Momo-mama's Diary

Momo-mama's Diary

お父さんと海

海

男の子のお父さんは夜遅くまでかけて2人分の草鞋を作りました
稲わらを叩いて柔らかくし、大きな手で器用に撚り合わせ、
次の日の潮干狩りに間に合わせようと頑張っていました
夜中にふと起きた男の子は、そんなお父さんの背中を
「何をやっているのだろう」と眠い眼をこすりながら眺め、
やがてまた眠ってしまいました

翌朝早く、お父さんは男の子とお兄ちゃんを起こして海に連れて行きました
暑い夏の青い空の下、真っ白な砂浜が広がる海です
砂浜を抜けて岩場に着くとお父さんは子供達に昨日の夜作った草鞋を履かせました
それは子供達が岩場で足にけがをしないようにと用意してくれていたのでした

岩の上に2人の男の子を座らせて、お父さんは海に潜り、
貝を沢山手に持って上がってきました
潜るのが上手なお父さんは何回も何回も潜るうちに、
時々なかなか上がってこないので、男の子は不安になりましたが
その度に両手に持った貝の多さに目を輝かせ、心配もどこかへ
飛んでいってしまいました
やがて陽も落ち始め、夕焼けの中を帰る三人の影は砂浜に長く残っていました


男の子とお父さんの思い出はここで終わっています
その年の冬、お父さんは交通事故で小さな男の子達を残して
遠い空へ旅立ってしまったのです

大人になった男の子の記憶の中には
お父さんとの海での思い出がしっかりと刻まれています
いいえ、止まったままと言った方がいいかもしれません

父親になった男の子は自分の記憶の中の男の子と同じ歳の我が子に
どんな思い出を残してあげるのでしょう



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