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BONDS~絆~
シアワセ
ある日小さな少年がウチにやってきた。
「こんにちは!僕ね、今日から此処に住むの!よろしくね」
母親が来るとか何もせずに受験生の日々に苛つきを感じていたワタシは切れた。
「帰りな」
バタンとドアを閉めた。すると、消防車のサイレンのようにゥアーンと泣き声がした。仕方ナシにドアを開けると少年はささっとウチに入ってきた。
「これからよろしくね!おねいちゃん」
冗談じゃない!!!
「出てって」
「イヤ」
「出てって!」
「イヤっ!」
「君のかえる家は此処じゃないよ」
「イヤ!!ママが此処に居れば来るって言ったもん!!」
「あっそ」
呆れた。こんなガキの相手してられる程暇じゃねっつーの。
「おねいちゃん、何処いくの?」
「おねいちゃんは今、とても大事な時期なの。だから邪魔しないでね。話し掛けないでね!」
「わかった」
つか誰だよ。怒りを抑えながらズタズタと部屋へ向かった。
すると玄関からドアの開く音がした。
「ママ!」
少年が走り出すからワタシもつられて玄関へ走ってしまった。
そこにいたのはワタシのママだった。
「あら?この子だぁれ?」
「知らない」
「おばさん、おばさん、僕ねママから此処にいれば迎えにきてくれるって言われてきたの。だから暫くの間お願いします」
「・・・那智君ね」
「そうだよ!」
那智君・・・?確かママの妹の子供も那智君・・・。どういうこと!?
その日の夜、飲物をとりに行った時、ママがワタシの名を呼び那智が来た理由を話してくれた。
那智のお母さんは今行方不明で那智を面倒見ていた祖母の死で遺言に那智を母が見つかるまでワタシの家で預かって欲しいという内容で、それに従ったらしい。
大変な家系なのはわかったけど、私は今はそれより自分の受験のことでいっぱいいっぱいだった。
そうなんだと一言だけ言って部屋に戻り勉強を再開した。
那智の母親がいなくなろうが見つかろうが、まだ先の話だろうし私は今の自分のことしか考えたくなかった。
翌朝冬休み中のワタシはいつもより早く目覚めた。
ママも那智もまだ寝ていて早めの朝食を作っていたとき、那智が起きてきた。
「おねいちゃん、早いね」
げ。
「受験生だからね」
「受験生って何?」
「・・・お勉強を沢山しなくちゃいけない人のことよ」
「どうして沢山お勉強しなくちゃいけないの?」
・・・どうしてなんてワタシにもわからない・・・。
「ねぇ、おねいちゃん、どうして?」
「良い大学に行くためよ」
「ふぅん・・・」
納得していない様子だった。
「だから邪魔しないでね」
「・・・うん」
淋しそうに頷く那智を見て心が揺れたワタシは自分の夢を思い出した。幼かった頃に見た夢を。
「那智もご飯たべる?」
「おばさんとたべる」
「っそ」
しょんぼりと来た道を帰っていった。
テレビをつけて朝食を口にして間もない頃ママが叫んだ。
「那智君!どうしたの!?」
暫く声はしなかった。
「ちょっと!」
すごい形相でママがワタシの所へ来た。
「何?」
「あなた、那智君に気付いてたんでしょう?」
「は?」
「どうしてご飯一緒に食べないのよ!」
「ママとたべるって・・・」
「ワタシがいつ起きるかわからないのにそれまで待たせようとしてたの!?」
「だって・・・」
「だってじゃない!!」
パンッ!!
「いった・・・」
「那智君ずっと廊下に座っていたのよ!どうして仲良く出来ないの!?あなた大人でしょう!?」
大人?
