Happy Nail

尿路感染症(1回目)



黄疸の通院+プチ入院も終わり、ホッとしていた。
出産前に思い描いていた、ふわふわの赤ちゃんとの幸せな毎日は、
改めて今日からスタートだ。
義実家に里帰り滞在中のため、義実家の人たちとささやかに
出産+退院祝いをすることになった。

その日の夕方から、息子がなんだかあったかい気がしていた。
が、ここは義実家。
義両親と義妹夫婦は仕事で不在、この家には私と息子のみ。
体温計の場所もわからず、幸い息子もミルクをよく飲み、
よく眠っているので、旦那が帰ってきたら一応言ってみようと
思うにとどまり、気になりながらも夕方になるのを待つ。

夕方になり、義実家のみんなが続々と帰宅。
旦那が息子を沐浴し、夕食をいただく。
そして、旦那が息子を抱っこしながら言った。
”なんかこの子熱くない?”
”夕方位から、私もちょっと気になってたんだけど・・・。
熱計ってみる?”と、私が答える。
旦那が体温計を持ってきて、計ったところ、40度を超えていた。
驚いた旦那と私、病院に連れて行こうかと話し合う。
したら、
”お風呂上がりだからよ。赤ちゃんはすぐ熱くなるものよ。”
と、義母。どうやら、うちらはいちいち大げさらしい。
義母は婦長までつとめるベテラン看護士だ。
子育ても、3人もしている。
うちらも初めての育児。赤ちゃんの生態についてはまだまだ無知だ。
返す言葉もなく、心配しつつも引き下がる。

旦那はちょっと息子がグズると食事を中断して
いちいち抱っこしに行くので、
義母に、赤ん坊はちょっと泣かせておけばいい、
いちいち行くな、と言われ、すごすごとテーブルに戻ってきた。
そのあとまたすぐに息子がグズった。
義母がスッ飛んで行き、息子を抱っこ。
おい、なんかさっきと話が違うじゃねーか!?
いやはや、ばーちゃんとはこう言うものだ。

そして、その夜うちらは床に就いた。
新生児の息子は3時間起きに起きるため、授乳は深夜も続く。
私がミルクを作っている間、起きてしまった旦那が息子を抱っこ。
熱い。やっぱりまだ熱い。
再び熱を計る。
41度超。
旦那が、病院行った方が良くね?と言って来た。
義実家に持ち込んでいた、たまごクラブの付録の乳幼児の病気の
冊子をめくる。
生後3ヶ月以下の赤ちゃんが40度以上の高熱を出したら、
夜中でも至急受診、と書いてある。
息子はまだ生後3週間だ。
私も、でら救急に連れて行きたい。
でも、ベテラン看護士+母の義母は大げさだと言っていた。
今は義実家に世話になっている身、しかも嫁。
いざ受診して、ホントに大げさだったら、
後から何言われるかわからん。嫌だ。
息子は相変わらずミルクもよく飲み、機嫌も良い。
でも、本には至急受診、って書いてある。
ハッキリ言って、私も心配で、気が気じゃない。

でもでも、今の状況で、私の口から病院に連れて行くとは言えない、
どーするつもりだこのヤロウ、と、旦那に詰め寄る。
小声でしばし口論の後、うちらは受診することにした。
午前3時。
ミルクとオムツなどを持ち、息子をおくるみにくるんで義実家を出る。
電話で夜間小児科医の居る救急を問い合わせながら、
最寄の総合病院にたどり着いた。


受診の結果、この月齢で、この高熱、って言うのはちょっと異常なので、
上(多分病棟?)から小児科の先生を呼ぶから待ってろと言われる。
なんだ?小児科医が居るトコを選んで来たのに、
お前は小児科医じゃないんか?
深夜の救急は、ペーペーのタマゴ医師が診察して、
使える医師は、仮眠しててやばそうな(重要な?)時だけ呼ばれる、
みたいな、なんか、テレビで観たことあったな。

そして、ホント?の診察。
さっきのタマゴ医師と同じ事を言われ、数々の検査をするから
同意してくれと言われた。

なんか、思っていたよりも大事になってきた。
採血のほかに、高熱を伴う髄膜炎というでら恐い病気があるから、
髄液も採ると言う。
髄液採取は、大人が麻酔して挑んでもかなり痛い。
でも、赤ちゃんは麻酔する事自体にリスクがあるため、
麻酔はしません、と。
んな事言われても、うちらは同意するしかない。

