<< 時の中で >>





で、しつこく申しますが、これは絶対にフィクションです ^^;


                2006.06.16

  << 時の中で >>


 彼の評判は聞いてはいたけど、実際に会ってみてその理由がわかった。

日頃から仲のいい菊池監督に呼ばれ、私はその彼の映画スタッフに加わることになった。

 撮影に入ると四六時中、私は彼の傍にいる。

健康管理も含めて、事細かく口を出した事もあった。

もう何年もこういう仕事をしているはずなのに、彼は新人のように低姿勢で、この業界で

やっていけるのかと思うほどの純朴なところがあった。

人気が出てくると、少しずつ自我が強くなってくる人間が多い中、彼はそうではなかった。

周りにいる人に対して頑張っている・・・そんな印象を受けた。

仕事では常に自分に厳しく一生懸命だ。

当然、周りからの信頼も厚かった。

だからと言って、ガチガチにまじめなわけでもなく・・・冗談も言うし、悪戯もよくやる。

27歳という年の割りは素直過ぎる気もするけど、その分優しい雰囲気を持っていた。

その透明さゆえに・・・私の心にもすんなり入ってきてしまったのか。



 共演者やスタッフ仲間には、彼と同世代の若い女の子も多い。

それでも、何かがあるたびに、彼は私に話しをしてくれるようになった。

子供までいる年上の私は、彼にとって年の離れた姉か、母親のような存在だったのかもしれない。

「今日ね・・・」

「あのね・・・」

と始まる。そういう時は、彼が話したいとき。

忙しくても手を止めて聞いてあげたくなる。

彼には母性をくすぐる何かが残っている気がした。

ひと回り・・・まではいかないが、私だって彼よりも人生を経験している。

時間と共に、私も彼の心のうちがわかるようになっていた。

私はほとんど聞いているだけで、たいしたことは答えてあげられなかったけれど、

彼は言葉にすることで自分なりに気持ちを整理しているようだった。



*********


 撮影現場からホテルに戻ってきた。

明日の打ち合わせを済ませたら今日の予定は終わる。

3基あるエレベーターに俳優もスタッフも一斉に乗り込む。

いくつかの機材もあって、乗り入れずに私と彼が取り残された。

真夜中なので、全部のエレベーターが閉じてしまうとホールは急に静かになる。


彼の顔にはいつもより疲れが見える気がした。

無言でエレベーターの数字を見上げている横顔がいつもと違う。

やっと降りてきたエレベーターに二人で黙って乗り込んだ。

彼が行き先のボタンを押す。

打ち合わせをする部屋のある17F を押した後、考える仕草をしてから、更に12F 、13F、

14F 、15F、16Fとボタンを押した。

「何をしたの?」

悪戯で押したと思って聞いてみた。

エレベーターを遅らせて、先に行ったスタッフになんて言い訳をするのか。

いつも何かたくらんで楽しんでいる少年のようなところがある。

彼は・・・何をやっても憎めないものを持ち合わせていた。

それはいったい何なのだろう。



 振り返った彼は私の質問には答えず

「ね・・・浮気したことある?」

と聞いてきた。

突然の予想しなかったセリフに、初めは意味さえわからなかった。

「え?」

「ご主人を裏切ったこと・・・」

「それは・・・ないわ。」

いきなり、何?

押したボタン通りに、12F で一旦エレベーターは止まり、ドアが開いた。

当然誰も降りないし、乗って来ない。

客室は埋まっているのだろうが、もう夜中の12時を回っている時間だ。

出歩いている人は少ないだろう。

何か悪戯でもするのかと思っていたがその気配はない。

さっきの唐突な質問で、そんな雰囲気でもなくなっていた。

彼らしくない。

何かあったのか?