「都合の良いときだけ大人扱いしないで」
そのまま席を立ち皿を片して部屋へ戻る途中に那智がうずくまってワタシを見上げた。
「ごめんね」
那智の目を見ないで謝った。
「・・・おねいちゃん」
「何?」
「遊んで」
「・・・受験」
言い終える前にまた那智が口を挟んだ。
「終ってからでいいから・・・」
「それならいいよ」
「本当!?やったー!」
子供って単純よね。だから嫌い。
だけど大人に子供を納得させるときだけ大人扱いされるほうがもっといや。
さっき叩かれた頬をさすりながら勉強を再開した。
2
昼間ママが買物に行っていていない時、私は休憩を入れた。
茶の間で那智はアニメに釘付けだった。
「懐かしいアニメだね」
「おねいちゃん、このアニメ知ってるの?」
「知ってるよ~よく見てたから」
「ゴホッ。そうなんだ」
「うん。あ、那智プリン食べる?」
「プリン!?食べる!!ゲホッ」
「風邪引いたの?」
「ううん、喘息」
「そっか、はいプリン。食べ終わったらゴミ箱に捨ててね」
「はーい」
どうして子供嫌いの私が那智の世話なんか。
プリンだって私のだけど、恨めしそうに見られるのがイヤだっただけ。
プリン・・・あげたのは私だけどさ。
「おねいちゃん、お勉強頑張ってね」
「うん、有難う」
どうして那智は私になつくんだろう。
案外私も子供っぽいのかな何て冗談で思ったつもりだったけど、妙にしっくり来た。
翌日ママは近所の人と遊びに行った。
「ゴホッゴホッ・・・ゲホッ」
「那智だいじょうぶ?」
「うん」
喘息って何時、どんなときに起こりやすいんだろう。
ふと真剣に考えた。そしてすぐにそんなことどうでも良いじゃんと思った。
「あ、芯ない」
コンビニへ行くのに喘息の那智を放っては置けないから誘った。
「行く~!!」
那智はノリノリだった。コンビニへ行く途中も、店の中でも那智は私の手を強く握っていた。
「那智何か欲しいのある?」
首を横に降る。
「遠慮しないで良いんだよ」
「いらない」
「あっほらプリン」
「プリン・・・」
「どれがいい?」
「ママの作ったの」
「え?」
那智・・・。
「ママのプリン・・・那智、ママのプリンが良い!!」
ママたって・・・。
もう何日も会ってないんだもんね。恋しいよね。
那智はついに泣き出した。
「おねいちゃん、どちてママ帰って来ないの!?那智とっても良い子にしてるのに・・・どちて!?ママ那智のこと嫌いになったのかなぁ!?」
私は潤んだ目でシャープの芯が1つ入った籠をそのまま床に置いて外へ出た。
良い子でいれば・・・
大人は子供に叶わない夢を、希望を与えて時が経てば忘れると思い込んで、子供に苦痛を味わらせる。
今の那智はそんな感じだ。
「ひっく・・・ゲホッゲホッ・・・ウェッ」
泣きすぎて喘息も来て、那智はアスファルトに吐いた。
「那智!!」
「おねいちゃん・・・ごめんね。良い子でいられなくて」
「そんなことないよ。とりあえず病院行こうね」
タクシーを拾い、車の中でママに那智が倒れたことを伝えた。
「おねいちゃん・・・」
ゼェゼェ言いながら那智が何か話し始めた。
「ママ・・・那智のママ・・・探して欲しいな・・・ゼェ・・・絶対どっかにいるの。ずぅっとあってないけど・・・ママのにおいが好き・・・那智のママ・・・おねいちゃん・・・」
「ん?」
時折頷きながら話を聞いていた。
最後に言った『おねいちゃん』は用事があって呼んだわけではなかった。
「那智・・・」
頭をひざに乗せながら苦しそうに息をする那智を見て涙が溢れそうだったけれど、1番辛いのは那智だと考え、こらえた。
「おねいちゃん・・・苦しいよ」
喘息ってこんなに酷いものなの?