とりあえず、先にレントゲンを撮る事になった。
赤ちゃんが動かないように、押さえつける。
てか、この役はうちらにゆだねられた。
手も足も細い。思いっきり押さえ付けたら折れそうで、恐い。
息子もなかなか強い力で抵抗してくる。
やめろ、やめろ、と怒って泣く。
私まで泣けてきた。
可哀想で、うまく押さえられない。
”ちゃんと押さえてやれよ!早く終わらせたろうぜ!”
旦那に一喝され、ハッとする。
レントゲンは無事終了した。

そして、ホッとする間もなく、息子は次の検査に連れて行かれた。
かなり痛い検査ですからとまた言われ、
うちらは外で待つように言われた。
泣きながら、処置室の中に消えてゆく息子。

処置室の外で待つうちら。
旦那と交わす言葉はなく、うちらは黙って座っていた。 
ドア2枚隔てたこの場所にまで、赤ちゃんの泣き叫ぶ声が聞こえてきた。
あ、ウチのだ!
今まで聞いた事ないような、ものすんごい泣き叫び声。
宣告通り、息子はかなり痛い目にあっているようだ。
息子の叫びは、まだ聞こえる。
時間が全然過ぎない。長い・・・。

息子、ただ生まれてきただけで、何にも悪い事してないのに、
なんでこんな事に。
何か、妊娠中とか、私が悪かったの?
代われるものなら代わってあげたい、というよりも、
代わるべきだ。代わらせてください。
息子に申し訳ないのと可哀想なのと、
何の病気なのかって恐いのと、不安・・・。
ごめんね、息子。頑張れ、息子!
旦那の手を握って、ずっとずっと、涙が止まらなかった。
とりあえず入院になるのは決定、と言うことで、
旦那は翌日も仕事があるので、朝になる前に入院の準備をしたい。
”頼むな”、と言い残し、旦那は義実家に荷物を取りに戻った。

その間ひとりで待つ。
心細さもひとしおだ。
ようやく中から呼ばれ、息子のもとに駈け付ける。
いくつか並ぶベッドの中のひとつに、息子の姿を見つけた。
泣いている。
敷かれたシーツには、血の跡が3的滴。
おぉ、こ、これは、息子のものだ。うぅ・・・。
包帯でグルグル巻きにされた手をバンバン、怒ってずっと泣いている。
そんな息子を目の前に、ごく簡単に検査の結果と説明を受ける。
詳しくは、入院病棟に上がってから、担当医が決まり、
それから受けるとのこと。
とりあえず命に関わるような重病ではないらしい。
少し安心する。

息子は髄液を採取したため、あと40分近くは安静だと伝えられた。
抱っこできない。
ミルクも与えてはいけないと言われた。
髄液採取の後は水平を保たなければ、
気持ち悪くなって吐いたりする危険性があるらしい。
もうこれ以上息子につらい思いはさせたくない。

しかし泣きわめく息子を目の前に、何もすることができず、
ただ横についているだけしかできない私。
とりあえず、手を握って、頑張れと話しかける。
ひどい目にあった息子は、さらにお腹も空いていて、眠いのだろう。
激しく泣き続ける。
時間の過ぎるのを待つしかない。

ところで、息子の片手、まるで骨折でもしたかのように添え木をされて、
包帯でグルグル巻きにされていて、かなり気になる。
先っちょからは、点滴の管が。
どうやら点滴らしい。
近くに居た看護士さんを呼び止めて聞いてみる。
乳幼児はよく動く。点滴を普通に留めたのでは、すぐ抜けてしまうため、
抜けないようにみんなこうするそうだ。
特に乳児は、月齢が低ければ低いほど血管の確保も難しい。
何度も針を刺すのは可哀想ですしね、と。
たかが点滴なんだけれども、ビジュアル的にはかなり痛々しい。

病棟の準備ができたらしく、息子と共に上に上がる。
小児科病棟らしい色画用紙で作られた花や動物の飾り付けが目に付く。
身体測定を済ませ、主治医登場、息子の病気について説明を受けた。

息子の病名は、”尿路感染症”らしい。
な、なんじゃそりゃ???

尿路感染症とは、尿路系の炎症などの総称らしい。
菌が付いた場所のより、膀胱だったら膀胱炎、
腎臓だったら腎盂腎炎、などの病名が付く。
息子はこれから色々検査をして、
原因がわかった時点で正式に病名が決定される。

