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碓氷峠の看板の下を脱兎のごとくスタートした遼は自分の血液に多量のアドレナリンが分泌されているのを感じていた・・・・。
「この感じ」のときは難なくブレーキングドリフトが出来る、アドレナリンが出ているときが自分の最も研ぎ澄まされたときなのだ。
遼の走りは、このスカイライン2000GTXがフロントヘビーで普段はアンダーステアだが、ブレーキングでテールを上手く流しながらコーナーに進入し、ほとんどカウンターを当てずに加速に移る動作に集約されていたのだが、よりスムーズにブレーキ力を安定して強くかける為に、左足でブレーキを踏み、アクセルペダルに右足を乗せたままでクラッチを踏まずにシフトダウンをするトレーニングを普段の走りで実践し、エンジン回転をあわせることでクラッチを繋いだままシフトダウンが出来るようになっていた。
ヒール・アンド・トウは得意中の得意であったし、ブレーキングドリフトを始める以前の走り方ではコーナーの進入時に直進状態でブレーキングしながらヒール・アンド・トウでシフトダウンし、ブレーキングが終わったところでステアリングを切り込み、ハーフスロットルでコーナーリングして出口を向いたところで全開にする。と言った走り方では左足でブレーキを踏む必要性は感じなかった遼であったが、ブレーキングドリフトを使うようになってからは、ブレーキング終了とほぼ同時にスロットルを開ける。というより、ブレーキが終わっていない時点からスロットルを開けて走るほうがよりスムーズに加速に移れるし、慣れるとそのほうがずっと速く走れることが解ってきていた。
遼の右足と左手はエンジン回転のタイミングを合わせてシフトダウンすることに神経を集中して、左足はリヤがハーフロックで滑り出すだけの力でブレーキを踏みつければよかったし、左足のブレーキを緩める寸前にパワーをかけて、リヤがグリップを回復した時に挙動が一瞬ぐらつくことを防ぎ、スムーズに加速に繋げるためにはそれが一番上手いやり方だった。
クラッチが自動的に動作するシフトシステムなどまだ登場してはいない時代だったが、遼はシフト動作に入るレバーの動きから油圧アクチェーター等でクラッチを切りシフト終了時に再びクラッチを繋ぐシステムを作れないかとおぼろげに想像をめぐらしていた。
碓氷峠の多くのコーナーはセカンドギアでカバーできたが、ローに入るコーナーも多くクラッチペダルを踏まずにシフトをする遼は一速に回転を合わせそこなう事がまれに起きて、”ガリ“っとギアがなると寿命が縮む思いを味わうので、そんな、シーケンシャルなシフトシステムが欲しいと思っていたのだった。
薄暗い夜明け前の碓氷峠を全開で駆け上るスカイライン2000GTXの吸気音と排気音が交錯し、フルブレーキングでテールを流すスキール音、3速から1速までダウンシフトして立ち上がりはホイールスピンが起きて甲高くタイヤが鳴く、この日も対向車にはまだ出会わない。先行するクルマも無く、深い谷にエンジン音とスキール音がこだましていた・・・・・。
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