯爵は遠巻きで見ていた。
「全く、人間の少女のようななりをして」
「ミア様の気まぐれには困る」
出会いはそう、ヴァルベルグラオ家の広大な庭園の中だ。
「私ね、吸血鬼なのよ」
珍しく泊まりに来た時、外出用の服を広げながらハインツに言う。
「子供」じみた趣味だな」
「ふぅん、でもさ、アルヴィン」
「何だよ」
「いらない優しさもあるよ、リリーシャちゃんは子供扱いなんて」
2
エリザベートは、荒んだ目、いや世界を諦観した目でエリスとともに、燃え立つような赤い鬣のようなブラッディ―・ローズと、地面につき伏せられた少年ディーターを見る。
「離せ、離せ・・・っ」
「無力なものは何をしても無駄なのだ」
エリザベートは、アテナの剣の戦闘員、プラチナ・ローズ、情報機関の下の組織の精霊騎士だ。こうした扱いは慣れている。
ほとんど動くことなく、機械人形のように立つのみ。
街の中は静寂に包まれている。
「お兄様・・・」
ディーターの妹は、二ケの聖巫女となり、神殿へささげられる。
エリザベートの活躍の場所は居場所は、エルフとして、二ケの肖像であることが多い。
あれで、自分を殺せる気だろうか?
謁見の間でいつもの女王の衣装、宝石と黒と赤、絢爛豪華な黒い羽根の衣装に身を包み、吸血鬼の貴族達の謁見を迎え、軍事、様々なことを語る。
「なぜ、避けるの?」
ハインツはぎくっ、となる。
「…気のせいだ」
「気にして何かないわ」
ハインツは顔をあげる。
「騙し合いや暗殺はいつものことだもの」
「・・・馬鹿ね」
貴方はいつだって本当を見せない、そう言って取り巻きだった人間は自ら。死んだ。バドォール伯爵の手を借りる。ことなく。
ヴィルフリートは怒りで赤く染めて、狩猟の間を走り去っていく。
「ワインを」
「はい」
「彼女がはじめてくれたプレゼントをダメージダウンさせたのが、レ―ヴの守り」
ルーン文字やら白銀の蛇が刻み込まれた腕輪。
「ちなみに、外に行くときによくつけてる」
「お前は徹底的に実用志向だな、一応ものすごい重要なアイテム何だが」
「え、だって指輪はチャラ男みたいだし」
「姉さんがくれたお守りよりは価値はないよ」
どう見ても安物だが、まあ言わないでおこう。
3
これは秩序。人が死ぬ。
これは正義。弱い奴が悪い。
これは普通。犯人と同列。
あれれ、正義って、というかはずれていくな。
父親役のレオンはるとが悪魔を倒し、ほほ笑む。当たり前というか正しいらしい。
奇麗な部分だけの正義のルドガーは、悪魔の死体を見た後、僕を君の悪い虫のように見る。
ああ、そうか、僕は家族を殺した犯人よりも。
物心、ついた時エリザベートは村の少女だった。だが、すぐ引き離され、オナシス家に引き取られ、スパイのような教育を受けることとなった。
優しい理解者の巫女、リコリスとして。
歯を磨くように、有力者に近づき、エリスが悪を殺す。次の日は無邪気な少女として革命家に近づき、情報を売る。
――貴方はだぁれ?
