Heikの狂暴温泉芸者

Heikの狂暴温泉芸者

ジェノサイド




コンビニにて

なけなしの貯金の

100万円を 支払い

原子爆弾を 購入する。




ぼくは それを

ボストンバッグに 詰め込んで

街の喧騒へと 紛れこむ。



思いっきりの おしゃれをして

ぼくは ブラジルから来た

異邦人のように振舞う。

すべてが 今は美しく

楽しいのだ。




束の間の 平和モドキ。

どことどこの国が
戦争しているんだっけ?
そんなの 知ったことか!




爆弾入りのバッグは右手に
起爆スイッチは左手に…




スクランブル交差点の 信号は 青。
皆は「青」と言うが あれは「緑」だ。
つまり 停滞だ。




群集が 行き交う。

老いぼれに ギャルたち
サラリーマン風のスーツ姿
幼児のベビーカーと夫婦たち
あるいはカップル




それぞれが おのおのが
目的地へと 急いでゆく
薄ら笑いを浮かべながら ぼくは
交差点の真中で 立ち止まる。

不審そうな表情を浮かべて

ぼくを振り返り

立ち去ってゆく人波。




信号が 赤だ!

ぼくは 痴呆のように

そこに立ち止まったまま…




クラクションの怒号が
周囲を飛び跳ね また 飛び交う。
ウィンドウ越しに 怒鳴りつける
ドライバーたち。 阿呆ども!




怒りをこめて ぼくは

  起爆スイッチをONにする。




ぼくを中心とした

この街 数十km四方は

一瞬にして 完璧な白紙となる。




ぼくの視点は

ひとつの 巨大な キノコ雲となり

空中高く 舞い上がる。

そして歓喜し 涙し 失禁するのだ。

ぼくは 悪魔と 取引きをして

同時に 絶対の 神となる。







二〇〇三年四月二十四日

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