そう言えば、今日の夕方の撮影も彼はいつもと違っていた。

事務所の社長がわざわざ撮影所までやってきて話しをしていった。

それからだ・・・。

何かあったのだろうか。

彼が動揺を見せるのは珍しい。

数ヶ月かかった今回の撮影も、来週には終わる。

疲れもピークにきているはずだった。


 数秒でドアは勝手に閉まり、エレベーターが動き始めた。そのとき、

「僕ね・・・君が・・・」

「え?」

目の前に彼がいた。彼の両手が私の自由を奪う。

「・・・好きだ。 愛してる。」

言い終わらないうちに、抱きしめられた。

起こっていることを理解するのに時間が必要だった。

彼の胸に強い力で押し付けられている。

私はこの事態を待っていたのだろうか・・・。

何も抵抗できないのではなく、抵抗しない私がいた。

だからといって、応えてはいけないのもわかっている。

私はそんな立場にはない。

彼はこれからを期待されている俳優だ。

プレッシャーの中でいろんな仕事をこなしている。

疲れから気持ちが迷って・・・甘えたいだけだ。


 13F、14F、15Fと、ドアだけが静かに開いては閉まり、決められたように動いていく。

その間・・・彼は黙って私を抱きしめていた。

私は、どう反応すればいいのかわからず、ただ黙っているしかなかった。

というより、彼の熱い力の中で呼吸をするのがやっとだった。

16Fでエレベーターが止まり、同じように機械的にドアが開く。

彼が私の手を取りエレベーターを降りる。

手を引かれるがまま、私も降りてしまった。

話しをしなければならない。

「ごめん・・・今日はどうかしてる。」

エレベーターが閉じてしまうと薄暗い廊下に戻る。静かだ。

その場に立ち止まる。

「気持ちは嬉しいわ。でもね・・・。」

それでも彼は手を離さない。私も離せなかった。

伝わってくる温かさが、愛おしい。

「わかってるんだ。」

「え・・・?」

「君の家庭を壊す気はないよ。君を困らせる気はないんだ。

 大切にしたいから何も言うつもりはなかったんだけど・・・。」

彼は暗い廊下の天井を見上げながら言った。

「私は・・・ちょっと驚いただけよ。

 今のことはあなたの好意と・・・受け取るわ。

 それより、何かあるのなら私に話して。」

「なんでもないんだ。 ごめん。今のこと、忘れて・・・。」

私に視線を移すと、照れ笑いに変わった。

彼がゆっくり手を離す。

話題を変えよう。

「もう少しだけど・・・無理してるんじゃない?

