森田理論学習のすすめ

森田理論学習のすすめ

2021.11.05
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森田先生の言葉です。

神経質で治りにくい人は必ずみな、少し残った不快感をもって、強いて治らないといい張る人であって、そんな人には、神様も「あんなにまでいうものをかわいそうだ」といって、治らない事に決めて下さっているのかも知れません。神様は気が長いからよいけれども、僕は気が短いから、憎らしくなってしまう。(森田正馬全集 第5巻 696ページ)

神経症は完全に治すことを目標にしない方がよいといわれています。
たとえば、戸締りやガスの元栓が気になる人は、生活に支障のない範囲で治ればそれでよしとしなければならない。その不安が完全になくなることはあり得ないし、その不安は残しておいた方がよいのである。その人の為になるのです。

対人恐怖症の人は、対人恐怖症に振り回されて、日常生活、仕事、勉強などが手につかなくなる。それが少し治ってくると、不安に振り回されなくなり、本来のなすべき目的に向かって手足が動くようになる。その時点で、対人緊張がなくなっているかと言えば、そんなことはない。
特に、自分を批判、否定、無視、軽視、からかう人は依然として苦手である。
うっかりすると、またとらわれてパニックになりそうな気がする。
気持ち的にはすっきりとしない。
人を見ると危害を加えられそうで、常に防衛態勢に入ってしまう。

ここでさらにその種火のようなものまで、取り除いてしまおうする人が出てくる。
このように考えると、いつまで経っても対人恐怖症は治らない。

よいところまで到達したのに、この方向に向かうことは元の木阿弥になる可能性がある。
過ぎたるは及ばざるがごとしとはこのことだ。
他人の思惑が気になるという気質はどうにもならない。
神経質性格もおいそれと発揚性気質などに取り換えることはできない。
それらはその人のアイデンティティなのである。
それを無くしてしまうことは、その人がその人ではなくなるということを意味する。
なくすることはできないし、なくそうとしてはいけない。

自分の目標とする7割程度治れば、それでよしとしなければいけない。
7割程度治った時点で、神経症を治すという努力を中止することが得策である。


私の場合でいえば、森田実践に取り組んで15年くらいは、来る日も来る日も神経症を治そうとしていた。そんな時、「神経症は治そうとしていては10年、それ以上の年月をかけても治らない。治すのを止めたときはその日から治る」という森田先生の言葉を見つけた。

そして「俎板の鯉になったつもり」「清水の舞台から飛び降りるようなつもり」というキャッチフレーズを机の前に張り付けた。
後ろ髪をひかれる思いで、対人恐怖症を治すという努力と縁を切った。
つまりしぶしぶやむなく神経症との格闘から撤退していったのです。

それでは、益々対人恐怖症が悪化するだろうと思われるかもしれません。

そこに投入していたあり余るエネルギーを、生活面、仕事面、対人関係に投入することが可能になりました。規則正しい生活、凡事徹底、好奇心のある事、興味や関心のある事、家族や親との付き合い、不即不離に基づいた人間関係の改善、家庭菜園、一人一芸の習得、資格試験の取得などに取り組むことが可能になりました。続々と成果が上がってきました。

今まで通り神経症と格闘していては、何ら果実は手にできなかったと思います。
今思うと、60%くらいの不本意な治り方を受けいれて、「生の欲望の発揮」の方向に転換したことが正解であったと断言できます。他人の思惑が常に気になるが、やりたいことが多くて、それらに一方的に振り回されることがなくなったという状態が対人恐怖症が治ったということなのです。決してすっきりと跡形もなく完治するようなものではありません。

ここで声を大にして言いたいことは、神経症は中途半端な治り方で十分です。
アリ地獄の底から地上に這い出た人は、それ以上の治し方を目指すよりも、「生の欲望」に向かって舵を切れるかどうかが運命の分かれ路になると思います。
このことを、どうかご自分の体験で確認してみてください。





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Last updated  2021.11.05 06:20:05
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森田生涯 @ Re[3]:強情と盲従の弊害について(02/27) ststさんへ 今の生活は日中のほとんどが…
stst@ Re[2]:強情と盲従の弊害について(02/27) 森田生涯様、返信アドバイスをしていただ…
森田生涯 @ Re[1]:強情と盲従の弊害について(02/27) ststさんへ コメントありがとうございま…
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