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2005年09月15日
鳥取物語 第八章 第二節 ●小夜、豊にからかわれる●
(2)
テーマ:
連載小説を書いてみようv(10282)
カテゴリ:
カテゴリ未分類
分校維持費を集金した日の翌日、橋本先生が“幕の内弁当”なる制度を発表し、小夜の目からうろこが落ちることになった。
先生が子供たちのお弁当を回り、ひとつずつおかずを集める。
そして、自分のお弁当にもの足りなそうにしている子供たちが、集められたおかずを好きに足せるというのだ。
これがほんまの幕の内、と先生は笑った。
その日の昼休み、小夜はしばしまわりの喧騒から離れるべく学校裏の雑木林に入り込み、散策しながら思案をはじめた。
今は考えなければ。小夜は薄いくちびるを引き結んだ。
里の子になっていたと思い込んでいた小夜は、ふたたびその確信が揺らぎ始めたのを敏感に感じていた。
学校が始まって以来、小夜はまた、自分がたったひとりで鳥取の生活と交わろうとしていることに気づかされていた。
分校において、小夜はやはり横浜(ハマ)っ子の代表として、鳥取の子供たちの中に入っていた。彼らの流儀からすると、小夜はいまだあまりに都会の匂いのする子だということが、教室の中にいればいるほど知覚された。
ところが、四つの集落の子供たちが一同に会する分校に到っては、自分のすべての動静を皆に合わせようと努力をしているのだった。そして小夜自身、そのことに“努力”を要するということが、よからぬ心の動きであることがわかっていた。
そうした考えを堂々巡りさせているうちに、小夜は前方に真っ赤に熟れたぐみの実が、たわわに実っているのに気がついた。
みくまりたちに摘んで帰ることを思い立って、少し楽しい気持ちに返って近づくと、おりからの秋雨が落ちてきた。
小夜はおこたりなく用意していた小さな傘を広げ、雨に降られることなくそのひとときを楽しんだ。
昼の放課(休み時間)がひけると、小夜はたくさんのぐみの実とともに、分校へと戻った。
───
次の校時(5時間目などの授業の単位)は、国語だった。
先生はその時間の全校の課題として、雨をお題にした俳句を一句作らせることにした。
皆にとっても俳句をひねるのはもちろん初めての試みで、年の小さい子は鉛筆をなめなめ、上級生は墨を磨りながら教室はしばらく静まりかえった。
先生の言葉に、皆は筆を持つ手にさらに力を入れた。
しばらくたつと、もう誰かのカタンと席を立つ音がした。
教室はざわめいて、一斉にその豆俳人を探した。
五年の不二豊だった。
分校において、豊は呪(まじない)の子が身につける装身具を着衣の下にしていたので、その黒々とした髪が夏の前に切ったまま伸びてしまって、あたかも鳥取名物鬼太郎を彷彿とさせている以外は、別段まわりの子供たちの風体と同化していなくもなかった。
皆のする好奇の目の中を、彼は誇りも、かつ照れもしない表情のまま、先生に自作の句を書きつけた半紙を渡しにいった。
──傘さして ぐみを摘むなり 町育ち
これが先生の読み上げた豊の句だった。
本日の日記---------------------------------------------------------
オッス、おら悟空。
じゃなかった。小夜子です。
昨日深夜に沖縄から帰ってまいりました。留守をまもってくださったあきこさま、本当にありがとね。
沖縄にいる間、一人旅について考えていました。
私は一人旅が多い人生なのだと。鳥取もそうであったように、その後から今にいたるまで、気持ちの上では一人旅を続けてきました。でも、それはもちろん私に限ったことではなく、人生においては皆一人旅をしているのだということも承知しています。
このブログなども私にとっては一人旅に譬えられるものです。私はこの五月末にパソコンを買った新参者で、けれどもすでにブログの住人だった方々が、新しい者が入ったといっては訪ねてきてくれて、どんな子なのかひととおり観察し、それからはこまやかに気づかってことづてを置いてくれる──それはまるで、私にとっては鳥取の日々が戻ってきたかのような経験なのです。ブログの画面を開いている今、たった四日離れていただけだというのに、皆さまの名前を見上げて懐かしさがこみあげてくるのです。
沖縄は如何に。
なまこを何万個もみました(←ここ、笑うとこです)。
明日は第八話のおわり、●きみよ、あるがまま●です。
タイムスリップして、ひとりぼっちの小夜の隣の席に座ってあげてください。
追:魚って、生まれるときも死ぬときも、海の中なんですね。
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最終更新日 2005年09月15日 10時02分34秒
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