Harper Pass Track


 僕の中でTramping courseは3種類に分けられる。1、往路と復路の道が一緒、行った道を帰ってこなくてはいけない。僕は同じ道を戻るのが嫌い。2、スタート地点とゴールが一緒。一周するような感じのコース。自分の車を持っている人には良いかもしれないけど・・・。3、スタート地点には2度と帰ってこないコース。出発したらそれっきり、まったく違う場所にたどり着く。これが一番好き。
 Heaphy Trackも3のようだった。だから車で旅行している人にはとっても辛い。僕はこの時3人で旅行していた。年上の女の人二人と。その一人と一緒にHeaphyを一緒に歩き。もう一人の方に車を出発地点からゴールまで持ってきてもらった。とっても効率のよい方法だがめったにこんなことは出来ないだろう。
 Harper Pass Trackの場合更に魅力的だったのはゴール地点付近一帯がTramping天国のような場所でほかのコース(Track)や山小屋(Hut)がそこら中にあるということ。はっきり言ってSt.James WalkwayはHarper Pass Trackのための練習のようなものだった。

 Harper Pass Trackでもいつものように写真を何枚も撮っていたけどあまりよいのが撮れなかった。だからHarper Pass Trackについては僕の駄文で我慢してください(写真もいまいちだって言われたし…)。

 バスの運転手さんと交渉がうまく行かず、というよりもインフォメーションセンターのおばちゃんがHarper Passについての知識が無く、そのおばちゃんにバスの予約を頼んだのだが。バスを下ろされた場所がSt. James Walkwayのゴール地点だった。Trampingの本にもそこからHarper Passの入り口はshort wayだって書いてあったから、あれっ?とは思ったものの、まぁいっか!とHarper Pass Trackのスタート地点を探すため歩き出した。長くても30分くらいでつくものとばかり思っていた僕は、1時間歩いても、2時間歩いてもスタート地点につかないので不安で不安で、不安疲れしてしまった。歩いていてもあとどれくらいでスタート地点に着くのかわからないのでヒッチハイクにも力が入らず、歩きながら右手だけは道路に出して親指を立てていた。途中、奇跡的に民家を発見したので「エクスキューズ・ミー!!」と、目的地までどれくらいなのか聞くと2,3キロとのこと。もう少しだ。
 結局スタート地点に着いたのが2時間半後。主に精神的疲れから体はぼろぼろ。こんなんで大丈夫かなぁ。やっと始まったばかりなのに弱気でこころはいっぱい。ここからガイドブックには5時間と書いてある。1日の歩行時間としては標準的なのだが、なにせ僕は既に2時間半歩いている。
 とこんなわけで1日目はヘロヘロになりながら最初のHut、Hope Kiwi Hutにたどり着いた。もう何も考えず、Trampingを楽しむことなく、まさに修行のような状態だった。楽しいはずのTrampingが…、久しぶりに学生の頃の部活を思い出してしまった。
 疲れた僕を迎えてくれたのは、たった一組、中年夫婦二人だった。もう6時を過ぎ、もう誰もやって来ないだろう、今日はゆっくりしたいなぁ。などと考えていたら、来るわ来るわ、そのあと高校生の団体さんが9人と、スイス人カップル二人がやって来た。
 このHutの印象はそのため非常に悪い。高校生が騒々しいは、御飯炊いてたら「沸騰してるぞ、沸騰してるぞ!」と高校教師らしくおせっかいを焼いてくる。寝る時は僕の隣のベットに寝ることになったスイス人の男が「暑いから窓開けてもいいか?」と。僕にはちょうどよい暖かさだったから「そんなに開けたいのか?」と聞いたら。「開けたい。もし寒くなったら閉めるから。」と。次の朝僕はくしゃみは出るは、鼻水は出るは。
 次の朝僕はこの騒々しいHutから早く逃げようと思ってくしゃみと鼻水を出しながら一番に出発した。



出発前 HopeKiwi Hutの前から
この霧の向うに…



 出発の朝Hutの前は霧で視界がさえぎられていた。霧の中に進んで行くとそれ以上に恐ろしいものが僕の前をさえぎってきた。それは何百頭もの牛たち。St.Jamesで僕は牛・馬恐怖症になっていた。バカにする人はバカにしてください。ここの牛、馬たちはなぜか逃げない(大半は逃げるんだけど)。特に頭に角の生えた牛は僕をジーっとにらみつけ、トラック(歩く道)の上に立ちはだかって、時に僕を囲んだりしてきた。この時の牛もそうだった。しかも僕が小さな牛の群れを通りすぎる時、その群れのリーダー(のような)牛が「うヴぉおおおおおおおお。うヴぉおおおおおおおお!!!!!」と雄たけびを上げ、その叫びが周りの山々にこだまして谷中に響き渡った。僕には「そっちに人間が行くぞぉおお!気を付けろぉおお!」と叫んでいるように聞こえた。

