ＢＯＮＤＳ～絆～

小さな冬の物語

雪が降り始めて間もない頃、俺はまだ子供だった。初めて見た雪は吹雪きで頬に当たり、痛いという記憶しか無かった。
そんな思い出しかない俺も恋をしていた。
彼女は俺の隣に引っ越してきた。その子は俺より1個上らしく七五三で6歳のとき着物を着てるのを見た。引っ越してきたときは全然話さなかったけど、学校で初めて会ってから「お隣さん」ということで話すようになり、一緒に登校するようになった。その頃から彼女を意識するようになった。それは今も変わらず続いている。高2になった今も････。
いつもの朝、いつもの時間にアイツが来た。
「いつまで寝てんのさ！」
バサッといつものように布団を剥ぎ取っていく。
「何すんだよ！」
「私まで遅刻しちゃうじゃない！」
「勝手に行けばいいだろ」
そう言い布団を被り、潜った。
「もぉ！あんた、出席日数ヤバイんでしょ！？学年主任いってたよ！」
「ハゲのいうことなんか脅しにきまってんだろ」
「もぉぉ！！！･･･あ、そうそう。私明日から一緒に学校いけないから」
「･･･別にいいけど理由言いたげだから聞いてやるよ」
「素直じゃないんだから！実は･･･彼氏が出来たから☆」
「へぇ」
「薄い反応ねぇ･･･アンタにはたくさん彼女いて不自由してなかっただろうけど、どれも長続きしてないじゃない！そんな人にとやかく言われたくないわ！！」
「何も言ってねぇ～し」
そういえば今日日直だ。思い出したのと同時に布団から飛び起きた。
「何！？ヤルキ！？」
「お前のノロケに付き合ってる暇ないんだわ」
「人が折角おしゃれする時間を惜しんできたのに！！」
「俺は･･･お前が居なくなっても弱くなるタチじゃない」
寝起きの悪い俺はいつもアイツに迷惑かけるばかりだ。彼氏が出来たら今度から俺にかまうなよ。彼氏に誤解されても知らないからな。俺だってお前が居たから長続きしなかったんだ。大声で叫んでやりたい。
「もぉ知らない！」
そうしてくれた方が気が楽でいい。そしてその日は珍しく別々に登校した
「明日か･･･」
無意識に口から言葉が出た。明日何があるのか･･･知っていたが知らないフリをしようと決めた。喫茶店で一休みしてから学校に行ったので、着いた時教室に行ったら4時間目の体育の時間で誰もいなかった。授業はもう終わりそうな時間だったから自分の席で寝ていると、廊下から声が聞こえてきた。
体育はまれに早く終ることがあるからそれだろうと思い伏せたままにしていたが、声はふたつしかなかった。静かな教室だから廊下の声はとても綺麗に聞こえた。
「御免･･･好きな子いるんだ」
男の声。
「そっか････」
アイツ！？思わず顔を上げて机の上にあった鞄を全てぶちまけてしまった。アイツのクラスは今移動教室で俺の学年の階にいることは知っていた。だから今の時間に登校してきたのだ。なのに･･･。
体育でいないはずの教室からの物音で廊下にいた男女は俺の目をシッカリ見ていた。アイツの目には涙が浮かんでいた。明日から一緒に登校できなくなる･･･予定だったんだな。それほどまでに確信ある男にフラれるのはどんなに辛いのか俺にはわからない。俺はそこまで人を好きになったことないし･･･。嘘だな。
雪が痛かったあの幼い記憶の裏にはアイツと歩いてる男が気になったからだ。吹雪なのは今も変わらない。外は晴れてるのに････何をやってるんだろう。
結局俺は二人から目を離してそのまま机から落ちたものを拾い上げ、また伏せた。廊下から足跡が消え、二人が立ち去った後、俺は一度も授業を受けずに帰宅した。
帰路中つくづく自分が何のために学校に通っているかわからなくなった。だけど中途半端に後悔したまま卒業だけしたくないからアイツと話そうかな。どうせ、明日から一緒に行けないだろうし。俺の足は自然とアイツの家へ向かっていった。アイツが家にいるという確信もないまま、ただ歩いた。
チャイムを鳴らすと少し間を開けてから静かにドアが開いて、アイツが両手で俺の腰に巻きついてきて俺の胸に顔を押し付けて声を殺して微かに震えながら泣いていた。どうしていいのかわからない･･･なんてなんかの漫画みたいなこと考えずに俺は震えるアイツを抱き締め返した。アイツも巻きつけている腕をきつく抱き締め返した。雪がちらほら降ってきた。
とりあえず冬の寒空の中では何だから、アイツの家のリビングに入れてもらった。アイツが俺の体から離れたのは、ソファに俺が座ってからだった。アイツは一言御免と言って暖かい紅茶と砂糖を用意してくれた。
「馬鹿だと思ってるでしょう」
紅茶をすする俺にアイツはそう言いはじめた。
「別に･･･」
「嘘だ！明日から一緒に学校いけなくなるって言って、あんなところ見られて･･･しかもフラれたし･･･」
「まぁ･･･馬鹿だよな」
「ほらあ！！やっぱ思ってる！！！」
「馬鹿だから良いんじゃん。アル意味お前の長所だよ」
「へ？」
「わかってね～なぁ。俺が何で今まで色んな女と長続きしなかったかわかんねぇの？」
「エスパーじゃあるまいし･･･」
「お前が好きだったからだよ。他のやつじゃダメだったんだ」
やっぱお前はかわいいよ
「あ、誕生日おめでと。プレゼントは俺の告白な。受け取れよ？明日から一緒に学校行ってやんねーぞ」
「うん、有難う･･･。大事にする」
泣く姿ですら君を包ませたくさせるんだから。外を見ろよ。痛い雪なんてもうねぇよ。マジで。外に降る雪は柔らかくてふわふわしてる、そんな感じのする雪だった。
「つぅかいい加減なきやめ！！」
「ひぃっく！うっさい！明日から一緒に学校行ってやんないよ！！」

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