不意にそんな言葉が思い浮かんだ。
私はエリザベート。
オナシス家の愛娘。
「姿を隠すペルソナに、すべてのtラップや秘密を暴く支配者の瞳か」
眠りから覚めた時、周囲が僕をみる目が変わっていた。
「え、何で服がずたぼろに」
「にコル・ヴィジット」
「スノウ」
その場所に二人がいるということは。
「女王陛下は今日もあれに夢中でらしゃる」
くすくすと笑う。ダーウィンは、吸血鬼が支配する宮殿でその陰口をきいた。
その姿なら見たことがある。黒い、鴉のような羽根飾りがついた布で顔を隠した男だ。
ダークブラウンの髪の少年は、アンネリーゼが練兵場に降りてきたことに不思議に。思った。一人しかいない。
「このところ、来てくれませんのね」
「・・・・何の話かな」
吸血鬼の血、神の血。そもそもヴォルフリートは喧嘩が苦手だ。腕力もない。こうと決めては、アンネローゼ、三人の少女にして同一、魔物か神かしらない相手を殺す。友情でもない。
そもそもヴォルフリートは、アンネリーゼや金髪のアリスの弟にもかかわりがない弟にもかかわりがない。蒼の騎士も姉の友人も。
倫理観とかそうではない。
―天才的に、戦闘だの暗殺だの、ないアルバートのような頭脳もなく、平凡なのだ。ヴリル達のような。友人もいない。
「ランクが下の下の壊れた卵に謁見する力なんてないよ」
結論、努力。あるのみ。自力で頑張るということだ。
「確かにいろいろ大変でしたものね」
「え、ああ」
ぎこちない。それでなくてもアンネリーゼは雲の上の人だ。かかわりすらないのが普通だ。
「・・・何か用?」
「そんな、帰そうとしなくても・・・私のことお嫌いですか?」
涙ぐまなくても。
「苦手なだけです、で、何?」
「その手伝ってもらえませんか?」
絶対。いやです夜間に、子供二人なんてしかもお姫様ってない。
「夜動きたくないんだけど」
他人に時間奪われるのいやだし。いや。、待て。夜、女の子。これ背後から狙えるのでは?気絶させて、血を少し。もらうとか
「…でも、君が心配だし、そうだね。やっぱり行こう、二人きりだよね?」
うん、僕ならできる。なんで、ぽっと赤くしてんの?
「実は君のこと、気になってて」
別に全世界の女性に嫌われるだけだし、卑怯者で行こう。
「うん、できれば素朴なアンネリーゼもみたいな」
体が、引いて視線を。そらしている。「そうですか」なんて小鳥が震えるような声だ。まあ、気持ち悪いんだろう、わかる。
「だめかな」
12歳の子供じゃなくて、大人ならいいんだろうなぁ。知り合いいないけど。体力面自信ないから、精神えぐる方でがんばろう。なんで、女の子って教師とか大人の男性好きなんだろう?
雨の中、敵の本拠地で一人残された。
一人はいい。あの日死んだ、男。あの日死んだ家族。どれも僕を愛してない。
「・・・・姉さん」
まるで幽霊だ。ただ一つの真実。ただ一人の人間。
「姉さん・・・」
どんなにけがれて、間違いでも、災いをもたらす悪魔でも、壊れても、壊れないもの。
「アリス・・・」
「はい、手袋」
とりあえず、女の子が好きそうなデザインを渡す。
「え、ええ」
なんですか、そんなに僕が気遣うのが珍しいんですか。
「隣歩かないんですか?」
無理言うな、黄金の長い髪の美少女で貴族とかお姫様の隣なんて僕が。歩けるわけないだろ
「・・・いや、後ろの方が歩きやすいから」
傘と帽子を渡す。いや、誰かにばれたらいやだし。大体そんな大きい目で見られたら死ぬわ。
「そうですか、でも、意外ですね」
くすりと。笑う。
「髪とか、この服だって、ヴォルフリートはこういうのむとんちゃくだと思っていました」
「・・・ええ、まあ、確かにそういうのこだわるの馬鹿だなと思うけど」
「紳士ですね」
