★ After a hundred years





            ―After a hundred years―

            After a hundred years
            Nobody knows the place,--
            Agony that enacted there,
            Motionless as peace.

            Weeds triumphant ranged,
            Strangers strolled and spelled
            At the lone orthography
            Of the elder dead.

            Winds of summer fields
            Recollect the way,--
            Instinct picking up the key
            Dropped by memory.



            ―百年のちに―

            百年のちに
            この場所を 知るものはない
            そこで演じられた苦悩も
            いまは、平和のように しずかだ。

            雑草は、わがもの顔に はびこり
            見知らぬひとが、さまよいこみ
            むかしの死者の墓の、 
            さびしい綴り字を 判読した。

            夏野を よぎる風は
            あの道を おもいだし、
            追憶の おとした鍵を
            本能的に ひろいあげる
            (Emily Dickinson)








詩の定義

もし本を読み、その本のおかげで、
全身がどんな火をもってしても暖まらないくらい冷え切ってしまうなら、
わたしにはそれが詩だとわかる。
もし頭のてっぺんが吹き飛んでしまうような感動を覚えたなら、
それこそ詩だとわかる。
わたしに詩だとわかるのはそれだけだ。


エミリー・ディキンソン







          別訳:

          百年を経たあとには
          だれもこの場所を知らない
          そこに演じられた苦悶も
          平和のように静か、

          わがもの顔の雑草がひろがり
          見知らぬ人々はさまよい来て
          先に身まかった死者の
          寂しい綴り文字を判読した。

          夏野の風だけが
          この道を思い出す――
          記憶が落とした鍵を
          「自然」の本能が拾い上げて


          ディキンスン詩集・安藤一郎訳







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