 スケジュールは押してるわけじゃないから、時間は気にしないで、

 最後はあなたがやりやすいペースにしてもいいんじゃないの?」

今日の撮影だけでも、彼にはかなりハードだったかもしれない。

仕事の要求はどんどん高まる。

それに応えようと頑張る姿が痛々しくさえ感じることがある。

「ううん。平気だよ。仕事は全然きついわけじゃない。大丈夫・・・!」

「なら・・・いいけど。」

それでも瞳はどこか寂しげだ。

「ほんとに何でもないの? 私で力になれることがあるなら・・・。」

「え・・・?」

「私にできることは、何でも言って・・・。」

少しの沈黙があった。

「夜は僕の部屋に来て・・・とか?」

私はため息をついて、さっさとエレベーターのボタンを押した。

どこまで本気なんだかわからない。

そう・・・彼は役者だった。

 17Fで降りて打ち合わせの部屋へ入ると、彼はすでに無関係な顔をして他のスタッフに

冗談を言っている。

さっきの顔は何だったんだろう。

その後も彼は、何事もなかったようにいつもと変わりなく接してくる。

以前より優しいのは気のせいか・・・。

周りと違わないのに、自分だけに・・・と考えてしまうのか。

二人の間に何かがあっても困るわけだけど・・・。

それっきり、彼はそういう素振りは見せず、撮影が終わると会うこともなくなった。


 私は彼のその後が気になり、考えない日はなかったかもしれない。

時の人だし、メディアで話題にならない日がないくらいだから忘れる暇もなかったのだろう。

たぶん・・・。

そして、半年後に再会することがなければそれだけで終わったはずだった。



************



 彼には話していなかった。

私は、子どもはいるけれど結婚はしていない。

シングルマザーとして走り続けてきた。

若かったせいだろう。

結婚できないとわかっていてもあの人の子どもは産みたかった。

愛し合った印があれば生きていける・・・そう思って一人で生み育てる決意をした。

実家の母に頼れる、仕事も持っている・・・そんな計算が自信をつけたのかもしれない。

娘の・・・父親がいない寂しさは自分が頑張れば補えると甘く考えていた。

でも実際は、子どもといえども別の人格だった。

仕事柄、時間が不規則なこともあって、つい母任せになり思うように愛情表現が出来て

いなかったのかもしれない。

小学校に入ってからの娘の登校拒否やいろいろな衝突に、間違った生き方をしているのかと

迷い苦しんだ時期もあった。

それでも、仕事の比重を減らし子どもと向き合うことでなんとか乗り越えてきた。

私にとって娘だけがすべてだった。

娘の父親であるあの人のことはいつの間にか、記憶の片隅の思い出に過ぎなくなっていた。

あんなに愛していると思っていたのに、たった一度の・・・一つの言葉だけで、

男のズルさが見えてしまった気がして、ある時から自分でも驚くくらい愛が冷めていくのがわかった。



 仕事をしていると、周りには子どもがいることは自然にわかってしまう。

だが、シングルマザー・・・となると要らぬ詮索をされる。

いちいち説明するのも面倒なので、左の薬指の指輪はつけていた。

たったこれだけで、私の背景は仕事を持った子持ちの兼業主婦と納得されてしまうのだ。

フリーで仕事を受けることが多いから、私のことを知っている人は少ない。

今のスタッフでは菊池監督くらいか・・・。

菊池は私の学生時代からの先輩でもあった。

仕事でもプライベートのことでも私の経歴を全て知っている。

それくらい長い付き合いだった。


************


 その菊池に呼ばれて、前回に引き続き、またスタッフとして入ることになった。

今回もその彼が主演だと聞いて一瞬迷ったのは、以前の彼の言葉のせいもあった。

そして私自身・・・何かを予感したのかも知れない。

それでも、その感情は子供に対するそれと同じだと思っていた。

我が子以外に心を砕くことが楽しく、無意識に気持ちが弾んでいたのかもしれない。

友人からも、やがては子供からも変わったと言われ、少し慌てた。

そんなはずはない。

まさか・・・と思いながらも、彼を意識しないようにしている自分がいる。

何を恐れているんだろう。

気がつくと自分が女だということを思い出していた。

だが所詮、若い映画スターだ。

どうなる相手でもないことはわかっているのだから、今の仕事を楽しめばいい・・・そう考えていた。



 彼は・・・

元々映画を作る側になりたくて勉強していたようだ。

友人からアルバイトで紹介されたドラマの端役がきっかけで役者の道を歩き初め、

あるドラマが彼の俳優としての将来を決めてしまった。

天性の感を持ち合わせていたらしい。

映画の合間にドラマも撮るほどの人気ぶりだ。

幅の広い演技力が認められたのか、先日ついにアメリカの映画会社からオファーが来た。

事務所がこのチャンスを逃すはずはない。

私もやるべきだと思った。

今、彼はそういう時なのだと思う。

更にその後の国内のドラマも予定されている。

 彼自身は、急激な環境の変化に戸惑っていたようだった。

本来やりたかった仕事に携わることが出来て、それには感謝していた。

だが、自分の意思とは関係なく周りが動き始め、プライベートさえ自由にならなくなる見えない力、

その恐さを漏らしたことがあった。

彼が弱音を口にするのは意外だったが、ホッとした部分もあった。

普通の20代の男の子だ。友だちと好きな遊びをし、女の子に夢中になっていいはずだった。

彼にとっては、仕事量や自由のないことはさほど苦ではないらしい。

どんどん重くなるプレッシャー。

最後に残る 『 責任 』 という孤独な空間が、時折彼の胸の中を重くしていた。

彼はまだまだ上っていく。

彼が彼らしく生きているのを見ているだけでいい。そう思った。

傍にいてあげたい・・・どこかにその気持ちはあるけど、私は彼より年も上で、

子どもまでいる女だ。彼にふさわしいとは思えない。

彼の邪魔にはなりたくない。

私の人生はそんなものなのだろう。



 今回も彼の仕事ぶりは監督やスタッフたちを喜ばせた。

映画も、ドラマも回を追うごとに、成長しているのがわかる。

前回と比べても、更にうまくなったと思う。

順調に進んだ撮影もそろそろ終盤という頃。

その日の仕事が終わり、いつものように控え室を片付けていると

「今日ね・・・」

と始まった。

彼の友人の婚約が決まったらしい。素直に喜んでいる。

そして突然話題を変えた。

「その指輪さ・・・違うの?」

「え?」

「結婚はしていないって、本当?」

「誰に聞いたの?」

今のスタッフで知っている者はいないはずだった。

だけど、この世界は広いようで意外と人のつながりは密だったりする。

共通の知り合いがいても不思議ではなかった。

「・・・監督。」

「なんですって?」

どうしてわざわざ教えちゃうかなぁ。

「こないだ・・・うまく撮れないシーンがあった時、監督が飲みに誘ってくれたんだ。

 その時 『 誰かを愛しているのか 』 と聞かれた。」

「あなた、まさか・・・!」

「君を愛しているって答えた。」

男たちの考えていることはわからない。

彼が続ける。

「話をしているうちに 『 知らなかったのか?』 と言われたよ。

 ずっと近くにいたのに・・・。 どうして何も言わなかったの?

