第2章 『VENGEANCE』




「はぁはぁはぁ・・・。」


ガチャ


「し、失礼します!」
息を切らしながら入った部屋にはにゃるらがいた。
「慌ててどうしました?」
いきなりの入室ににゃるらが不快感を表していた。
「にゃるら様・・実は・・・・」
「何っ!?」
部下からの宝石回収失敗の報告を受けたにゃるらはさらに不快感を表した。
「・・・・・わかった。下がってよい。」


「・・・・・・・。」
部下のいなくなった部屋でにゃるらは一人考えをめぐらせていた。
「どういう事だ・・・私がSCにいた頃は直轄・非直轄の全てのギルドを見渡してもこの作戦の意図を読み取れる者など・・・・。」
「全世界を見渡しても数える程しかいないと言うのに・・・・。」
「ん・・・!」
いぶかしげな表情を浮かべていたにゃるらだったが何かに気付いたのか急に表情を変えた。
「数える程か・・・くくくく・・・逆に簡単な話じゃないか・・・くく・・。」
にゃるらは急に笑い出しすぐ傍にあった通信機器に手を伸ばし部下を呼んだ。


しばらくする部下がにゃるらの元へ駆けつけた。
「お待たせしました。」
「少しですが面白い事になってきましてね。“彼”が協会側でウロチョロしている様ですね。」
「“彼”・・・・と言いますと?」
「あなたの元についている彼女を動かす時が来た。という事です。」
「なるほど。」
にゃるらの言葉に部下が不敵な笑みを浮かべた。
「彼女も事が終われば一緒に始末してけっこうです。」
「はっ。しかしどの様にして実行すれば?」
「そうですね・・とりあえずもう少し待てば彼も表舞台に立つでしょう。種はもう蒔いてあります。姿さえ現したら後は任せます。」
「では姿を確認出来次第行動に移ります。失礼します。」


「くっくっく・・・・。」
部下が立ち去った部屋ににゃるらの笑い声が響く。
「やはりこういった障害がないと楽しめませんね。」
一度は思いもよらない報告に曇った表情を浮かべていたにゃるらだったが今では逆にそれを喜んでいるかの様な嬉々とした表情を浮かべていた。















『真説RS: 赤石 物語』 第1章 『VENGEANCE』-1







「ふぅ、まだかな。」
前回の任務から数日後、Stojikovicに自分が体験した事を話すと会わせたい人がいるとの事でミコトはその人物に会うべく指定された場所へと足を運んでいた。


「ミコト、待たせて悪かったな。」
Stojikovicの声がしたのでそちらを向くとそこにはStojikovicの他に一人の少年と一人の男性がたっていた。
男性はスラっとした体型に長髪、そして戦士間ではなかなか見かける事のない眼鏡をかけていた。
どことなく気品に満ち溢れ知性が漂っていた。
「始めまして。」
男性が手を差し出しミコトの挨拶をした。
「あっ」
思わずミコトが言葉を詰まらせる。
何故なら男性の綺麗に透き通った目でまっすぐ見られるだけでその男性の前では嘘や隠し事は出来ない。と言うよりも男性の前で嘘をついたとしてもすぐに看破される。そんな瞳をしていたからだった。
今までに会ってきた人とは少し違ったタイプの人間に出会い軽く衝撃を受けていた。
「は、はじめまして。」
小さく息を吐き心を落ち着かせてから挨拶を返す。
「mikusukeといいます。初対面はやっぱり緊張するね。」
ミコトの心境を察したのかmikusukeが少し驚けた顔で場を和ました。
「ほら、自己紹介しなさい。」
mikusukeが隣にいる少年に挨拶を促した。
「はい。初めまして!風陣と言います!」
元気な声で挨拶をする少年はミコトより4~5程年が下で13歳前後位だろうか、あどけなさは残る物の背中には攻撃力よりも攻撃速度を重視したフィルルムタイプの槍を背負いそれに対し全くの違和感を与えていなかった。
「はは、私より母親に似てしまってね。これでなかなか勝ち気な性格なんだよ。」
そう言いながら頭をポンポンとなでようとしたmikusukeの手をするりと風陣が避けた。
「父上、子ども扱いは止めてください。」
どこか恥じかしげな表情を浮かべながら風陣が言った。
「はいはい、すまなかったね。」
このやり取りに慣れているのかmikusukeは笑顔を浮かべながら答えた。


「ごほん、急に話変わってしまうんだがミコト君、君が体験した事について教えてもらえないかな?」
咳で間を空けmikusukeが本題に入った。
「はい。」
ミコトは紅い宝石が発した光にあてられてからの不思議な体験を全て説明した。
「ふむ。それでその宝石は今持っているかな?」
mikusukeの言葉にミコトは懐に入れていた紅い宝石を取り出しmikusukeに手渡した。
mikusukeが受け取った宝石をじっと見つめだした。
そして宝石に対し手をかざし何かを念じるように丹念に調べ始めた。


調べ始めてから少し時間が経ったころmikusukeがそっと手を下ろし話を始めた。
「ふむ、宝石自体に魔力は感じないね。ただ少量の魔力が篭っていた形跡は感じ取る事が出来た。」
「この宝石が何なのかは今の段階では残念ながら何とも言えない。ただ一つ言える事はミコト君に不思議なヴィジョンを見せたのは間違いなくこの宝石の作用によるものだろう。」
「何故ミコトだけが体験したのでしょうか?」
横で聞いていたStojikovicが問いかけた。
「たまたまと言うよりは宝石に宿っていた魔力がミコト君に反応した。と言った方がしっくり来るでしょうね。」
「宝石の魔力・・・・。」
ミコトが少し困惑の表情を浮かべる。
それに対し
「ミコト君、宿っていた魔力は君の体に悪影響を及ぼすものではないよ。」
「こういった類の物は過去にいくつか見かけた事があってね、親しき人や子孫等に何かしらのメッセージを送りたい時宝石に特殊な魔力を込め特定の人間にだけその魔力を開放する様にしたりする物が実存するんだよ。」
mikusukeが笑顔で話しかけた。
「そんな物があるんですね。でも何故自分が・・・・。」
「見たところかなり古い時代に作られた物のようだし誤作動の可能性も捨てきれない。ただこの宝石はもう少し調べてみたいんだけど預かってもいいかな?」
「はい、お願いします。」
「確かに預かっておくよ。知り合いに鑑定能力に優れた者がいるから頼んでおくよ。」
そう言いつつmikusukeがミコトより預かりうけた宝石を道具袋の中にしまいこんだ。


「ミクさんさっき言ってた件ですが・・・」
ミコトとmikusukeの会話が終わったのを見計らいストが話しかけた。
「この宝石を預けに行った後にお願いしてもよろしいですか?」
申し訳なさそうな顔でmikusukeが返事を返した。
「もちろんです。」
「では少し急いだ方が良さそうなので早速行ってきます。」
mikusukeが一礼をし道具袋の中からポータルを取り出した。
横では風陣もmikusukeに合わせるように頭を下げていた。
「ミコト君、君が不安に思う気持ちはわかるが今は気にせず任務や修行に打ち込んで宝石の事は任せといてね。」
「はい、本当にありがとうございます。」
mikusukeの心遣いにミコトが感謝の意を表した。
「それではまた後ほど。」
そう言い残しmikusukeは風陣と共にその場を去っていた。


-この宝石・・・まさかな・・・・
去り行く中mikusukeの中に一つの疑念が沸いていた。
ミコトとmikusukeの出会い、そしてmikusukeの感じた疑念。
この事が将来大きな意味を持つ事をこの時は誰も知る由が無かった。










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