おしっこは通常、腎臓で作られて膀胱にたまり、尿管を通って排泄される。
腎臓と膀胱の境目には弁があり、一度膀胱に下りた尿が再び
腎臓に戻ることは普通ならまずありえない。
よって、腎臓は無菌状態である。
(膀胱には尿が溜まるため菌が存在するらしい。)
それが、何かの拍子で逆流してしまい、
腎臓に菌が進入すると、炎症を起こしいきなりポンッと高熱が出る。
風邪などに類似した症状や前兆などはなく、
元気で食欲もあるのにただ熱だけが高い、
と言うのがこの病気の特徴でもあるらしい。
説明を理解すればする程、今回の息子の状態にヒットする。
そして、この病気は、尿検査で白血球の数を調べるとわかるらしい。
じゃあ、最初から尿検査だけで良かったんじゃないか。キーッ。
しかし、新生児が高熱を出す事はまずないので、
まず重病ではないかに確認が優先される。
命に関わるような、さまざまな恐い病気が憶測され、
一通りの検査をすることはやはり必要なのらしい。
尿検査だけ先にして、それで異常がなければ髄膜炎などを疑い
さらに検査を進める、ということもここでは不可能らしい。
今回息子が経験した痛い思いは、
タマゴ医師の育成に貢献し(練習台とも言う)、
ムダではなかったと思われる。

とりあえず、人間としての機能など、全てがまだ未熟なので、
水分確保のため点滴は退院まで続く。
これで、万が一ミルクが全く飲めなくても脱水や栄養失調に
なることはない。
そして、尿路感染に効果を発揮すると言う抗生物質を投与される。
まだ新生児なので、あと数日遅かったら死にも至るらしい。
大げさ万歳である。
スッ飛んできて、本当に良かった。

入院中に、エコーで腎臓を見て、腎臓に奇形がないかを調べた。
尿路感染を起こした以上、原因を突き止めなければならない。
主な原因は、先天的な奇形によるもの、
尿の逆流によるもの、
たまたま、の3つになるらしい。
・・・たまたまって何だ?
乳幼児は機能がまだ未熟なため、うっかり菌が腎臓に飛んでしまう
こともあるらしい。結果、疾患や原因などなく、
運が悪かっただけ、という事になるらしい。

息子の腎臓には奇形はなかった。
あとは、抗生剤を調整しながら、熱が下がって白血球の数値が
下がるのを待つ。
退院までは、時間の問題だ。

入院中、新生児の息子には、産院で入れられていたようなケースが
支給され、私は本来病人が寝るためのベッドで寝起きして過ごした。
6人の相部屋、新生児はウチだけだ。
他のママたちは、子供と一緒に寝たり、
子供が大きい人は子供をベッドに寝かせ、
自分は床に寝ていた。(何か床に寝るママ用のコロコロ付きの板の上に
布団を敷いて寝ていた)

入院中は、親が24時間付き添い世話をする。
売店や入浴時など、どうしても離れたいときには保育士さんが来ていた。

ここは病院。
初めての育児に不安を抱えながらも、呼べば専門家がすぐ来てくれる
この環境、かなり心強い。
私はと言うと、出産でひどい目に遭い、義実家での気を遣う生活と
息子の入院続きでかなり消耗しており、
出血多量で貧血だったため、かなり衰弱していた。
看護士さんに優しい言葉をかけられ、子供のように泣きついた。
そしてその優しさに付け込み、
まるで産院のノリで、夜間はナースステーションに息子を預け、
夜間の育児を放棄し、のんきにぐっすり眠っていた。
だって、えらかったんだもん。ウチは実家には頼れないし。
こんなに続けて眠ったのは、久しぶりだ。
退院したらまた3時間おきに起きる生活が待っている。
旦那が帰宅する頃には、睡眠不足で首から下だけかろうじて
起きているような状態。
お母さん、今まで反抗したり生意気ばっか言ってごめんなさい。
子を産むまでは、のんきでいいわね、とナメていた主婦の友達、
あんたは随分前からこんな生活を体験して頑張ってきてたんだね・・・。

じきに息子の熱も下がり、1週間程で退院できる事になった。
私は入院中に、義母のことが大嫌いになった。
息子を心配しまくったストレスの矛先は、すべて義母に向けられたようだ。
だいたい、あんた何年看護士やってんだよ!?
息子、即入院だったじゃねーか。よくも大げさだとか言ってくれたな。
しかも、入院中、私は義母に病院を追い出される。
ある日義母が見舞いに来た。
入院中は、コンビニ弁当ばっかりだったので、
手作りのおにぎりやらフルーツやら、手土産付きで、ありがたい。
そして、その時はやってきた。
”nemiちゃん、疲れてるでしょ?家に帰って、ゆっくりお風呂でも
入っていらっしゃいな。”
そして、自宅で旦那の帰りを待ち、二人で外食でもして夜に
戻って来たらいいと。
な、何ですと???
私は、体力的に限界を感じ、夜は息子をナースステーションの預けている。
暇さえあれば、寝ていたい。クタクタなんだよ。
さらに、我が家は金もない。それはもぅ、かなりない。
私の夕食代や見舞いに来る旦那の駐車場代だけで、ピーピーだ。
旦那は義母に繰り返し借金をしているのに、わかっとらんのか。
何より、私にとって、初めての子供。
心配続きで、今も心配で、1分1秒たりとも息子から離れるのは嫌だ。
(夜中預けてるくせに、それとこれとは話は別だ。)
そんな状況下、
自宅に帰るまでの私の気力体力とタクシー代がもったえない。
風呂とシャワーは時間制で病院でも入れる。
ちなみに私は産後3週間の身。入浴はまだ許可されていない。
わざわざ自宅に帰ってまでして、ただシャワーを浴びて来いと言うのか。
丁重に、その旨お伝えした。
”そうよね、大変よね。ま、早く行ってらっしゃい。”
義母は一人息子の我が旦那を溺愛している。
甘い甘~い話しかけ方など、気持ち悪く感じる時も過去には多々あった。
彼女にとって、私の息子は、愛する息子の可愛い赤ちゃん。
さらに初孫でもある。
どうしても息子と二人きりになりたいらしい。
院内のATMでお金をおろし、私はすごすごと自宅に帰った。