「那智・・・もう少しで病院に着くから頑張って」
「・・・」
那智は喘息の他に過呼吸に陥っていた。
それに気付かない私は、喘息を気遣い早く病院に着くことを祈った。
渋滞から抜け、ようやく病院に着くとママがいた。
「ママ」
「那智君!」
「救急外来に急ごう」
「そうね」
救急外来に行くと医者が既にいて、那智をすぐ診てくれた。
那智の手を離すと台の上に乗せると突然涙を流して途切れ途切れに言った。
「お・・・ねい・・・ちゃん・・・こ・・・・こに・・・いて」
「うん、いるよ!」
私は迷うことなく那智の手を取り力強く握った。
ママは医者から那智の状況を聞いていた。
「喘息の発作ですね。その上、過呼吸も併合していたので、さぞかし那智君は辛かったと思います。早く病院に着いてよかった。今日は大事をとって入院しましょう」
医者の笑顔は嘘をついていないようだった。
「那智、良かったね」
「・・・僕一人?」
「え?」
すると医者が言った。
「おねいさんに泊まって貰うかい?」
「・・・・・・・やっぱいい」
那智は何か考えたあとに言葉を発した。
「おや?いいのかい?大人だね」
「おねいちゃん、受験生だから・・・お勉強しなきゃね」
淋しそうにそう言う那智を放って置けなかった。
「おねいちゃん1回家に帰って勉強道具もってくるよ」
「本当!?ゲホッゲホッ。やったー!」
私の中で那智の存在は段々変わっていった。
約束どおり1度帰宅してからまた病院へ行った。
病室に入ると那智は薬で眠らされていた。
「那智・・・」
こんなにカワイイ那智をどうして母親は捨てたんだろう。
「那智君どう?」
ママが小声で入ってきた。
「眠ってるよ」
「今はママ見てるから、あなたは勉強しなさい」
「そうする」
受験日まで数えるしかない。
「ねぇ、ママ。那智の母親は何処にいるの?」
「知らないわ」
「・・・」
本当?妹なのに?ふーん。
どこか裏切られた面持ちのまま私は勉強するために窓際のテーブルへと移動した。
「もう日本にはいないのよ」
「え?」
「那智の母親」
「へぇ」
日本にいないってどうして?那智を連れて行けばいいのにどうして?
何のために外国へ?那智より大事なものが母親にあるの?
信じられない。色んな感情がぶつかり、私は言葉に出来なかった。
「旦那の所へ行ったんじゃないかしら」
「なら・・・!!」
那智を連れて行けばいいのに!
「昔は人の気持ちを感じ取れる子だったのよ・・・」
ママは溜息混じりにそう言った。
那智が可哀想!!
「大人って勝手よね」
真っ白な頭で私は口走った。
「そうね」
ママはまるで自分に言われてるかのように返事をした。
私たちはそのあと沈黙になった。
翌朝私を起こしてくれたのは那智だった。
「おねいちゃん!」
「んっ?那智?」
寝ぼけながら私は混乱している頭を整理して那智を見た。
「ホントにずっといてくれたんだね!有難う!」
こんなにカワイイ那智を母親はどうしておいていったんだろう。
私は外国へ行きたい気持ちで一杯になった。
「那智、早くお母さんに会えるといいね」
「うん!!」
一瞬お母さんいなくて淋しくない?
と聞きそうになった。淋しくないわけがないのに。
「おねいちゃん、ごめんね。那智、泣いちゃったからシャープの芯買えなかったね」
「そんなこと全然気にしなくていいんだよ。それにママが買ってきてくれたしね。でも有難う」
「ううん・・・ケホッ」
「少し寝た方いいよ」
「うん」
那智・・・那智はよく考える子だ。
昨日ママが話してくれた那智のママも優しい人だったように那智はその性格を受け継いだんだね。
那智・・・何て可愛くて可哀想な子なんだろう。
那智の寝顔を見ながら私の視界は段々揺らいで霧がかっているようだった。
翌朝ママが私を起こした。
ママは酷く急いでるようだった。
そして一言言った。
「那智の母親が帰国したわ」
3
那知の入院はその日だけで済んだ。帰宅途中タクシーの中で助手席に座るママに早く那知の母親の話を詳しく聞きたかった。ママが
「見付かった」
と言った直後那知が目を覚ましたから今に至る迄その話は一言もない。ママが急に話始めた。ママを見つめていた私は目をそらさなければいけなかった。
「那知君良かったね」
「ねっ」
那知も大喜びだった。那知の母親の事も気掛かりだったが私の頭の中にはもう1つ恐怖に似た心配があった。それは自分の受験。早くタクシーが家に着く事を祈った。いくつもの赤信号を越えようやく家に着いた。私はすぐに部屋に篭った。那知は先に茶の間に入ったおばさんに
「おねいちゃんどうしたの?」
と聞いた。そのおばさんはは何も言わず苦笑しただけだった。机の上にある余計なものを全てバサーと床に撒き散らしすぐに過去問に手をつけた。焦っても仕方ない事は解っていた。だけどやらなきゃ。やればやっただけの力が出せる事を私は知っていた。同時にやらなければその力は身に着きもないことも知っていた。だから焦った。時間の限りルーズリーフにペンを走らせた。ママが私を呼んだのは夜中の2時だった。夢中で勉強していたから驚いた。
「那知君驚いていたわよ。帰ってきて早々部屋に篭ったんだもの」
「うん…」
ママが作ってくれた夜食を口にしながら話をした。
「…那知のお母さん何処?」
「今言ってもあなた混乱するだけよ。受験が終ったら全て話すわ」
「うん…」
ママの選択は正しかった。
「ママ…有難う」
「いいえ。あなたが頑張ってくれればそれで良いわ」
「…うん」
そういう意味じゃないんだけど…良いか。夜食を食べ終え私は部屋へ戻った。
「勉強しすぎてパンクしないでね」
ドアに手をかけた時ママが私に言った。ママ…本当に有難う。女手1つで此処まで育ててくれて…本当に有難う。台所で座って私に手を振ってるママはきっと私より早く起きるだろう。白髪前よりかなり増えたね。絶対高校受かるから…。
4
那智の体もだいぶ良くなってきた頃、私は部屋に篭りっぱなしで食事も部屋で摂るようになり、1日中誰とも口を利かないことが普通になっていた。那智がママに、なだめられていたことも知っていた。
いよいよ受験日が3日前に迫った頃、私は急に休憩を長くとった。息詰まった。
那智を放置して置けなかった。
「那智、遊ぼう」
「でも・・・おばさんが後3日寝ないとおねいちゃんと遊べないって・・・」
「気にしない!よし、公園いこう!」
「うん!」
那智はウキウキで厚着をし始めた。
「おねいちゃんも暖かい格好しなきゃダメだよ!大事な体なんだから!」
「わかってるよ~」
大事な体・・・。
那智がそういってくれて本当に嬉しかった。
公園に着き様々な遊びをした。
追いかけっこや滑り台・・・夕方になりかけた頃、近くに住む塾帰りの優秀トリオが公園を通った。
「あら・・・余裕ね」
「本当」
「良いわね、レベルの低い人は」
「あはは」
余裕何か無い。息詰まったんだもん。
こんな風に言われる筋合い無い!