何言ってんの、こいつ。
その時の実験では、足元に屋内プールのようなものがあり、目の前の少年と剣で殺しあうことだった。安全な場所で先生と白衣の男たちは見ている。
プールに落ちそうになった時、水面から数体の白い手が伸びてきた。
「なっ、妖怪?」
顔が水面から出る。
「なっ、あいつらはウンディーネとマーメイドを合わせた・・・」
僕はプールの中で数体の人魚たちにすくい上げられ、抱きつかれていた。
「大丈夫?」
中央の彼女たちのリーダーか、特に美しい少女の人魚が声をかけてきた。
「え、は、はい」
「足元には気をつけて」
4
・・・なんか、うまくいかなかったので公園でアンネリーゼを草むらの中で張っていたら、風が通り過ぎ、泣いている17歳くらいの少年と遭遇した。
「・・・かくれんぼか?」
「ええ、まあ」
「今の、ガキ、見たか?」
ああ、泣いてたのか。
「全然、お兄さん、マラソンか何か、すごい風起こしてたけど」
「うるせえ、俺にかまうな」
ロケットらしい。ものを手に持っていた。
「・・・肉まん食べる?」
「ガキが同情するな」
肌が合わないな、と思った。
試合会場で、映像を眺めながら五番目はそう思った。会場の上の綺麗な顔の金髪の少年を。ユリウスの剣が自由な草原の勇ましい剣ならば、アリスの弟の剣は圧倒的、王の剣だ。
そこには理由などない、純粋な力の差。蒼の戦闘衣をまとい、夏の風のような勇ましさと誇り高さが満ちている。
正直にいえば、五番目は兄弟達の中でいつも別物だった。誇り高い貴族でも志やリーダー性も。
アルバートから見て、主人と護衛のシェノルの関係の二人は、出来合いに見えた。
別の会場で、アルバートは五番目の試合を見ていた。
何も特別なものがあるわけではない。ブラッディ・ローズお抱えのチェス兵が数人、五番目を圧倒的なパンドラで囲い、見世物のために立たせているだけだ。
「卑怯だ、誰か止めさせろ」
出る杭は打たれる。ヴィルフリートが赤い髪の少年が叫ぶ。
「悪いけど、君達には手出しをさせない」
拘束魔法の使い手、イ―ファが笑みを浮かべ、そう告げる。嘲笑するパンドラ、貴族達、魔術師。
「ほらほら、逃げないと俺の爆裂魔法がお前の腕吹き飛ばすぜ」
衝撃音が走る。削られる地面。
「逃げろ、そして服従してちかえ」
「赤の女王に近づくな、けがれめ」
呼吸が乱れ、使用される武器は使う力が半減するように手をくわえられている。
「男だろ、戦え」
「弱虫、無能」
エリザベートはエリスとともに、ダークブラウンの髪の少年を見る。諦めて、降伏すればいい。無意味なのだ。パンドラの力を持っても天魔落ちや壊れた卵はただ壊れていくのみ。血が太ももからながれ、無意味に体力は奪われ、だが途中退場は許されない。助ける人間など存在しない。
青の女王の助けがない今、五番目は隷属されるのみだ。ブラウニー・ローズの弱虫、今までパンドラであっても彼は殺したことがない。
無意味だ、なら怪物になりきればいい。いじめてるパンドラもそうでもないパンドラも、自分も割りきっている。
「お姉さまっ」
エリスが叫んでいるが、エリザベートはただ見ているのみ。
残酷であれ、生き生きした感情などお前ら、生きた戦闘兵器に不要だ。主と己以外は敵と思え。
たとえばここで笑うものがいても、スイッチが入れば7歳の少年とされるものでも暗殺者になる。殺すか、殺されるか。だが、ここには世間の言う狂った怪物は実はいない。狂った卵でさえ、危険分子とされるものタイでさえ、実験を受けても、製作者である人間の望む化け物は生まれない。だから、お前は怪物だからおかしいという意見は意味をなさない。それは彼らが製作者以上に理解するだけの頭脳があるからだ。良識や倫理が理解できなければ、シンの意味の剣になれない。
