森田理論学習のすすめ

森田理論学習のすすめ

2023.04.01
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森田先生のところに入院されていた山野井房一郎氏の主訴は書痙である。

森田先生から次のように言われた。
1、不自然なペンの持ち方をやめること。そのために手が震えても、あくまで普通の持ち方をすること。
2、上手に書こうとしないで、他人にわかるように書くこと。それには活字をまねて書くのが一番である。
3、字の練習はやめて、むしろ震え字を稽古すること。

ところが、これ等のことがなかなか実行できなかった。その理由は、次のとおりである。

1、書けなくては困るので、不自然でも、書けるような持ち方をしてしまい、そのため普通の持ち方はなかなかできない。
2、自分の意識では、上手に書こうなどとは最初から考えてはいない。下手でもよいと思っているのに、書くことができない。
3、震え字のけいこということは、手や腕の自然の震えにまかせ、それにさからわないで運筆をする練習を指すと思うが、これもなかなかうまくゆかず、こうやってもうまくゆかぬ、ああやってもうまくゆかぬで、結局まだか、まだかと、上手に書けることを期待し、かえって反対の効果をもたらすようになった。


理解のよい患者で、忠実にこの3か条を実行することができれば、その時から一瞬にして全治すると確信する。
ペンの持ち方は、普通にするのが書痙治療に一番の捷径であって、また、このほかに治療法がない。
私のように、書けないからといって不自然の持ち方をしたのでは、いつまでも書けるようになりはしない。
書きにくいけれども、ちょっとがまんして普通の持ち方にすれば、間もなく慣れるものであるのに、実に私は、遠い遠い道を経てきたものである。
ちょうど歯の金冠と同様で、最初の2日、3日はそぐわない感じがするけれども、これはやむをえないので、数日にして少しも気にかからなくなるようなものである。
震える、書きにくい、なんとなくそぐわない普通の持ち方も、少し辛抱していれば、やがて何ともなくなる。
金冠の具合が面白くないからとて、2日、3日で取りさり、またもや入れかえるというふうでは、いつまでたっても解決がつかない。
私の経験がまったくこれで、今考えると、ばかばかしい限りであった。
(生活の発見誌 1969年(昭和44年)1月号 44ページ)

山野井さんの話を基にして私のことを振り返ってみた。
神経症に陥ると、普通の人と自分を比較して、これではいけないと慌てふためいてしまう。何としても人並み程度にはしなければ、社会の落ちこぼれとなってしまうというところから始まるように感じる。


全治した今でもその気持ちは完全になくなってはいない。
コアの部分にしっかりと残っている。私はこれを自分の個性と捉えている。
個性をなくすると自分のアイデンティティもなくなってしまう。
それはまずいことだと考えています。

治ったというのは、対人恐怖と関わっている時間が、どんどん減ってきているというところにあると思っている。

治るにつれて、症状以外のことを考えることができるようになった。
それが90%、80%、70%、60%、50%という具合に比重が下がってきた。
現実的な生活面のことで悩むことが多くなってきたということです。
症状のことを気にしている時間帯が半分くらいになれば、別にむきになって症状を治そうなどとは考えなくなってくるものだと思っています。
それよりもルーティンワークをこなしていくことが忙しくなってくる。
ふと気がつくと症状のことは忘れていた。そういう時間が増えてくる。
そして生活の中での楽しみや感動を数多く味わえるようになる。
対人恐怖症の治り方は実はこんなものではないかと思っています。





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Last updated  2023.04.01 06:20:05
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森田生涯 @ Re[3]:強情と盲従の弊害について(02/27) ststさんへ 今の生活は日中のほとんどが…
stst@ Re[2]:強情と盲従の弊害について(02/27) 森田生涯様、返信アドバイスをしていただ…
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