「ばっかじゃない?おねいちゃんは頑張ってるんだよ!お前らなんかよりずーっと頑張ってるんだから!お前らにそんなこと言われる筋合いない!」
那智・・・。
「何?あのガキ」
「隠し子じゃない?」
「やーねぇ、淫らだわ」
勝手なこと言ってんじゃないわよ。
「那智を悪く言わないで!那智は隠し子なんかじゃない!もっと大切な子よ!」
「大切だって・・・クスクス」
「大切な人もいない貴方達に何がわかるのよ」
言い過ぎた。
「あるわよ!でも貴方には関係ないでしょう。あら10分も無駄にしてしまったわ!失礼」
3人が背を向けて帰っていった。
那智は左手を私の右手とつなぎ、右手で3人の背中にアッカンベーをした。
3人には悪いけど那智のその姿が可愛くて隠し子でもいいかななんて想っちゃった。
日も暮れ冷えてきたので私たちは帰宅した。
「只今」
玄関にはママの靴のほかにもう一つ靴があった。
茶の間に入るとママがお帰りと言った。
するとママのむかえに座っていた人が身を乗り出して私たちを見た。
美人だった。
まだ・・・まだ20代前半に見えた。那智が私の手から離れてその人の所へ走っていった。
その瞬間私の手には詰めたい風が流れた。
「ママ!」
那智は美人に抱きついた。
この人がそうなんだ。那智のママなんだ・・・。
「那智・・・那智!」
二人は抱き合った。
「那智君のお母さんよ」
「うん」
ママがそう紹介してくれたのにも関わらず私は挨拶もせずに部屋へ向かった。
「那智良かったね」
心を入れずに口を動かしながら。
パタン。
その後ママが那智のママに謝ったのを聞いた。
那智の声は一つも聞こえなかった。
心臓がバクバク言っていた。
夜になり、ママがご飯を運んできて、テーブルに置いてくれた。
いつも通り背を向けながら有難うと言って机で勉強をし続けた。
「あの・・・」
その声に体がビクンとなった。
そして何故か後ろを向くことが出来なかった。
「那智と遊んでくれて有難う」
那智のママだった。
私は何と言っていいのかわからずに無言で頷いた。
「今日は私ホテルに泊まるから・・・明日那智を迎えにきます。お勉強の邪魔してごめんなさいね」
思わず振り返ってしまった。
「待ってください!あの・・・差し出がましいことだってわかってるんです・・・けど、私の受験が終るまで・・・あの・・・那智をこの家にいさせて貰えないでしょうか?あのっ・・・無理には言わないです・・・すみません」
那智のママは首を横に振った。
「いいえ。そうして下さい。貴方達は本当の姉弟みたいね・・・ね、那智」
那智のママの長いスカートの後ろには那智が隠れていた。
「那智もあなたと、あなたの受験が終るまで一緒にいたいんですって」
那智・・・。
「だって・・・受験が終ったら遊んでくれるって言ってくれたもん!」
那智っ・・・。
思わず椅子から立ち上がって那智に抱きついた。
ふと顔を上げると廊下でママが口元に手をやり涙を零していた。
ねぇ、那智。もっと遊びたいよ。
受験が終った後もその先もずっと・・・ずーっと。
でもそんなこと無理だってわかってる。
受験が終るまでの少しの間遊べないけど別のことで一緒に過ごそうね。
そうして私は規則的な生活をし、食事だけはきちんと台所で食べることにした。
その間、ママに色々聞きたいことがあったけど今聞いても勉強中にモヤモヤ考えてしまいそうだったからやめた。
食事の間は楽園だった。
5
「那智、口に米粒ついてるよ」
食事の間は天国だった。
勿論、勉強の時だって別に苦痛なわけじゃなかった。
そりゃ、それなりに辛く感じたりはしたけれど、自分の将来の為だから頑張れた。
何よりも、那智がこの家の中にまだ居てくれているってことで、支えられていた。
その日久しぶりに夢を見た。
那智と那智のお母さんと私が居た。
綺麗な花畑。夢だから綺麗な色ではなかったけど、そんな感じがした。
「那智・・・おいで。帰るわよ」
「ママ!うん!」
え?帰っちゃうの?まだ受験終ってないのに・・・。
「お姉ちゃん、僕やっぱりママといたい!ごめんね!」
「・・・そう」
幼心を引き止めるわけにはいかない。私のただのわがままだもん・・・。
「おねいちゃん?」
目覚めると私は机の上で伏してたようだ。
「あぁ・・・那智・・・」
那智がいなくなるわけじゃいじゃん・・・。
キチンと約束したもの。ね?那智。
「泣いてるの?」
「え?」
あ、本当だ。ほっぺたが妙に突っ張る。
「悪い夢見たの?だいじょうぶ?」
「大丈夫だよ。有難う」
「そっか!なら良かった」
こんなに那智は優しいのに、私勝手な夢見ちゃったな。
その日明け方まで勉強を続けた。
「いい加減起きなさい」
「・・・ん?」
またもや机に伏したまま寝てしまったようだ。
「あら?ほっぺたに文字が写っちゃってるわよ」
真面目に勉強した証拠じゃん☆(笑)
昨日、那智の微笑みのお陰で夢の内容を忘れ、シアワセな気分に浸っていた。
「那智は?」
「ダイビングでプリン食べてるわよ」
プリン・・・。コンビニで那智がお母さんに会いたいと叫んだことを思い出した。
そしてその直後那智ママが家に来て・・・・那智が残りたいと言った。
本当は側にいたかったんじゃないのかな?