皮肉にも、それこそが彼らが人間であったことの証明だった。疑えと襲われれば、競争社会といっても、自分たちの製作者のレベルもわかり、言葉の意味をそのままというわけにはいかない。人間は自分たちを愛さない、だが彼らの剣だ、ならば、パンドラは嬢は捨てるが、国民のために殺すことが自分たちの愛なのだということになる。彼らは自分たちのすべてで愛したものを全て愛する。
だから管理する正義の使徒である人間達は戸惑う。異形のモンスター、狼男とされるものたちの眼に獣じみたものはいない。
「おい、・・・あいつ」
存在を否定されたものたち、死を望まれ利用される、使い勝手のいい兵器。
「立ち上がったぞ」
もともと勝ち目のない。だが、エリザベートはそこで気づく。王座の上の赤の女王の視線に。
人間達は、自分たちの歴史を忘れていた。自分たちは人間以外生み出せないことを。人間は奇跡に弱い。仲間意識などないとされるパンドラたちの眼が、ワニの顔の少年が、生き生きした感情を浮かべほおを緩めていることを、驚いていた。
「ウソだろ、ペルソナが回復していく」
あの剣の形は、アリスの弟のもの――。
馬鹿にしていたものも気づく。そうだ、彼は誰よりも青の女王や騎士たち、敵の近くにいてみてきたことを。自分のものなんかない平凡なもの、誰もがそう思っていた。
彼は父親を殺され、サーカスに売られ、どうして生きてきたか。簡単なことだ、自分にないなら盗めばいい。
「馬鹿か、そんな真似なんかで・・・、おいっ」
トレースしている。そこで気づく。五番目は自分たちのことなど意識していない。呼吸を整え、剣を正面に構え、殺すための剣技に体重を呼吸をのせ、チェス兵を次々殺していく。次に彼は、赤の女王の剣に変える。一種の舞踏のような、優雅で王の踏み潰す剣を。
「ひっ」
体重のなさは問題ではない。これはいずれ、ミアを殺す時に必要なことだ。意識は吸血鬼のものをまとい、恐怖を標的の脳髄に刻んでいく、染めていく。
裸足でブレーキをして、攻撃態勢に戻り、体格で勝てないならば、柔らかい場所を狙えばいい。
空中に舞い、目をつぶし、腹部を爆裂魔法の魔道具で破裂させ、心臓を貫く。呼吸が乱れる。大丈夫、道具は周りにある。残るは二人。
あれを壊せばいい――。ダッシュで走り、剣をリーダーのチェス兵の首に充てる。
「チェックメイト」
ハインツの声色をまねる。
「止めてくれ、負ける、負けるから」
「おかしいことを、どちらかが息絶えるまでなんでしょ、僕は死なない、だから死んでよ、吸血鬼のおじさん」
剣を上にあげる。
「どうせよみがえるのでしょう?」
「あなたがいるからよ」
ヒュウウ、乾いた大地で二人きり。
「姉さんを否定したのに」
「うまくいくと思うか?」
エドガーに対して、ハルトは聞いた。一つ上の親友に。地中海の町で、魔女騒ぎがあった時、ハルトはオルトロスを償還したエドガーに聞いた。
いちいち、イグナスと顔を合わせるたびににらまれるようになった。口もきくが仕事だけだ。
「ま、いいか」
失望されたんだな、まあモデル高騎士だか、モテモテだが光しかない人生だ。ここ最近僕みたいな脇役はたぶん、気の迷いか気まぐれだろう。
「これ、いいかな」
「え、ああ」
そういえば、カイザーの子の友達も利用していたんだな。部活の後輩か、しばいぬみたいなのがついている。
「体調どう?」
「え、まあ大丈夫かな」
しかし、すかした雑誌好きだな。何か、ファイン化イグナスの知り合い、というか友達の友達が多い人で、すみにいる自分たちも顔なじみとなった。
「そうか、あまり無理しないでくれよ」
「どうも」
何かがいやが文句言っているが、アレクシス御威光がきいているのか、静まった。
