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八木哲郎

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2009/11/08
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カテゴリ: カテゴリ未分類


冒頭から、僕はずっと独学できて、もう勉強の主流はそれしかないという話から始まった。大学に入っても教えることがすぎてぴったりしない、大学の存在意義が失われている、ノーベル賞を取ろうと思えばインターネットで世界中の論文をタダで読めるから、大学に行かなくても十分だ、という衝撃的な内容だった。

今の日本の知の状況はちょうど幕末か明治初めころのような状態ではないかと思う。幕末のころ、全国にこの人ありと知られた本当の意味での学者は数が少なく、しかも全国に散らばっていた。しかしそれでも師を慕って教えを乞おうとする青年は千里を遠しとせず、歩いてやってきた。松下村塾とか適塾とかはまったくの私塾であるが、天下の人材を育てた。

こういう学者は、ではどう教えたかというと、まず授業料はタダかタダ同然だったと思う。教え方がうまかったかというと決してそうだったとは言い難い。まず第一にこの人たちは教えることを生業にしていなかったから、教えることより自分で学問をするほうが主で、そのかたわら教えた。だから今日のように知識を網羅的に詳細にカリキュラム化して教えるなんてものではなかった。いきなり原則論とか本質論からぶっていたので塾生はよく理解できないので、塾生同士が、今日あの先生はこう言われたがその真意は何だろうかなどと互いに聞いたり討論したりしていた。
キリストの教えも仏の教えもその他あらゆる古今の学問もそんなもので、すぐにわかるようなものではなかったと思う。それであれこれ解釈した。ずっとあとになって真意がわかるというようなものであった。しかし、こういうところから自分の頭できいりきり考えるという訓練と習慣を養った。

今の大学にはこういう深く学問を究めたような先生は少なくなった。ほとんどいないと言っていい。大学に入るという本来の意味は、あの大学のあの学部にこういう先生がいるからその大学に入るというのが志ある人の道であったが、そういう学生は今でもいるが、だんだんそういう志を求める機会はなくなった。それで大学に入る意味は就職などでいいメリットを獲得しようというのが目的になった。しかし、いい大学からいい企業に入ったとしても、激烈な能力の競争になり、そういうメリットはやがて無効になる。
今の大学のカリキュラムは知識の伝達が主である。しかし今は知識は、インターネットや書物で読むことができる。本当に学ぶ者が求めているような講義はすくないのが現実である。
したがって独学というのが、やはりという感じで最後に残る道である。大学などで教えるとすればどういう方向で知を獲得できるかという方法や技術を教えるべきであろう。

学生時代は、それほど学に対する熱情とか向学心というものはないのが実情である。学生時代は遊んで過ごしてしまう。しかし社会にでてある年齢にたっするとむらむらと向学心が芽生えてくる。たいていの人が30歳過ぎてからそうなる。しかしその時にはサラリーマンの仕事に追われて勉強などする暇はない。こうしてたいていの人は向学心を満足させるには、定年後までに先延ばしにすることしかなくなる。


私は各大学にいる少数の大物知識人を一般の人でも聴けるように廉価な参加費による知的生産の技術セミナーをやったとき、これは当たってたくさんの社会人が聞きにきた。それからあっという間に勉強会というのが広まった。しかし、青年会議所が10万円という高額の講師謝礼を出すようになったので、私のような零細なセミナーは高額の謝礼を出せず、大物講師は呼べなくなった。この時が知をあまねく普及させるという運動の挫折の始まりだった。私の頃は講師謝礼は大物でも安く、喜んできてくれたものであるが、今はそうではなくなり、会場費も高い。何でもかんでも一般市民を知から遠ざけるバリヤーが高くなった。大学以外の場でいつでも高い知を教えられるチャネルがなくなってしまったのである。





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Last updated  2009/11/08 10:26:25 AM


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