森田理論学習のすすめ

森田理論学習のすすめ

2023.03.19
XML
北海道の浦河町にある「べてるの家」のお話です。

統合失調症の患者の6、7割にあらわれるという幻聴は、とても一筋縄ではいかない厄介な相手だ。頭のなかに、現実にはありえない人の声や音が聞こえ、しかも多くは「死ね」とか「バカ」といった否定的なことばで人を傷つけ混乱させる。
朝から晩まで1年365日こんなことをいわれていたら、ほんとうに頭がおかしくなってしまう。

そういう人は、病院で大量の強い薬が処方されるのが一般的です。
その薬物治療は、考えることも、動くこともできなくなってしまいます。
一時的に症状を抑えられたとしても、またすぐに再現されてしまう。

「べてるの家」では、そんな無理はやめて、幻聴がどうせなくならないのなら、いっそ仲よく暮らすことはできないだろうかと考えたという。
そして1990年代、「死ねバカ」系の幻聴に、「幻聴さん、きょうはどうかおとなしくしていてくださいね」とていねいに対応したところ、「そうか、それじゃあ」と、おとなしくなる幻聴の例が次々に報告されたのである。

もちろん、それで幻聴がなくなるわけではなく、せいぜいおとなしくなる程度で、しかもそれがどのメンバーにも起こるわけではないのだが、それでもこれは当事者にとって瞠目すべき対処法だった。


お客さんというのは、頭のなかに浮かぶネガティブな思考全般のことである。
たとえばミーティングに出ようとしたとき、「仲間はみんな、自分のことを嫌っているのではないか」というネガティブ思いが頭に浮かび、尻ごみするようだったら、それは「お客さんがきた」、あるいは「お客さんが入ってきた」という。

きらわれているだけではなく、自分はダメな人間だ、他人が自分の悪口を言っているのではないかという疑念、なんでもない仲間のひとことが自分を非難しているのではないかという思い込みもまた「お客さん」である。
幻聴と似ているが、幻聴が音やことばであるのに対し、お客さんは想念であるところがちがう。そしてまたこれがじつに便利な用語で、浦河の日常生活では挨拶のように使われている。

お客さんがなぜ便利な言葉かというと、メンバーはそれで自分のいまの心理状態をリアルタイムで周囲に伝えることができるからだ。
「いまお客さんだらけになっています」「その話されると、お客さんくるんだよね」といいながら、自分の心のなかを開示し、ほとんど裸の自分を伝えていく。

さらに、頻繁に使われることばとして、「誤作動」がある。
「仲間に無視されている」「きらわれている」といったお客さんや、「攻撃されている」といった被害妄想があり、自分が過剰な反応をしているとき、また意図しない反応をしているような場合、それは誤作動だという。
旧来の概念でいえば「妄想だ」と決めつけられるような場合であっても、「誤作動だ」と言い換えるとメンバーは納得しやすい。
誤作動が言葉として定着しているのは、語感の新鮮さもさることながら、言葉が実際に当事者の感覚にあっているからだろう。

べてるの家では症状と敵対しないで、「さん」づけで丁重に取り扱っている。

症状に振り回されて、支離滅裂な言動をしてしまうのは、ブレーキとアクセルを踏み間違えるような誤作動が起きているとみなす。

「べテルの家」では、統合失調症などの精神疾患を抱えている人たちが、力を合わせてお互いに助け合いながら仕事や生活をしています。
幻聴や病気が出てきたとき、まるで第三者が外から症状を観察するような感じになっている。それがミーティングを通じて仲間同士共通認識として定着しているのです。
自分も許されるし、相手も許すことができているのです。
(なおりませんように 斉藤道雄 みすず書房 18ページ)


神経症を「さん」づけで呼ぶ。
対人さん、確認さん、パニックさんなどと呼ぶ。
痛めつけようと思っている神経症のほうは居心地が悪くなるのではないか。

神経症でパニックになっとき、頭のなかにお客様がきたと考える。
お客様がきたときはそれなりに対応しなければならないので、それ以外のことには手が回らない。手がすくまで、ちょっと待ってください。

神経症で逃避してしまうときは「誤作動」を起こしている。
誤作動を修正するので多少時間をいただきますので、ご了承願います。

集談会は神経症で悩んでいる人や以前に悩んでいた人の集まりです。
このようなやり取りができると、神経症の見方が変わってくるのではないでしょうか。





お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

Last updated  2023.03.19 06:41:44
コメントを書く
[治るとはどうゆうことか] カテゴリの最新記事


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x

PR

Keyword Search

▼キーワード検索

Profile

森田生涯

森田生涯

Calendar

Comments

X youhei00002 フォローしてください@ Re:愛着障害について(03/12) X youhei00002 フォローしてください
森田生涯 @ Re[3]:強情と盲従の弊害について(02/27) ststさんへ 今の生活は日中のほとんどが…
stst@ Re[2]:強情と盲従の弊害について(02/27) 森田生涯様、返信アドバイスをしていただ…
森田生涯 @ Re[1]:強情と盲従の弊害について(02/27) ststさんへ コメントありがとうございま…
stst@ Re:強情と盲従の弊害について(02/27) 森田生涯様、こんばんは。 過去に何度かコ…

© Rakuten Group, Inc.

Design a Mobile Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: