『REDSTONE』 7




ズガァァァァン


脱落魔法師の放ったメテオはけたたましい爆音と爆風を上げそれによる粉塵があたり一面を蔽い中から隕石の破片が飛び散った。


しばらくして煙が治まる。
そこには不思議と誰一人として怪我する事もなくその場に立っていた。
ただ一人脱落魔法師だけはラディッツとgivson-doveの剣をその身に受けていた。
「・・・ク・・・ソゥ・・・・」
そしてその一言を残し絶命した。
「蜜柑さんほんと助かったよ。」
何事もなくPTが無事だった事にgivson-doveが肩の力を抜いた。
「メテオの早撃ちならそんじょそこらのやつには負けないよ。」
炬燵蜜柑が杖と回しながら笑顔で答える。
脱落魔法師がメテオを唱え撃ち始めるのを見て同じように炬燵蜜柑もメテオを唱え放つ事で空中で衝突、相殺していた。
「よし、これで一通り片付いたな。」
givson-doveが剣を鞘に納め任務終了を確認した。


「そう言えばMOBたちは一体何を手に入れようとしていたんだ?」
「ん・・・・何かね、小さな石みたいなのが入ってるみたいよ。」
のかちむ♪が敵から取り戻した袋の中身を手で触り確認した。
「なんだろ?」
そう言って袋をあけ中身を手の平の上に出した。
「ん・・・紅い宝石・・?」
袋の中身は紅色の小さな宝石だった。
「どれどれ。」
他のメンバーがのかちむ♪の手の平を覗きこむ。
「紅色の宝石・・・・」
ミコトも紅色の宝石という言葉に引っかかりながら少し遅れて手の平を覗きこむ。


ピカッ!!!


ミコトが覗きこむと急に宝石が眩い光を発しその光はあたり一面を包んだ。












『真説RS: 赤石 物語』 第1章 『REDSTONE』-7







「うっ・・・まぶしい・・・」
不意に入り込んだ光に目が眩む。


「ん・・・・」
光に慣れミコトが除々に目を開ける。
「えっ?一体何が起こったんだ?!」
ミコトが目を開けると先程までいたところとは全く違う風景がミコトの目に飛び込んできた。
「どこだ・・・?」
状況が掴めない中ミコトがもう一つのある異変に気付く。
「あれ・・・蜜柑さん?ギブさん?」
そこには今まで一緒に行動していたはずのメンバー全員が姿を消していた。
「どうなってるんだ?」
自分自身で落ち着きを促しながら周りを見渡す。
そこには見渡す限り一面に鮮やかで煌びやかな花が咲き誇りまるで花柄模様の絨毯が敷き詰められたようでもあった。
「あっ!」
少し離れた場所に2つの人影らしきものがミコトの目に映る。
現状を少しでも把握するべくミコトは2人の元へと急いで向かった。


近付いてみるとどうやら2人は男性と女性の様で表情や仕草から口論をしているようだった。
しかし、何故か2人の口は動いているにも関らず声は発せられていなかった。
その事に疑問と違和感を感じつつもミコトが話しかける。
「あの?」
2人からの反応は無かった。
「すいません。」
再度話しかけるもやはり反応は無い。
それは無視をしているというよりは2人共ミコトの存在に気付いていないと言った方がしっくりくる程のものだった。
「あのー・・」
今度は男性の肩に手を置き話しかけた。
「あれ??」
肩に置いたはずの手が男性の体を通り抜ける。女性にも同様に触れようとするがやはり体に触れる事は出来なかった。
「え・・本当になんなんだ・・・・」
目の前で起こる不可解な現象にミコトはどうしていいか途方にくれた。
「え?うわぁ!?」
そんなミコトの眼前でさっきの様な眩い光が不意に発した。そしてそのまま光は広がりミコトを包み込んだ。


「ん・・・」
ミコトが目を開けるとまた違う風景がミコトの目に入り込んだ。
「戦争・・?」
先程とはうって変わり今度ミコトが目にした光景は凄惨なものだった。
黒煙が空一面を覆い今が昼なのか夜なのかもわからず唯一の明りはいたる所で立ち上がる炎と時折姿を見せる雷だけ、そしてその明りにより微かに確認できる大地は焦土と化していた。
よくよく見ると地面のあちこちで妙な盛り上がりを見つける事が出来た。
「・・・・・・。」
ミコトは何も言わず静かに目を閉じ手を合わせた。
直感的に盛り上がりの正体が死体である事を理解した。


ドォォォォォォォン


音こそしなかったが一際大きな雷が近くで起きた。
音がしていたなら間違えなく体が一瞬畏縮しただろう程の大きなものだった。
「ぅ・・・・あ・・・・・。」
雷の明りに照らされ、途方もない大きさで見るものを恐怖の奈落に落しそうな異形の形をしたMOBが不意にミコトの視界に入り込んだ。
そのMOBがかもし出すオーラは今まで見てきたどのMOBよりも禍々しく大きな絶望感を感覚的にミコトは感じていた。
「・・・なんだ・・・こいつ・・・・。」
ミコトはその場を直ぐにでも離れたい気持ちを必死に我慢していた。


ズゥゥゥゥゥン


闇の中に居てMOB自体が一番闇に包まれており光が消えた後もその闇を目視する事が出来た。
MOBがゆっくりと動き出すと同時に一斉に大気が震えだし地鳴りと共に大地が大きく揺れだす。


ピカッ


MOBの一部が不意に光った。
その光は段々と輝きを増しながら大きく膨らんでいった。
光は空気が入りすぎた風船の様にパンと言う音と共に爆ぜMOBが纏う闇を中心にいたる方向へと光の破片が飛び出していった。


ドォォン


光の破片が地面に到達するとその地点で小爆発が起こっていく。
そして拡散した光の一つがミコトの方へと向かって飛来してきた。
「うわぁぁぁ!!」
光がミコトの元へ届こうとしたところでミコトは自分の意識が遠のいていくのを感じた。


―ん・・・2人の子供・・・?


意識が朦朧とする中幾つかの映像が頭を過ぎって行く。


―誰だろ・・・キレイな人だなぁ・・・・でも何か温かいな・・・・


懐かしさにも似た不思議な感覚に包まれミコトは完全に気を失った。


「・・・ミコト?」
「ん・・・・」
「よかった、気が付いたみたいね。」
聞き覚えのある声でミコトが目を覚ます。
そこには炬燵蜜柑を始めつい先程まで一緒に任務をこなしたメンバーが心配そうな顔でミコトを見ていた。
「いきなり気を失うから心配しましたよ。」
「うんうん、名前呼んでも反応ないから本当に心配したよ。」
ラディッツとのかちむ♪がホッとしたのか胸を撫で下ろしていた。


―皆はあれを見ていないのか?でもあれは夢なんかじゃ・・・・


「ん、どうかしたか?」
ミコトの表情が冴えない事を察知したgivson-doveが声をかけた。
「はい・・実は・・・」
ミコトは先程自分が体験した不思議な事を全員に話した。
「ふむ、俺達は何もなかったんだが・・・・ひょっとしたらこの宝石が関係しているのかもしれないな。」
「ミコト君これは君に預ける。ストさんにも今話した事を伝えてくれないか?そして今回の作戦を考案した人に会ってその宝石を見せてくれないか?その人ならあるいは何かわかるかもしれない。」
givson-doveはそう言い宝石の入った包みをミコトに手渡した。
「・・・はい。」
ミコトはその包みを受け取りながら先程体験した事を思い返していた。
口論し合う男性と女性・・・・世界の終わりが来たかの様な凄惨な光景・・・・闇の中で踊り狂う様に暴れていた異形のMOB・・・・2人の子供・・・・そして僅かに残っている心地よさ・・・・
何故か全てが他人事ではないような気がしていた。


「よし、とりあえず任務は終了だ。帰ってG☆Starsとおっさんず合同で派手に打ち上げでもするか!」
ミコトが考え込んでいるのが軽く飛びそうになる位大きく明るい声でgivson-doveが任務終了を宣言した。
「ミコト君、今日は遅くまで付きあってもらうからな。」
givson-doveが片目をつむりミコトに合図を送る。
「潰されそうですね。」
ミコトはとびきりの笑顔で答えた。








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