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父が僕に教えてくれた事
アリラン峠を越え行く
私を捨てて 行かれる人は
一里も行けずに 足が痛む
有名なアリランの日本語訳の歌詞である。が、実はこの日本語訳、現在の一般的な日本語訳と比べて若干違うところがある。
>私を捨てて 行かれる人は
>一里も行けずに 足が痛む
この部分、現在の一般的な訳では
>私を捨てて 行かれるあなたは
>十里も行けずに 足が痛む
となります。
実は冒頭のアリランの日本語訳詞は、父が少年期に満州にいた時、学校で習ったものです。
昨日の千種ノリマダンに父も来ていて、今日家に帰ったら、この話をしてくれました。
どんな想いで父はあの時のアリランを聞いていたのだろうか。僕のホームページのエッセイを読んでいただいた方なら分かると思いますが、父は終戦間近のソ連軍進行によって、逃避行を余儀なくされ、両親ともはぐれ、一人で日本に帰った経験があります。ソ連兵の狙撃から逃れるために転がっている死体を盾にしたといいます。食べ物なんて持ち歩いていないから、そんじょそこらに生えているもの、食べられるものなら何でも食べたといいます。昼は山の中に隠れ、夜、月明かりを頼りに先へ進んだといいます。時には銃弾が耳をかすめたこともあったそうです。1000k以上も歩いた死と隣り合わせの、生きていく信念だけの道のり。父にとってアリランとは、日本人として死と向き合った大陸への、憧憬と信念と胸の奥に深く閉じ込めざるを得ない記憶が混ざったメロディーだったに違いありません。
アリランは僕にとって在日を確認するメロディーだけでなく、日本人であることを確認するメロディーでもあります。
父の朝鮮人に対する思いはこの満州時代(今もそうだが、当時の満州国にも朝鮮族はたくさんいて、父も朝鮮族の子供と遊んだ記憶があるそうだ)に培われたものです。そして父は父なりに満州時代の自分を乗り越えようとしている。最近は必至になって朝鮮の近代史や伝統的なものを貪欲に知ろうとしている。父には父の蟠りがある。
向き合うこと、それは日本人の中国や朝鮮に対するわだかまりを解く事でもある。潜んでいる日本人の声を引き出すことでもある。
だが在日に日本人の心の闇を引き出せるほどの理論やアイデンティティーがあるかと言えば、残念ながら無いとしか言いようが無い。
ノリパンの今回の公演では日本人と在日が向き合うこともテーマだった。きっかけは作れたとしても、まだまだ道のりは遠い。少しずつメンバーが日本人であること、在日であることを考え始めていることも確かだ。でも、足りない視点が多くあるのもまた確かで、今回、父のようなアリランの捉え方があることを認識している日本人・在日がどれだけいただろうかと考えると、もっと知らなければならない視点がたくさんあることも確かであろう。
日本人として向き合えない朝鮮を如何にして向き合えるようにするのか、それを考えていくのも大事だと思う。
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