 僕が誤解していること、知っていたんだろう?」

ばれてしまったら仕方がない。

「別に隠していたわけじゃないけど・・・。

 娘ひとりだけでも、家族がいることにはかわらないし・・・。

 私は娘のことで精一杯なの。それに・・・。」

「それに?」

「たとえ、私がシングルでも、あなたの言葉に応えることはないわ。」

「あのときの言葉・・・本気だよ。僕は今でも君が好きだ。

 君はどうなの? それとも・・・監督のことを好きなの?」

意外な言葉だった。

「どうしていきなり、監督が出てくるの?」

「監督は・・・きっと、君の事、愛していると思う。

 はっきり言ったわけじゃないけど、僕にはそう感じたよ。」

「彼とはそんな色っぽい話なんかしたことないわ。」

そう、『 先輩 』 としてしか見たことがない。

「そうなの? でも、何となく、わかるんだ。 やっぱり、大人なのかな・・・。」

彼が菊池を尊敬していることは知っている。

でも、いったいどんなハナシをしてきたんだか・・・

「僕のこと・・・嫌い?」

「そんなことはないわ。好きよ。」

「どれくらい好き? 僕がたくさん愛したら・・・愛してくれる?」

「そんなこと・・・。」

愛しているなんて言えるわけがない。


「今の僕じゃダメなの?」

「そうじゃないわ」

「僕は本気だよ。」

まっすぐに見つめられると、うまい言葉が出てこない。

「それを否定しているわけじゃないわ。

 でもね、あなたは今、誰かにいてほしくて私に心を許しているだけよ。

 それはそれでいいの。私もあなたのことは本当に好きよ。

 仕事ぶりも立派で・・・尊敬できる男性だと思う。

 だから、私なりに精一杯支えたいと思っているわ。

 でも、恋愛は別。一生をかけてあなたが愛する人は私じゃない。」

「どうして、そう決めつけるの? 僕は・・・こんなに好きなのに。

 ずっと、傍にいてほしい。」

なんて目で見るの?

そのまま、その胸に引き寄せられそうになる。

きっと彼は、本気で私を愛し支えようとしてくれるだろう。

彼は言葉を裏切ったことはない。

でも、私ではない・・・今は錯覚しているだけだ。

悲しいけれど、そう思っていた。


 利口なのか、素直なのか、諦めが早いのか・・・

翌日から彼はもうその話には触れなかった。

私も何も言わず、撮影の終了と同時にそれぞれ別の仕事に入っていった。


***********


 私は演劇の養成所や専門学校から依頼を受けて原稿を書く機会が増えていた。


臨時で入ったロケ先での仕事が終わる。

他のスタッフはホテルを引き上げ東京に戻ったが、私は原稿の締切りが近いこともあって

そのままホテルに篭って仕上げることにした。

二日おいて名古屋のイベント会場での仕事もあったので移動する時間が惜しかった。

娘はクラブの合宿中で、今は家を空けても気にならない。


 夜の9時を回った頃、パソコンの横にあった携帯電話が鳴った。

彼だった。 先月末で終わった撮影以来、会っていない。

来週のうちに渡米するらしいと誰かが話していた。

胸のどこかに痛みを覚えながら、電話に出る。

「元気だった?」

いつもの彼の声が聞こえる。

それだけで鼓動が早くなる。

あれだけ彼に偉そうに言ってはみたものの、私の落ち込みの方が大きいかもしれないと思っていた。

思ったより、彼は私の心の中に入り込んでいたようだ。

「ええ。あなたは?」

「・・・元気じゃないよ。」

「どうかしたの?」

「会いたいんだ。君に・・・」

どうして心配になる言い方をするのか・・・。

「体調が悪いわけじゃないのね? 変な心配させないで!」

「心配してくれたの?」

「当たり前でしょ?」

「よかった! あのね・・・話しがしたいんだけど。」

「仕事中だから長電話はできないわよ。」

「少しだけ僕に付き合ってよ。出てきて!」

彼のその誘いの言葉がくすぐったかった。

会えない距離にいる安心感があったのかもしれない。

こういうふうに誘われたのは、もちろん初めてだった。二人だけで食事に行ったことさえない。

「私、今静岡なんだけど・・・。」

「知ってる。」

「あなた、今どこにいるの?」

「ホテルのラウンジ」

「・・・え?」

「君がいるホテルの・・・」

どうして・・・!?

