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八木哲郎

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2013/11/24
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さて、古市憲寿氏の話に戻ると、かれは世界中の戦争に関する博物館を回ってミシュランふうの採点をつけているが、われわれ高齢者は古市氏のような若い世代がかつての戦争についてどういう裁断を下ろすのかについて興味がある。彼の採点によると、中国、韓国、シンガポールなど日本の被害を大きく受けた国はとりわけ被害性を強くアピールして博物館の目的性を果たしているが、そうでない加害側の日本の歴史博物館はいったい歴史の何をアピールしようとしているのか不明であるという。古代の石器や矢尻などをやたらに並べている。これは"物"にたよって歴史を展示しようとしている態度で、梅棹忠夫は日本の考古学の方法を批判している。

中学校や高校の歴史の授業ではやたらに縄文時代の話が多く学期末にやっと現代史に入るが、そこは駆け足ですませてしまうから、「誰も戦争を教えてくれなかった」ことになる。しかし日本人の大人でも戦争をどれだけ知っていたかは、疑問である。戦後になってわれわれ高齢者もやっと戦争に至る前後の歴史を知ったわけである。310万人の死者を出し、焼け野原になった犠牲を払ってやっと知るに至った。

昭和7年に朝日新聞社が満州国の建国宣言に疑問を呈した国連調査団のリットン報告書全文を出版しているが、当時の報道や書物、講演記録などをみるとリットン報告書をことごとく無視したものが多かった。昭和7年(1932)から12年(1937)の日中戦争の開始までに昭和11年のノモンハン事件、昭和13年の張鼓峰事件などが起こって日本軍はソ連軍から甚大な被害を受けているが、当時こういう事実は報道されなかったからほとんど知ることはなかった。昭和11年の西安事件も知らされることはなかった。つまりリアルタイムではそういうニュースは国民に知らされることはなかった。戦後になって報道も出版も自由になっておびただしい事実を国民は知ることになった。だから大人たちでさえ戦争を戦後になって教えられた。

今は戦後生まれの人が98%に達し、戦争を推進したり経験した世代はほとんどいなくなった。孫かひ孫の時代になった。それなのに韓国や中国から日本は謝罪せよ、賠償せよ、といわれると、そんなこと俺たちの知ったことかと若者たちは思うようになり、大久保で反韓のヘイトスピーチが行われるようになった。韓国の方も感情的になって、映画の話だが、まさかの北朝鮮と一緒になって日本にミサイルを打ち込む場面では観客が総立ちになって喝采したそうだ。日米韓というのは長い間一体として見られていたのに、なんという変わり方だろう。今安倍政権は戦争ができる法制度や体制をつくり、いつでも集団的自衛権をやろうとしているが、実際には、戦争の可能性は遠のきつつあり、宣戦布告を伴う戦争行為は人類は行わなくなるだろうと言われている。

問題は歴史認識であるが、若い世代がこれをきちんとおこなうことによって事態が変わるであろう。ではどこをけじめとして、してはいけないことは何かである。サンフランシスコの講話条約で日本は多くの国との戦争状態を終わらせ、国連に復帰することになった。このとき、インドネシ、南ベトナム、フィリピン、ミャンマーなどの国を除いて、賠償を免除してもらい、賠償額も10分の1位にさげて日本の経済復興に役立つ役務賠償にしてもらった。戦争犯罪追求では7人の絞首刑と15人の禁固刑がきまった。私はこの講和条約が国際的に約束したひとつのけじめだろうと思う。東京裁判は勝者が敗者を裁いた国際法を無視した裁判であると強硬にいう人がいるが、公平な国際裁判などというものは存在しないのであるから、言っても仕方がない。これはひとつの戦争終結の手続きであり、日本に戦争放棄の憲法を押しつけたのも、戦勝国が決めた手続きであった。日本人は全体としてこの手続きを守ってきた。この憲法のおかげで、アメリカから再軍備しろという要求をさける手段にしてきたし、70年間、国際紛争を解決する手段としての戦争に関わることをせず、イラクに自衛隊が行った時も後方勤務ですませることができた。

しかし、日本人の中には、今の憲法は日本の国力を根こそぎそぐためにアメリカが押しつけた憲法であるから、作り直すべきであるという意見があり、これは一般論としては正しい。しかし、A級戦犯の処刑は戦勝国が勝手にやったものであり、分祀せずにいつの間にか靖国神社に合祀し、日本の首相が参拝することは正当であり、外国からとやかくいわれる筋合いはないという人がいるが、これは外交を知らない人の勝手な論であり、日本人自身にとってもおびただしい犠牲を強いた戦争に導いた指導者は裁きを受けてしかるべきであり、終戦を1年早めれば100万人以上の人命を救うことができたのに、それをしなかった彼らは全くの無能であったと多くの日本人が感じている。韓国や中国のように日本から深刻な被害を受けた国が戦前の日本帝国の復活を警戒を抗議するのは、彼らの防衛的な論理から言って理解できる。しかしいつのまにか、国のために命を捧げた将兵をお参りするのは当たり前ですという論理にすり替えてしまっている。戦争を推進したり、参加した世代がもはやほとんど死んでしまって、孫かひ孫の世代になってしまった日本人に戦争の責任がまだあるのかという疑問、もうないという論、学校では歴史認識を教える必要はないという言説があるが、世界には歴史を記録した文書や人々の記憶・認識が山のように存在しており、消えることはない。もし、若い人たちが将来日本を背負ってたつ人材になろうとするならば、歴史認識を正しくもっていないとグローバル化した世界で活躍することはできないであろう。したがってこのための教育が絶対に必要である。

中国を侵略した欧米先進国が中国にどう謝罪したかを探ったことがあるが、そういうことを聞いたり読んだことはなかった。しかし、第二次大戦で中国側の同盟国として援助したことでそれが帳消しになった。加害した分の半返しがあるかないかである。

古市は戦争の記憶は年々薄れてゆくのが人間の自然であって、やがて後百年もすれば、戦争は忘れさられていくだろうとしている。それは自然のながれであるが、それにさおさすように大日本帝国の復活を賛美するような言説をなす者は、被害者に突然かつての恐怖と憎悪を思い出させるのである。








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Last updated  2013/11/24 03:59:38 PM


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