発達障害児が伸び伸びと育つために~保健師の目で見た子育て~

最初の順風:校長先生の理解を得る



この面談に向けて、一番避けたいと思った点は、
校長先生が一保護者(私)からの要請を受けて「義務感」から「形」だけの対応をするようになってしまうことでした。

まずは、一人の人の、心からの理解と協力を得る・・・そのためには人の心を動かさないといけない。

どうすればいいのか?


校長先生の、感性にも理性にも知性にも訴えるつもりで、
「人の心を動かす」ためには、何が必要なのかを・・・ずいぶんと研究して、あとは誠意だけで望みました。


●具体的な要請内容を明確に伝えると共に・・・学校側の対応に不満な点を率直に述べ(理性に訴える)
●その一つ一つに、親としての気持ちを丁寧に添え、(感性に訴える)
●校長先生のことを一人の人間として、一人の親として、一人の教師として、一人の校長先生として、わかっていただけるはずだという信頼を伝え、(期待を伝える)
●こういう対応をしていただければ、こういう成果が出るはずだという、成功事例を書籍から引っ張り出して提示しました(知性に訴える)


この面談は、担任には内緒で会っていただきました。私が担任に不信感を持っていることも、怒っていることもアポを取る時点で簡単に伝え、助けを求めていることを伝えておいたので、事情を察して、校長先生も配慮してくださいました。

常に心がけたのは、校長先生が困らないようにすることでした。校長先生を困らせてはいけない。無理難題を押し付けて、社会の間違いを訴えることがねらいではない。担任のひどい言動を告発することが目的ではない。学校を訴えたいのではない、ということをまず理解していただかないと、すれ違ってしまう。
校長先生が「防衛的な態度」になってしまっては終わりだ。

こちらの気持ちを校長先生がよくご理解してくださった上で、やっていただける範囲で最高の対処をしてもらうのが目的だと自分に言い聞かせました。

親は、これまでの大変さや辛さや担任の先生への不満を訴えていると、ついつい予定外に怒りがこみ上げて「社会の悪をどうしてくれる?」・・・というような乗りで不満を訴えてしまいがち・・・・・そのようなことになってはいけないと自制したのです。

まず、病院でアスペルガー症候群だと言われたこと。そのことを担任には話せずにいるけれども、これから正直に伝えて、対応方法を考えてもらいたいと思うようになっていることを伝えました。そして、そのために力になってほしいこと。

養護教諭や学年主任にも入っていただいて、今後のことを話し合う場を設けていただきたいこと。

学校中の先生方に、我が子を事例として、専門家を呼んで学習会をしてもらいたいこと。

そして、来年度の担任は、特別な支援を必要としている子も教育できるような力量のある教師をつけてもらいたいことを要請しました。

一つ一つ依頼しながら、必ず自分の気持ちも伝えました。
我が子の診断名を伝えることで、レッテルを貼られるのではないかという恐れも持っていたけれども、同じ障害を持つほかのお子さんのためにも理解をしてもらいたい、親が小さくなってはいけないと思うに到ったこと。学校に居場所を作りたいこと。適切な対応があればきっと伸びるであろうと期待していること。
学校を信頼して、学校に期待して、親もできることを一生懸命にやるから、力になってほしいこと。
できるだけ、ポジティブな言葉で、(恨みつらみにならないように注意して)率直に伝えました。


校長先生は、2時間かけてじっくりと私の話を聞いてくださいました。
結果として、校長先生が子どもの障害にも、親の気持ちにも理解を示してくださり、校長として「義務感」ではなく、ご自分の立場でできることをできる限りしようと思ってくださったこと・・・

これがこの後の、すべての勝因となったように思います。

ここで理解者を得たおかげで、その後風向きが変わり、順風が吹き始めました。


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