どうすればいいのかわからなかった。

思いがけない誘いに心ときめいている私もいるし、拒み続ける辛さがわからないのかと

悲しくなる私もいる。

だけど心は正直だった。 高鳴る鼓動が証明している。

そして、電話しながら鏡の前に立っている私がいた。


 結局、15分後には私はラウンジの彼の隣にいた。

「会いたかったから・・・。」

私が口を開く前に、彼が先回りして答えた。

「だからって・・・わざわざ東京から来たの?」

「そうだよ。」

彼はグラスの氷を揺らしながら静かに答える。

「僕、今夜しか空いてなかったから。

 それに・・・君だけがホテルに残っているって聞いて、ラッキーだと思ってね!」

「そんなこと誰に聞いたの?」

「・・・誰だっけ?・・・」

惚けるから、かえってわかってしまう。そういうところは、演技ができない。

というより、わざと教えているのだろうけど。

「・・・菊池監督ね。何を考えているのかしら・・・。」

どうかしている。なぜ、わざわざ二人を揺さぶるのか。

毎日準備で忙しいはずなのに、こんなところまでやって来る彼も彼だ。

「迷惑だった?」

「そうじゃないけど・・・。

 こんな私にでも会いに来てくれて、嬉しいわ。」

呆れた顔をして見せるけど、実は本当に嬉しかった。

「・・・嘘だよ。」

「え?」

「本当はわざわざ来たんじゃなくて、仕事で近くのホテルに来ていたんだ。」

やっぱり、嬉しくない・・・ことにしよう。所詮、その程度か・・・。

「前言撤回! 結局、『ついで』ってことね。

 でも、いいわ。せっかくここまで来てくれたんだから送別会をしてあげる。」

「がっかりした?」

「まさか・・・!」

顔に出てしまったのかもしれない。


彼は5日後に日本を立つと言った。

何気ない話の中に、彼なりの不安とプレッシャーが見え隠れしている。

ひとりで期待と責任を負う姿が、痛々しくもあり、今まで彼の成長を見てきた私には

彼の姿が誇らしくもある。

でも、言葉以上に頑張っているんだろう。時々見せる寂しげな瞳に緊張が漂っている。

責任感の強い彼のことだ。プレッシャーは想像できないほど強いのだろうが、

それを周りに見せない。

私にだけそれを感じさせることで、彼は私の心を奪ったのかもしれない。今そう思った。


 店の中がざわついてきた。何か起こったのか。

他の客と話をして戻ってきたバーテンダーに聞いてみる。

「騒がしいようですけど・・・何かあったんですか?」

「あ・・・、いいえ。急に雪が激しくなって、交通が完全に麻痺しているようなんです。

 タクシーも難しいと言っていました。

 こんな大雪はこの季節には珍しいんですが・・・。」

「そんなに降っているんですか?」

「すごいらしいですよ。お客様はここにお泊りの方ですか?」

「ええ・・・。」

「よかったですね。

 実はここから動けなくなったお客様が多くて、ホテル側も部屋の確保に慌てているようですよ。」

そう言うとバーテンダーはまた別の客に呼ばれて目の前を離れた。

「あなた、どうやってここへ来たの?」

彼は落ち着いていた。すでにここに部屋を取ってあるのか?

「タクシーで。・・・僕、帰れないね。」

「え?」

「すごい雪だって!」

視線をそらしたまま、グラスを空けた。

「ちょっと!何を考えているの?」

「ん? 僕の寝る場所・・・。」


**********


 神さまは私を試しているのだろうか?

結局、彼を泊めることになった。

撮影からそのまま同じ部屋を使っているので、ツインの部屋のままだ。

「僕のために、ベッドを用意していてくれたの?」

「冗談はやめて! 本当にもう・・・。」

なぜこんなときに、そんなに明るい調子でいられるのか。

愛を拒んでいる私と一緒にいて、彼は辛くないのか?

それとも私をからかっているだけなのか?

「いい? 私はもう少し仕事をしてから寝るわ。

 あなたはシャワーを終わらせたら、すぐに休んで。

 朝までそのベッドから絶対出ちゃダメよ!」

なぜか口調が怒っている。

「わかった!」

やっぱり、私をからかっているのかもしれない。

彼は楽しそうだ。

私だけ馬鹿みたい。

何を一人で緊張しているのか。疲れる・・・。

早いとこ仕事しよう。


 さすがにハードなスケジュールをこなしているだけあって、彼はすぐに寝息をたてた。

撮影中はかなり厳しい睡眠時間でも平気な顔をしている。

眠ることも才能のひとつなのかもしれない。

私は・・・眠れない。 眠れるはずがない。

ため息をつきながら仕事をする。

でも、聞こえてくる彼の寝息が心地よくて、気がつくと心が穏やかになっていた。

 3時を過ぎたところで、一旦ベッドに入った。

これまでのいろんなことが思い出されて、目が冴える。

そのうち、まどろんだのかもしれない。

夢を見ていた。緑の深い山中の小道を歩いているようだった。

どこかのロケ地だったのだろうか・・・?

