『REDSTONE』 2




「へぇ、綺麗な噴水ですね。」
ミコト達はクエストのため魔法使い都市スマグに立ち寄っていた。
村の中心には大きな噴水がありその中央には不思議な形をしたオブジェが立っていた。
お金を投げ込み祈り事をすると願いが叶うと噂され遠方からの来訪者も珍しくなかった。
はずだったが、今は村人以外の人を見かける事はなく噴水の存在感が逆に人がいない事を目立たせていた。


「さて、早いところ取り掛かろうか。」
Stojikovicが口を開く。
「だね。クエを片付けて安心してスマグに人が来れるようにしないと。」
akariが答えた。


クエストを受ける数日前、ギルド連合にスマグ西部のヘムクロス高原高原南部地方に元々生息していたダイアーウルフの群れが最近になって凶暴化しそれが原因でスマグに旅人が安心して訪れることが出来なくなったとの報告があった。
また群れの中の一頭は目に怪しげな赤色の光を帯びその一頭が見かけられるようになってからダイアーウルフ達の様子がおかしくなったとの報告も寄せられた。
今回のクエストはその事実確認と調査及び解決を行うものだった。


「とりあえず向かいましょうか。」
「だな。」
「なんだか最近変な事件多いですね。」
「うん、何か嫌な予感するね・」
「嫌な予感ですが・・・・どんな事だろ。」


ザザザザ・・・・


道中会話をする一行に複数の影が接近する


グルル・・・


「ん。ダイアーウルフのお出ましですね。」
いち早くそれに気付いたkikouteiが口を開く。
「みたいだね。キコ、その中に少し特殊なオーラを発してる奴いるか?」
「いえ・・・感じませんね。少し待ってください。」
そう言うとkikouteiが目を閉じ意識を集中させる。
「ここから南東の方角・・・丘を3つ程下りた所で感じられますね。・・・ん?大きい気が2つあります。」
「2つ!?」
「はい。しかもどうやら交戦中のようです。」
「何っ?誰だ・・・とにかく急ごう。ファインちゃん!」
「はい。任せてください。」
Stojikovicが会話をしている間に既にダイアーウルフ達は姿が確認できるところまで近付いていた。


「殺しはしないから少しの間おとなしくしといてね。」
FainBrewがそう言いながら杖を頭上にかかげた。


バチバチ・・・


するとダイアーウルフの上空で小さな蒼白色の雷球が生じた。
「ライトニングサンダー!」
FainBrewが魔法を唱えると雷球より発生した稲妻がダイアーウルフ目掛け一直線に奔り出した。


ギャン!!


ダイアーウルフの群れは稲妻に撃たれその場にへたれ込む。
「威力は抑えてあるからね。しばらくは体がしびれて移動速度が大幅に落ちているはずです。急ぎましょう。」
ダイアーウルフ達が動き出さないことを確認し一行は交戦地へとむかった。












『真説RS: 赤石 物語』 第1章 『REDSTONE』-2







「もう少しです。」
kikouteiが先行し交戦地へと急いでいた。
「うむ、俺も少し前から気を感じ取る事が出来た。確かにさっきの奴等とは雰囲気の違う一匹がいるな。しかしもう一つの気は・・・。」
「はい。これは人間の気ですね。」
Stojikovicの疑問にkikouteiが答える。
「やはりそうか。しかも強いな。」
「ですね。けど他のダイアーウルフ達も交戦地へと集まっている様子です。」
「だな。とにかく急ごう。」


しばらくしてPTが交戦地へと辿り着いた。
そこには槍を構える一人の女性とそれを囲むダイアーウルフの大群がいた。そして少し離れたところに他と比べ2周り程大きいガタイをしたダイアーウルフを確認する事が出来た。
「あっ!!」
ミコトが不意に声をあげる・
「キコさん!あの女性です。この前古都で会ったのは。」
「ん。協会の扉でぶつかったって人?」
「はい。」
「知り合いか?」
ミコトとkikouteiの会話を聞きStojikovicが問うた。
「いえ、知り合いではないんですが以前古都で会った事があって不思議な印象あったんで顔覚えてたんです。」
「ふむ、とりあえず今は彼女を助けよう。」
Stojikovicの言葉を皮切りにPTが女性を助けるためダイアーウルフの大群の元へと走り出した。