「また来るよ、ああ、この前頼まれていた雑誌、渡すよ」
「ほーっ、これが噂の、なんですか、馬鹿にした笑いは」
「普通のファッション誌だよ、でも君が興味持つと思わなかった、友達と遊びに行くなら23ページが使えると思うよ」
「・・・・馬鹿にしに来たの」
「いや、授業のサボりですよ」
木の下にマリアベルはいた。
「みっともないでしょう、散々バカにして、強気にしてきた果てがこのざまよ、笑っていいわよ」
「あはははは」
カッ、となった。
「お前は、またっ」
「よかったじゃないですか、君は生きて帰ってこられたんですから」
「パンドラはこれだから」
「僕はカイザーではないですから、本読んでいいかな」
「・・・」
答えないでいると、ゴットヴァルトは本を読み始めた。
彼に何を求めているのだろう、ゴットヴァルトはお兄様でもない。慰めてくれる友達でもない。
「お前はこんな時、どうしてたの」
「―戦闘員が死んだ時?」
「私は部隊の中心、常に堂々と、強く傲慢に皆を引っ張らないといけない、頂上にいる人間なの」
「ならば、彼らが死んだのは必然ですよ、上に立つものは優越される、当然でしょう」
「お前は人なの、それでもっ」
しまった、という顔をした。
「でも理屈だけで人は納得しないわ、人間は機械ではないもの、お前は小さいころからいてたくさん死を見てきて、数だと割り切ったの」
「そう教えられたから、兄弟も同僚のパンドラもライバル、自分の身信じろと、死におびえるものは生きられないから」
「は?死ねば」
「うん、じゃあ今日はやめるよ、行こう、デイジー、アルヴィン」
レーヴェはその様子をウロボロス本部近くで見る。
ヴィントはあの少年達のそばにいることが多い。
「え、まあ、僕は仲いいつもりですけど」
ふんわり、ほのぼのとした雰囲気だ。
「あの、ゴットヴァルト様、一応相手、伯爵の・・・」
「止めてよ、ここじゃ、うるさい周りいないんだし」
「・・・友達同士なのかい?」
するときょとんとなる。考える。
「・・・うーん、兄のペット?僕はたまに構われて週末釣りに行くくらいだし、設定上は友達、関係性ご主人様と下僕、師匠と弟子?」
「お前との関係にあらゆる意味で名称はねえよ、誰があのくそが木のペットだ」
「おかえり、三角関係修正できた?」
「まあ、女は金かかるからな・・、で、お前は何してる、イエス様の教えでも聞いていたのか」
「まさか、神の祈りなんて時間の無駄だよ、ないない」
「まあ、あいつら金を踏んだ来る最低の悪徳業者だからな、気持ちはわかるが」
「じゃ、僕行くんで、行くよ、セラフぃ」
「・・・なんで、ついてくんの」
「同じ方角なだけだ、自意識過剰もほどほどにしとけ、あほが」
「―お前、赤の王か?」
「君、誰?」
ヴィクターから魔術の実験でヴォルフリート、今のゴットヴァルトがおかしくなっていると聞いてきてみれば、これだ。
「南西の戦場で会っただろ」
「・・・ああ、ルドガ―・ラ―ルスね、で、何それ?ゲーム?」
「吸血鬼の貴婦人の恋人だよ」
「あー、それ僕じゃないな、赤の女王、たくさん相手いたし、何吸血鬼皆殺しにでも行くの?」
「いや、確認だよ、じゃあ質問帰るが、ヴリルは覚えているか、シェノルは?」
「ああ、前の家の使用人だね、それが?」
「たくさんいただろ、その黒髪のロングの肌黒い地ビ、ヴリルの弟分覚えてるか」
「ああ、嘘つきのラ―ルスね」
「そいつのこと、今はどう思ってる?」
「・・・えぇ、あー、まあ、元気してるかなぁ」
「薄情だな、誰かに何かされたのか?」
「なんで、そんなきにする・・・ん?・・んん、あれ、・・・嘘つきラ―ルス?」
「そうだよ」
「・・・・・あ、あの・・・・」
