森田理論学習のすすめ

森田理論学習のすすめ

2023.12.07
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「本阿弥行状記」にこんな話がある。
あるとき、本阿弥光徳が徳川家康から正宗の脇差を見せられた。
徳川家康は自慢げに次のように言った。
「この刀は代々、足利公方家の宝とされてきたもので、足利尊氏公の直筆の添え状まである。いかがなものか」

光徳は家康を前にして、脇差を鑑定した。
刀は確かに正宗だが、何度も焼き直しをしていて使い物にならない。
光徳は正直に鑑定した結果を述べた。
家康は腹を立てて以後光徳を召し抱えることはなかったという。

光徳は家康の逆鱗に触れて、手打ちを覚悟の上鑑定したのである。

それなのに、家康の威厳を恐れて、いい加減な目利きをしたとなると、自分の存在価値に傷がつくことを恐れたからである。

今日はこの逸話をもとにして「正直」ということについて考えてみました。
光徳は正直に鑑定結果を家康に報告した。
自分の信念に従って正しいことを言ったので自己満足している。
たとえそれで命を失うことがあっても構わない。
家康だったから命だけは助かったが、織田信長だったらどうだろうか。
多分生きながらえることはなかったと思われる。
そして家族が路頭に迷うことは目に見えている。
最悪本阿弥家は反逆者としての汚名を末代まで受けることになりかねない。

赤穂藩主の浅野内匠頭は、江戸城松の廊下で自分を侮辱した吉良上野介に切りかかった。
目的を果たすことなく、本人は即日切腹、御家断絶の処分を受けた。

自分の気持に正直に行動した結果、取り返しのつかない結果を招いてしまったのである。
怒りの感情を解放したので一時的にホッとしたが、周囲の人たちを道連れにして奈落の底に落ちたのである。

自分の感情や気持ちに素直になるということは、よいことだというのが一般的な考え方のようですがはたしてそうでしょうか。
森田先生は正直さよりは人情が優先されなければならないと言われています。
会社で嫌いな人には挨拶もしない、無視するというやり方は問題です。
また博打をしていた父親を警察に訴え出るような子どもは低能者か意志薄弱児だと言われています。

高良先生は顔色の悪い人を見て、「あなたはガンかなにか重大な病気にかかっているに違いない」などと軽率なことをいってはならないと言われています。

行動する時は正直さにとらわれて、それを前面に押し出してはいけないということだと思います。
相手の気持ちを思いやると相手を傷つけるような発言は思い留まることができます。
相手の気持ちや感情を逆なでするようなことを言うと、直ちに禍が自分に降りかかってきます。

不平不満の感情などを相手にぶっつけると、その弊害ははかり知れない。
森田では感情と行動はきちんと区別する必要があるといいます。
相手が気分を悪くするようなことを平気で口にしてはいけない。

正直に生きるというよりも、相手の気持ちを思いやることを優先する人は人間関係で躓くことは格段に少なります。
せっかく森田で学んだことですから、ぜひとも応用したいものです。





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Last updated  2023.12.07 06:39:05
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森田生涯 @ Re[3]:強情と盲従の弊害について(02/27) ststさんへ 今の生活は日中のほとんどが…
stst@ Re[2]:強情と盲従の弊害について(02/27) 森田生涯様、返信アドバイスをしていただ…
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