 この2日目は早めに出発したので順調に行けば昼過ぎには次のHutに着くはずだった。だから僕は脇道にそれて湖の周りを歩くコースにそれてちょっと遠回りすることにした。地図にはちゃんとコースが載っている。だけど行ってみたら途中でマーク(印)が途切れていた。それでも湖までは簡単に行けたのだが、そこから本コースに戻る道が分からない。人が歩いた道らしきものをたどって行ったら森の中をさまよっただけだったり、湖沿いに歩いて行こうとしたらぐちゃぐちゃだったり。そんなこんなでその日のHutにたどり着いた時にはヘトヘト。



人影のまったく無いひっそりとした湖だった。
この帰り道に森の中をさまよう。

 二泊目のHutも僕の印象は最悪。前日一緒だったKiwiの中年夫婦と、もう一組の夫婦、そしてドイツ人と皆で平和に話し、そろそろ寝るかと皆寝袋にくるまってから30分後。外でガヤガヤと人の声がし始めた。こんな時間(10時ころ)に人が来るの?と思っていたら、8人くらいの二家族がどたばたと入ってきた。お父さんらしき人が「Hello! Wake up Everyone!」と大声で叫ぶ。ガヤガヤ食事をし、食後もペチャペチャ寝ている人を気にせず大声で談笑。僕は本物の殺意を必死にこらえながら寝ようとしていた。もともと寝つきの悪い僕がそんなに興奮して寝れるわけがない。そいつらが寝始めた頃、僕は逆に煙草を吸って気分を静めるため外に出た。外では娘らしき二人がまだ起きていて僕に話しかけてくる。無視。次の朝もそのグループが話しかけてきても、無視。向うは「こいつはなんなんだ」という顔をしてくる。だから白人は嫌いだ。
 3日目の朝もこのグループと一刻も早く離れたかったので早く出発した。ケッ

 三日目のコースには天然の露天風呂(Hot Spring)があった。素っ裸になって温泉に浸かる。海パンも用意してたんだけど、こんな所に人が来る確率はほとんどない。日本人には少しぬるめかも。まぁ温水の取り入れ口のほうに座っていれば気持ちがよい。  3泊目のHutには何事も無くすんなりと昼過ぎに到着した。今夜こそ一人でありますようにと祈りつつベットのマットレスを外に干す。



3泊目No.3Hutから  この日は一人で泊まる。
いきなり一人になったからかすごく寂しい気分になった
軽いホームシックになる
でも一人はやっぱり快適だった



 この晩は一人で快適に夜を過ごした。やっぱり少し寂しくても一人で居たほうが快適だ。この夜は外に干しておいたマットレスを食卓の上に引いてねた。次の日の悲劇をこのときは予想できなかった。

 4日目はこのルートの名前にもなっているHarper Pass(峠)を越える一番きつい日。マークはほとんど無くなり(あっても使わないほうがよいかも)峠から流れ出る川に沿ってどんどん上って行く。自分の背の高さほどのくさが道をふさぎ、視界をさえぎる。
 そんなこんなで(説明するのが面倒なので。ゴメンナサイ)4泊目のHutにたどり着いた。あっ!ここにつくまで結構大変だったのを思い出した。とにかく道を迷い、道も無いのに森の中に入りさまよい。ちょっとした心の動揺。一度など足を踏み外し、大きな石のごろごろなった川原に頭からまっさかさまから落ちそうになった。なんでかしらないけど、このときは背中の大きなバックパックかなにかが木に引っかかり助かった。そうじゃなかったら頭かち割って、血がぎゃーー!ってなって死んでたかも。ホントに  歩いている途中で小雨が降ってきていたが、Hutにつくと同時に本格的に降ってきていた。次の日には結構大きな川を渡らなくては行けない、ここで2泊してもいいのだが・・・、煙草が切れて2日目。それにコーラも飲みたい。あったかいシャワーも浴びたい。この夜は暖炉に火を起こし、ろうそくを灯し、次の日のことをぼんやりと考え、ネズミと一緒に過ごした。
 このHutのVisitor’s Bookで秋葉健という日本人を知った。そのノートにNZにある温泉のことを書いていたのでよく記憶していた。蛇足として書くとこのノートの別の部分にこのルートで1日さまよい、Hutが見つからず街まで引き返すのに深夜2時まで歩いたという日本人を知る。本人が書いているのだが、これが2度目のチャレンジでこのときは成功しノートに前回のことを書いたらしい。あとで聞いた話だと、この人NZの一番有名なアウトドア雑誌「Wilderness」にも載ったことがあるらしいほど、NZをくまなく歩いているらしい。名前は忘れた。


