鍋・フライパンあれこれ美味
100万ポイント山分け!1日5回検索で1ポイントもらえる
>>
人気記事ランキング
ブログを作成
楽天市場
000000
ホーム
|
日記
|
プロフィール
【フォローする】
【ログイン】
山口小夜の不思議遊戯
PR
お気に入りブログ
yuuの一人芝居
yuu yuuさん
健康食品愛好会!!
ゆうじろう15さん
Nostalgie
solyaさん
ケーキ屋ブログ
tom(o゜∀゜)さん
Ring's Fantasia -別…
高瀬RINGさん
日記/記事の投稿
もうすぐ誕生日のきみへ──
バックナンバー
2025年11月
2025年10月
2025年09月
キーワードサーチ
▼キーワード検索
楽天ブログ内
このブログ内
ウェブサイト
< 新しい記事
新着記事一覧(全436件)
過去の記事 >
2006年01月13日
鳥取物語 番外編 不二一族物語 最終節●後朝●
(13)
テーマ:
連載小説を書いてみようv(10277)
カテゴリ:
カテゴリ未分類
豊は歯磨きのためのコップを手にしたまま、庭の隅にいた。
そこはいつも薄暗い、日陰になっている場所だ。
──・・・・あ。
覗き込んで、確かめる。
──水やってあるや。
雑草に混じって、一輪だけ花が咲いていた。
黄色い花だ。なんという名前なのか知らない。葉っぱなどはところどころ枯れて、蟲に喰われていた。だが不思議と綺麗な花をつけているので、夏の前から毎朝水やりをするのが、豊の日課になっていたのだ。
豊が目覚めた昨夜から、どしゃぶりの雨は不思議に途絶えていた。しかし、なぜだかこの花の上だけに水が滴になって、ころころと玉を結んでいる。
あんまりおかしいから、このことはみんなにはナイショにしといてあげるよ。
ふと背後に気配がして、豊はふり返らずに語りかけた。
──ねえしずさん・・・・。
──・・・・ああ。
──三時間だよ。
──・・・・?
──しずさんて、そんなに長いの?
静の片眉がぴくりと跳ねた。だが、すぐに余裕の面持ちで涼しく笑う。
──終わった頃合いに、自然に切れるよう注連縄に呪(しゅ)がかけてあったろう?
──やっぱり。基準は自分だもんな・・・・さすがは粘着気質。
冷ややかな口調の応酬の中には、しかし妙に親密な、じゃれ合うような気配が混ざりこんでいる。
豊はふり返ってくると、黒いTシャツに古着のデニムという、めずらしくラフな恰好をして縁側に長い脚を組んでいる静を眺め、くすっと笑った。
──【うろ様】ってね、しずさんに似てたよ。
──なんだと!? 不本意だぞ。かなり・・・・。
滝洞に入ってからの状況は、昨日一晩で兄たちに話している。
ある意味、豊も‘お喋り’だ。自分のなかで問題になったことを、ずっとお腹にかかえておくのは苦手で、きちんと整理のついた部分ごとに表に出さずにはいられないのだ。
──飛遊櫛尊のことだけど・・・・ふつう人は、何人もの相手を同時に愛せるものなのかな。
──そら、人によるだろう。
──はるさんなら?
──わしか?わしなら、こちらを勃てればあちらが勃たず(←字が違う!)・・・・ってことはあるだ。
──マジメに答えろっ!
──わしはこれまでの生涯で、マジメだったことは一度としてない!
──・・・・。
──うろ様にも言ってあげたいぜよ。‘愛が終わった’と‘愛が終わりかけてる’は別だからねって。
相変わらず──豊にとっては、たいして実りのある話し合いでなかったことは確かなのだが。
──そして今日。
朝から庭先で舌戦が始まるかと夜叉のような眼を据えてきた静は、だが弟の言葉に肩すかしをくらうことになる。
──注連縄か・・・・。
なにを思っているのか──御魂鎮の儀の一夜を思っているのか、ひとりごちている豊。
そして、次の瞬間には、まったく別なことを言ってくる。
──注連縄っていえばさ・・・・聖書に、方舟の話ってあるでしょう?
──・・・ああ・・・?
──なんか相生って、それみたいだと思わない?
──・・・・?
静の眉間が曇っている。
(しずさん、そんな不思議そうな顔をしないでよ。難しく考えることじゃないんだ。単純で、明快なことを言いたいだけ)。
──だってこの里、ノアの方舟の感じにすごく近いような気がする。そんなふうにちょっと思っただけだよ。
──方舟か。
──うん。外と切り離された、一部の者だけの絶対空間。注連縄を張り巡らされた聖域って呼ぶ人もいるけど・・・・箱舟のほうが似合う。
豊の言葉に、もともとつくりが硬質な理系美人の顔が、石像みたいにしずかにおさまっていく。
そして透き通るような目で、豊を見る。そして庭の花を見る。
──そうだな・・・不安定で頼りない・・・だが愛する者たちだけを乗せた・・・・嵐を漂う舟そのものかもしれない。
──でもさ、箱舟には鳩が来たっちゃが?
