最果ての世界

最果ての世界

植物天使の小話/参


 焦るでもなく、すごくゆったりとした天使は聞いた。私は、すごく悩んで
いた。外の世界を見たい、感じたい。それでも、だけど…。
 そして、私は答えを出した。自分にとって、最後の願いを託す。

『私は、…私は外の世界の話が聞きたい。貴方の世界を聞かせて下さい。』
 天使は、少し驚いた様子も見せたが。淡々と答えた。
『それで良いのですか?』
『えぇ、私は話を聞けるだけで良いのよ。だって、感じることの出来ない世
 界に憧れるだけで充分。そこへ、行けないのだから。』
 私は、はっきりとそう答えた。天使は簡単に承諾して、そして話し始めた。
私の目にする事のない世界、私の感じる事のない世界、私の知らない世界を
とつとつと…。


私には、他に何が望めるのだろう。知っても、そこで生きる事は叶わぬ運命。
それならば、ただの、言葉として受け入れるだけで充分だわ…。

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