第4章 『PERVERSION』



ポツ ポツッ


ミコトとmikusukeは宝石の情報を得るために天をも劈くかのように聳え立つ山々の山腹のいつ崩れ出すともわからない岩の上を慎重に歩んでいた。
「ミコト君、疲れただろう。あと少しで着くからもうしばらくの辛抱だよ。」
「いえいえ、大丈夫ですよ。しかし、こんな山奥に本当に人が住んでいるのですか?」
「あぁ、あいつはちょっと変わったやつでね。すぐにわかるとは思うけど・・・。」
「そう・・・ですか。」
質問に答えるmikusukeの歯切れの悪さにミコトは多少の疑問を感じていた。
「いやいやいや、悪いやつではないよ。ただ、少しだけ・・変わっているだけだから。」
「か、かわっているんですね。」
mikusukeをして、今から尋ねる人物の怪しさを払拭仕切れていない事にミコトは疑問以上の好奇心を感じていた。
「よし、着いたぞ。」
mikusukeから確かに到着したと聞いたが辺りを見回す限り人が住んでいるような建物は見当たらない。
それどころかどこかにつながる入口の様な場所も見当たらなければ生き物の気配さえしなかった。
「少し待ってておくれ。」
そう言うとmikusukeが足元の岩を調べだした。


「よし、ザミースパークル・・・ドンファン・・・フィックル・・・ルード・・・・」


そして意識を集中させ呪文を唱えだした。


ゴゴゴゴ・・・・


しばらくすると足元の岩が小刻みに振動し始めた。
「さぁ、ミコト君。この岩に触れておくれ。」
mikusukeの言う通り振動している岩にミコトが手をやった。
「行くよ。アスフォール!」
mikusukeの一言で辺りの風景が一変し一気に暗闇の広がる場所へと場所を変えた。
「これは隠し扉でね、さっき唱えた呪文で地下に転送される仕組みになっているんだ。」
辺りを見回すとそこはごつごつとした岩に囲まれた地下通路だった。
等間隔に光が灯っているおかげでかろうじて足元と周囲は確認できた。
「ミクさん、これは?」
ミコトが灯りに興味を持つ。
「これはね、蛍石といって少しの魔力を与えると光を発する魔石の一種だよ。ほら、見てごらん。」
そう言ってmikusukeは光の方を指差した。
よく見ると細い管のようなものが洞窟の奥から伸びており一つ一つの蛍石にリンクしていた。
「この管で絶えず微量の魔力が送られているんだよ。」
「そしてこの管の先には地熱や蒸気を利用した発魔力装置があってほぼ永続的に魔力が供給されている仕組みなんだ。」
「な・・なんかすごいですね。」
「この装置を考案、作製したのが今尋ねている人物でね。こういった発明が趣味なんだよ。さぁもう少しだ。先に進もう。」
「はい。」
ミコトとmikusukeが洞窟の先にいる男の元へと歩みを進めた。
















『真説RS: 赤石 物語』 第4章 『PERVERSION』-1







「さぁ着いたよ。」
mikusukeの言葉にミコトが首を傾げる。
何故ならそこは行き止まりだったからだ。
「大丈夫。怖がらずに前に進んで。」
そう言うとmikusukeが突き当たりの岩壁向かい歩き出した。
「あれっ?」
岩壁に向って歩いていたはずのmikusukeが急にミコトの前から姿を消した。まるで岩壁に吸い込まれたかのように。
目の前の状況にさらにミコトが首を傾げた。
「とりあえず・・・いくしかないよな・・・。」
mikusukeの言葉を信じミコトが岩壁向かい歩き出す。
数歩歩くと今まで岩壁だったはずの目の前に突如広い部屋が広がった。
「ビックリしたでしょ?」
そこには先に進んでいたmikusukeの姿があった。
「これも彼の発明の一つさ。原理は・・・・」
「スネルの法則とホイヘンスの原理を利用したリフレクションの一つだ。この地下独特の温度と湿度を利用し大気間の空気密度に密度差を生じさせて・・・」
mikusukeの説明を遮るように誰かが原理の説明に入った。
突如した声にミコトが驚く。
何故ならここには自分とmikusuke意外に人の気配がなかったからだ。
ミコトが慌てて声のする方を向いた。
「ミコト君、大丈夫。今、奥で話している人物こそ今日会いに来た人物だよ。」
「そんな専門的な言い方したって伝わらないだろう。」
mikusukeが男に対し口を開く。
「・・・・・・・。」
それに対する男の反応は無言だった。
「相変わらずだな。まぁ、簡単に言うと蜃気楼みたいなものだよ。周りの岩壁になじむ様な虚像を作り出して行き止まりのように見せていたわけさ。」
「それはいいとして・・・あの宝石の調査が進んだと聞いて来たんだが早速本題に映らないか?」
「・・・・・・・。」
mikusukeの問いかけに男は再度無言で答えた。
「ん~。先に約束の物か。ほら、言われた通りの物だ。」
そう言ってmikusukeが懐から紙袋を取り出し中身を男に見えるように取り出した。


―ほたる。と一緒に朝までイチ・・・?
裏表紙に書かれているタイトルの続きはmikusukeの手がかぶり確認出来なかったが何か如何わしい類の本だという事は容易に想像できた。


「むおおぉおおぉ!!!!」
今まで無言だった男が本に過剰に反応を示し大声をあげた。
「は、はやく見せろ!!」
そう言いながら男が奥から2人の元へ駆け寄ってくる。
蛍石の光に照らされ確認出来た男の容姿は神経質そうな口調とはまるでかけ離れていた。
今まで会った事のある人の中でも1,2を争う位に大きく不精髭に小汚いかっこをしているが浮浪者と言うよりかは研究者の様な印象を受ける。
「た、確かに頼んでいた物だ。後でじっくりと見るからそこの机の上に置いといてくれ!」
興奮気味に男が話す。
「ん!?ほぅ・・・この小僧が例の・・・」
そして今ようやくミコトの存在に気付いたかのような反応でミコトに近づいた。
「は、はじめまして。」
ミコトが圧倒されながらも挨拶をするが
「ふむふむ・・・。」
男はまるで何も聞こえていないようにミコトを観察していた。
「物事に集中しだすと周りが全く見えなくなるんだ・・・。」
mikusukeが申し訳なさそうな顔でミコトに声をかけた。
「い、いえ・・。」
じっ。っと観察され全く落ち着く事が出来ないがどうにかしようが有るわけでもなく固まりながら返答した。
「なるほど。」
男は2人のやり取りなど一切気にせずに何かを納得したのか急に言葉を発した。
「何か感じたみたいだが・・宝石の話に移ってもいいか?」
mikusukeが問うた。
それに対し男は
「あぁ・・。だが、断る!!」
男の口から出て来た言葉にさすがのmikusukeも驚きを隠せずにいた。





















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