目を覚ます。時計を見ると、まだ5時を回ったところだった。

もう眠れそうにない。

ベッドから出て、インスタントコーヒーを入れる。

窓の外は、雪のせいか、いつもの同じ時間より明るい気がする。

 窓際に立ったとき、彼の声がした。

「ずっと仕事してたの?」

彼はベッドに起き上がり、立てた両膝をかかえるようにして座っている。

「あ・・・ごめんなさい。起こしちゃった?」

「ううん・・・。」

起こすにはまだ早い時間だと思った。

「・・・ねえ、ベッドから出てもいい?」

そうだった。ベッドから出るなと指示していたんだっけ。

笑いながら私を見ている。

「いいわよ。 やあね、そこまで言わなくても・・・。」

私も笑ってしまった。

彼の分のコーヒーを入れ、カップを手渡す。

「僕がいたから寝られなかったの?」

「違うわ。原稿を書いていたから、頭が冴えちゃって・・・。

 それでも少しは眠ったのよ・・・大丈夫。」

「ほんと? でも、僕が仕事の邪魔をしちゃったね・・・ごめん。」

「それは気にしないで。・・・もう少しだから。」

コーヒーで胸が熱くなる。

「それとも・・・僕に襲われるんじゃないかって心配だった?」

いつもの彼のジョークが始まった。

「まさか!こんなおばさんじゃ、そんな気にならないでしょ?」

「その気になる。色っぽいよ。」

昨夜の寂しげな瞳じゃない。少しは吹っ切れたのか・・・。

「そうね~。せめてあと10才若かったら、記念に私が襲ってあげたけど・・・。」

「じゃあ、今から襲って!」

「ばかね!若かったら・・・って言ったでしょ? 冗談よ!」

「今だって・・・僕は君を愛しているよ。

僕が年上だったら僕の気持ち、受け入れてくれた?」

急に真顔になっている。

「そういう問題じゃないわ。」

「どうして・・・僕じゃダメなの?」

「あなたに寄り添う人は・・・私じゃない。ただ、それだけよ。

 あなたがダメなのじゃなくて、私じゃダメなの。」

「僕は君じゃなきゃダメなのに・・・。」

窓の外の雪を見ている・・・つぶやいた彼の瞳が揺れていた。


「ねぇ・・・。こないだのお礼して。」

飲みかけのコーヒーカップを彼は私の手から取りあげ、テーブルの上に置いた。

「え?」

「パソコンの・・・!」

「ああ・・・」

パソコンと言われて思い出した。パソコンのわからないところを教えてもらったんだっけ。

あれくらいは普通、親切で教えるものよ。

確かにすごく助かったから 『 今度、お礼するわね 』って言ったっけ。 

ほんの社交辞令じゃない。

「それで、何?」

「キスしていい?」

「どうして、そうなるわけ・・・?」

「そうしたいから。」

そんな素直にほほ笑みながら言うセリフじゃないと思うけど。

「キスじゃ合わないんじゃない? 私のキスは高いわよ。」

肩に手を置かれて、なぜか言い逃れに慌て始めた。

「じゃ、あと100回は、ただでパソコンを教えてあげる。」

「楽しそうに言わないで。 そんなイジワルを言うのなら、もう教わらないわ。

 第一、もう会うこともないでしょう?」

「ダメだよ。」

「なぜ?」

「僕が決めたから。」

「そんなこと・・・。」

顔を近づけてくる。

「ちょっと・・・ちょっと待って!」

慌てて両手で胸を押し返す。

「恐くないよ。」

クスクス笑っている。失礼じゃない?

「何がおかしいの? 私だって、そこまでピュアな女じゃないわよ。

 キスの一つや二つ・・・別に恐いわけじゃないわ。」

「じゃ、僕とのキスくらい、たいしたことじゃないでしょ?」

「もちろん、そんなこと・・・」

「じゃ同意したよね。」

なんていう人なの?

言葉を買った私も私だ。

どこかで誘導されているのを楽しんでいるようだ。でも認めない。

「強引なのね。そんな面があるなんて知らなかったわ。」

「大事なことは引かないよ。他にも僕のこと知りたくない?」

「もうその手には乗らないわよ。」

「ムキになっている顔も可愛いよ。」

「今は何を言われても本気にしないわ。」

「僕は全部本気だよ。愛しているって言ったことも。」

ダメだ。彼のペースにはまっていきそうだ。

早く終わらせて、仕事にかかろう・・・。

「わかったから!