帰宅した旦那に詰め寄り罵倒し泣き喚き、
思う存分気を晴らした。
息子の退院を期に、義実家での里帰り生活を終了する事を約束させ、
今のうちらに外食する金などないので、コンビニでカップラーメンを買って
二人ですすり、身内の面会時間は9時までなので、
急いで病院に戻った。

今思えば、病院にこもりきりだから気分転換、みたいな、
義母なりに気を遣ったんだろうとも思えるが、
当時の私は子を産みたて+病気続きで息子には猫並みに執着していた。
精神的体力的に疲れていると、思考もマイナスに偏る。
義母の大げさ発言も、ベテランならでわと言うか。
義母は長年にわたり、ものすんごい数の様々な重病人を見てきている。
それに比べたら、息子の発熱など大げさだったのかも知れない。
でも、その時は本当に嫌だったので、しょーがない。

そして、めでたく退院した。
退院してから2週間後に再び来院し、
膀胱造影という検査を受けることになった。
これは、ちんちんから造影剤を流し込み、レントゲンを撮って、
尿が逆流を起こしていないかを確認できるらしい。
もし逆流していたら、腎臓に造影剤が写る。
たまたま検査のタイミングの時に逆流を起こしていなければ、
見逃されてしまう。しかしそれは軽症との判断になるらしい。
ひどい逆流の子は、1度の検査ですぐにわかるとのことだ。
尿路感染を起こした児の50%には、逆流が確認されていると言う。
その日まで、抗生物質の服用は毎日義務付けられた。
こんな、生まれたばっかの赤ちゃんを薬漬けにする事に対して
かなり葛藤がある。
でもこれも、今は元気に退院できたから思えることかも知れない。
医師が必要と指示するのであれば、受け入れるしかない。
まぁ、この薬は2年位なら飲み続けても副作用などの心配はないらしい。

逆流か、たまたまなのか、祈るような気持ちで検査当日を迎える。
その日は偶然旦那の仕事が休みだったので、一緒に行く。
検査の結果は、検査後すぐに伝えられるらしい。

結果、今回逆流は認められなかった。
ただ、尿管が細くて、圧がかかって逆流した可能性もあるとのことだ。
でも、それもまだ生後1ヶ月の赤ちゃんの話。
ほとんどの児は成長に伴い自然治癒していくから心配はないらしい。

や、やったー!!
たまたまだった!!

たまたまの割にはかなりエライ目見たけど、
この際そんな事などどーでもいい。
様子見という事で次はまた2週間後に来院し、
何も問題なかったので次回は1ヵ月後に受診することになった。
原因が発見できず、またたまたまかもしれないため、
予防的に抗生物質の服用は続けるらしい。
そしてこの病気は、2~3歳位になって、オムツがはずれ
自分で排泄できるようになったところがゴールらしく、
それまでは半年に1度の様子見受診が義務付けられた。

次会ここに来る時は、息子はもう3ヶ月になっている。
また次にここに来る頃は、もうおすわり出来る様になってんのかな?
またその次に来る頃は、もう歩いてるかもしれない。
そうなったら、電車で来れるかな、なんて、
近い将来成長した息子の姿を想像すると、
ちょっとウキウキした気持ちにもなった。

そして1ヶ月が経ち、再び受診した。
その後、特に何事もなく、尿検査の結果も問題なかった。
また来月、受診することになる。
い1ヵ月後の受診でも問題ナシと言うことで、
次回は半年後に訪れることになった。
予防的に飲んでいた抗生剤の服用も打ち切りとなった。

ようやく普通の生活が戻ってきた。






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