最果ての世界

最果ての世界

戦場の舞姫。


ウーリィは、驚いたように。それでも、嬉しそうに聞きました。
「えぇ、もう5年も前の話だけれど。確か、収穫祭で舞ったのを覚えてるわ。」
エマは、合ってると良いんだけどと思い出すように言葉を紡ぎました。
「ソライです、その国がソライなんです。」
そんなエマを見ながら、ウーリィは嬉しくて泣きそうになりました。
「あ、そういえば、僕も覚えてるかも。」
トトも、そんなエマの話を聞きながら考えるように目を閉じて言いました。
「あら?トトも覚えているの?」
エマは、少しビックリしたように聞きました。
「なんだよー!エマ、僕をバカにしてるだろ?!」
ちょっと怒ったように毛を逆立てたトトは、エマの頬を羽根でつつきました。
「そうじゃないわ。だって、あの国でトトったら迷子になったじゃない?」
クスクスと笑いながら、エマはトトの羽根を摘みました。
「それで、私が見付けたら子供たちに追い駆けられていて…。」
そして、摘んだままトトを自分の膝に下ろしました。
「『こんな国、すぐに忘れてやるー!』って、言ってたのは誰だったかしら?」
膝に下ろしたトトの頭を撫でながら、エマが意地悪な声で聞きました。
「そ、そ、そ、そんな昔の事は、詳しく覚えてないもん!」
撫でられながらも、文句を言うトトはしっかりとその時を思い出しました。

「そんな事があったから、覚えててくれたんですか?」
ウーリィは、笑いを抑えながらエマに聞きました。
「いえ、そうじゃないわ。あの国は、特別よ。」
『そんな事って、失礼じゃんかー!』と怒っているトトを宥めるように。
優しくトトを撫でながら、エマは答えました。
「収穫祭で、白い鳥を放つでしょう?私、どうしてするのか聞いたの。
 そうしたら、まだ幼い子供がしっかり教えてくれたのよ。
『どんな色も照らす白い光のように、この国が輝いていますように…。』
『空に国境がないように、いつか大地の境もなくなりますように…。』
 まだ小さなお兄ちゃんと妹さんに教えて貰ったのよ。
 それで、素敵な行事なんだなって。だから、覚えていたの。」
まるで、懐かしい国を思い出すようにエマは目を閉じて告げました。
「あ、あの、もしかして、その兄妹って…。」
ウーリィは、その話を聞いて何かを思い出すように聞きました。
「お揃いの腕輪をしていませんでしたか?こんな腕輪を…。」
そして、尋ねながらエマに自分の付けている腕輪を見せました。
「そうそう、あの国では流行していたの?」
エマは、その腕輪に見覚えがありました。
あの幼い兄妹がしていたものと同じだったのです。
「いえ、これは僕の両親の形見なんです。」
ウーリィは、自分の腕輪を優しく撫でながら答えました。
「エマさん、その幼い兄は僕なんです。一緒にいたのは、妹です。」

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