 じゃあ、3秒だけあげる。 それで、全部終わりよ。

 5秒後にはタクシー呼んで! いい?」

「わかった!」

そんなに嬉しそうにしなくても・・・。

笑うと細くなる目を見ると何でも許してしまいそうになる。

乗せられたのか、乗せたのか・・・わからない。

彼だってそうだ。私とのやり取りを楽しんでいる。

私が拒絶しないことを確認しているだけだ。

最後の時間を刻み込むために・・・二人で言い訳を探しているようだった。



 そう、キスなんて初めてじゃない。今更何と言うことはないはず。

彼とはもちろん初めてだけど、みな同じはず。

そう、たいしたことじゃない・・・。

そう思っても彼の胸に抱き寄せられ、それだけで心臓が飛び出しそうになった。

これくらいで動揺しちゃいけない。そう自分に向かって繰り返す。

彼の想いを受け入れてはならない・・・そうわかっていることだもの。

キスなんてみな同じ・・・そう思っていたのに、胸が熱くなる。

3秒ってこんなに長かったっけ・・・。

冷静でいたはずなのに、気がつくと自分を失いかけていた。

夢中で彼の背中を抱きしめている私がいる。

力が抜けていく。

いけない、離れなきゃ・・・頭ではそう思うのに、離れられない。

魔法をかけられたように、動けなくなっている。

これ以上この甘い誘惑を続けられたら、完全に自分を失ってしまう。

キスだけで酔いしれている自分を責めながら、その一方で、どうなってもいいかも・・・と

堕ちていきたい自分と二人の私が迷っていた。

でも、やっぱりダメ・・・。彼から離れようと胸を押し返す。

彼は知らんぷりして私を抱きしめたままだ。

約束の3秒はとっくに過ぎているはず。

腕に力を入れても動かない。もがき始めたけれど・・・遅かった。

私の背中を這っていた彼の指が、私の背中のそこに触れてしまった。

そんなに簡単に見つけられるはずがない。

偶然だろう・・・けど、そこだけはダメだった。

一瞬、背中が震え息が止まりそうになった。立っていられない。

気づかないで・・・そう思いながらもがく。早く離れないと・・・。

離れないとどうなるかわかっていたから。

彼にはもうここで終わらせる気はないようだった。

私が応えてしまったことに気づいている。


 無理に止めていた針が時を刻み始めたような気がした。

戒めていたはずの私は、もうそこにはいない。

雪が理屈のすべてを消していく・・・。

そう、きっと・・・雪のせいだ・・・。





 窓の外はまだ静かだった。

雪は止んだのだろうか・・・。

彼がベッドから落ちかけた毛布を引っ張りあげる。

「すごくきれいだよ。

 想像していた以上に色っぽい顔するんだな・・・。」

私の髪を撫でなから彼がささやいた。

「やだ・・・何を想像していたの?」

それには答えず、笑ってまた耳元でささやく。

「さっきの甘い声・・・もう一度聞きたい・・・。」

言い終わらないうちに、彼の唇が耳元から首筋へ這っていく。

理性のある私はまだ行方不明のままだ。

いったい、どこに消えてしまったのか・・・。

こんなはずじゃない・・・そう思いながら、何も後悔していないことにほっとする。

自分でもよくわからない。

彼の腕にもたれている自分は誰なのかと思うほど、現実が一致していなかった。


「ずっと君といたい。」

「それは・・・。

 それはできないでしょ・・・?」

「できるようにするから!」

「ダメよ。今日は特別。一度だけの・・・。」

現実味を帯びた彼の言葉で冷静さが返ってきた。

「僕らの今は間違いだっていうの?」

「そうじゃないわ。 私、本当に愛しているの・・・あなたを。」

「それなら・・・。」

「でもね、ダメなの。愛しているから、あなたを間違いなく幸せにしたいの。

 今は私が気になるかもしれないけど、もっと大事な人が現れるわ。

 私はそれでいい。あなたの将来を大切にして欲しい。」

「僕には君だけだよ。こんなに愛してるんだ。ちゃんと仕事も頑張るから・・・。

 君だって・・・愛してるって、言ってくれたじゃないか。

 君といるのが僕の幸せだよ。」

「お願い、聞いて。これからのことで、今は少し不安があるだけよ。

 でも、あなたはやりたいと思った仕事を迷わず、今やった方がいいの。

 そしたら・・・いつか必ずあなたが本当に守るべき人が現れるはずよ。

 私との出会いはそのためのひとつの時間に過ぎないから。人生ってそんなものよ。」

「そんなのいやだ。自分で決めるよ。自分の人生は・・・。」

「逆らえない流れもあるわ。あなたの傍にいるのは、私じゃない。

 それは感じるの。どれだけ愛しても・・・。

 あなたを愛しているから、あなたのために私ができることは、それだけ。」

「いやだよ・・・。君を離したくない。」

「困らせないで・・・。」

「いやだ。 何があっても僕が君を幸せにするから。」

「もう幸せよ。こんなに。」

「そうじゃなくて、本当にそばにいて君の幸せを守っていたい。

 いつも抱きしめていたいよ。」

「お願い・・・わかって。私は大丈夫だから。」

「君をひとりにしていたくない。寂しい思いをさせたくない。」

「こんなにあなたが愛してくれているんだもの。寂しくはないわ。」

「・・・いやだ。 僕は君がいないと、きっと寂しいよ。」

「今は時間が必要かもしれないけど。」

「いやだ・・・!」

このまま雪に埋もれてしまいたいと思った。

私だって、ずっとこのまま・・・二人でずっとこうしていたい。そう思う。

でも、ダメだ。彼の将来は守らないと・・・。

今辛くても時間が解決する。そう信じるしかない。

かわいそうだけど、彼には痛みを覚えてもらうときなのかもしれない。

そう、ただの男のままじゃ困る。これだけ私が愛したんだから・・・。

熱く深く強い人間になってもらわないと、愛した甲斐がないじゃない。

私だって死ぬほど傷つくんだから・・・せめて。

私には平凡な女の運命は用意されていないらしい。

何が目的で神さまは私に彼と出会わせたのか。

出会った幸せの代償にしては大きすぎる切なさだと思う。

きっと、この痛みが癒えるまで私は神さまを責め続けるだろう。

「君は平気なの・・・?」

駄々っ子のように声を荒らげかけて、言葉を止めた。

こぼれた私の涙に何も言えなくなっている。


 彼だってわかっているはずだった。自分が背負っているもの。

今やらなければならないこと。これからのこと。

私が言った意味は、彼の方がもっと感じているのかもしれない。

自分ひとりが我慢したり意思を押し通したり・・・だけでは済まされない。

映画だけではなく、いろんなプロジェクトが動き始めている。

彼は彼を取り巻く全ての会社やスタッフすべてを守る責任を背負っていた。

もうすべてが後戻りできないことを知っている。

これからまた、前に進むしか許されない彼。

今だけの・・・心のどこかにある不安とわがままを出してしまう必要があったのだろう。

それを受け止めるのが私の役目だった。それだけ・・・。

けれど、私はどこまで受け止めるべきだったのか。彼を・・・。

最後まで拒絶すべきだったのか。愛していると答えてはいけなかったのかもしれない。

でも、私もただの女だ。

彼の心が苦しむのをわかっていながら、受け入れてしまった。

私もひとりで苦しむことに耐えられなかったのかもしれない。

せめて一時・・・苦しくてもいい、同じ場所で二人だけの時間の中にいたかった。


黙って私を抱きしめる彼の呼吸が震えている。

涙が止まらない。



***********



 枯れたような木々の間を二人で歩く。

光を浴びることなのない想いを、きれいなまま覆い隠した季節はずれの雪。

騒いだ心が静まるように、少しずつ日を追って雪も消えていく。

寂しげな風景なのに、芽吹きの気配が見えない春を知らせていた。

明日、日本を離れる彼との・・・最後の時間。

言葉にしなくても、気持ちが確かめ合えている気がする。

つないだ手をいつ離すのか・・・。

行方を決める瞬間を待つ。

怯えと安堵の入り交じった二人だけの今。

手をつないだまま、二人で道に迷うこともできたかもしれない。

でも、その先には彼にふさわしい出口は探せない。

ここにある、輝く未来の扉の前で私は彼を送り出す。

後悔という言葉は存在しない。

動き始めていた時計の針は、わずかに時を進めただけで、その終わりを告げようとしていた。

この先、二度と動き出すことはない。

幸せになって欲しい・・・手の温もりがそう伝え合う。

この次に出逢うとき、互いが幸せな顔をしていることを約束する。

彼のために、私も幸せを探さなければならない。本当にあるのか、わかってもいない私の幸せ。

でも、それが彼のために私にできるたった一つのことだと思う。

あなたがどこにいても、幸せに過ごしていれば私も幸せを探せる。

いつか、別の誰かを愛せる日が来るはず。

私が幸せを感じていれば、あなたがくれたこの愛も心の中で咲き続ける。


 針が止まった。

どちらからともなく、つないだ手を離す。

彼も、私も、指が離れた瞬間の・・・この疼きを一生忘れないだろう。


彼が大きく深呼吸して車に乗り込む。

「愛してる・・・。」

最後にそうささやいた。

サングラスで潤んだ瞳を隠し、ほほ笑みながら軽く手を上げて、彼はアクセルを踏み込んだ。

新しい彼の旅立ちを最初に見送ったのは私。

誰にも言えないけど・・・誇らしかった。



***************


 時間の偉大さを思う。

いつからだろう。

切なさより、出会った幸せの方が大きかったと感じるようになっていた。

あの時、神さまを責めてしまったことに許しを乞い、そのときの導きに感謝する私がいる。

確かにあった「時の痕跡」は消えることなく私の心の中にある。

大切なものはどんなに時間を越えても、色鮮やかなままでいてくれるようだ。

今でもこの手に残っている温かい彼の想いが、私を守ってくれていると感じる。



 あの雪の日から4年後の春、私は彼の結婚式の披露宴に招待された。

夫である監督の菊池とともに・・・。

会場は業界関係者で一杯だった。内緒話をするように菊池が私にささやく。

「まだ公表していないけど、次の映画があいつで決まったんだ。

 いい男になっただろう?」

既に彼の映画を何本か撮っている菊池は、彼の成長振りを我が子のように自慢する。


「そういえば、君も一役買ったんだよな。」

「何が?」

「あいつを大人の役者にしたのは君だろ?」

「何のこと?」

ほほ笑みながら菊池が私の手を握る。

「いや・・・なんでもないよ。」

菊池がすべて知っているだろうことはわかっていた。

でも、あえて何も聞かない。そういう人だったから、心をすべて預けて愛せたのかもしれない。

彼も私も約束を守ることができたようだ。

彼のパートナーに向けた笑顔を見ながらそう思った。





おわり♪




ありがとうございました♪






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