最果ての世界

最果ての世界

黒女神『4人』


     窓際に彼女はいた。寒い風が吹く中、窓を全開に
     して。
      目的があるのではなく、ただ眺めているだけ。
     そんな感じで外を見ていた。

     「ねぇねぇ。ずっと思ってたんだけどさ、寒くな
     いの?」
      そんな彼女に同じ部屋で爪を切っていた少年が
     尋ねた。
      まだ幼い顔立ちの彼は寒いのか、室内だと言う
     のにマフラーを巻いていた。
     「別に?寒いなら、自室に戻るとかしたら?」
      彼女は窓の外から視線を戻すことなく返事をし
     た。
     「いや、そういう訳じゃないんだけどさ…。」
     「じゃあ、どういう訳なのよ?無理しないで部屋
     に戻れば良いじゃないの。」
      少年の言葉を遮るように、同じように部屋にい
     た少女が言った。
      少女は少年と血が繋がっているのか、声質も外
     見も良く似ていた。
     「そうだぜ。寒いなら戻れよ?俺らの仕事は夜な
     んだから。寝れる時に寝てた方が良いだろ?」
     本当にそう思ってなどいない顔で同じ部屋にいた
     青年が、さらに言い募る。
     「別に平気だって!」
      どこからか、引っ張り出して来た毛布を被った少
     年は少し強い口調でそう言った。
     それを最後に自らの作業に戻ってしまった。
      それを見た少女と青年は呆れた感じに視線を合わ
     せたが、そのまま自分の時間へと意識を戻した。
      窓際の彼女は最初から気にもしてないようで、
     ずっと窓の外に視線を向けたままだった。

     彼女らと彼らは、この部屋をオフィス兼住居として
     少し名を馳せた者だ。表社会ではなく、
     いわゆる裏社会でだが。
      この世界は、治安が良いとは言えないのだ。
     だから、裏社会の方が大きな利益を得ることが出来る。
     まぁ、彼らはそんなことなど考えてはいない。
      自分が持つ力やこの仲間と呼べるパートナーが気に
     入り、手段としてそれを選んだたけにすぎない。

      それとは、彼らの小さな組織のことで。
     「黒女神」という名を冠している。
      メンバーは、この4人のみ。

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