月浮かぶそら、輝くひかり。 -静かな夜空の小さなトモシビ。

第四章-僕の気持ち


「あ、そうだ。こ・・・」
その先が、同じクラスの生徒達によって遮られた。
「ねぇねぇ、何で急に性格変わったの?」
「彼氏って居るの?」
等等・・・。口々に女子達が話しかけ春香と僕を囲み、さらに質問を続ける。
「おい、いつのまにこんなに人気者になったんだ?」
「し、知らないよぉ」
僕が春香に小声で話しかけると、春香が僕に小声で返答した。
なんとか僕はその輪から抜け出した。・・・しかし、春香はというと・・・。

そんな騒動が起こった朝も時間と共に過ぎていった。そんな騒動が起こった朝とは打って変わって、昼休みにはすでに収まっていた。
「あ、そうだ。朝渡そうと思った奴」
僕は机から3巻を取り出して彼女に渡した。
「ありがと」
「4巻は出てんのかね?」
「そんな事私に聞かれても知らないよ」
春香はあははと笑った。
「そっか。そうだよな」
しばらく沈黙。
「屋上行こうよ」
「うん」
僕は春香と一緒に屋上に行った。ドアを開けると、春の涼しくて、心地のいい風が僕と春香の髪を揺らした。
僕達はドアを出て左端のフェンスの近くに腰を下ろした。
「涼しいな、春の風って」
「だね。凄く気持ちいい」
気を抜くと眠ってしまいそうなぐらい心地のいい風だった。
しばらく沈黙が続いた。春香の本をめくる音がやけに大きく感じた。
その沈黙を破ったのは、僕だった。
「そういや、春香ってさ、何でいきなり人気者になったのかな」
「ん~、私が明るくなって~」
「うんうん」
「元が可愛かったんじゃない?」
「あ、それあるかもな。ははっ」
「あるんだ。あはは」
僕達は笑った。凄く楽しかった。
「『それあるかもな』ってことは私のことを可愛いって思ってるってことかな、綾羽君?」
彼女は冗談っぽく問いかけてきた。
「・・・ぅ。そ、それは・・・」
僕はあまりアドリブが聞かない方だった。そのせいで顔が真っ赤になった。凄く恥ずかしくて。
「あはは、顔赤くなってる」
彼女は本気で笑っていた。少しムッとしたが彼女の笑顔を見ているとそんな気持ちはいつの間にかなくなっていた。
「そりゃあ・・・赤くもなるよ」
「だね。で、思ってるのかな?」
彼女が僕の顔を横から覗き込んだ。
彼女の顔が凄く近くて、彼女の息が僕の顔に届くくらいで、凄く緊張して、余計に顔が赤くなってしまった。
「う・・・うん」
僕は耐え切れずに本音を言った。
「あはは、ありがと」
彼女は笑って、顔を前に向けた。何処を見ているわけでもなく、凄く遠くを見ていた。

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