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前回は、言葉は文化であり、日本は縦社会、欧米は横社会であるといわれていますが、それは言葉にも表れているということを述べました。
今回はその体験談について述べます。
私も30代の会社員時代の頃、九州の阿蘇山の近くに建てられた会社の研修施設で1ヶ月間缶詰の英会話合宿に参加したことがあります。メンバーは全国の各事業所から選ばれた50名ほどの20代から40代の社員でした。朝から晩まで英語漬けです。
そこでは1つのルールがありました。研修期間中、すべて英語を使用すること。日本語は一切使用してはいけないというものでした。日本人のメンバーとも英語で話さなければなりませんでした。日本人と輪になって英語で話していると、ふと感じたことがあります。
それはこの輪の中で横のつながりを強く感じたことです。上下の関係なく、何か皆とフレンドリーになったような気持ちになりました。何か仲間意識ができたような気がしました。欧米諸国に住んだことはありませんでしたが、欧米の社会もこんな感覚なのだろうかと思いました。
この輪は欧米諸国の縮図かもしれないと思ったりしました。
この輪の中では英語が使用されるので、相手を呼ぶのに年齢の上下に関係なく「you」あるいは「Mr.~」だけですませます。
日本語だったら、相手が年上か年下か判断して、年上の場合には「~さん」、年下の場合には「君」、「お前」あるいは「~君」と使い分けます。日本での日常生活では、この使い分けの判断が難しい場合もあり、結構気を使います。
ところが英語の場合は、相手を呼ぶのにも、敬語を使うのもほとんど気を使う必要がありません。
これが年齢の上下があるにも関わらず、私がこの輪の中の皆とフレンドリーになり、フラットに感じた理由かもしれません。
以上、日本は縦社会、欧米は横社会ということを述べてきましたが、ビジネスの世界で、縦社会の日本では年功序列主義、横社会の欧米では能力主義が主流を占めてきたのもうなずけます。
また、この縦社会、横社会に関連して、英語には、上下関係を表す「兄」、「姉」、「弟」、「妹」「先輩」、「後輩」などを一言で表現する言葉はありません。
たとえば、「兄」も「弟」も通常は「brother」の一単語で表現され、特別の場合を除き区別されません。強いて区別する必要がある場合には、「兄」は「older brother」、「弟」は「younger brother」などとそれぞれ二単語で表現されます。同様に「姉」、「妹」は通常は「sister」、特に区別する場合には、それぞれ「older sister」、「younger sister」と表現されます。
以上述べたように外国語を単に異文化間のコミュニケーション手段としてだけでなく、外国語の学びを通じて、その言語を使っている国や地域の文化や発想の違いを知るということが大切ではないかと思います。
そうすれば、いわゆる複眼の視点を持てるようになり、相手をよく理解できるようになるからです。
(本テーマ完)