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May 11, 2008
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カテゴリ: 食のこと
今日は、 ホールフードスクール でした。

今日もお料理に講義に、学ぶことが盛りだくさんだったのですが、
その中で、ひとつみなさんにもご紹介したいと思います。

タカコ先生 の講義のとき、
受講生のお一人でいらっしゃる 内田美智子先生 の作文を、
ご紹介されていました。

文中に出てくる「坂本さん」が小学生にお話されているのを聞いて、


内田先生が朗読されると、受講生のみなさんのあちこちから、
涙をすする音がしました。

いのちをいただくということは、どういうことか、
深く考えさせられました。

一人でも多くの方に聞いてもらいたいと思い、
内田先生にお願いして、元の文章を送っていただいたので、
みなさんにもご紹介させていただきます。

内田先生、ありがとうございました。

以下、原文です。
みなさんの心に、届きますように。


坂本さんとみいちゃん      文責 助産師 内田美智子

坂本さんは食肉加工センターにお勤めです。
牛や馬を屠殺して解体するお仕事です。
坂本さんはこの仕事がずっといやでした。
「いつかやめよう、いつかやめよう」と思いながら仕事をしていました。

子どもが小学生の頃、授業参観がありました。
いつもは奥さんが行くのですが、その日はどうしても行けなくて、
「お父さん行って来てよ」と言われ、坂本さんが行きました。
授業では先生が子ども達に、
「お父さん、お母さんの仕事を知っていますか?どんなお仕事ですか?」
と一人ずつ尋ねていました。
坂本さんの子どもの番になりました。
坂本さんは子ども達に、ほとんど自分の仕事の事を話していませんでした。
だから、自分の子どもは何と答えるのだろうと思っていると、
子どもは「肉屋です。普通の肉屋です」と言いました。
坂本さんは「そうかぁ」と思ってそのまま帰りました。

家で子どもの帰りを待っていると、帰ってきた子どもが
「お父さんが仕事ばせんと皆が肉ば食べれんとやね」、と言いました。
坂本さんが不思議に思って聞くと、帰り際、担任の先生に呼び止められて
こう言われたというのです。
「坂本、何でお父さんの仕事ば普通の肉屋て言うたとや?」
「ばってん、カッコわるかもん。一回、見たことがあるばってん、
 血のいっぱいついてからカッコわるかもん」
「坂本、おまえのお父さんが仕事ばせんと、
 坂本も先生も校長先生も会社の社長さんも肉ば食べれんとぞ。すごか仕事ぞ」
「お父さんの仕事はすごかとね」という子どもの言葉を聞いて、
坂本さんはもう少し仕事を続けようかなと思いました。

そんなある日、一日の仕事を終えて事務所にいると、
一台のトラックが会社の門をくぐってきました。
荷台には、明日屠殺される予定の牛が積まれていました。
坂本さんが「明日の牛ばいねえ~」と思って見ていると、
助手席から十歳くらいの女の子が飛び降りてきました。
そして、そのまま荷台に上っていきました。
坂本さんは、危なかねえと思って見ていましたが、
しばらくしても降りてこないので、心配になってトラックに近づいてみると、
荷台でその女の子が牛の腹をなでながら話している声が聞こえました。
「みいちゃん、ごめんね~。みいちゃんごめんね~。
 みいちゃんが肉にならんとお正月が来んて、じいちゃんの言わすけん。
 みいちゃんば売らんと皆が暮らせんけん。
 ごめんねえ。みいちゃんごめんねえ~」
といいながら一生懸命牛をさすっているのが見えました。
坂本さんは「見なきゃよかった」と思いました。

遅れて運転席からおじいちゃんが降りてきて、
「坂本さん、明日はよろしくお願いします。
 みいちゃんはこの子と一緒に育ちました。
 だけん、ずっとうちに置いとくつもりでした。
 ばってん、みいちゃんば売らんと、
 この子にお年玉もクリスマスプレゼントも買ってやれんけん。
 よろしくお願いします」
と坂本さんに頭を下げました。
坂本さんはまた、「この仕事はやめよう。もうできん」と思いました。
そして思いついたのが、明日の仕事を休むことでした。

家に帰ると子どもがいたので、
今日のことを誰かに話したくて子どもに話しました。
そして、
「お父さんはみいちゃんを殺すことはできんけん、明日は休もうと思っとる」
と言うと子どもは「ふ~ん」と言うだけでした。

するとその夜、子どもと一緒にお風呂に入っていると子どもが
「お父さん、背中ば流してやる」言って、背中を流しながら、
「お父さん、お父さんがしてやった方がよかよ。
 心の無か人がしたら、苦しむけん。おとうさんがしてやんなっせ」。
坂本さんは黙って聞いていましたが、それでも決心は変わりませんでした。

朝、子ども達が出かけるのを、まだかまだかと待っていました。
やっと出て行ったのでホッとしていると玄関がまた開いて、
「お父さん、今日は行かなんよ、わかった?」と子どもが叫んでいます。
坂本さんは思わず「わかった」。
その声を聞くと子どもは走って学校に行きました。
そして奥さんが「あーあ、子どもと約束したけん、行かなね」。
こうして坂本さんは行くことになりました。

会社に着いても気が重くてなりませんでした。
でも早く着いたのでみいちゃんをそっと見に行きました。
するとみいちゃんは、他の牛がするように角を下げて
坂本さんを威嚇するようなポーズをとりました。
坂本さんは迷いましたが、そっと手を出すと、
最初は威嚇していたみいちゃんも、
次第に坂本さんの手をくんくんと匂うようになりました。

そこで坂本さんが
「みいちゃんごめんよ~。みいちゃんが肉にならんと皆が困るけん。ごめんよう」
と言うと、みいちゃんは坂本さんに首をこすり付けてきました。
それからずっと坂本さんは、女のこがしていたように腹をさすりながら
「みいちゃん、じっとしとけよ。動いたら急所をはずすけん、
 そしたら余計苦しかけん、じっとしとけよ。じっとしとけよ」
と言い聞かせました。

屠殺の時が来ました。
坂本さんが「じっとしとけよ、みいちゃん、じっとしとけよ」と言うと、
みいちゃんはちょっとも動きませんでした。
その時、みいちゃんの大きな目から涙がこぼれ落ちるのを見ました。
坂本さんは牛が泣くのを初めて見ました。
そして坂本さんが銃で急所に打ち込むと
ちょっとも動くことなくみいちゃんは倒れました
(普通は牛が何かを察して頭を振るので、急所から少しずれることがよくあり、
 倒れた後に大暴れするそうです)

翌日、肉を引き取りに来たおじいちゃんが言いました。
「坂本さんありがとうございました。
 昨日、肉ば少しもらって帰って、みんなで食べました。
 孫は泣いて食べませんでしたが、
 『みいちゃんのおかげでみんなが暮らせるとぞ、食べてやれ。
 みいちゃんにありがとうと言うて食べてやらな、
 みいちゃんがかわいそかろ?食べてやんなっせ』って言うたら、
 孫は泣きながら『みいちゃんいただきます。おいしかあ、おいしかあ』て、
 言うて食べました。ありがとうございました」。

坂本さんは、もう少しこの仕事を続けようと思いました。






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Last updated  May 12, 2008 12:06:52 AM
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