その言葉に、立ち上がって庭先におりようとしていた静の足が、ふと止められる。
──・・・・・あ、
──あのさ、もしこれが本当の箱舟なら、洪水が過ぎた後に世界は滅びちゃうよな。
──どうして?
──生き残ったのがわしたちだけだったら、子孫繁栄なんて出来っこないからさ。
──あぁ・・・・そうかもしれない・・・・。
石段をおりてきた静は、弟のそばで僅かに笑ってみせた。その笑顔は少し切なげに見える。
──だから、わしは鳩になりたい。
──なんだって・・・・。
──しずさん、わしがいま思っていることをしずさんには話しておきたいっちゃ。
豊はいつに変わらぬ淡々とした表情のまま、兄を見上げるような姿勢でそんなふうに切り出した。
静はなんらかの予感めいたものを感じて、目を見開く。
だが、いま耳にした言葉に恐怖をおぼえていたものの、同時に語り部の足もとで耳をかたむける者のように、その先を知りたかった。
彼は自分の心の動きに、なすすべなくため息をつく。そして目の隅で弟をみつめ、弟も見つめ返した。
それが合図だったかのように、豊は続けた。
──守宿だからといって、土地に縛られんでもええのだが。住み着いているあいだはよくて、いなくなるとその家が没落するわけもなし・・・・守宿は東北の座敷わらしじゃないんだ。わしはいずれこの里を出ようと思うとる・・・・。
──させない手立ては山のようにあるぞ。
豊の視線を受け止めた静は、むしろ楽しそうに言う。
──それで・・・・おまえはどこに行くつもりだ?
──わからない。ここではない、どこか遠くへ。
静寂が落ちた。今度は長いあいだ、兄は動かなかった。
沈黙がふたりの間で耐えがたいまでに重くなったとき、また豊がぽつんと言った。
──鳩はオリーブを銜えて戻るんだ。
──ああ?
──いつか必ず戻るから。実りを携えて。わしは里のまわりに広がっている世界のこと、この目で確かめたい。もしかしたら、そこにわしの道が、わしの会うべき人々がいるのかもしれん。定められた生き方でなくて、自分の信じる道を歩きたい。
──・・・・。
静は黙ったままでいる。
わずかに傾けた顔は、気のせいだろうか──豊を見つめるうちに微妙な感情で翳った。
──注連縄・・・・結果、聖域か・・・・・。
静は一息つくと、ぽつりともらすようにつぶやいた。
(なぜぼくに?・・・・ほんとうはおまえを生け簀に入れて、注連縄張っておきたいのはぼくの方なのに)。
静は知っている。人を人とも思わない豊を前にすると、誰もがまず驚く。心を奪われてしまう。
地球でしか生きられない人間のために設けられた、異次元との接点のよう。豊は気ままに魔力を行使して、異世界のまぼろしを垣間見せてくれる。
透明な、柔らかな、冷たい膚をすれあわせ、異界を行き交う精霊たち。
ひややかであることだけが意味を持つ、静かな熱狂の、手強い世界。
やはり放してやらねばならないのだろうか。
弟につけたひそかなあだ名は水妖。飼い慣らした鯉でも、水を得ればあとも見ずに潜り去っていくように、残されたほうの気分など考えもしない。
静は神経をとぎすまし、これまで接してきたつもりだ。
このわがままな精霊に近づきを許されるには、自分の中ではせめて最大限にセンシティブである必要があった──それかほかの兄弟のように最大限におおらかであるか。なにしろ精霊という存在は、たいがいの人間には用がないと思っているのだから。
すべてに執着のないようにふるまう豊・・・・ひるがえって、それはぜんぶの存在を、うっすらと愛していることに──静は気づいているのだろうか。胎児だって魚。みんな、みんな海から生まれたことを忘れているだけ。
満ち潮、誰もが血のなかに隠し持っている月の光。
放流し、回遊させ──。
──まんざら、冗談でもなさそうだ。
静が豊に恨みがましい眼を向ける。灰色と紫の眼で、自分こそ猫の妖怪のようだ。
兄弟でありながら、初めて見るような知性にきらめく緑の瞳から眼をそらし、静は唇を噛みしめた。
弟が拝殿で目覚めた時から意識はしていた──考えないでおこうと振り捨ててきたものが脳裏をかけめぐり、この時間を追い抜こうとする。
だが、静が結論を逡巡した瞬間──今まで凪いでいた風が突然うねりを上げた。
豊の手から、洗面のために携えていた晒の布が攫われる。
風をはらみ、陽光を受けて白い晒が空を舞う。青い空を背負って、鮮やかなコントラストを描く。
それは一瞬、
──鳩に、似ていたな。
静がつぶやいた。
布製の鳩は、自ら山の方へ飛び去っていった。すとん、と鳥居の向こうに姿を消す。
取りに行こうか、とつぶやく豊に、
──おまえのものを、山の神が欲しがったんだろう。あきらめろ。
