BONDS~絆~

BONDS~絆~

5章

ハート(白)


不思議と店を出ても彼のことは考えなかった。
きっとこれは恋じゃないからだと思う。恋だったらいつでも胸は彼のことで一杯のはずだもの。
そう思うと少しだけホッとした。

翌日学校へは行かなかった。
親に起こされたけどシカトして、寝ているフリをした。
今は鈴の顔を見たくなかった。
彼が夢に出てきて笑っていたから。
ただその喜びに浸っていたかった。
今だからわかることだけど、きっともう鈴に私の夢や希望を取られたくなかったんだと思う。
大好きな彼氏だった人も今となってはそんな人もいたね程度。
自分は何て心の冷たい人間なんだろうって責めた。
同時に冷静な自分もいて、あまりその時の自分を快く思ってなかった。
ポジティブさを活かしてそのまま布団に潜り、目をつぶった。
いつの間にか深く眠っていたらしく、目を覚めるとあたりは真っ暗だった。
夜になると針が黄緑色の蛍光色を発する時計をぼんやりと眺めてみると、時刻は夜の8時を過ぎていた。
どのくらい眠っていたかぼんやりとした頭で時計の針を数えていた。
数えながら気付いたことは、彼の夢を全く見なかったことだ。
少し胸がキュンとした。
30分くらい経ってから階段を降りて茶の間に行くと母が居た。

「大丈夫?」

どうやら具合が悪いと思ったらしい。

「少し頭痛するけど、大丈夫」

寝すぎたせいだろうけどね。

「冷蔵庫にプリンと珈琲牛乳あるわよ」

「どうも」

キッチンに行くと、まだ夕食を食べ終わっていない父が野球に夢中になっていた。

「目腐ったんじゃないか」

寝まくっていた私への皮肉だ。

「腫れてるけど、腐ってはいないよ」

「おっ・・・ファール!?入ってるだろー!」

父は大好きな巨人が後1点で逆転できるのに・・・とぶつくさTVに向かって怒っていた。

「今日は誰投げてるの?」

「上原君」

父は上原が大好きだ。私はどちらかと言えば高橋由伸が好きだ。

「由伸なんか打った?」

「3打数2安打」

「スランプから抜けたんだね」

「よし!慎之助君だ!」

阿部慎之助も好きらしい。
珈琲牛乳を持ちながらしばらく野球を見ていた。
同時に考え事もしていた。
明日は昨日の喫茶店前通って学校行こう。と。


<6章>

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