森田理論学習のすすめ

森田理論学習のすすめ

2016.06.27
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鈴木知準先生は大正12年、14歳(静岡県立掛川中学2年)の2学期の頃から、不眠症と胃部不快感、頭内朦朧感にとらわれるようになった。

N大学病院の精神科、胃腸科にかかっていたが一向によくならなかった。
自宅では土蔵の2階に居室を作って起居することとなった。
土蔵に入ったら外の物音は聞こえなくなったが、持っていた懐中時計の音が耳について苦しくてどうにもならず、その時計を夜半火鉢にぶっつけて壊してしまったこともあった。
この頃から毎夜のように遺精するようになって、頭内朦朧感はさらに強くなった。
それでも朝は早く起きて、机にしがみついて勉強しようとすると、肩がはり、首がこり、腰がいたくなって、すぐにひっくりかえって寝たくなり、頭はますますぼんやりして勉強はできなかった。
しかし何回となく勉強しようと机にしがみついて努力していた。
不眠恐怖はますますひどくなり、大正14年秋頃は夕方になると落ち着かなくなって来て、布団を見るのも恐ろしくなった。

昭和2年3月13日、17歳の時、森田先生の診察を受け、登校拒否の意志薄弱性精神病質と診断されいったんは入院拒否された。


早速臥褥に入った。これが大きな転機になったといわれている。
過去3年余の不眠恐怖、胃部不快感、頭内朦朧感はどうでもよいという気になった。
自由な心の態度に飛躍していたのだ。
それは神経症になる前に、勉強仲間だった2人の友人が、4年卒業で旧制高校に進学していった衝撃も関係していた。
臥褥後庭での落ち葉拾い、枯枝とり等の軽い作業を始めた。
森田先生からは疲れたら縁側で横向きに転がることと言われた。
背中をつけると気がゆるむのでしてはいけないと言われた。

家族との遮断の環境で、目の前の必要事にすっと入っていく、動きの徹底的生活で私は修練された。
土釜で紙屑でのご飯炊き、森田先生にうちこまれ通しの、先生のつや布巾かけ等思い出に残る。
先生にうちこまれるので、嫌なことにすっと入り切ることが容易にできる。
これが、神経質の不安症状になり切る態度の基礎経験である。


森田先生の所でこのように、目前の作業の中に入り込み、自分の部屋で一服することもなく動き回っていた。
退院したら、今度は入試試験準備のために、夢中になって勉強に入っていった。
その後1日12、3時間の勉強を続け、昭和3年には旧制浦和高校、その後東大医学部に合格した。

森田先生の入院治療を終えた後のことを振り返って次のような心の変化を述べておられる。
私は5月7日に退院し親戚の家に1泊した。

私は寝ながらそれを見て、なんと美しいことかと全く感嘆したのである。
黒い枝と新緑の若葉が、ぴたりと目に焼きついたのである。

その翌日東海道を8時間の列車の旅をした。
保土ヶ谷、戸塚、大船付近の景色、箱根付近の山北、御殿場の山間の景色、緑の若葉、紅の蓮華草、麦の穂、その景にぴたっと焦点があって、私には全く見たこともない美しさであった。
私は全くの驚きの心で自分の変化を感じたのであった。
60日の入院生活の前と後ろが、全く異なった明暗の世界であることが、ありありと思い起こされるのである。心の転機によってかくも変化するものかを私は知ったのである。
不安を相手に格闘するのではなく、目の前のなすべきことにすっと入りこみ、ものそのものになり切っていく癖を身につけることが森田先生の入院療法の眼目だったのである。
(神経症はこんな風に全治する 鈴木知準 誠信書房 37ページより引用)





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Last updated  2016.06.27 06:07:03
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森田生涯 @ Re[3]:強情と盲従の弊害について(02/27) ststさんへ 今の生活は日中のほとんどが…
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