Heikの狂暴温泉芸者

Heikの狂暴温泉芸者

真夜中のTAXI





真夜中 午前零時

TAXIをつかまえて

3万円を ドライバーに手渡し

「どこでもいいから1時間乗せてくれ」

そう頼む



まだ眠りにつかない街は

ジュラヒュラ煌めいて 騒がしそうだ

だがドライバーは無口で 黙々と

ハンドルをさばき

車内は静粛だ



出発点は定かでなく

終着点も定かでない

人生の不安に自分は溺れる



感傷的に潤んだ瞳には

都会の喧騒が

あまりにも きらびやか過ぎて映る



こうして人間は自分の生を

毎日無駄遣いしているのだ

徐々に死につつある自分には

理解できない無駄遣いだ



生と死の隙間の溝で

人々は勝手なダンスを踊る

駄目だな こんなことじゃ

死刑執行をひかえた 囚人の如く

一秒を感じ 噛み締めなくては……



「着きましたよ」 ドライバーは言った

「何処だか判らない場所に……」

気の利いたことを言う ドライバーだ



そして TAXIを降りた自分は

真っ黒く眠る

自宅の門の前で ささやかな躊躇をする





二OO六年十一月十日

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