鎧も服も髪もぼろぼろだ。はっきり言ってきたない。まだ清純な臣下でも演じる気何だろうか。大体主役級の目標があるなら油売っている暇はないと思う。
こんな雨や嵐の日に一日、うろついていたのだろうか。使える王、尊敬する主君。皆の憧れる英雄はヴァルベルグラオにいる。彼女の目的の達成なら、ここじゃない。
「・・・・あんなことがあって、言われた通り自由に動いたのですが、急に敵だとかいわれても、困りまして、あるいて行動したのですが」
「それで?」
「多分、私にとってそれは一番いやなことで、そんなこと思った自分に驚いて、ご主人様は確かに英雄とはずいぶん違いますし、努力家でも心根がまっすぐではない人ですが」
「ですが?」
「貴方からどうでもいい、仕方ないから逃してあげたい、そう思ってきました」
「ありがた迷惑って知ってる?」
「知ってます・・・」
「僕、陥れるし嘘つくし、これからもいやがらせするし、君を裏切るし見捨てるよ、君が嫌いなことを見せ続けられるストレスがある生活だよ、やめるなら今だよ、君の代わりいくらでもいるから、こだわる理由もないだろ、あぁ、僕が好きとか?」
というか朝早いので寝かせてほしい。
「勘違い女は嫌いなんだ」
お前が勘違いするなよ、と来ると思い、向き合うと、
「・・・あっ、愛しては…、違いますから、私は」
かわいそうなくらい、僕が好きという名のが勘違いが屈辱的なのか固まってしまった。
この心臓が止まる時は
「ラシーヌ様が魔女を浄化した」
「おお」
「奇跡だ」
まるで甘い夢の中のようだ。
アンネローゼがアルバートを抱き、戦場の中で二人だけの世界がつくられる。
「アリス・・・」
「ええ・・・」
「・・・方法はあるわ」
「お、おおぅ」
銀の頂の塔の潜入任務で調べてみると、女性が声をかけてきた。
「お姉さんを戻したいのでしょう」
「な、なんのこと・・・」
「私は貴方の味方よ、正義の組織タナトスの人間なの」
「レッド・レジ―ナの血を彼女に与えるのよ」
あたりを見回すが、女性しかいない。
「それも魔法使いの方法?え、なに、黒魔術?」
「アリスのことは聞いているでしょ、あれを集めるだけじゃ元に戻らないわ」
「・・いや、いやっ、いくらなんでもそれは」
女性が近づく。
「貴方しか彼女をこの窮地から救いだせないのよ」
「・・・吸血鬼の女王よ、お前はこんな悪魔達の血を友情を信じるというのか」
「あの子たちの苦しみは私が手に掛けたものの何倍だった」
「貴方は狂っている、間違えたのよ」
だが男は。
「あの子たちが何をした、喉をつぶされ、人生を奪われ、夢を奪われ、名も権利もなく、息しただけで刺殺され、声を発しただけで矢で撃たれ。私の大事なものだけではない、ずっとその前からだ、武器を放棄し、役目を捨てることは罪ではない、そのことが暴れ回る賊徒とは違う、狂気に陥る前に止める手段があった、神はなぜ彼らにあんな運命を背負わせた」
「夢を見ただけよ、奴らに生きる価値はない」
「お前らがあいつらにそれ以外与えなかった、殺されるだけでなくソウルまで、貴様らの方がよほど魔王の子ではないか、あいつらは生きている、夢でも幻ではない」
「もうやめなさい」
「頼む、女王よここでは死にたくない、戦場に返してくれ、ここは地獄だ」
朝日の中、破損された屋敷から出ていくと輝、ふいに視線に気づく。鎧を身にまとった青年と少女。冒険者だろうか。
「え」
少女は自分を見て、涙を流していた。
「おい」
「・・・フロイデ様、彼です」
「ハートの騎士、ブレア、貴方が」
「お初におみえます、ブルー・レジ―ナ」
裾をそっとまくりあげる。
「時空の騎士ラビッツをレーヴェ卿が」
「どんな夢を見ているのでしょうね」
アレスターの言葉にモニカは。
ガウェインはその髭面の男の告白で表情を青くした。