 5日目の朝、まだ雨が降っていた。狭い谷間から小さな空を見上げると空一面に雨雲。なんてこった、だ。ゆっくりと朝食をとり、これまでの日記を付けながら出発するかしないか考えていた。
 雨はしとしと降っているだけ、進行方向には青空も見える。煙草は吸いたい。コーラも飲みたい。よし!行こう!と出発する。
 歩いているとなんだか雨雲と競争しているみたいだった。立ち止まって休憩すると雨が激しくなる。この日のルートにはまったくマークがされていなかった。お任せコース。まぁないと分かればこっちも気楽。川に沿って歩いて行けばいいのだ。途中何度も川を渡らなくては行けなかった。最初のうちは靴が濡れないように石づたいに渡ったりしていたが、靴が雨でびしょびしょになったし、ちょうどよく石の無い所があったのでもう靴を脱ぎすて、サンダル、短パンには着替えてバシャバシャと何度も川を渡った。こうなるととっても快適。気が楽になる。それでもNZの川の水は夏なのに冷たい。  ルートの最後のほうはもう体中びしょびしょになっていた。防水スプレーを塗ったパーカ(かつてはそれ自体で防水だった)に水が染み込み、その下に着ていたシャツを通過し、最後の砦ティーシャツから直接肌に雨水が到達し始めた頃、僕もルートの最後の難関、と言われている(僕は知らなかった)川を渡る。なんでもよくおぼれて死ぬ人がいるとか、普通でも腰くらいの水深で、雨の降った時はそれ以上になるとか後で聞いたけど、僕が渡った時はせいぜいふくらはぎがぬれる程度だった。

 最終日、ここまではそんなに大変ではなかった。大変だったのはこの後。川を渡り、ルートを歩き終わり、車道に久しぶりに出、後は車を捕まえ街に行くだけ。道路を歩き始めた頃から雨は激しさを増し、嵐になっていた。既に肌まで雨水が染み込んでいる僕はその冷たさに、立ち止まってヒッチをするどころではなかった。とまったら凍えそうに寒かった。このとき3月13日NZはまだ夏だ。それなのにこの寒さ。雨が降っているため車は停まってくれない。上半身が寒さで動かせなくなってくる。風は向い、雨が激しく体を打つたび「うぅーーー」とうなってしまう。冗談抜きでこのときは凍え死にするんじゃないかと思った。自分の士気を高めるため「うおぉぉぉぉ!わぁぁぁぁ!誰かとまってくれぇぇぇぇ!ちくしょおおおお!クソッたれぇぇぇぇ!」など叫びながら歩いた。どれくらい歩いたろうか。ドイツ人カップルのきたないバンが停まってくれた。乗り込むと後ろにも女の子二人が乗っている。僕ががくがく震えていると、着替えた方が良いわよ。大丈夫?など色々きづかってくれる。僕は最初4人で旅しているものだと思っていたらこの後ろの二人もヒッチで乗って着たらしい。とにかく上半身だけ着替え、バスタオルにくるまって、震えが止まるのをじっと待った。
 このドライバーの男の人とは結局一言も言葉を交わすことなく別れたが、ホントに神様に思えるほど感謝している。もしこの人が拾ってくれなかったら僕は凍え死んでいたかもしれない。実際この地区ではときどき、しっかりした防寒具、雨具を持っていなかったためにTramping中に凍え死ぬ人が夏でもいるらしい。あの寒さならありえる・・・
 宿につき、あつぅーいシャワーを浴び、隣の雑貨屋で煙草とコーラを買って、Revive!
 このとき、この宿で上記した秋葉研君と知り合った。Visitor’s Bookに書いていたのが1年前くらい。「もしかして秋葉研君?」と聞き「はいそうですよ。なんで分かったんですか?」と。「なんとなくだけど、Visitor’s Book読んだよ。まだいたんだ?」
 まだ居たのではなく、今回は1ヶ月だけの滞在でNZにきていた。しばらく話をしていると、「今晩大目に夕食作るんで、良かったら一緒に食べませんか?」と天国からのお誘い。「ホントにいいんの?食べます、食べます、ワンワン。」
 結局この晩から約一周間、途中3日間くらいお互い別の場所を歩きに行っていたとき以外は、毎晩、彼の料理をいただくことになってしまった。ラッキー。とってもおいしかったよ。アリガト

 この研君、NZのTrampingにはまって日本でも山登りをするようになったらしいのだが、このNZの体験をもとにHome pageを開いている。できるだけ客観的に書こうという、よくできたガイド本のようなホームページ。日本語のガイド本はもちろん少ないので、もしNZでTrampingをしたいという人がいたら、すごく役に立つと思う。Tramping以外のことにも、貧乏旅行に役立つことをたくさん書いているので、ただ単にNZを旅行しようという人にもお勧めのペェジ。

http://homepage2.nifty.com/treknz/
 ということで 健君の文章と比べると、まったく僕の文章はなんて下手なんだろうと思ってしまう。それに中途半端な内容だなぁ。

 ちゃんちゃん                    Te Anauより 


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