山口小夜の不思議遊戯

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2006年04月23日
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 ──というのに、店は満席だったのだ。なんということだ。

 このホテルは度々利用しているが、こんなことはいまだかつてない。
 支配人がすっ飛んで来て、「不二様、失礼いたしました。すぐ個室をご用意いたしますので、バーの方でお待ちいただけますでしょーか」と、頭を下げてくれるのだが、しかし何も個室である必要はない。

 特に、息子とふたりきりで個室に入るのを、私は好まない。
 父としてますます会話の進行に難儀し、ついにはひとり、演説を始めてしまうだろう。
 私は呪師なのだ。神や妖怪と渡り合って、説得するのが商売だ。
 とはいえ、呪師は人間界においてミスを犯した妖怪に「寛大である」という資質も併せ持つ。私の場合、更正の可能性が見極められれば、本来は封印されるべき妖怪側の弁護に立つこともある。


 私は、寛大そうに支配人にそう言った。
 『ミスは、人間にはつきものである。要は、ミスにどう対処するかだっ』

 いい台詞だ。

 と、こういうのが浮かぶたびに、ふり向いて息子に語る父親がいるのを私は知っている。
 であるのだが、私自身、父は格言を言うべきでないことはわかっているつもりだ。
 普通、息子は、その程度のことなら先刻承知なのだ。でなかったとしても、「先刻承知だ」と、自分でそう思っている。

 つまり父とは、やはり背中だ。

 ──と、つい背中に力を入れてしまう私は、結局、ますます息子と会話できないのだが、どのみち私の息子は博識ではある。
 その上、ふり向いてみると大抵そこにいないのが、私の息子だ。
 その上、今、気がついたのだが、私は今日、予約を入れていなかった気がする。

 私のミスではない。



                          ─つづくよ─




 本日の日記------------------------------------------------------- 

 今回は 、『関西弁について』 わざわざ一節を割かなければならないほど重要な事項であることに気づくことができたので、そのようにさせていただきます。

 メールでいただいた中に、「──ててん」の語法についての示唆的なご意見をいただきました。


 ◆ ◆ ◆

 私は関西弁のネイティブ・スピーカーです。
 出身は兵庫県で、現在大阪に住んでいるバリバリの関西人です。

 「なー、おれ、みんなのこと愛しててん」についてですが、これ単体では過去形の意味合いが強く、現在形としてはとりづらいと思います。
 しかし読み返してみると、(←小夜子註:この方は公開されていた『青木』を目にして、その後お手許にコピーをお持ちいただくほど愛してくださっているのです)。
 「おれ、今まで言ったことないけど、実はみんなのこと愛しててん。」
 という文脈だと思うので、これなら現在の意味でもとれます。

 そうですね、私も初めてここを読んだときには少しひっかかりを感じました。
 ですから何か言葉を足して、説明があるとわかりやすいと思います。
 「愛しててん」だけなら過去形となるところを、現在完了形に変えることのできる単語、例えば 「ずっと」や「実は」など、過去から続く想いであることを示唆するものがあればいいのではないでしょうか。

 そして、もうひと方から、

 「なになにしててん」という関西弁は、例として「後悔しててん」というふうに現在過去進行形というか、非常に複雑なニュアンスで使います。
 なので、アキラが「愛しててん」と言ったのを小夜子さんが「聞いた」ならば、それは記憶違いではないと思います。あくまでも、彼の「感覚」でしゃべったのだと思われます。

 つまり、「愛してるよ」という告白文を、「ずっと前から好きだったんだよ」という意味で言ったのでしょう。間違ってはいませんが、一文でここまで理解してもらえるにはもう一言欲しい感じがします。コメント欄に多く寄せられている別の表現で言い換えることも一考だと思います。

 ◆ ◆ ◆


 ・・・・・・・。

 そして、小夜子は心眼が開かれた!

 関西弁のネイティブの方にとって、「愛しててん」はズバリ「ひっかかる」のですね!
 これはいけない。ひっかかるのはいけない。
 コメント欄に多く寄せられている別の表現。
 アキラっぽい、(つまり子供っぽい)、表現。

──なー、おれ、みんなのこと愛しとぉー。

 いかがでしょうか!
 どうか今一度、忌憚ないご意見をお聞かせいただければとお願い申し上げます。もしOKが出れば、明日のメールで、編集の方にこの部分のアキラのセリフとして送信させていただきます。

 昨日今日と両日、小夜子の親身になってくださり、本当に本当にありがとうございます。
 どうかアキラのこの台詞に、皆さまの魂を入れてください。


 明日は●編集は神の業●です。
 もしなにか出版や編集などの作業に関して更新して欲しい議題をお持ちでしたら、なんなりとコメント欄かメールにてお知らせくださいませ。

 小夜子に力を!

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最終更新日  2006年04月23日 16時58分58秒
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