と静が真顔で答え、
──さあ、もう中に入れ。まだ身体が本調子ではないんだ。
室内をあごでしゃくり、そこに視線を定めたまま、おだやかに言い切った。
──おまえはよく話した、ゆたか。おまえはいつでも、好きなときにこの里から離れていける・・・・だが、世界中の者たちが、おまえという存在を探し求めていることを忘れるな。
言い募るように言葉をつむぐ静は、かすかに声をはずませていた。
──そして、あらゆる時間、あらゆる場所で彼らが見つけるのは、いっさいを調和させる力を持つ、平和の君だ。おまえの名は、この地上に仇なす者との和解を求める人々がいるかぎり、その心のなかに生き続けるだろう。ぼくたちがそう語り継いでいこう。
豊の胸に、兄の言葉が染みこんでいった。その意味は、今はほとんど理解できないものであっても。
彼は兄を見上げ、肩越しにそっとつぶやく。
──しずさんは、いつも味方だったね・・・・。
静は弟を見ていなかった。そして、視線を合わせないまま、言った。
──成人の後には、どこにでも行くがいい。別にこの国でなくても。
(あれ・・・・しずさんて、意外と涙もろい?)
豊の背中に静の手のひらが触れる。そっと押し出してくれる。広い世界に。
温かい仕草だった。
──行け。ここではない、どこかへ。
───
この相生の里に、ひとりの男の初子(ういご)が生まれた。
こわれもののようななりをした、だが、ひどく靭(つよ)い者が生まれた。
破壊と調和が、その肩の上にある。
因習で作り上げられた一族に、おまえのような者が現れてくれた。
かつて──神に人を捧げるなど、里のしてきたことは間違いだった。
しかし、最後の最後になって、正しいことの出来る者が生まれた。
これからの未来は、過去とは違ったものになるだろう。
彼の言葉は少なく、だがそこに在るだけで誰もが雄弁にその者を語る。
おまえの調和の不思議な力・・・・その力が未来を大きく変えるだろう。
今までにない指導者となって。
彼は統治するよりも、むしろ能力と尊敬によってかの地に住まう者を導くだろう。
相生の里を抱く国に住まう者たちよ。
おまえの土地は決して小さなものではない。
見よ。混乱の世紀に、智慧を武器に戦う者が生まれた。
かの者の右の手には、調和の灯明が掲げられる。
それは暗黒の中に立つ、たったひとつの小さな灯(ともしび)。
その灯火はひとりひとりに分かたれて、やがて全世界を照らすだろう。
誇るべくんば、汝、かの者をして誇らめ。
◆お読みいただけたら
人気blogランキングへ
1日1クリック有効となります。しずさんの泪に一票を。
お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
いいね!
0
シェアする
最終更新日 2006年01月13日 05時57分51秒
コメント(13)
|
コメントを書く
< 新しい記事
新着記事一覧(全436件)
過去の記事 >
ホーム
フォローする
過去の記事
新しい記事
新着記事
上に戻る
【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね!
--
/
--
次の日記を探す
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
広告を見てポイントを獲得する
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
エラーにより、アクションを達成できませんでした。下記より再度ログインの上、改めてミッションに参加してください。
ログインする
x
X
© Rakuten Group, Inc.
X
共有
Facebook
Twitter
Google +
LinkedIn
Email
Design
a Mobile Site
スマートフォン版を閲覧
|
PC版を閲覧
人気ブログランキングへ
無料自動相互リンク
にほんブログ村 女磨き
LOHAS風なアイテム・グッズ
みんなが注目のトレンド情報とは・・・?
So-netトレンドブログ
Livedoor Blog a
Livedoor Blog b
Livedoor Blog c
楽天ブログ
JUGEMブログ
Excitブログ
Seesaaブログ
Seesaaブログ
Googleブログ
なにこれオシャレ?トレンドアイテム情報
みんなの通販市場
無料のオファーでコツコツ稼ぐ方法
無料オファーのアフィリエイトで稼げるASP
ホーム
Hsc
人気ブログランキングへ
その他
Share by: