『VENGEANCE』 6




闘志剥き出しのsyouitirouと冷静にかまえるミコトが対峙する。
2人の間の空気が肌を刺すようにピリピリと緊張の糸を張り巡らし戦闘時の独特の雰囲気を作り出していた。
「がぁ!!」
先に動き出したのはやはりsyouitirouの方からだった。
ローリングクラッシュで相手との距離を一気に縮めながら体当たりを繰り出す。
盾で攻撃を防いだミコトに今度はチェーンドクローによる連続攻撃が襲い掛かかった。
「くっ。」
ミコトは盾と剣をフル活用させ何とか攻撃を防いではいたが凄まじい攻撃の圧力が反撃を繰り出す余裕を与えなかった。
そして途切れる事のない連続攻撃に確実にミコトの体力は消耗していった。


―何て圧力だ・・・何か手は・・・・


ミコトが必死に反撃への糸口を思案している間も変わらずsyouitirouの攻撃がミコトを襲う。


「父上、加勢しなくてよいのですか!?」
2人の攻防を見ていた風陣がいてもたってもいられず口を開く。
「今は大人しく見ていよう。」
mikusukeがそれに答える。
「しかし・・・」
「風陣、加勢して相手を打ち負かすことはひょっとするとたやすい事かもしれない。しかしそれで得る物は何一つとしてない。」
「ミコト君が自力で乗り越える事でしか得られないものがある。ストさんはその事を言っているんだ。風陣も戦士ならこの戦いをよく見て学ぶんだ。」
mikusukeが優しい口調で風陣に言葉を返した。
「確かに今の時点での攻防を見る限り、いや元々の戦闘能力や戦闘経験、色々なことを踏まえたらsyouitirouの優位は揺ぎ無いことは確かだ。しかし、戦いとは経験や戦闘能力だけで決着がつくような甘い物ではない。」
「戦いにおいて何が大切かわかるか?」
「大切なもの・・・・。」
mikusukeの言葉に対し風陣が答えを探す。
「風陣、それはね、イマジネーションだよ。」
「イマジネーション?」
「あぁ、私とストさんはミコト君にヒントを渡した。そのヒントの意味を戦いの中から導き出す発想力、そして戦いを組み立てていく想像力、この2つを持ち合わせている者はいかに困難な状況に身を置かれようとそれを打開する可能性を常に秘めている。」
「発想力と想像力・・・。」
「今、私がお前に対してイマジネーションという言葉をおくった。しかしそれはただの言葉。この戦いを見て、実際に同じような状況に立ったとして風陣自身が今言った事を頭で考えるのではなく体で感じることが出来た時、今よりも強くなれる。」
「・・はい!」
風陣は父の言葉に強く大きく頷いた。
「さぁ、ミコト君の戦いをしっかりと見守ろう。」
mikusukeと風陣が再び2人の戦いへと目を向けた。














『真説RS: 赤石 物語』 第1章 『VENGEANCE』-6







―やはり真正面からの戦いを展開していたら分が悪すぎる。
―どうにかして距離を空けて仕切りなおさないと・・・しかし、どうする?


ミコトはsyouitirouの攻撃をギリギリのところで防ぎ、かわし、反撃のチャンスを窺うがsyouitirouの間を挟まない攻撃の前にいまだ反撃の糸口を掴むことが出来ずにいた。
「偉そうな事を言ったところで勝負を分けるのは力の差、ましてやゴッドギフトを持つ俺様に敵うはずがない。今許しを乞うなら苦しむことなくとどめをさしてやるぞ。くくく・・。」
余裕綽々の様子でミコトに話しかけるsyouitirouの攻撃の手がさらに速く鋭くなっていく。


―まだ威力を上げられるのか!?


威力を増すsyouitirouの攻撃がついにミコトの肉体を捉え始めた。
致命傷こそ負わずにいたが少しずつ確実にsyouitirouの牙がミコトの体を傷つけていく。


―まだ大丈夫だ。落ち着け・・・・相手の動きをよく見て・・・・


傷を負いながらもミコトがつぶさに相手の攻撃をよく観察する。
そしてふとある事に気付く。


―やはりそうだ、連続攻撃とは言ってもほんの一瞬だけ溜めの時間が入る。
―・・・7・・・7・・・7、チェーンドクローは7回刻みの攻撃か、よし・・・


わずかだが付け入る好きを見つけミコトは反撃の一瞬に意識を集中させる。


―・・5、6・・いまだっ!


「ノッキングショット!」
最後の一撃を剣で受け装備している盾ごと空いた左手をsyouitirouむけ振りぬく。


ガッ


syouitirouが新たに放ったチェーンドクローの一撃目が届くか届かないかまさに紙一重のタイミングでミコトの左手がsyouitirouの体を打ち抜いた。
「くっ。」
ダメージこそほとんど与えられていなかったがノッキングショットの衝撃でsyouitirouが後方に弾き飛ばされる。


―くっ・・・ダメか・・・


腕を大振りしたせいでミコトが次の攻撃を繰り出す体勢を整えるのに気持ち程度の遅れが生じた。
ミコトが体勢を整える前にsyouitirouは一足先に体勢を立て直しすぐさまミコトへと襲い掛かる。


―どうにかして相手の勢いを殺さないと・・・しかし、どうする・・・・・ん!?


次の一手をどうするかミコトが頭をフル回転させながらsyouitirouを迎えるために体勢を立て直しているとふとミコトの視界にルジェが見きれた。


―足止め・・・・そういえばさっき・・・・よしっ!


何かを思いついたのかミコトの顔に迷いが無くなり口で小さく息を吸い込んだ。
「はっ!!」
大きな声と共に吸い込んだ空気を一気に吐き出す。声に共振したかのように回りの空気がビリビリと振動する。
剣士のスキルの一つ、ウォークライだった。
「くく・・・ここにきていまだ知識スキルとは・・・学がない。」
syouitirouが足を止めダメージが全くない事をアピールした。
ミコトがその隙に後方に下がりsyouitirouとの距離を空ける。
「ミクさん、借りた指輪使わせてもらいます。」
そう言うとミコトがmikusukeから手渡された2つの指輪を装備し始めた。


「気付いたようですね。」
ミコトの言動を見てmikusukeが言った。
「みたいですね。あとはミコトがどうあれを生かすかにかかっています。」
横にいたStojikovicが続いた。


―読みは外れていないはずだ。とするとこの指輪の効果は・・・


「仕切りなおしだ。」
syouitirouが小さく呟き幾度目かの突撃を試みた。
「させない!」
ミコトはそれに対し素早く左手を振り抜いた。左手に装備されていた盾が風をきり小さい竜巻が巻き起こる。
生じた竜巻が地面に落ちている葉っぱを巻き上げながらsyouitirouむかい一直線に動き出す。


ゴォォォォ


「ちっ。」
竜巻に巻き込まれsyouitirouの動きがまた止まった。
動きの止まったsyouitirouの視界に何かの影が写る。
影の正体は竜巻の陰に姿を潜ませるようにして竜巻の後をついて走っていたミコトが飛び上がった物だった。
ミコトが上空に飛び上がり落下する勢いを利用しsyouitirou目掛け攻撃を繰り出す!
「今度はこっちの番だ!!」
















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