「私はなんてものを信じていたのか・・・・」
エデンでもそれらを化け物と思えないものが多くいた。
「数が多いな」
ここ数年、パンドラは多い。理由は不明だが、だがそれは男が気にすることではない。侵入者も数年単位だがいる。重い音を立て、トロールが歩く。
魔物を売り買いする商人、それをダンジョンや洞窟に放つもの、冒険者。
彼ら、パンドラは感情がない。愛する、情けをかけるそういうものが。
「あいつはどうした」
19歳の少年がその部屋で隔離されていた。
「いえ、落ち着いてますが」
「・・・・先輩、彼らを兵に使うのは必要なんでしょうか」
女性の研究員だ。
「後4年はそうだな」
「やはり、帝国軍を変えて、彼らの多くは心に傷を負っています」
「それは真似ごとだ、それにそんな疑念は彼らからは取り除かれて」
「・・・彼らの意思ではなくですよね」
生き残るため、嘘は有効だった。馴れれば怪物も価値はある。
「信じるだと」
観察して、強い奴にこびて、だが卑怯者で最低な野蛮な化け物たちの弱点に気付く。どんな個体も、クルーエルエッグもどうしようもなく、愛に飢えていた。
「うそだ・・・・」
「本当だ、いいんだよ、もう裏切らなくて」
頬に手を伸ばす。
「おかしくなってもいい、いいんだ、強くなくても」
探す、自分は弱い、だからこそ、どうすれば相手に好きが生まれるか。観察する。どうすれば、目の前の観客の心を奪えるか。
「僕が君を許すよ、格好悪くもない、君はいいんだもう」
「・・・・・正義なんて、君は信じていないだろう」
ゾフィーが、サファイヤエルに言う。
「だれもが違う正義、善を持つ、アリスだって嘘をつく」
「それは」
「グレン、そいつはどんな感じだった」
ヴァガットはいくつか顔を持ち、その医者の友人、今日はそんなところだ。
「・・・・ああ、僕を覚えていない、そんな感じだった」
ベルンホルトは戦争が好きなのだろう。皇帝のお気に入りで、とはいえ、すきを見せない冷徹なマシーン、そう思っていただけに、そばにそのガラクタを置き続ける理由が不明だ。
「アルバートは嘘がうまいからね」
「そうなのか」
「ああ、実際謎が多い、どこか大人びた子だ」
多分偽物、身代わりだ。それにしては扱いが実の息子扱いすぎるが。五年前ほど、吸血鬼の女王がぴたりと人形遊びをやめた。それがアルバート、そう思っていた。すぐに替え玉が用意できるわけもない。なぜかすぐ身元がまああちこちいじられていたがわかった。
「しかし、銀の指輪って」
ただの実験体、調べさせたが、そんな魅力的ではない。アリスのおまけ。だがそのパンドラは人をおかしくさせるものらしい。色気があるわけでも才能があるわけでもない。性格が人格者でもない。それでもだ、一度そいつに魅了されたら、離れたくないというものがいるのだ。まるでそいつがいないと生きていけない、従順な羊になるのだ。
「君は誘いを断ったじゃないか」
オズワルドはディートリットに言う。
「・・・ですから、今度は」
「君がそんなに主を乗り換えするタイプにも野望を持つタイプに見えない、僕が君の望みをかなえる皇子ではないことくらいわかっているだろ、第一皇子側のラインホルトの側近の君が、第一皇子がガウェインと行動していることを知らないわけではない」
「もちろんです、殿下、ですが殿下はどの王子や王女よりも皇帝の座にふさわしい方と自分は思います」
「破滅エンドは僕の望みではないし、皇帝なんて国の奴隷じゃないか」
「あなたは一度助けた相手を見捨てない方でしょう」
「・・・・君は、鬼だな、僕に実の兄弟と殺しあえと?」
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