ううん・・・そんなことない。私のこと考えてくれたんだね。
うん。きっとそう。那智、私頑張るから。
嬉し涙を流しながら那智と遊ぶから。それまで待っててね。
本当の弟より大切な男の子。大好きだよ。那智。
そうして、あっという間に受験当日。
「忘れ物はない?受験票持った?ティッシュ持った?」
「持った、持った。も~心配しすぎだよ~」
「心配しすぎて悪いことはないのよ!」
「はいはい。そいじゃ、いってきまーす」
「おねいちゃん!」
寝起きの那智が玄関まで走ってきた。
「コレ!」
「ん?」
那智が私の手のひらに乗せたのは、手製のお守りだった。
「昨日、おばちゃんと作ったの!持っていってね!」
「那智・・・ママ・・・有難う」
そして私は勢いよく家を飛び出した。
受験会場には頭の良さそうな人たちがとてもいた。
その光景に少しびびったけど、お守りを握り締めると少し和らいだ。
入試を貰った手も少し震えたけど、問題をやっていくうちに緊張感なんて消えていったよ。
那智・・・ママ。本当に有難う。私、きっと合格するよ。
6
受験終了日。
カリカリカリカリ・・・・・・・・。
試験官の止めの声。
一斉に溜息の声。
終った。
あとは那智と遊ぶんだ。遊んで楽しんで暮らすんだ・・・。
「ただいま!」
「お帰り!」
「おねいちゃん!お守り効いた??」
「超効いたよ!!」
「お疲れ様・・・後は結果を待つだけね」
「ママ、プレッシャーかけないでよ~!」
「おねいちゃん!遊ぼう!」
「そうだね!よしっ、公園いこうか!」
制服から動きやすい格好へと着替えた後、すぐに公園へ向かおうと玄関の戸を開けた。すると目の前には驚いた表情の那智ママがいた。
「あ・・・」
「ビックリした・・・開けようとしたら開いたから」
ニコッと笑った後、那智ママは那智を見て微笑んだ。
もう迎えに来たのかと私は焦った。
「那智、どこかへ行くの?」
「うん!公園行くの!」
「そう。楽しんでおいでね。あっ、そうだ。あなた今日受験終ったのよね?お疲れ様」
お疲れ様・・・。
那智との別れを言われているようで、妙に切なくなり、その場にいられなくなった私は有難うございますとお礼を言っただけで外へ飛び出した。
「遊ぶの久しぶりだからワクワクするっ」
「うん!私も」
いつかは那智とバイバイするんだもんね。
わかってたことだけど、いざ那智ママを見ると那智が遠い存在に見えてきた。
だから今だけ楽しもう。
「あのね・・・話があるの」
「まぁ入ってよ」
「旦那が・・・もう一度やり直さないかって言ってきたの」
「・・・!で、どうするの?」
「那智を連れて行こうかなって・・・やっぱ那智の側にいたいし・・・」
「・・・そう」
「どう思う?」
「・・・・あなたを突き放すわけじゃないけど、それはあなたたち家族の問題でしょう?那智君にも聞いてみたほうがいいとおもうわ」
「・・・そうよね」
カチャ。パタン。
「ただいまぁー!ママ!見て!」
那智の手には草花で作った首飾りがあった。
「いーっぱい公園にあったの!おねいちゃんに教えてもらいながら作ったんだよ!」
「そうなの。有難う」
優しい微笑み。那智の微笑みはこの人譲りなんだね。
「那智・・・お話があるの。ちょっとお部屋借りてもいいかしら?」
「え?はい!どうぞ」
「有難う。那智いい?」
何を話してるのか見当もつかない。
ママに聞いてみたら答えてくれるかな・・・。
あぁ、無理っぽい。頬杖ついてボーっとしてる。重要なことなんだね。
「ママ、アイス買ってくるね」
「・・・待って!話があるの」
「那智のこと?覚悟なら出来てるよ」
「うん・・・那智君外国にいるパパの所に行くって」
「そうなん・・・だ」
「それでも良い?」
「・・・私に聞かれても・・・」
「そうよね」
「アイス買ってくるね」
ママは微笑んだだけだった。
どうして那智が外国行くのに私の許可がいるの?
