コスモス



そよがれていく揺れもまた

可愛らしい



秋の静まる夕陽に

共に暮らすことの意を

告げた時のことを振り返ると

頬を赤らめているのか

全てを呑み込んだ素顔が映し出されて



そんなさまから目をそらすと

薄いのか 淡いのか

秋桜が透き通るようなピンクを

小刻みに震わせていて

少しばかりの群生に交じる白の花びらが

ピンクや赤に囲まれて

純潔をほんのりと染めている



ようやく口をついた言葉

「コスモスってコスモスとわかるから嫌いなの」



涼しい風が長い髪を舞わせて

枯れ色の音を演じる



横顔 うなじもまた揺れて

囁く

「コスモスは嫌いなの」



川面も淀むススキの穂も

空っ風の時が来つつある事を告げる



「嫌いなの」



遠い目が鉄橋を渡る電車の音を

眺めている



「嫌い」

沈黙に捧げられた音景に重なる

かすかな わだかまり



遮られた色さえも

強く輝くような口紅に

蘇る過去が滲む



沈む陽なのだろうか

垂れた首を上げさせたのは



深くなろうとする闇に

流れる言葉

「嫌いなら 一緒になろうよ」



「汚れているなら 一緒になろうよ

 恐いのなら 一緒になろうよ

 信じられないなら 一緒になろうよ

 そこまで傷ついた君がいるから

 僕らは一緒になれるのだよ」



――あれから、幾年を経たのだろう――



花言葉の辞典を手にしている昼下がりの

開いたページには



コスモス・・・・・・・・・乙女の純潔・真心・美麗

             乙女の心情・調和

    (ピンク)・・・・・少女の純潔

    (赤)・・・・・・・調和・愛情

    (白)・・・・・・・美麗・純潔・優美



とある



妻はいそいそと洗濯物を取り込んでいて

秋桜は庭の隅でそれを眺めている

はためくシーツに困惑している顔も

可愛らしく しおらしく

今、また、ページをめくる


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