森田理論学習のすすめ

森田理論学習のすすめ

2020.06.18
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5月号の生活の発見誌に「柿の実事件」の話が載っている。
山野井房一郎氏の体験談だ。
ある時森田先生が山野井さんに「柿の実を一つとってほしい」といわれた。
柿の木には50個ぐらいの実がついていた。
その時森田先生のところには23、24名の人がいた。
50個とれば一人当たり2個から3個は回ると考えられました。
他の入院患者の応援を得て、50個全部をもぎ取りました。
その中から大きくて色づきがよい柿を3つ、4つ先生のところに持って行った。
「よく取った」と言って森田先生からからほめられると思った。

ところが先生は「そうか」と小さな声でおっしゃったきりです。
山野井さんは、私があんなに苦労して、しかも大勢動員して自分が大将のようになって、せっかく一生懸命に取りましたのに、心外だと思っておりました。
山野井さんはこの事件を後で振り返って、これではまだ退院させるわけにはいかなかったのだなと感じたそうです。

普通はこのように依頼があった時、言われたことだけではなく、プラスアルファを付け加えたのだから相手から評価されるはずだと考えます。
言われたことだけをするのは、お使い根性といいます。
イヤイヤ仕方なく、早く片付けてしまいたいと思って行動するので、心がこもっていない。
また、実践・行動によって、弾みが付き、気づきや発見、興味や関心が高まることは少ない。
森田理論は、実践・行動することで感情が動き出して、弾みがつくことを目的としていますので、山野井さんの行動は何ら問題はないし、評価されるものだと考えるのが普通です。

どうしてこのようなずれが生まれたのでしょうか。
これは相手の考えや気持ちを無視して、自分の考えや気持ちだけを優先して行動しているからだと思います。この時の森田先生の思いはどんなのだったのだろう。

それは昔からいた婆や教えてくれた。

森田先生の立場から見れば、相手の気持ちを軽視、無視して独りよがりの行動という事になります。自分の立場からのみ考えて行動したことは、相手と軋轢を生みだすという事です。

行動するにあたって気づいたプラスアルファを付け加えることは素晴らしいことです。
ただそれは相手から見ると、「小さな親切、大きなお世話」になる場合があるのです。
そういう場合は、あらかじめ相手の気持ちや考えを確認する必要があるのです。
「先生、柿が50個ぐらいありますので、全部とってもよいですか」

そういわれれば、自分の考えは引っ込めざるを得ない。
結果として相手と対立することはなくなる。

気づきや発見、アイデアなどを思いついたとき、他人に何ら影響を及ぼさないのなら、積極的に行動に移してみるとよい。うまくいかなければ、何かを掴んで修正していく。
どんどんやる気が生まれてくる。努力即幸福の世界に入れる。

ところが少なからず相手に影響を及ぼす場合は、ひとりよがりの行動は慎む必要がある。
自分の気持ちや考えと相手の気持ちや考えの2つを天秤にかけることが欠かせない。
それが一致するところを確認して、初めて実践行動へと舵を切りなおしていくのだ。
そうすれば二人ともハッピーになれる。
自分一人だけの考えや思い込みで行動すると、相手と対立してしまうことが多い。
なれあいの関係になると、「いつもこうしている」という先入観で、この基本を無視している。
そして小さな対立が次の対立を生んで、人間関係が悪化する。
終いには人を避けて自分一人で生活した方がどんなにか気が楽だという気持ちになる。
しかし孤立、孤独な生活は味気ない。寂しいものです。
それは精神的にも身体的にも、他人との付き合いの中でしかいきいきと生きていけない人間の宿命だと思います。
それができると言い張る人は仙人のような生活に甘んじるしかありません。





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Last updated  2020.06.18 06:28:33
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