BONDS~絆~

BONDS~絆~

僕の彼女

空

「ねぇ、久志。私達そろそろ別れない?」
久々にランチに誘われたから何か話すことはあるのだろうと思ってはいたけれど、別れ話だとは思っていなかった。
「どうして?」
僕のこの質問は妥当だろう。
彼女は不機嫌そうな顔を僕に向けて、一言はなった。

「飽きたからよ」
なるほど。
スキだと告白したのも彼女。デートのリードも彼女。そして、別れも彼女・・・か。
僕のどこが原因だったのだろう。

「あなた、平凡すぎるのよ。私、恋愛にはもっとスリルがないといけないと思うの、わかる?」
「わかるよ。スリルって具体的にどういうことをいうの?」
「そうね・・・駆け引きが上手い男がいいわ」
あ、僕には無理だ。
「無理でしょう?だから別れようって言ってるの。それに・・・良い感じの人も見つけたし」
どうして僕の考えていることがわかるのだろう。そして、既に新しい男見付けているんだ。
「あなたに不足しているのは、駆け引きやスリル依然に、マイペースすぎるのよ。何ていうか、自分の意思をもっていない感じがするの。意見言わないし、ほら、今も黙っちゃってるし」
「僕にだって意思はあるよ、君が僕に意見を求めないから・・・」
「あら、言うじゃない。求められないと意見を言わないのは、意思がないのと同じよ。結果的にどちらでもいいから意見言わないのでしょう?」
そうかもしれない。
「ほら、また黙り込む。そういうところがあなたの悪いところよ。よく会社の面接とおったわね」
「マルオカ銀行だぞ」
「あらそう。何日もつのかしらね。さて、私はそろそろ行くわ。さようなら」
彼女は席を立ち、レジに向かい僕の分まで払っていた。
もう引き止めるには遅いだろう。僕はしばしの間考えた。
僕は意思を持っていないのかどうかを。
確かに僕は今迄彼女に楯突いてきたことはなかった。だけど、それは彼女が良いなら良いって思ったからだ。意思が無いなら、メニューだって彼女に任せているはず。でも、僕は自分で選んでいる。
そうか!

「待って!」
窓から彼女に呼びかけた。こちらを向いた彼女の顔はやはり不機嫌そうだった。
レジの前を通りすぎ、彼女のもとへ走った。

「僕は意思がないわけじゃない!」
「さっきも言っていたわ」
「総て、君がそうしたいなら、君が楽しいと思えることが楽しいと思ったからなんだ!」
「・・・足りない」
「え?」
「私が言っているのは、久志が私のこと本気で好きかどうかなのよ!」
この台詞に僕は戸惑った。
「スキだよ!?どうして今更そんなことを聴くんだよ?」
「告白したのも、デートのリードも全部私だったじゃない。久志はただ私に付いてきてくれているとしか思えなかったの!理由は簡単よ。あなたから僕はここに行きたい、こうしたいって聞いたことなかったからよ!」
「だって・・・あ、いや・・・それは・・・」
君がそれで納得していると思ったから・・・。
「言葉がほしいのよ!!」
レストランの前で僕らは何をやっているのだろう。昼間で多くの人がランチのためにこのレストランに立ち寄る。そのたびに僕らはひそひそ話しをされるのだ。恥ずかしいけれど、今はそれどころじゃない。
「言葉でいわなくてもわかると思っていた」
僕は彼女に近づき、そっと抱き締めた。
彼女は周りの観衆に気付いていない様子だ。抱き締め返してくれた。

「わからないよ・・・私、そこまで大人じゃないもん」
こんなにも愛しい彼女に僕は少しイタズラをしてみたくなった。
「・・・良い感じのヤツいるんだっけ」
「いないよ!久志の気を引かせるための嘘だったの・・・」
「そっか」
なんだ、彼女、僕にベタ惚れじゃん。僕もだけど。
「今、こいつ僕にベタ惚れだなって思ったでしょ」
どうしてわかるのだろう。不機嫌そうな顔をした彼女は、やはり僕の彼女だ。

☆終わり☆


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