9-3


文責:まるり


    ジョーが初めての『 彼女 』と別れてから、さらに数時間後。
    店内は閑散と静まり返り … 閉店 した。

   「ありがとうございました、又のお越しをお待ちしております」


    最後の客を見送ると、ふぅ~っ と大きな溜息を付き、どこに隠し持っていたやら
    煙草に火を付けた。

   「… おい、幾ら閉店したからって、直後に煙草なんて吸うなよ」

    同じ時期に入社した同期 … ジェットがジョーを嗜めるように悪態付く。
   「この一服の為に仕事してるようなモンなんだから いいじゃない 別に」
    第一 君に迷惑掛ける訳じゃないし、とまるで他人事(ひとごと)のように
    のたまう ジョー。
    その顔の造作だけを観ていれば、天使も真っ青 という処であるの に。


       こっ こいつ …… !?


   「そりゃぁ、ね …君みたいに『地』で通せるなら『苦労』はないよ
    でも僕の『ウリ』は、それ じゃないから、ね」
   「 ……… 」
    ジェットは何も云わなかった…もとい、云えなかった。
    何だ、何なんだ この変貌の仕方は とでも云いたげな視線をジョーに向ける。

   「…んじゃ 訊くけど… オンナが『煙草の匂い』を嫌がったらどうすんだよ」
   「嫌がったらって…仕事、で?」
   「 おぅ 」


   「ん~… ま、適当 に?『こっ これは先輩に無理矢理っ…』と純真さ全開に
    アピールするか、『…僕だって オトコだし 吸いたくなる時くらい』とさり気ない
    男らしさで攻めるか… あと、は『 あなた が吸ってる姿が素敵だったから…
    ちょっと真似をして… 』と女心に訴えるか の どれか」

    少し瞳(め)を細め、コトも無げに さらり と とんでもないコトを云う。


       こっ こいつ …… めちゃくちゃ性格悪っ!!!!!


   「?どうかした?ジェット 顔色良くないみたい、だよ」
    云いつつ覗き込んで来る表情(かお)は 大きな瞳(め)をきゅるりんっ と
    見開き、きらきらモード全開。
    しかも、自分の発言に悪気は全くない。


   「 …って おいっ 」
   「 ん 何?? 」
   「お前…この店入ってどれ位だっけ?」
   「厭だなぁ 何訊いてるの 今更 …同期 だろ?『10日前』だったじゃない」
   「…『10日』も居りゃ あんま『初めてのお客』って無くないか……?」
    ジェットが恐る恐る訊いてみる。

   「ん~?自分が付く『初めて』のお客様全員に、云ってるだけ 嘘じゃないだろ?
    大抵のことは見逃してくれるし……親近感を持つらしくて 扱い易いから」


      天然かよ!


    にこにこと 天使の笑みで悪魔の言葉を吐く『彼』にジェットは人知れず
    こっそりと、且つ盛大な溜息を付いた……。


   「あ、僕これから野暮用があるから 帰るねっ!あと 宜しくっ」

    ぱたぱたぱたっ ぱったん

    見事なタイミングで後片付けを押し付けられた ジェット。
    ……独り楽しく『お片付け』をする羽目となった。




店内に残されたジェット   その後のジョー   あなたのお好みで♪




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