那智が決めることでしょう?那智のママが決めることでしょう?
私の側にいてなんて・・・わがままはもう言えない。
アイスどれにしようかな・・・。
帰宅すると那智たちの話も終っていてアイスの溶け具合もちょうど良かった。
「アイス買って来たよ!はい、那智。プリンすきでしょ?プリンアイスにしてきたよ」
「僕いらない」
「そう?じゃあ冷凍庫に入れておくね」
「入れとかなくていいよ!僕もう行くもん」
「そんな言い方するんじゃないの!」
・・・・突き放された。
「そう」
出しかけたアイスをまた袋に入れた。
少しの間しか持ってなかったのに溶け具合最悪。
「・・・」
「ごめんなさいね。今日はもう失礼するわ。那智いきましょ」
「・・・」
スッと那智が私の横を通り過ぎたとき叫び声が聞こえた。
おねいちゃん!僕いきたくないよ!
え?
でも那智はママと手を繋いだまま俯いてただ歩いてる・・・。
「那智!」
「おねいちゃん・・・」
幻聴なんかじゃなかった・・・。
「おねいちゃぁん!!!」
那智・・・・那智っ・・・。
「・・・那智・・・那智はどうしたいの?言葉にしないと誰にも伝わらないよ?」
「僕・・・ママと一緒にいたいけど、おねいちゃんとも離れたくないよっ!」
時は過ぎるもの。時の流れには逆らえない・・・。
忘れ行くものは思い出せない。思い出す必要が無いから。
だけど・・・一緒に想い出を作り続けたい。
今離れちゃったらいつ思い出を作ることができるの?
那智はまだ5歳。大きくなったら私のことなんて忘れちゃう。
「ママはパパの所へ行くわよ」
「ママ・・・」
那智を迷わせちゃいけないね・・・。
那智のため。自分の欲望で那智を縛りつけていちゃダメ。
例え私を忘れてしまってもいいよ。それが時の流れだから。
「那智。おねいちゃんは那智の心の中にずぅっといるよ。
だから・・・外国へ行きな」
「やだっ!」
「いきな」
「やだっっっ!!」
「いきな」
「やーだー!!」
「・・・分からず屋!」
「・・・うぁーーーん」
那智の目線に合わせていた膝を立てて後ろを向いた。
ママがいた。ママと目線を合わせないように泣いた。声を殺して。
「僕・・・おねいちゃんのこと忘れない。おねいちゃんも僕のこと忘れないでねっ!」
「忘れるわけないじゃん!」
本当の弟より大切な君を忘れられるわけないじゃない。
ばかだなぁ。
「おねいちゃん・・・僕・・・お手紙かくからね」
「うん」
「たまにここに来るからね」
「うん」
段々、のどが熱くなって声が出なくなってきた。
「おねいちゃん・・・・ダイスキ」
「・・・うん」
「おねいちゃん・・・僕シアワセだったよ」
THE END
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