2-2-1-1



   ホスト・ジェットにハマる



   ゆっくりと、手を伸ばす。
   赤い、燃えそうなほどに赤い髪。
   それに、ほんの少し、指先で触れた。

   「どうしました?遠慮しないで。俺は今、あなたの為に存在してるのですから」

   すっと手が伸びて、彼の大きな手が私の手に重なる。

   …体温が、流れ込んでくる―。



   「あ、案外、柔らかいのね」

   すっと一房、彼の髪を指で梳いて。
   私は慌てて手を振った。
   それと同時に彼の手も離れる。

   「それにいい匂いもするし。どんなシャンプー使ってるの?」

   話題をそらそうと、この場の雰囲気を紛らわそうと、わざと明るい大声を出す。

   これが他の、例えばただの男だったらそれで終わっていたに違いない。

   けれど相手が悪かった。
   新人とはいっても彼もホスト。
   そんな私の企みは全てお見通しなのだろう。

   彼は、少しだけ残念そうに笑うと、私の背中に軽く手を廻す。
   そうして私の髪に触れる直前の距離で囁いた。

   「あなたの方が…ずっといい香りですよ?ほら」
   「!」



   …もう、ダメかもしれない。

   彼が虚構の男だってこと、彼はこれが仕事で、私はそのお客なのだという現実は、
   この頭からは一切追い出されていった。



                       続く



© Rakuten Group, Inc.
Design a Mobile Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: