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すると、前方の暗がりから女性の大声が聞こえました。キャーというような悲鳴ではなく、何かを訴えているような声。ただし何を言っているのかはよく分かりません。ろれつが回っておらず、明らかに酔っ払った人間の声でした。

「らーかーらー、もうらいじょーぶーって、いってんじゃーん」
なんかまんがみたいですが、ほんとにそんな感じだったんです。女性は20代?暗かったのでよく分かりませんが、路上にへたりこんでいます。服装は普通で、とくに街角に立っているようなタイプではありません。そばに一人男性がいて、おそらく女性がぶちまけたのであろうハンドバッグの中身を拾っていました。男性のほうはスーツを着ていて、女性よりももう少し年上のよう。仕事帰りでしょうか、ということは女性は同僚?

男性は拾い集めた口紅やら何やらの小物をハンドバッグに押し込むと女性に持たせ、「さ、早く、行くよ」と立たせようとします。恥ずかしいので早く立ち去りたいという気持ちがものっすごく感じられます。

二人で飲み屋に入ったものの、酒を飲んだ女性が荒れて手をつけられなくなり、男性はあわてて勘定を済ませて店の外に引っ張り出した・・・。ワタシは瞬時にそんなドラマを頭に描いていました。

すると女性は強引に立たせようとする男性の腕を「やーだー!いたーいー!」とバシバシ叩き、男性の力がゆるんだところで、持たせてもらったばかりのハンドバッグを力まかせに投げつけました。バッグは近くにあったバーのドアに当り、中から顔をのぞかせたのはマスターふうのおじさん。
「おいおい、お姉ちゃん大丈夫かよ」
「もう、らからー、あたしーいってんじゃーんさっきからー」
こいつは話しても無駄だとマスターは一瞬でさとり、男性に向き直りました。
「あんたの連れ?警察呼ぶ?」
「いいいえいえ、大丈夫です。すぐ連れていきますから」

男性が放り投げられたバッグを拾おうと女性から手を離すと、女性はあろうことか、路上に寝転んだまま履いていたジーパンのボタンに手をかけました。
「あついー、もう脱ぐー」
「何やってんの!ダメだって!」
もう男性のほうも半狂乱です。するとだれかが呼んだのでしょう、タクシーが近くに止まり、男性はあたりの野次馬にでたらめに何度も頭を下げて女性を押し込むと去っていきました。野次馬から失望のため息が聞こえたように感じましたが、きっと気のせいでしょう。

その後、「ちゃっちゃと飲んでさっさと寝よう」という当初の誓いはどこへやら、居酒屋でワタシたち出張者一行は「今のアベックは何であったのか」というテーマについて数時間にわたり激論を交わしてしまったのでした。
いやしかし、ワタシは女性の酒乱というのは初めて見ました。
こういうの東京では日常茶飯事なんでしょうか。





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最終更新日  2006年06月02日 15時14分33秒
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