最果ての世界

最果ての世界

黒女神『依頼遂行』



 その依頼者が来た日の、深夜に近い時間。彼らは、そこにいた。
 彼らの目の目の前には崖がそびえ立つ。そして、彼らの前の一角に。まる
で、彼らを招き入れるように小さな穴が開いていた。穴の中は、暗く中の様
子を伺い知ることは出来そうにない。
 そして、それを見た最初の感想はロスが漏らしている。そして、話は冒頭
へと戻る。

「こればっかりは、ロスの言うままだな。これ、本当に遺跡なのか?」
 エルもそのままに言葉を漏らす。それくらい異様な光景だった。
 もし、事前に遺跡だと知らされていなければ、きっと森に住む動物の巣だ
と思うだろう。
「まぁ、入ってみれば解るんじゃないの?というか、入らないといけないん
だけど。」
 ラズは、特に興味もないらしく現状を告げる。
「でもさ、なんか、みんなで行動するのって珍しいよね。」
 そんなラズを遮るようにロスが言う。
 彼らの仕事は、それぞれに関わることのないものなので一緒にひとつの仕
事をこなすことがない。つまり、今回が異例なのだ。
「仕方ないだろ?どういう場面になるか、こっちだって解らないからな。」
「というか、依頼自体がありえないわよ。」
「まぁな。行方を眩ました研究員を探せだろ?」
「生きていれば守って、捕まっていれば全員を殺してくれ。」
「信じられない依頼だわ。こっちとしては、お金になれば良いけど。」
 彼らは、今日やって来た依頼人を思い浮かべながら感想を漏らす。
 そう、この依頼はどうしても全員を必要とするものだ。探すという行為は
エル、守るのであればロイとラズ、殺すのであればルーア。それなりに金額
も跳ね上がるものとなる。
 しかし、依頼主はそれでも構わないと言った。何か、重要な機密を抱えて
いるのだろう。
 それは、彼らの憶測で本当の所は解らない。しかし、依頼されればそんな
事情など聞かずに行うのが彼らだ。だからこそ、必要とされている。

「そんなことより、さっさと済ませたい。」
 長々と話す3人にルーアは言った。彼女の表情にも、さっさと帰りたいと
いう色が現れていた。
「そうだな。じゃ、さっさと見付けて終わらせるか…。」
 そういうと、エルは腰をかがめて穴へと身を押し込める。
 エルに続くように、他の3人も遺跡に続く穴へと入って行った。

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