After the evening glow ~夕焼けの後に~

After the evening glow ~夕焼けの後に~

第二話


そこには色々な文章が書き綴られていた。

「○月×日△△へ集まってください。車は用意してるんで・・・」
「オレはもう死ぬしかないんだ・・・」

・・・見れば見るほど、俺みたいな気持ちの人の遺書とも取れる書き込みがしてあった。

でも俺は苦しい死に方なんてしたくない・・・。
しかも見ず知らずの人と一緒に死ぬのなんて、尚更ごめんだ。

そんな中一つの書き込みに目がいった・・・。

名前:○○○  件名:楽な死に方
   オレは思うのだが、睡眠薬をのんでから車の中にはいり、窓を締め切
   ってその中で七輪を焚いたら、寝てる間に死ねるんじゃないかと・・
   ・。
                      (9.13 1時25分47秒)

「これなら楽に死ねそうだ・・・」俺はそう思ったのが早いか遅いか、さっそ
く車のカギを持ち出した。今なら深夜、見てる人は少ないだろう・・・・。

薬箱に入れてあったお母さんの睡眠薬を見つけ、がむしゃらにポケットへ突っ込んだ。

そして七輪を押入れから引っ張り出すと、物音を立てないようにゆっくりと外
へで、車庫へと向かった・・・。

 ガチャ・・・

車のカギをあけた俺は、なんの躊躇いもなく睡眠薬を口にした。
そしてその後に窓が閉まりきってるのを確認し、七輪へ火をつけた。

・・・それと同時に俺は、今までの自分の人生を思い返した・・・。
教師に目の敵にされてたこと、同級生のイジメのこと、思いを伝えれなかった彼女のこと・・・。

思い浮かぶのは悪いことばかり・・・。しかし、記憶の糸を辿ると、
もっと色々なことも思い出として脳裏をよぎった・・・。

生まれて初めての学校入学、友だちと毎日のように遊んだあの公園、家族といった旅行・・・・。

・・・瞳がうるんだ涙のせいでみえなくなってきた・・・。

よく考えれば、どんだけくだらないことで自殺なんて考えてしまったんだろう?
そんな小さな悲しみなんて楽しかったことを思いだしいていたら、どうにでもなってたじゃないか・・・。

今からでも遅くはない、まだやり直せる!

・・・しかし、だんだん睡眠薬の効果が効いてきたようだ・・・。
身体が眠気で動かなくなってきた。そして七輪の炭についた火は、無常にも燃え続ける・・・。

涙がとまらなくなってきた。

そんな中で俺はようやく自分の生きる意味を知った。

生きていく上でどんな人にだって障害がある。壁のない人生なんて絶対にないっ
てことを、「俺・・・、このまま生きてたら、これからどうなるんだろう?」

そんなことをかんがえればどんなにイヤなことがあっても乗り越えられるような
気がした。なのに俺は諦めるほうを選んでしまった・・・・。

こんなドラ息子になってしまってごめんなさい・・・。俺はちょっとづつ薄れて
いく意識の中でこう思った。

「母さん、俺を生んでくれてありがとう・・・、ここまで育ててくれてありがとう。
俺・・・、生まれ変わったら素晴らしい生きかたをするよ・・・。母さん、元気でね・・・」

「父さん、いつも厳しかったけど、引きごもり気味だった俺を外の空気に触れ
さしてくれてありがとう。母さんを守ってあげてね」

俺のひざの上を冷たい涙がなぞった・・・。そしてそれは暖かさへと変わってい
った・・・。しかし、しだいにその温もりは消えていった・・・。

・・・俺はほとんど意識の無い中ではっきりとこう思った・・・。

      「生きたい・・・・!」

・・・そう思うと俺は深い眠りについた・・・・

            小説「Eternal sleep」     ~完~



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