「ちっ、邪魔者が来たか。早々に終らせるとするか。」
Stojikovic達がこっちにむかってくるのに気付き小言をもらす。
そしてStojikovicたちの方を向き
「手出し無用!そこで見ておけばいい。」
手助けしないように釘をさした。


グルルル・・・


ダイアーウルフはそこで出来た隙を見逃さなかった。
女性の一番近くにいたダイアーウルフ3頭が一斉に襲いかかる。
「ふん。」
しかし女性は華麗なステップでその攻撃をかわした。
先の3頭につられる様に次々とダイアーウルフの牙が女性を襲う。
しかしいくら襲っても攻撃は女性に届く前にサイドステップによりかわされた。


ガウッ


今度は前後左右そして上空からと計5頭が同時に攻撃を仕掛けた。


ザクッ


ダイアーウルフの牙が女性の肌に喰い込む。
「ふん、誰を攻撃してるつもりだい?」
ダイアーウルフ達が襲っていたのはダミーで本体は既に横へと移動していた。
「無駄な殺生はしない主義でな。そこで少しの間寝ておけ。」
そう言うと女性は自らの槍に魔力を込め始めた。
魔力を帯びた槍が一方で真っ赤なオーラをもう一方では真っ青なオーラを放つ。
「ファイアー&アイス」
その槍を自らの頭上で旋回させる。
赤いオーラがダイアーウルフ達の体力を削り青いオーラはダイアーウルフ達の体を凍らせ身動きのとれない状態へと追いやった。
そのまま勢いで大型のダイアーウルフとの距離を一気に詰めた。


ガァァァ


距離を詰める女性に対しダイアーウルフも牙をむき出し反撃に移る。


ザクッ


牙が腕にめり込み数滴の鮮血が地面へと垂れ落ちた。
女性は先ほどの様にダミーを発生させずわざと自分の体でダイアーウルフの攻撃を受けた。
「ふん。」
女性が噛まれた状態で腕に力を入れた。
筋肉で締め付けられダイアーウルフの牙は抜きたくても抜けなくなっていた。
「これは・・・・」
女性がダイアーウルフの体を調べるとある異変に気付いた。
「既に・・・死んでいる。」
その異変とは大型ダイアーウルフは既に死んでいる事だった。
「この紅色の宝石の影響か。エナジードレイン効果と言ったとこだな。今楽にしてやる。」
そう言うともう一方の腕でダイアーウルフの目の代わりをしていた宝石を引き抜いた。


ドサッ


たちどころにダイアーウルフの体から生気が抜け女性が腕の力を抜くとそのまま地面へと倒れ落ちた。
「成仏しろよ。」
女性がダイアーウルフの目に手をやり瞳を閉じさせた。


「強いですね。すみませんがいくつか聞きたい事があるんですが。」
「なんだ?」
背後からの声に女性が反応する。
「まずは・・・・名を聞いてもよろしいですか?」
声の主はStojikovicだった。
「ナンパはお断りしている。」
女性が冷静に答える。
「いや・・ナンパってわけではないんだが・・・。まぁいいか。ここで何をしていたんですか?」
「悪いがその質問に答える義理はない。どうせダイアーウルフの調査目的か何かだったんだろ?それならもう用事は済んだはずだ。」
女性の言う通り先ほどまで敵意剥き出しだったダイアーウルフ達は逃げるようにその場を立ち去り始めていた。
「悪いが時間がないんでな。失礼する。」
女性はそう言い残し返事が来る前にその場を立ち去った。
「まって!」
追おうとするakariをStojikovicが止める。
「どうして?」
akariがStojikovicの行動に対し口を開く
「彼女の言った通りクエスト自体は終了したと見ていいだろう。どんな目的で戦っていたのかはわからないが強制的に問いただす権利はこちらにはない。仕方ないさ。」
Stojikovicが淡々と答える。
「何もわからない以上今は動くべきではないよ。単独での行動と限らないし変に深追いしてPTを危険に晒す事は出来ない。」
相変わらず淡々と答えるStojikovicだったがその表情は大きな情報を目の前に何も出来なかった事への悔しさがにじみ出ていた。
「もっと大きなチャンスは必ず来ますよ。その時は絶対に情報を得ましょう。」
場の雰囲気を察しkiouteiが声をかける
「そうだな。よし気分を変えて帰ろうか。」
「「「「はい。」」」」


Stojikovicは女性の去った方を眺め一つの疑念を抱いていた。



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