最果ての世界

最果ての世界

戦場の舞姫。


 僕たち兄妹も、たくさんの人に白い鳥を放つ意味を聞かれました。
 でも、その中の一人がエマさんだったんですね。
 そして、そのエマさんとまた会えるなんて驚きました。」
ウーリィは、とても嬉しそうに微笑みながら答えました。
「えぇ、私もビックリしたわ。まさか、君だったなんてね。」
エマも、そんなウーリィに微笑みながら告げました。

そうして、暫くお互いがソライを思い出すように。
沈黙がテントの中に篭るように、静かな時間が流れました。

「エマさん、トトさん、お願いがあるんです。」
そして、その沈黙はウーリィの声によって遮られました。
「え?え?何、僕もなの?」
少しうとうとしていたトトは、話を振られて驚いたように飛び上がりました。
「どんな事かしら?」
そんなトトを気にも止めず、エマはウーリィに聞きます。
「僕の事、無視してるだろ…?」
エマの反応に、トトは少しだけ寂しくなりました。
「でも、お願いって何?」
それでも、トトはお願いの方が気になるようにウーリィの方へ顔を向けました。
「この腕輪を、貰ってくれませんか?」
ウーリィは、そんな二人に自分の腕輪を外しながら聞きました。
「けれど、それは大切なものなのでしょう?」
エマは、少し驚いたようにウーリィの行動を見ています。
「あと妹の腕輪も、貰ってくれませんか?」
ウーリィは、自分の腕輪と同じ物をポケットから出しました。
「僕の今の故郷は、この国なんです。だから、この国を守るためにここにいます。
 それに、妹はソライが滅びた戦争で死んでしまいました。
 生まれた国ではあるけれど、思い出すには悲しい思い出が多すぎるんです。
 でも、ソライは僕にとっての大切な国です。誰かに覚えてて欲しい。
 だから、この腕輪と一緒にエマさんとトトさんにお願いしたいんです。

 お願いです、ソライを忘れないで下さい。」
ウーリィは、エマとトトに腕輪を差し出しながら伝えました。
エマは、そんなウーリィと腕輪を暫く眺めていました。
「そうね、貴方の気持ちも解るわ。私で良ければ、喜んで引き受けましょう。」
エマは、微笑みながらそう答えました。
「有り難う御座います!なんだか、長い時間お邪魔してしまってすみませんでした。」
それだけ聞くと、ウーリィは嬉しそうに笑顔を零しました。
そして、腕輪をふたつエマの前に置き、お辞儀をしてテントを去りました。

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