森田理論学習のすすめ

森田理論学習のすすめ

2024.03.05
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カテゴリ: 森田番外編
水谷啓二氏は1957年(昭和32年)生活の発見の創刊にあたり次のように述べています。

私どもは精神医学、心理学あるいは人間学の面では森田正馬博士の教えを継ぎ、 教育及び社会生活面では下村胡人先生の教えを継ぎ、下村先生の主催された雑誌「新風土」の伝統を守りたい と思います。時代を超越して千古不易の心理を把握された二人の先師の心を心として、毎日の生活の上に具現し、社会にひろめてゆきたいと思います。(ノイローゼをねじふせた男 岸見勇美 ビジネス社 132ページ)

今日は3月号の生活の発見誌から刺激を受けて、下村胡人の思想・考え方を取り上げてみたいと思います。
下村胡人は「次郎物語」の著者として有名です。
次郎物語は5部まである。1部は映画化された。
1部は生まれた次郎がすぐに里子に出された。
これは下村胡人の実体験であった。
その後実家にもどされたが生みの母親にはなつかない。

次郎は当てつけにけんかやいたずらばかり繰り返す。
今でいう愛着障害を抱えた子どもの苦悩と葛藤を題材にしている。
ちなみに5部は、下村胡人が主催されていた青年団運動が取り上げられている。

下村胡人は、東京帝国大学を卒業後一旦郷里の佐賀県に戻り、唐津中学の校長などを歴任している。
その後東京武蔵小金井の青年団講習所で村の若者の社会教育に取り組まれている。
そこに京都大学哲学科を卒業した永杉喜輔が加わった。後の群馬大学教授である。
永杉喜輔は熊本の五高で水谷啓二と同級生であった。
水谷啓二は永杉喜輔を通じて、下村胡人の考え方や思想に接し大きな影響を受けた。

下村胡人は「新風土」という雑誌を出していました。
武蔵小金井の青年団講習所では、全国から小学校を出たばかりの青年たち30名と、学歴などまるで無視して肌を突き合わせての合宿を行っている。
青年たちに人間の本来の考え方、生き方をみんなが共に生活する中で、それぞれにつかみ取ってほしいと思っていたのです。


下村胡人の考え方は、 「あたりまえのことをあたりまえにやろう」 ​​ 「凡人道を非凡に歩め」 ​​ ということが基本になっている。
水谷先生が、「神経質者は風雲に乗じて成功を収めるタイプではない。平凡を軽視しないで20年、30年と積み重ねると類まれな非凡な人になれる」と言われていることに通じるところがある。
青年団講習所では、日常茶飯事の炊事、洗濯、掃除、風呂を沸かすのは自分たち自身で行うのです。座学ではなく体験学習なのです。
下村胡人自身はトイレ掃除に率先して取り組んでいたそうです。

下村胡人は、凡人道を実践していない人がどんなに素晴らしい人生論や国家の在り方を論じたところで意味はないと考えていたのです。
(凡人の道 永杉喜輔 渓声社 200ページ参照)

下村胡人は「煙仲間」運動を提唱していた。
本来、「煙仲間」というのは、佐賀鍋島藩の「葉隠」からきており、名もない若侍たちが武士としての生き方を語り合った集まりをそのように名付けたものです。
下村胡人はその精神を受け継ごうとしていたようです。
どんな嫌いなもの同士でも肌を接して話をしてみると、必ず分かり合えるようになるという考え方を持っていた。
これはヘルプセルフグルーブ、自助組織の意義を高く評価されていたということではないでしょうか。NPO法人生活の発見会の存在意義にかかわるところです。

下村胡人の教育に対する考え方は自己教育です。
​「教育は自己教育に始まって自己教育に終わる」​ というのが下村胡人の教育の根幹です。青年団講習所でもその点ををきちんと踏まえて運営していました。

規則はみんなで作ればよいという考え方なのです。
30人がどういう方向を目指してやっていくのか、何も教えないのですから、最初はみんながキョトンとしていました。
下村胡人のイニシアティブを期待していた青年たちは、下村胡人のやり方を痛烈に批判しました。

永杉喜輔は次のように語っている。
これはそのときは分からなかったんですよ。
規則は自分たちで作るものだ。規則があって生活がある。
組織の中に入るのではなくて組織は自分たちで作るのだ。
結局自分ですね。最後は自分で、身体で悟るしかない。
これが基本だということを、先生は青年団講習所の生活の中で、口では言わずに、そのような人間教育を行っていたということですね。
(同書 198ページ)

下村胡人の名言を紹介しておきます。
​​ 道が見つからなければ切りひらけばいい​

​自分の長所を伸ばすことに夢中になっている人は、自分の欠点を飾ることに決して心を労しないものである​







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Last updated  2024.03.05 06:39:11
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